勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年03月

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    中国が、「世界の工場」で輝いていた時代は終わった。TPP11(環太平洋経済連携協定)が昨年末に発効して以来、中国への関心は低下している。中国の内需を目的にする生産以外は、他地域での生産がコスト的にも有利であるからだ。さらに、米中貿易戦争は覇権問題が絡むだけに、米国による「中国叩き」は継続する。こういう国際情勢の変化を考えれば、中国に止まる理由は少なくなっている。

     

    『サーチナ』(3月24日付け)は、「日本企業は中国から撤退すべきではない! コストだけを見ていてはチャンスを失う」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国メディア『今日頭条』(3月21日付け)、中国から徹底する日本企業が相次いでいるのはなぜかと問いかける記事を掲載し、その要因を考察している。記事は、中国を離れる決断を下す日本企業は少数ではないと主張し、中国人なら誰でも知るような大手メーカーが中国国内の工場を閉鎖する動きが加速していると紹介。そして、撤退の理由を見てみると、コモディティ化した製品群からの撤退をはじめとする『中国とは直接関係のない要因』による中国撤退も多いと指摘した」

    2012年の日本の対中直接投資は134億ドル、ASEAN主要国への投資額は64億ドルだったものが、17年の対中直接投資は96億ドルまで減少し、ASEAN主要国への投資額は220億ドルまで急増している。日中の政治対立により、日本企業が中国で「迫害」されたことも「脱中国」に拍車を掛けている。「反日」の中国よりも、「親日」のASEANを選んだのは致し方あるまい。中国は、今になって慌てているが遅いのだ。

     



    中国の労働力人口は今後、ますます減少していく。日本以上のスピードで、高齢化が進むことを考えれば、ASEANは市場としも有望になる。もう一つ重要なのはTPPである。現在、タイが加盟申請の構えである。タイは、中国に次ぐ自動車生産国を目指している。将来、米国がTPPに復帰するようになれば、ASEANが「第二の中国」になるのは決定的である。中国は、共産党体制で国有企業中心の産業構造を転換できない結果、TPP参加は不可能である。そう言っては気の毒だが、世界市場から取り残されよう。


    (2)「同期間中、日本人のASEAN主要国における駐在員数が32%増加する一方、日本人の中国駐在員の数は16%も減少したと伝え、日本企業が中国から東南アジアへとシフトしつつあるのは事実だと主張、こうしたシフトは主に中国国内で生産することのコスト優位がなくなったためであると論じた。続けて、東南アジアの人件費は今やさほど安いわけではないと伝えたほか、経済的なインフラもまだ未成熟であるため、企業にとってはコスト増の要因は少なくないはずだと強調。逆に中国は人件費こそ高くなったが、すでに世界最大の消費市場へと成長していると主張し、『コストだけを理由に中国から撤退するのは大きなビジネスチャンスを失うことになる』と伝え、日本企業は中国から撤退すべきではないとの見方を示した」

     


    中国の人件費が急激に上がったのは、政府が最低賃金の大幅引上げを行なった結果だ。理由は、所得格差の縮小である。だが、生産性を上回る賃上げになったので、外資系企業が中国脱出を図った。このパラグラフでは触れていないが、小規模企業にも共産党委員会がつくられている。これは、共産党による経営監視であって、外資系企業には耐えられない話である。中国政府が、こうした世界の潮流と違うことを始めている以上、脱中国は不可避となろう。


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    中国政府は、少数民族の「浄化」を狙っている。かつて清国が満州族によって創建され、漢族はその支配下に組み込まれた経験を持つ。それだけに現在、少数民族への弾圧は苛烈をきわめている。帝国の国力が衰えると謀反が起るという「帝国衰亡」の教訓からもヒントを得ている弾圧である。

     

    新疆ウイグル族が、気の毒にも目の敵にされ、弾圧対象にされている。

     

    中国共産党は、新疆ウイグル自治区の1400万人のチュルキ語系イスラム教徒(その大半はウイグル族)の中には暴力的で過激な傾向を持つ者がいると主張し、これに対処するための強力な対策を進めてきた。国連の専門家らによれば、この「過激化阻止」目標達成のため、中国当局は、100万人ものイスラム教徒を抑留施設に収容し、他の多くの人々を電子機器による監視下に置いた。中国の指導者らは、これら収容施設について、職業訓練センターだと説明し、世界的なテロとの戦いの新戦略として宣伝している。以上は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月22日付け)が伝えた。

     

    中国が、ウイグル族を弾圧すれば反発され、「過激化」するのは当然である。原因をつくったのは中国である。ゆえに、100万人ものイスラム教徒を抑留施設に収容し、他の多くの人々を電子機器による監視下に置くのは許されない暴挙である。中国という国は、どうして次々とこういう人権弾圧事件を引き起こすのか。国際社会は断固、立ち向かって止めさせなければならない。北朝鮮に準じて経済制裁を加える必要がある。

     

    『大紀元』(3月23日付け)は、「中国当局、新疆訪問要請、欧州外交官ら宣伝に利用されると警戒」と題する記事を掲載した。

     

    中国新疆ウイグル自治区の強制収容施設に対する国際社会の非難が高まるなか、中国当局はこのほど、欧州各国の駐中国大使や外交官に新疆ウイグル自治区の視察を口頭で要請した。大使らは、新疆訪問が中国当局の宣伝目的に利用されることを懸念する。ロイター通信が20日伝えた。

     

    ここへ来て、新疆ウイグル自治区の弾圧事件が、国際問題として取り上げられている背景に注目すべきである。中国経済の力が落ちてきたことの反映である。仮に、中国から嫌がらせを受けても、各国がそれを跳ね返す力を持ってきたことの表れだ。もはや、「中国を恐れる必要がなくなった」ことを意味するもの。中国からのしっぺ返しを恐れなくなってきたのだ。中国は、「日没する国」という認識が広がっている。

     


    (1)「報道によると、中国当局は各国の大使らに対して3月末に、新疆ウイグル自治区を訪問するよう要望を出した。実現すれば、大規模な西側外交団による初めての新疆ウイグル自治区の訪問となる。現在欧州各国の外交官らがこの要請に応じるかどうかはまだ不明だ。また、新疆ウイグル自治区のどこの地域を訪問するのか、誰に会うのかも分からない。ロイター通信の取材に対して、中国外交部(外務省)は声明を出した。声明は、新疆地域における経済と社会の発展について欧州各国の認識を高め、欧州と中国の交流を深めるため、中国当局が欧州外交官らの新疆訪問を要請したとした。昨年、フランス、イギリス、ドイツと欧州連合(EU)など10数カ国の駐中国大使と外交官は、新疆ウイグル自治区トップ、陳全国・党委員会書記宛ての書簡で『再教育収容所』に対して懸念を示し、陳全国氏との会談を求めた。中国当局は同書簡について、いまだに返答していないという

     

    新疆ウイグル族への人権弾圧は、今後一段と国際問題化していくであろう。米国では、米中貿易戦争の後に、この問題を浮上させるスケジュールが練られている。

     

    (2)「一部の外交官らは、中国当局の要請を受け入れれば、新疆訪問が中国当局の対国内外の宣伝材料として利用されることを危惧する。最近、一部の外交官が新疆を訪問したが、中国政府系メディアは外交官らが『再教育収容所』を支持するかのように写真を撮影し、報道を行った。『強制収容を支持していると書かれたなら、訪問の意味がないだろう』と1人の外交官はロイター通信に述べた。ロイター通信によれば、王毅・国務委員兼外相が18日、ブリュッセルを訪問し、EU加盟国の外相らと会談した際、外相らは王外相に対して、新疆再教育施設への憂慮を示した」

     

    本来は、国連調査団が動くべき問題である。ウイグル族の若者から臓器摘出が行なわれ売買される残酷な報道が出ている。中国の狙いには、こういう不法臓器ビジネスに利用するという許されない行為が含まれている。

     

    中国西部・新疆ウイグル自治区出身の元外科医はこのほど、新疆にある「再教育キャンプ」

    に収容されている人々が中国沿岸部の刑務所に移送されていると述べた。刑務所の近隣に

    は、臓器移植センターがあるという。『大紀元』(3月20日付け)が伝えた。

     

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    文在寅大統領は、日本・米国・北朝鮮から同時に「三下り半」を突付けられた恰好である。理由は、もはや説明するまでもない。不誠実な外交姿勢が相手国を怒らせたのだ。

     

    日本は慰安婦問題と徴用工問題である。日韓政府間で結んだ条約や協定を骨抜きにしても平然としている。外交特使を送って丁寧に説明することもなく、高飛車に出ているのだ。「日本政府は誠実になれ」と説教を垂れるほど傲慢である。

     

    米国は、対北朝鮮政策をめぐり米国と協調せず、南北融和で突出行動に出ている。これが、北朝鮮に誤解を与えた。北朝鮮に「粘ればなんとかなる」そういう淡い期待を持たせたのだ。

     

    北朝鮮は、韓国が米朝首脳会談前に米国の厳しい姿勢を伝えてくれなかったこと。北が、米国の真意の一端でも知っていれば、あのように無様な会談決裂に至らなかったと、悔いているのかもしれない。北に責任の過半はあるが、文氏の「仲人口」に乗ったことは事実だろう。

     



    こうして、文在寅氏に対し日米朝は、「三者三葉」の怒り方をしている。文氏にとっては深刻に受け止めるべきであろう。

     

    日本では、韓国に対する報復措置が公然と語られるようになっている。文政権が、ここまで日本を侮辱した以上、日本が何らかの対応を取ることは不可避であろう。その時、「こんな積もりでなかった」などと泣きごとを言わぬこと。日本が、措置を取る前に善処すべきなのだ。

     

    韓国と、米朝の問題については、つぎの社説を取り上げた。

     

    『朝鮮日報』(3月23日付け)は、「韓国船を疑う米国、文在寅政権を見限る北朝鮮」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「北朝鮮は22日、開城の南北共同連絡事務所から一方的に撤収した。北朝鮮側は、特に説明もなく『上部の指示によるもの』としか言わなかったという、金正恩(キム・ジョンウン)委員長の決定というわけだ。北朝鮮の一方的な連絡事務所撤収は、ハノイ会談決裂直後から韓国大統領府が『『仲裁者』『促進者』としての韓国の役割が大きくなった』と言っていたのがどれほど現実から遊離した認識であったか-を示している。青瓦台は、北朝鮮制裁をさらに引き締めようとする米国の方針にもかかわらず、『開城工業団地、金剛山観光再開案を整備したい』と北朝鮮へ露骨にラブコールを送ったが、北朝鮮は公に『文大統領は仲裁者ではない』とした。このとき既に、利用価値は消えたと宣言したも同然だった」

     

    今回、韓国が米朝から突付けられた不信感は、文氏の「コミュニケーション能力不足」と思い込みがもたらした大失敗である。文氏は、政治家としての素質を著しく欠いていることを証明した。周辺から外交専門家を排除して、素人を集めた結果がこの失敗である。外交だけでない。経済問題でも最賃引き上げで大変な失敗を犯している。韓国マスコミは、この文氏を「理論派」と呼ぶがとんでもない。思い込みという感情過多症に過ぎない。

     


    (2)
    「今や米国をはじめとする国際社会は、北朝鮮が核放棄を決心するよう追い立てていく方法は制裁圧迫だけ、というコンセンサスで一つになっている。米国は北朝鮮の海上違法積み替えを取り締まるため、沿岸警備隊(USCG)所属のカッターまで韓国に送る予定だ。だが文政権は、北朝鮮の核廃棄などどうでもいいかのように『金正恩ショー』を続け、政権を延長する考えしかないようだ。だから『先に制裁を緩和してやれば、北が核を放棄するだろう』という荒唐無稽な発想に固執している」

     

    国家を私物化する「金ファミリー」に対して、甘い期待を寄せていたら大変な裏切りに合う。それを改めて実証したのが、今回の文氏による一連の不手際である。文氏と彼を取り巻く「86世代」は、北朝鮮の「チュチェ思想」の信奉者である。韓国の現政権にとっては、北と交流できるきっかけは千載一遇の機会であろう。それゆえ、喜びの余り盲目状態に陥っている。国家を売り渡すような話である。

     

    (3)「制裁がなくなったら、どうして北が核を放棄するのか。こうした事情をよく理解している北朝鮮は22日、開城から撤収しつつも『南側は残っていてもいい』と言った。米国にもう一度すがってみろ、というわけだ。文大統領が『金正恩の非核化の意思』なる実体なきバブルを作り、育てていたときから、下手をすると最大の被害者は韓国になりかねないという懸念はあった。その懸念が最悪の形で現実になっている」

     

    南北問題は、米韓が密接な関係を維持できてこそ、スムースに進むものである。米国に安全保障を依存している事実を忘れ、同盟関係にヒビを入らせるような状態にして、南北交流はあり得ない話である。文氏が、理性派であれば同盟関係を忘れて、南北問題にのめり込むことはないだろう。ただの感情過多症であろう。

     

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    トランプ氏は過激な発言で売っている大統領だ。就任当時は、保護貿易論者であると世界的な批判を浴びた。これに対して、中国の国家主席習近平氏は、市場を開放すると宣言して、にわかに「自由貿易論者」と評価された時期がある。

     

    不思議なもので、このトランプvs習の評価は一人歩きしてメディアでもそういう記事が散見された。だが本来、資本主義経済のメッカの米国が保護主義で、計画経済の中国が自由貿易擁護などあり得ないこと。世の中というものは、こういう間違いがあたかも真実のように思い込まれるところが怖い点だ。

     

    もう一つ誤解を上げれば、2020年代後半に中国のGDPが米国を抜くとの説が有力だった。私は絶対、あり得ない「謬見」だと言い続けてきた。なにせIMF(国際通貨基金)までが、そういうデマを流していたのだ。その根拠は、過去の成長率の趨勢線をそのまま延ばしたらそうなった、という類いの話である。

     

    私は、過去の中国の経済成長率はバブルであり、それを将来に引き延ばすのは「非合理的」と力説した。現に、日本のバブル経済華やかりしころ、日本のGDPが米国を抜くという特集を組んだ経済雑誌があった(名前は秘す)。こういう間違いを例に引き出して、「中国経済世界一論」を否定する記事を、せっせと書いてきたのだ。こういう「謬見」を最も信じたのが習近平氏であろう。習氏は一昨年秋、とうとう世界覇権奪回論を口にしてしまい、今や決まり悪い思いをしているに違いない。

     

    トランプ氏の保護貿易論は、中国の非正規貿易慣行を糺すために、あえて関税を引き上げるという手段に利用したものだ。習氏は、そういうトランプ氏の意図を読み間違えて、大いに自由貿易論を唱えた結
    果、現在の米中通商協議は米国に押しまくられている。口は禍の元と言うが、文字通り、禍となった。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月18日付け)は、「トランプ氏が切り開いた大きな貿易機会」と題する寄稿を掲載した。筆者は、筆者のロバート・ポーター氏は2017年から2018年にトランプ政権で政策調整担当の大統領補佐官・ホワイトハウス秘書官として貿易政策の運営を補佐した。

     

    (1)「トランプ氏は、その保護主義的姿勢と関税依存に見える政策にもかかわらず、国際貿易の重要性を繰り返し強調してきた。彼は、2017年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の場で「公正さと互恵に基づく力強い通商関係」を提唱した。彼は昨年スイスのダボスで、世界のリーダーらに対し「繁栄を広く共有し、ルールに従って行動する国々に報いるための国際貿易システムの改革」を支援するよう求めた。

     

    トランプ氏の発言は、直截的な言い方で誤解を受ける。世界中が「保護貿易論者」と見たのは彼の説明不足であった。米国が現在、中国に求めている市場開放と構造改革要求は、自由貿易論そのもの。習氏は賛成論を打っていた手前、反対はできないはずだ。

     

    (2)「トランプ氏は、改革のお膳立てをすることで、さまざまな貿易面の悪習との対決に狙いを絞ってきた。その対象は、政府補助金、知的財産の窃盗行為、差別的貿易障壁、為替操作、略奪的産業政策などだ。彼の主目的は、米国の生産者と労働者を守ることだ。市場原理や相対的な有利さからではなく、不公正な貿易慣行から守る。彼の型破りな行動に賛同しない人々でさえ、ルール違反に対する制裁や、不正を行う者と対決することの必要性を認めている

     

    トランプ支持率が底堅いのは、七不思議とされている。あれだけスキャンダラスな話題をまき散らしながら、支持者は微動もしないのだ。支持率は不変である。それは、対中国の経済政策への支持とされている。

     

    (3)「米国の関税は主として、中国の違法な経済的侵略行為に対応したものだった。交渉担当者の優先事項が、差別的な産業政策を抑制させ、知的財産を保護し、市場アクセスの条件として技術移転を強要するのを禁じることなのは正しい。中国は海外のライバル企業を不利に扱ったり、米国の技術を盗んだりして、野望を追求することを許されるべきでない。国際的経済システムに参加するなら、そのルールに従うことが条件だ」

     

    (4)「最大の課題は、中国に経済を開放させ、もっと責任ある行動を取らせるために約束を守らせる点にある。中国の当局者には空手形を出し続けてきた長い歴史がある。米国が関税措置を復活させると脅すことは、責任を負わせるために不可欠だ。だが、米国の経済的圧力だけで、持続的な構造改革と自由市場がもたらされる公算は小さい。中国の間違った行動が続いた場合には、地球規模で責任を負わせるようにしなければならない」

     

    米国は、善玉vs悪玉の議論を好む。中国は、経済政策面で悪玉に分類されている。中国向けの関税引き上げに苦情が少ない背景は、「悪玉征伐」という面がある。

     

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    住宅部門が、長期にわたって経済のリーディング・インダストリーとは驚く。これまでの住宅事情がいかに劣悪であったかを証明する。ならば、持家政策よりも賃貸住宅を大量に建設すべきであるが、そういう政策は後回しにされてきた。あくまでも、持家政策中心でバブル状態に押上げ、GDP上昇に寄与させる資本主義経済顔負けの政策を行なってきた。

     

    しかも、不動産税(固定資産税)は存在しない社会だ。当局は、今年の全人代でも「不動産税を検討中」と申し訳なさそうに言うだけ。いつ、実現するかにも言及しない無責任体制だ。持家政策を中心にするならば、固定資産税をしっかりと払わせるのが筋のはず。そういう「書生論」は通じない社会である。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月15日付け)は、「中国住宅市場に深まる亀裂」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の過去2年の経済成長をけん引してきた長い住宅ブームにガタが来はじめている。それは、今年約10%上昇しているバブル状態の銅相場が短期的に経験するトラブルを意味するかもしれないし、年内の金融政策緩和につながる可能性もある。15日に発表される不動産指標では、住宅価格がなお上昇していることが確認されそうだ。だが、見通しは悪化しており、土地価格は既にかなり軟調だ。12月の住宅関連データはほぼ全ての項目がトラブルを示唆したが、不動産投資の伸びは加速した。ガラス、電力、非鉄金属、セメント生産量の伸びは急減速した。住宅や土地の売却は前年から減少。後者は34%減となった。

     

    このパラグラフでは、住宅需要がすべて「実需」によって裏付けられているという前提である。現実は、「仮需」(投機の転売狙い)が全土に5000万戸はあると言われている。中国の個人資産の8割が不動産と言われる中で、仮需が相当の比率を占めているのは当然だ。この仮需のオーナーが共産党員と言われる。全人代の審議に付されるはずがない。共産党員が、自分の利殖手段の住宅に固定資産税を掛ける。そういう法案に賛成するとは思えないのだ。

     


    住宅の仮需で利益を狙えるとしても、実需では高額の住宅ローンを組んでいるから返済が大変である。住宅がGDPを押し上げれば押し上げるほど住宅は高値となって、実需者の家計を圧迫する。それが、消費支出を圧迫する。トータルで見れば、中国の住宅依存は、中国経済をますます「袋小路」へ入り込ませる手引きになっている。この矛楯に、「仮需」の投機層は気付かずにいるのだろう。繰り返せば、住宅依存経済はタコが自分の足を食っている行為と同じである。

     

    (2)「最も重要なのは、公式統計によれば住宅在庫が2年ぶりに増加していることだ。2016年以降の新規建設着工に大きく貢献してきた在庫減少が恐らく終わりにあることを示している。投資増加率(11.6%)と販売増加率(3.2%)の差は、1カ月を除いて2015年初期以降のどの月よりも大きかった。力強い投資と軟調な販売の組み合わせは在庫の再増加を示唆しており、持続不可能とみられる」

     

    投資増加率(11.6%)と販売増加率(3.2%)の差は、在庫増である。中国経済は現在、在庫循環と設備投資循環の二つの循環が同時にボトム状態にある以上、住宅の在庫増は顕著なものになろう。

     


    (3)「14年の大幅な過剰在庫は翌年の住宅市場低迷の前触れとなったが、現在の在庫水準は依然として当時より低い。これは、見込まれる低迷も比較的浅くなることを示している。ただしそれは、政策担当者が次の建築ラッシュを生む刺激策の水門を開き、痛みを先送りしようとしなければの話だ」

     

    14年の住宅の大幅な過剰在庫は、在庫循環のボトムに起った現象である。この上に、今回は設備投資循環のボトムが加わる。住宅在庫増は予想外のスピードで増えるであろう。その時、気付いても「後の祭り」になる。

     

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