勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年03月

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    習近平氏は目下、ヨーロッパを訪問中である。イタリアと一帯一路で覚書を交わす予定だ。例によって「大風呂敷」を広げて、イタリア側を感激させる手法が想像される。だが、その何分の一が実現できるか。フィリピンでも同じ手を使い、すっかり信用を落として「反中国ムード」を生む結果になった。

     

    中国は、対外投資の元金である経常黒字が、今年から恒常的に赤字予想である。人民元売りと外貨準備高の取り崩しが予想される中で、他国へ出かけて投資する余裕は急速に失われるはず。AIIB(アジアインフラ投資銀行)の例を考えても分るはずだ。開業前は、日本主導のADB(アジア開発銀行)を上回るような話をしていた。蓋を開けて見たら、AIIBの独自融資はわずか。ADBの相乗り融資だ。

     

    中国は、イタリアを一帯一路へ引入れるが、EU(欧州連合)からは警戒の目で見られる逆効果を招いている。習近平氏のやることは、すべて短慮で反発を招くことばかりである。側近の民族主義者に煽られている結果だ。最大の失態は、米中貿易戦争を受けて立ったことである。体力もない中国が、粋がって「受けて立つ。相手から殴られたら殴り返す」と意気揚々だった。それが、間違いの元であることがすぐに判明する。米国から厳しい条件を付けられ、ご存じの通りの結果を招いている。

     


    『ロイター』(3月23日付け)は、「EU首脳、『中国への生ぬるい対応は禁物』、具体策は見送り」と題する記事を掲載した。

     

    欧州連合(EU)首脳らは22日、市場が十分に開放されていない中国はEUの競争相手と見なされ、生ぬるい対応は禁物との見解を示し、警戒感をあらわにした。ただ具体策の取りまとめには至らなかった。

     

    (1)「中国を巡っては不当な補助金や国有企業の優遇など、国の経済への関与が問題となっている。EU首脳らは来月4月9日に開かれるEU・中国サミットの席でこうした問題に触れる意向だ。マクロン仏大統領は記者会見で、『欧州が中国に脳天気でいられる時は終わった。EUと中国の関係は貿易ではなく、まず戦略的、地政学的な要因に基づかねばならない』と指摘した。メルケル独首相もユンケル欧州委員長などと同様、中国はパートナーであり競争相手でもあると強調した」

     

    マクロン氏は、中国に対して厳しい言葉を使って警戒姿勢を強めた。「欧州が中国に脳天気でいられる時は終わった。EUと中国の関係は貿易ではなく、まず戦略的、地政学的な要因に基づかねばならない」。EUは、貿易という問題を超え、地政学的という安全保障を持出して、中国を警戒する姿勢を見せていることだ。中国は、地政学的目的を貿易問題で隠しているが、EUは「衣の下から鎧がちらつく」姿に気付いている。

     

    往年の覇者であるヨーロッパが、中国に対し「この成り上がり者めが」と警戒するのは当然であろう。中国がいくら4000年の歴史を鼻に掛けても、ヨーロッパは近代文明の担い手である。そのプライドに掛けても、中国の好き勝手にはさせない。その気迫が、「能天気」という発言に現れているのだろう。

     


    マクロン氏は26日にパリで、メルケル独首相、ユンケル氏と3人で欧州歴訪中の中国の習近平氏と会談する。欧州のトップ3人がそろって臨むのは異例とされる。「欧州がいかにうまくやっているかを示す」ねらいがあるという。4月上旬には中国とEUの首脳会談が予定されており、両国・地域関係の転機にしたい考えだ。

     

    日本にとっては、中国けん制上でも大変に良いことである。すでに、世界が中国を見る目が変ったのだ。中国の経済成長力がピークを過ぎたという共通認識である。米国トランプ氏の対中強硬策は、EUで歓迎されている節が見られる。米国による中国への「鉄拳」が、中国を反省させると見ている。EUも米国と歩調を合わせ、中国の身勝手さを是正させる意向なのだ。

     

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    大言壮語は慎むべし、という見本が中国である。昨年3月の全人代(国会)では、米国を追い落とすと胸を張っていた。その足下が、早くも崩れる気配である。今年の経常収支が、1993年以来の赤字予想になるからだ。この問題は、本欄では繰り返し取り上げてきたが、いよいよ、現実問題として登場する。

     

    米国は万年、経常赤字国である。だが、ドルは世界の基軸通貨であるから、すぐに大きな問題にならない。だが、中国は今年から経常赤字を消す努力を迫られる。人民元相場安にはね返ってくる。外貨準備高の減少問題を引き起こす。「一帯一路」プロジェクトの推進力も低下するに違いない。中国を取り巻く景色は変るであろう。

     

    中国経済を見て気付くのは、「一寸先は闇」という実感がきわめて強い点だ。住宅価格が暴落すれば、それで中国の政治も経済も大混乱に陥る。今年の経常赤字は、世界の中国を見る目を一変させ、中国国内の不安心理を増幅させるきっかけになりかねない。とりわけ、経常赤字対策で、海外旅行に制限が加える事態になれば、国内で先行き不安を煽るにちがいない。それが、住宅の投げ売りに発展すれば、住宅価格は暴落に転じる。

     

    中国の場合、大幅な貿易黒字が経常黒字を維持する構造になってきた。その貿易黒字が昨年は、ピークの2015年に比べ41%も減少した。大変な減り方である。最近の推移を見ておきたい。

     

    中国の貿易黒字の推移

    2015年 5939億ドル

      16年 5097億ドル

      17年 4195億ドル

      18年 3518億ドル

     

    上記の貿易黒字の減り方を見ると、構造的な印象を否定できないであろう。生産コスト上昇が、競争力を奪っていることが容易に想像できる。最低賃金の大幅引上げが、生産性上昇を上回った。それが大きな影響を与えたことは否めない。

     


    英誌『エコノミスト』(3月16日号)は、「
    中国の経常黒字消失、変化へ好機」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「つい2007年までは、中国の経常黒字は国内総生産(GDP)比10%で、一般的に経済学者が健全とする水準を大きく上回っていた。それは過去の話だ。中国の昨年の経常黒字はGDP比0.%。米金融大手モルガン・スタンレーのアナリストの予想によると、中国は今年、1993年以降で初めて経常赤字に転落し、それが今後何年も続くという。国際通貨基金(IMF)などは、わずかながら黒字を維持すると予測している。いずれにしても10年前よりグローバル経済のバランスが改善してきたことを示す。このことは、中国が自国の金融システムを近代化するきっかけにもなるかもしれない」

     

    中国経済の構造が「国進民退」である以上、自由な民間の発想が押し潰される環境になっている。これを改めるには、鄧小平以来の「民進国退」に戻さなければならない。だが、習近平氏が壁になっており、その実現を阻んでいる。中国が、習氏という障害を取り除くには、政治的な「動乱」を伴う難事であろう。結局、このままズルズルと時間を浪費するにちがいない。

     


    (2)「新興国では、巨額の経常赤字は金融不安化の前兆となる場合がある。分不相応に支出を拡大し、その資金を調達するために移り気な外国人投資家に頼るケースだ。だが、中国はそうした危機には陥っていない。今後、赤字になっても、GDPのほんの一部にとどまると予想される。しかも、政府は3兆ドルに上る外貨準備高という潤沢なバッファーも抱えている。これで時間は稼げるはずだ」

     

    昨年の経常黒字幅が、300億ドル程度とすれば、今年の経常赤字は500億ドル程度になるのでないか。貿易黒字が年々、900億ドル程度減っている点が一つのメルクマールになる。昨年の貿易黒字は700億ドル減に止まったが、米中貿易戦争で繰り上げ輸出効果が効いたはずである。今年は、輸出減・輸入増が見込まれる。経常黒字がわずかの幅で止まる公算は小さいと見る。

     

    (3)「重要なのは、中国がその時間をどう使うかだ。定義上、経常収支が赤字の国は、外国からの収入でそれを穴埋めする必要がある。海外から資本を自由に受け入れられ、為替が変動相場制の場合、中央銀行が特に介入しなくても収入と支出は均衡する。だが中国は、資本の流れも為替相場も政府が厳しく管理している。中国が経常赤字に転落する可能性に直面している以上、海外からの収入を増やすには管理の手を緩めるほかない

     

    下線を引いた対策は、資本規制を外し、為替相場を自由変動制にシフトする意味であろう。だが、市場機構に臆病な習近平氏には、きわめて難しい課題である。結局、抜本改革ができず、時間の空費になると見るべきだ。その間、中国国内では左右対立が激化するだろう。

     

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    文大統領は、ひたすら北朝鮮のご機嫌伺いをしている。北は、それに乗じて文氏を翻弄する動きに出ている。22日には、北朝鮮開城の南北共同連絡事務所から引揚げる始末だ。北は韓国に圧力をかけて、米朝の膠着関係を打開すべく動き出したと読める。文氏の役割は、「北の代理人」という趣である。

     

    米国は、北朝鮮に対して「全面的な核放棄」を迫っており、それまでは一切、経済封鎖の解除に応じないという強い態度である。北は、これに対抗してミサイル発射基地で陽動作戦を行なったが、米軍はすぐに北朝鮮へ偵察機を出動させ、「動くな」という軍事シグナルを送った。さらに、米国本土の沿岸警備隊を朝鮮半島に派遣して「瀬取り」を封じる動きを見せている。

     

    米財務省は21日(現地時間)、北朝鮮との違法な洋上取引(瀬取り)に関わった疑いがある船舶リストを発表、その中に「LUNIS」という名前の韓国船籍の船が含まれていることが判明した。韓国外交部は22日、「韓米が注視してきた船であり、国連安全保障理事会の(北朝鮮制裁)決議に違反したかどうかを徹底して調査する」と述べた。このように、「瀬取り」に加わった船舶名まで公開されるに及び、北はもはや抵抗の術を失った形である。手持ちのドルは、20~30億ドルという推測もあり、年内に底を突きそうだ。

     

    こう見てくると、文在寅大統領の北朝鮮融和策よりも、米国の強硬策の方が北朝鮮に核放棄を決断させる上で、効果的という見方が有力である。米議会では、「文批判」が圧倒的である。

     


    『聯合ニュース』(3月22日付け)は、「北朝鮮に焦り? 韓国を『当事者』と呼び対米交渉の仲介促す」と題する記事を掲載した。

     

    北朝鮮メディアは22日、南北関係の改善に向けた措置の履行など、韓国に対し積極的な役割を求めた。ところが、北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官は15日、「米朝交渉中断を検討」と発言。また、「南朝鮮は米国の同盟であるため『プレイヤー』であって、『仲裁者』ではない」とも述べて、韓国との間に距離を置く姿勢を示していた。

     

    この間、わずか1週間で北朝鮮は再び、韓国へ米朝関係の間に立つように要望するなど、めざましい動きをしている。この背後には、米国の不退転の強硬姿勢によって、交渉のテーブルに復帰する姿勢とも読める。

     


    (1)「
    北朝鮮の対外宣伝インターネットメディア『メアリ』は、韓国外交部が今年の業務計画で米朝交渉を仲介、促進する役割を担うと表明したことに触れ、『現実的に今の南朝鮮(韓国)当局は言葉では北南(南北)宣言などの履行を騒ぎ立てながらも、実際には米国の顔色をうかがうばかりで、北南関係の根本的な改善に向けた実践的な措置を何ら取れずにいる』と批判。その上で『米国に対し要求することは要求し言うべきことは言う、当事者の役割を果たさなければならない』と求めた」

     

    (2)「対韓国宣伝用ウェブサイト『わが民族同士』は個人名の論評で、米朝関係の仲立ちをして北朝鮮制裁の枠組み内で南北交流協力を推進するという韓国統一部の今年の業務計画を、『優柔不断な態度』『北南宣言履行へのわずかの真剣さも意志も見られない』と批判した。別の宣伝用メディア『朝鮮の今日』は、自分たちの関心や利益に従わせようとする外部勢力の干渉と介入を許せば、南北関係は再び不信と対決の悪循環を繰り返すことにしかならないと指摘した。それでも、これらメディアは米国に対する直接の非難は控えた。米朝対話の再開に向け韓国の積極的な役割を促したといえる」

     

    北朝鮮の対外宣伝インターネットメディア『メアリ』、『わが民族同士』、『朝鮮の今日』の三つが、揃って同じような主旨で韓国へ事実上の「SOS」を打ってきたことは、注目すべき動きだ。もちろん、韓国の北寄り仲介は不可能で、米国の強い方針が前面に出るであろう。

     

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    「策略の国」中国は、対米交渉でもその片鱗を見せている。米朝交渉では、トランプ氏が席を立って会談決裂に終わったので、米中会談でその再現を最も恐れている。そういう事態になったら、習氏に失脚の恐れがあるというのだ。いろいろの思惑を秘めて、米中通商協議は最終決着点を求めて動いている。中国が、不利な立場にあることは変らない。

     

    『大紀元』(3月22日付け)は、「米中首脳会談の延期、専門家、両国の政治体制の全面対決」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国共産党政権に近い香港メディア『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』は316日、米中首脳会談は6月に行われる可能性があると報じた。同紙によれば米中双方は、3月末までの通商協議は困難とみているという。また、『ブルームバーグ』は14日、米関係者3人の話として、中国側は貿易戦を形式的にも終結するため、習主席の訪米は『簡素なもの』ではなく、国賓として迎える公式訪問を米国側に求めていると伝えた。同メディアはまた、首脳会談は4月下旬に行われる見込みだと伝えた」

     

    香港メディア『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』によれば、米中首脳会談は6月説を流している。また、『ブルームバーグ』は習氏の訪米が4月下旬とし、「国賓待遇」を求めているという。このように、米中それぞれの取材源での考えを伝えて興味ぶかい。両報道をまとめると、国賓待遇がなければ6月、国賓待遇ならば4月下旬に米中首脳会談が開かれると言うことか。国賓待遇ならば、最終決着が付かなくても、トランプ氏の「ちゃぶ台返し」はないだろうという、憶測である。

     


    (2)「大紀元の取材に答えた米サウスカロライナ大学の謝田教授によると、米中首脳会談の延期については、「時間稼ぎという中国側の策略」とみている。「中国当局が国賓としての公式訪問を要求しているのは、米朝首脳会談のように、トランプ大統領が再び『立ち去る』のを恐れているためだ。トランプ大統領にとって、合意に至るか否かはメンツに関わる問題ではない。しかし中国の首脳は違う。メンツに関わる問題であるうえ、場合によっては失脚につながる」 中国の習近平国家主席が、訪米することで、「貿易合意が国事訪問の一環であることを示すことができる。また、合意に至らない場合でも、メンツを保てる」と謝田教授は述べた」

     

    米中首脳会談の延期については、第三の見方がある。「時間稼ぎという中国側の策略」とみているという。その具体的なものは、次のパラグラフに出てくる。

     

    (3)米『ボイス・オブ・アメリカ』19日付によると、専門家の間では、中国当局が時間を稼ぎながら、米国内の情勢が変化することを望んでいるとの見方が多い。中国側は、いわゆるロシアゲートや最近のボーイング問題などで、米国内のトランプ政権への反発や圧力が強まることを期待している。これにより、米中通商協議でトランプ政権は強気に出ることができなくなるという。しかし、謝田教授は『トランプ政権は中国の策略に気づいている。つまり、中国側に時間を与えれば与えるほど、通商協議が棚上げされる可能性もある』と話した」

     

    中国が、時間稼ぎをしているのは、いわゆるロシアゲートや最近のボーイング問題などで、米国内のトランプ政権への反発や圧力が強まることを期待しているというもの。これによって、トランプ氏の強硬姿勢が和らぐという期待だ。これを意識した発言が、トランプ氏から出てきた。ロシアゲート報告は公開する。通商協議の妥結が遅れれば、その間の関税収入がある、としている。米国は、「損をしていない」という立場だ。

     


    (4)「米中通商協議の進展が遅くなった背景は、米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ20日付によれば次のようなものだ。米国は、将来中国側が貿易合意を履行しない場合、米国は対中関税制裁を実施するが、それに対して中国が報復措置をとらないよう要求した。しかし、中国はこの提案を拒否した。さらに、米中双方は、現在実施されている追加関税をどう撤廃していくのかについても、意見が対立している。米国側は、中国当局が貿易合意を一定の程度まで履行したら撤廃するとの認識を示した。これに対して、中国側は、合意後直ちに追加関税を撤廃することを希望している」

     

    米中協議の遅れている最大の理由は、次の点をめぐる交渉と見られる。将来、中国側が貿易合意を履行しない場合、米国は対中関税制裁を実施する。中国はその場合、報復関税を行わないという約束をせよ、と米国が迫っているのだ。米国はまた、中国が完全履行するまで、制裁関税を撤廃しないと主張している。これをめぐっての結論が出ず、調整の時間がかかっているようだ。

     

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    米トランプ大統領は、対中通商協議で余裕の姿勢である。中国との貿易協議が「順調に進んでいる」とした一方、米国は関税で多額の収入を得ていると説明。「一定期間は(対中関税が)残る」と述べた。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3月21日付け)が伝えた。

     

    米国は、対中輸入品に高関税を掛けている。一般的に、関税は貿易障害になるので否定されるべきもの。だが、トランプ氏は関税を手段に、相手国へ自由貿易を迫る手段に使った政治家として、「第1号」とする評価もあるのだ。トランプ氏をめぐる貿易政策の評価は、相手が名うての「ルール無視」中国だけに、秘かに拍手喝采する向きも多い。中国は、トランプ氏によって、すっかり「ヒール役」を演じる羽目になった。

     

    『ロイター』(3月20日付け)は、「トランプ米大統領、対中関税かなりの期間維持する可能性示唆」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領は20日、米中通商協議での合意事項を中国が確実に履行するよう、中国製品に対する関税を「かなりの期間」維持する可能性があると明らかにした。関係筋によると中国側は合意の一環として関税の撤廃を求めており、来週再開される通商協議を複雑にする可能性がある。

     

    (1)「トランプ大統領はホワイトハウスで記者団に対し、中国との通商交渉は順調に進んでいるとし、ライトハイザー通商代表部(USTR)代表とムニューシン財務長官が今週末に中国に向かうと語った。また、訪中は「協議を前進させるためだ」と述べた。しかし、中国製品に対する関税の廃止について質問されると、「廃止は議論していない。かなりの期間にわたり維持することを話し合っている。(協議で)合意するのであれば、中国に確実に履行させる必要がある」と答えた。関税について具体的な方針は明らかにしなかった」

     


    米国は、中国の対米輸出の半分にあたる2500億ドル(約28兆円)相当に関税を導入した。中国政府も報復として米製品1100億ドル分に関税を課している。この報復関税合戦から言えば、米国が差し引き1400億ドル分の関税収入で「得」をしている計算だ。これから言えば、米国が焦って関税を引下げる理由に乏しくなる。ただ、マクロ経済的には関税がゼロであるべきことは言うまでもない。

     

    米国が、関税引き下げに言質を与えないのは、二つの要因が考えられる。

     

    第一は、国内要因である。FRB(連邦準備制度理事会)が年内、利上げしないとの姿勢を見せ、株価が堅調であることだ。中国との通商交渉を焦って、「九仞(きゅうじん)の功を一簣(き)にかく」ことのないよう、最後の仕上げに時間をかけている。ゆとりの戦略だ。

     

    第二は、中国を徹底的に叩く戦略をより強化している。米国の知的財産権窃取で、中国は莫大な利益を上げている。その利益を、今回の関税で取り戻すという狙いも見え隠れしている。その損害額は、次のような報告書にまとめられている。


     

    『ブルームバーグ』(3月21日付け)は、「ファーウェイ賞与に米異議、企業スパイに支払い、対中協議の焦点」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「米知的財産窃盗に関する委員会(IP委員会)が、2017年にまとめた報告書によれば、米経済は毎年、偽造品や海賊版ソフトウエア、企業秘密窃盗で少なくとも2250億ドル(約24兆9000億円)の損失を被っている。同委員会は中国を「世界の中心的IP侵害者」だと断じ、「外国の技術と情報を最大限に入手する戦略などを含む産業政策に深くコミットしている」と論評した」

     

    (3)「アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のエコノミスト、デレク・シザーズ氏は、こうした盗みに関与する国はあるが、ほとんどの場合、自国の経済が成熟するにつれそうした行為は減ると指摘。しかし中国のパターンはこれと異なり、「進歩するにつれ、IPの窃盗を通じ一段と多くを得ることができるようになっている」と語った」

     

    この記事で読み取れるように、米国はこの際、中国の「泥棒根性」をたたき直すチャンスと捉えている。中国は、「年貢の納め時」と観念すべきなのだ。

     

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