勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年04月

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    米国トランプ大統領が、FRB(連邦準備制度理事会)へ利下げと量的緩和を要求し始めた。制度的には、FRBが政治からの独立性を保証されているので困った事態になった。FRBが、トランプ氏の要求を受け入れた形で、利下げや量的緩和はできるはずがないからだ。

     

    ただ、トランプ氏の経済的な勘が優れていることも事実である。昨年後半から特に、トランプ氏は利上げに反対する声を強めてきた。結果的には、「逆イールドカーブ」をもたらして、不況入りのサインを示すことになった。現行の政策金利2.5%は、実質GDP成長率予想(1~3月期)2%弱から見ると、割高という印象も拭えない。

     


    『ロイター』(4月6日付け)は、「トランプ米大統領『FRBは利下げすべき』、量的緩和再開も要求」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「トランプ米大統領は5日、連邦準備理事会(FRB)は利下げすべきと強調するとともに、経済の下支えに向け非伝統的政策である「量的緩和」の再開が必要との認識を示した。トランプ氏は記者団に対し、朝方発表された3月の雇用統計で経済は良好に推移していることが示されたものの、FRBによる措置で景気は減速したと指摘。『FRBは本当に景気の足を引っ張った。インフレはまったくない』とし『FRBは利下げすべきだと考える』と語った」

     

    FRBが、段階的に利上げに踏み切ってきた裏には、引き下げるべき時に引下げられるような余地をつくる、という大義名分もあった。この主旨からいえば、利下げに転じても大義は成り立つ。ただ、トランプ氏が利下げを要求したから利下げしたとなると、FRBの独立性が侵害される別問題が起ってくる。FRBの信頼性が揺らぐことは、長い目で見て避けなければならない。となれば、トランプ氏は発言を公にせず、「裏でする」という政治性が必要であろう。

     


    (2)「さらに、利下げに加え量的緩和の再開も要求。『金融政策は足元、量的緩和であるべきだ』と主張した。ただ、こうした金融政策の組み合わせは本来、経済が急激に落ち込んだ場合の緊急手段として用いるもので、足元の経済状況への対応にはそぐわないとの見方がある」

     

    トランプ氏は、次期大統領選が始まろうという時点で、景気が下降局面にあることは是が非でも避けたいところだ。これまでの例では、大統領選前の景気は良くて終われば悪くなるという景気の「選挙サイクル」が、鮮明に浮かび上がっている。この点から言えば、トランプ氏が、景気テコ入れで何かを始めることは十分、想像できるのだ。

     

    (3)「トランプ氏は4日、FRB理事にピザチェーン元幹部で2012年の大統領選で共和党候補者指名争いに出馬したハーマン・ケイン氏(73)を指名する意向を明らかにした。トランプ氏は2年前にパウエルFRB議長を指名したが、同議長の下での利上げを強く批判。トランプ氏が指名した他のFRB当局者もパウエル議長の利上げを支持してきた経緯がある」

     

    トランプ氏は、パウエルFRB議長を指名した責任がある。それだけに、パウエル批判は筋違いという批判を浴びかねないのだ。米中通商協議は大詰めを迎えている。米国有利の下に決着がつく可能性が強まっているだけに、決着後のムードが大きく変るはずだ。トランプ氏はここ1~2ヶ月、様子を見るべくFRB批判を封印しておくべきだろう。

     


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    世界の自動車業界は、次世代技術をめぐって模索が続いている。ガソリン内燃機関からEV(電気自動車)へとメインストリームが変わりそうな気配から、再びHV(ハイブリッド・カー)が注目されるという状態である。中国のEVメーカーが業績不振であり、ユーザーから歓迎されていないことが明らかになってきたことも背景にある。

     

    長年、自動車と言えば軽快な音を出して走るというのが常識である。EVは、音もなく走るから従来のイメージとは全く異なる。中国で、EVが補助金なしでは売れない理由が理解できるのだ。これを反映して、中国政府はEVを諦めて水素自動車へと舵を切ったようである。当欄で取り上げた通りである。

     

    『ロイター』(4月3日付け)は、「快走プリウスに『終止符』、トヨタの賢く大きな賭け」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「時価総額約22兆円のトヨタは4月3日、ハイブリッド車(HV)の関連技術特許約2万4000件を競合他社に無償提供すると発表した。各国政府はよりエコな自動車の普及を推進しており、ハイブリッド技術は陳腐化するかもしれない。それでも当面は、電気自動車(EV)への曲がりくねった道が多少なりとも進みやすくなるはずだ。内燃機関と電動モーターを組み合わせ、トヨタはより環境に優しい自動車開発の先駆けとなった。昨年は世界で販売されたハイブリッド車の半数以上をトヨタが生産した」

     

    HVは次世代カーの本命と見られたが、EVが脚光を浴びて本命から外れた気配もあった。だが、EVでは蓄電池の技術開発が期待されたほどの速度で進まず、「やっぱりHV」が繋ぎ役という評価が高まってきた。トヨタは、こういうHVへの見直し人気に乗って、主要特許の無償公開(2030年まで)という攻勢に出てきた。

     


    (2)「とりわけ成功を収めたのは欧州だ。燃費や排ガス規則が一段と厳しい欧州は、ハイブリッドのような車を好む。マッコリー証券のアナリストによると、欧州では2018年までの4年間、ハイブリッド車の販売が年37%のペースで増加した。プリウスの発売から20年以上を経て、トヨタは『他社への供給者』になろうとしている。それは保有する数多くの知的財産を2030年まで無償で提供するだけでなく、同社の専門技術を活用したい他の自動車メーカーにサービスを売ることを意味する」。

     

    HVは当初、欧州で人気が出なかった車種である。だが、ドイツVWのディーゼル車排ガス偽データが発覚して以来、急速な人気を得るようになった。欧州では2018年までの4年間、ハイブリッド車の販売が年37%のペースで増加するほどの人気カーである。HVの排ガスがきわめて低いことが、欧州人の環境意識にマッチしたのだ。

     

    ただ、HVは過渡期の技術となる可能性がある。英国やフランス、スペインは40年までにガソリン車、ディーゼル車に加えてHVも国内販売を禁止する方針だ。長期では水素自動車やEVなど、より環境負荷の低い車の開発が欠かせない。

     

    (3)「より環境に優しい自動車への移行期にある今、トヨタはハイブリッド車で培った技術の役割がますます大きくなり得ると判断して事実上の大きな賭けに出た。今回の決断は、トヨタが賭けに勝つ確率を多少高めた。競合メーカーがトヨタのアイデアを活用することで、ハイブリッド車の需要は広がるだろう。より大型化して車種も増えれば、消費者だけでなく、独占された市場への支援をためらいがちな当局に対しても訴求力が高まるだろう。自らが基準を作り、技術と車の両方を売って利益を上げることで、トヨタは大きなものを得ることができる。2030年までにハイブリッド車は世界の自動車販売の4分の1近くを占める可能性があると、野村のアナリストは試算する」

     

    HV技術が、2040年までの「賞味期間」としても、環境面では切り札の技術である。HVが、2030年までに世界の自動車販売の25%を占める可能性が取り沙汰されている。日本発技術が、世界の自動車市場を席巻するとは愉快な話だ。

     

    当面は、HVや次世代のプラグインハイブリッド車(PHV)が「現実解」になり、関心を持つメーカーは多いとトヨタはみているという。中国大手の浙江吉利控股集団とは昨年来、技術提供で協議中だ。中国では、EVの補助金が打切り方向になっているだけに、HVへ切り替えるメーカーも増えそうである。

     


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    サムスン電子の1~3月期に業績が発表になった。すでに本欄で急減速の報道を取り上げたが、実際に発表された業績は予想通りの不振ぶりであった。

     

    営業利益は前四半期(10兆8000億ウォン)より42.6%減り、1年前(15兆6400億ウォン)よりは60.4%も急減した。歴代最高記録だった昨年第3四半期(17兆5700億ウォン)に比べると3分の1水準だ。

     

    売上高に対する営業利益率は11.9%と前年同期(25.8%)の半分にも満たず、収益性も急激に悪化した。1~3月期の事業部門別の業績は追って発表されるが、半導体事業の営業利益は4兆ウォン前後にとどまったと予想されている。前期(7兆7700億ウォン)の半分程度に減ったことになる。

     

    半導体市況の急落が、サムスンの利益を直撃した。2年前まで4ドルを超えていたDRAMの平均価格は最近1.7ドル台まで暴落した。ここまで市況が下げると、サムスンといえども屋台骨を支えきれなくなってきた。問題は、今後の半導体市況の回復であるが、世界経済の回復しだいである。

     


    WTO(世界貿易機関)は4月2日公表した報告書で、世界のモノの貿易伸び率を今年2.6%と予想。昨年の3%から減速するとした。来年は3%と予測している。昨年9月時点の見通しは18年が3.9%、19年は3.7%だった。見通しの下方修正は2年連続である。このように世界経済全体の伸びが小幅に止まれば、半導体輸出もその影響を受けざるをえない。

     

    半導体業界は、需要停滞は一時期と見ている。理由は、半導体業界が在庫調整に動き出していることを重視している。だが、需要動向が決定的な価格決定の要因になるので、WTOの需要予測を足がかりに慎重に見るほかない。年内の市況回復は難しいであろう。頼りのスマホも需要一巡である。買替え需要に依存する以上、世界経済の回復が半導体市況のカギを握るであろう。

     

    ここで、サムスンの経営体質について検討を加えたい。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月5日付け)は、「変調サムスンに潜む3つの影、日本企業化の危機」と題する記事を掲載した。

     
    韓国サムスン電子の失速が鮮明だ。5日発表した2019年13月期の連結営業利益は前年同期比60%減少した。2四半期連続の大幅減益となった。もがく姿は「存在感を失ったかつての日本の電機メーカーに似てきた」との声もある。利益水準はなお高いものの、サムスン自身に潜む3つの影が、反転攻勢を阻む可能性がある。機能の偏重、コスト高、カリスマ不在――。好業績時には決して表に現れなかった、サムスンの内なる3つの影。現役の世界王者に暗雲が漂い始めている。

     

    (1)「1980年代に世界を席巻した日本の電機大手が衰退したのは、機能や品質に溺れ、消費者のニーズを置き去りにしたことも一因とされる。実はサムスンにもそんな兆候が出ている。4月、有機ELを採用した画面を折り畳みできるスマホ『ギャラクシーフォールド』を発売するが、想定価格は20万円前後。一般の消費者には高根の花と思われるが、『機能と品質が良ければ支持される』との姿勢を貫く」

     

    行き過ぎた機能重視は、「パラパゴス化」になるリスクを抱えている。アップルも、この限界に気付き、方向転換してサービス部門で稼ぐ体制へシフトする。

     

    (2)「社内をじわりとむしばみ始めた高コスト体質も新たな課題に浮上している。高止まりする社員の平均年収がその典型だ。韓国経済の低迷で安定志向が広がり、10年に7.8年だったサムスンの平均勤続年数は18年に11.5年まで伸びた。結果、09年の平均年収は約670万円と日本の大手企業並みだったが、18年は1千万円超に上昇した。トヨタ自動車を上回る高給で知られる、韓国現代自動車に並ぶ水準だ。かつて低コストを武器に日本勢を追い落としたサムスンの様変わり。現地報道によると、中国・シャオミの平均年収は約500万円。好待遇は優秀な社員を採るための世界標準との見方もあるが、コスト競争力で優位に立てる時代は終わった」

     

    製造業の高給化は、コスト増に直結する。サービス業との違いはここにある。サムスンもその危険ゾーンに入ってきた。

     


    (3)「迅速な意思決定と大胆な設備投資――。サムスンの急成長は、強烈なリーダーシップでグループを引っ張った李健熙(イ・ゴンヒ)会長の存在なくして語れない。しかも、事実上、経営を引き継いだ長男の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は贈賄罪をめぐる公判を控える。172月に逮捕(現在は保釈)された際、サムスン幹部は「会長が築き上げた体制は強固だ。3年間は心配ない」と語ったが、変調は早くも訪れた。巨額の投資を今後、回収できるのか。カリスマ不在は中・長期的な戦略に、暗い影を落とすのは確実だ」

     

    カリスマ不在。IT産業では、カリスマ不在がどれだけの企業を危機に追いやってきたか。ソニーもその例に漏れない。アップルは、業態転換の中で新たなカリスマを作ろうとしている。

     

     

     


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    中国国営の新華社通信が、アジア時間5日午前に伝えたところでは、今週ワシントンで米国側と通商協議を行ってきた劉副首相は「新たなコンセンサス」に達したと述べた。中国国内の重苦しい雰囲気を一掃するには、米中貿易交渉が早く合意に達することが何よりの条件である。中国が焦る気持ちが良く表れている。

     

    米国は、この中国の慌て振りをじっと見透かしながら、最後の詰めをしているところだ。この米中双方の舞台裏を覗いただけで「米国優勢・中国不利」はもはや動かしがたい事実となってきた。

     

    習氏は、これほどの負け戦になるとは想像もしていなかったであろう。所詮、民族主義者の交渉とはこういう粗雑なものであろう。中国は、合理的な論拠がなく米国と争うのだから、米国が理詰めに攻めてきたら防ぎきれないはずだ。ましてや、「中国は自由貿易主義者」と的外れな主張をした後だけに、米国はこの一点を攻めるだけで勝利は確実であった。習氏の頭脳はこの程度のものだったのだ。

     

    『ブルームバーグ』(4月5日付け)は、「中国、通商協議で新たなコンセンサス、米は合意はまだ先と認識」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米中両国は共に、貿易戦争の終結を目指す協議が進展したと表明した。中国の習近平国家主席が早急な交渉決着を求めた一方、トランプ米大統領は「非常に歴史的」な合意に至る可能性に言及した。中国の劉鶴副首相を通じてトランプ大統領に届けられたメッセージで、習主席は早期決着を求めたほか、米中関係を健全かつ安定したものに確実にするためには戦略的リーダーシップが必要だと訴えた。中国国営の新華社通信がアジア時間5日午前に伝えたところでは、今週ワシントンで米国側と通商協議を行ってきた劉副首相は「新たなコンセンサス」に達したと述べた」

     

    習氏は、トランプ氏に届けられたメッセージで、「早期決着を求めたほか、米中関係を健全かつ安定したものに確実にするためには戦略的リーダーシップが必要だ」と訴えたという。中国が、早期決着を求めているのは国内経済が保たないからだ。ここまで、追い込まれる前に手を打つべきであったが、「ニセGDP」で現実の姿を把握できていなかったのか。もし、これが現実とすれば、とんだお笑い種と言うほかない。

     

    (2)「一方、トランプ大統領は4日、劉副首相との会談の冒頭で記者団に対し、『極めて歴史的』なものになり得る貿易合意に向け双方は前進しているが、合意は恐らく数週間先になるだろうとの見方を示した。大統領は習主席との会談の予定は発表せず、「われわれれが合意すれば首脳会談を開くだろう」と発言。合意の枠組みをまとめるのに4週間、詳細を文書化するのにさらに2週間を要する可能性があるとした。政府当局者が匿名で明らかにしたところでは、ワシントンでの協議は5日も続くが、その後の交渉の日程は決まっていないという」

     

    トランプ氏は、「勇者の余裕」で対応している。「合意の枠組みをまとめるのに4週間、詳細を文書化するのにさらに2週間を要する可能性がある」としたのだ。ここまで中国を攻め込んできたのだから、1ヶ月や2ヶ月の時間は問題ない。徹底的に中国を叩く構造を組み立てなければならない。二度と「世界覇権論」などと口に出せないまで、保護主義構造をぶち壊す必要あがる。成り上がりもの国家が、世界秩序を変えるとはおこがましい話だ。専制主義を改め、民主主義へ改宗させる経済的な動機を組み込む必要がある。これこそ、米国の「バックドア」をはめ込むことだ。

     


    (3)「全米製造業者協会(NAM)のバイスプレジデント、リンダ・デンプシー氏は電子メールで送付した発表文で、『通商協議が簡単だとは誰も思っていなかったが、詰めの段階に入る中で、構造と履行の双方の問題で詳細な文書策定に向け引き続き前進していることは心強い』とし、『これらの問題は非常に重要だ。米国の製造業者は中国の不公平な貿易慣行によって長く打撃を受けてきた』と説明した。トランプ大統領は4日、残る問題は知的財産権保護と関税、合意の履行だと述べた」

     

    全米製造業者協会が、「米国の製造業者は中国の不公平な貿易慣行によって長く打撃を受けてきた」というのは本音であろう。それこそ、「積弊一掃」で立ち上がる必要がある。中国は、抜け道を探すことでは世界一の「悪」(わる)である。あらゆる事例を想定して、抜け道に逃げ込まないように予防策を講じるべきだ。それでも、抜け道を探してきたら即、関税引上げで対抗するという「付帯条件」を付けるべきだ。

     

     

     

     


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    米中通商協議は、大詰めを迎えている。米トランプ大統領は、米国と中国が今後4週間以内に貿易協議で合意することを目指していると述べた。ただ、米国が妥結したがっているという誤ったイメージを与えることを嫌っている。中国から最後の譲歩を引き出すべく、「峠が近いから、後一踏ん張り」という激励にも取れる発言であろう。米国が、それだけ「勝者」としてのゆとりを持っていることを言外に表してもいるようだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月5日付け)は、「米中貿易協議 4週間以内の合意目指す=トランプ氏」と題する記事を掲載した。

     

    ドナルド・トランプ米大統領は4日、米国と中国が今後4週間以内に貿易協議で合意することを目指していると述べた。一方で期待された中国の習近平国家主席との米中首脳会談の実施は発表されなかった。

     

    (1)「トランプ氏は大統領執務室で中国側の交渉を担当している劉鶴副首相と会談した際、『話は進んでいるところだ』と発言。両国が合意を結べれば『非常に大きな』ものになるとも言及した。ただし関税や知的財産権の保護など、双方の話し合いでまだ解決していない点が複数あるとも指摘。米中貿易協議でトランプ政権の責任者を務めるロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表も、『極めて大きな課題も残っている』としている」

     


    米中間で最後まで残っている課題は、関税や知的財産権の保護である。関税とは、米中が合意した後、中国が確実に履行するのを見届けるために、米国が科す関税を一部残すというもの。中国は、全廃を要求しているが、過去の例からも中国が約束を履行するか保証がない。それほど、中国という国は信頼が置けない国であるのだ。

     

    南シナ海問題でも、米国は習近平氏に騙されている。南シナ海に、軍事基地をつくらないと約束しながら真っ赤な噓だった。また、米国と貿易自由化を約束した覚書を交わしても実行しない。こういう噓で塗り固められた中国に対して、有無を言わせず実行させるには見張り役の関税を維持するほかない。中国の身から出たサビゆえ、米国へ抗弁はできないのだ。

     

    (2)「米中両国の交渉担当者は4月末までに合意にこぎ着け、トランプ氏と中国の習近平国家主席が5月の首脳会談で署名することを目指している。トランプ氏は4週間以内に首脳会談を開くかどうかわかると述べた。同氏によると開催するなら米国になるという。同氏の発言からは想定している具体的な開催場所は分からなかった。米当局者はフロリダ州にある同氏の別荘『マールアラーゴ』を強く推してきたが、最近になってニュージャージー州ベッドミンスターにある同氏のゴルフリゾート施設や、ワシントンも候補に挙がっているもようだ

     

    米国では、米中首脳会談の場所探しが始まっている。このことからも、米中協議は最終局面にあることを窺わせている。会談場所は、中国でなく米国であることが、今回の米中交渉の勝者が米国であることを示している。

     


    (3)「首脳会談への期待が高まったのは3日夜。政府当局者が『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)に対し、トランプ氏は首脳会談の日程と場所を発表する用意があると語った。ただ、この当局者はトランプ氏がまだ考えを変える可能性はあると警告した。だが首脳会談に関する発表の可能性が報じられると、ライトハイザー氏はじめ大統領側近の一部からの反発を招いたと、協議の行方を注視している業界関係者は述べた。国家経済会議(NEC)のローレンス・クドロー委員長も期限を決めることにはおおむね反対してきた。彼らの懸念は、期日を設ければトランプ氏が合意を結びたがっているとのメッセージになり、大詰めの場面で米国の交渉力を弱めてしまうことだと関係者らは話す

     

    米国は、米中通商協議の期日を設ければ、それによって中国から最後の譲歩を引き出せない。米国側は、それを危惧している。この際、徹底的に中国を叩き、貿易ルールを正常化させる。また、米国が中国に対して、知的財産権の窃取を許さない。それを痛烈に知らせる手段を構築しようとしている。米国にとっては、経済面での中国戦略を完成させる意図であろう。

     

     

     


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