勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年05月

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    米国が、ファーウェイへの技術とソフトの輸出禁止措置により、中国は完全に虚を突かれた形だ。米国の真意は、どこにあるのか探っているというが、「中国製造2025」の推進計画放棄を狙ったものだ。

     

    このくらいのことが分からないようでは、習近平氏も「戦上手」とは言えない。要するに、米国覇権へ挑戦するのであれば、正々堂々と競争しろということ。スパイや強引な技術開示などの汚い手を捨てろ、という警告であろう。米中合意を反古にせず、元へ戻せというシグなるだ。

     

    『ロイター』(5月23日付け)は、「グーグル依存の中国スマホ、無料技術に払う高い代償」と題するコラムを掲載した。

     

    (1)「対中貿易戦争をたきつけている米国政府は、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)が、アプリストアを含むグーグルの専有技術を使うことを最終的に禁じる可能性がある。グーグルの検索エンジンは中国では遮断されているものの、国内の携帯端末メーカーはグーグルの技術に頼ってきた。彼らの端末は、グーグルが開発する基本ソフト(OS)「アンドロイド」で動く。禁輸措置が発動された場合、中国の1750億ドル(20兆円)市場の大部分に甚大な被害が出る」

     

    中国国内のスマホは、グーグルの技術で動いてきた。米国が禁輸措置をとれば、中国国内20兆円市場が凍結されるに等しい。中国に、「解凍策」=米国への妥協が要求される。

     

    (2)「その責任は中国企業の幹部たちにある。中国端末の需要が増大しても、それらのアプリが国際化しなかったことだ。例えば、ファーウェイのストアは申し訳程度の英語メニューしかない。欧州スマートフォン市場の4分の1近いシェアを誇るにも関わらず、同社は海外販売モデルにはグーグルプレイをインストールすることで問題を回避してきた。この視野の狭さが、いまやファーウェイなど中国企業の戦略的障害になってしまっている」

     

    中国はアプリで、国際化を怠ってきた。中国国内だけで通用するアプリは、海外で通用しないのだ。これでは、中国スマホの輸出が不可能になる。

     


    (3)「中国国内の携帯端末販売数は2017年に減少に転じた。2018年の出荷台数は前年比15.5%減で、今年も4月まで減少し続けた。つまり、国外の需要が一段と重要になったということだ。残念ながら、300万以上のアプリがあるグーグルプレイなしには、中国製スマートフォンは魅力に乏しい。一番それに近いアマゾンのアプリストアでも50万程度しかないうえに、そもそも米企業だ。さらに悪いことに、人気のアプリの多くはグーグルのコードで動いている」。

     

    中国国内のスマホ市場は落込んでいる。海外輸出に依存しなければならぬが、国際アプリがない。これでは、ただの「電子箱」に過ぎない。

     

    (4)「米政府が何らかの譲歩と引き換えに、規制を緩和する可能性はある。結局のところ、ファーウェイやその他の中国メーカーを、ユーチューブにアクセスさせない安全保障上の理由は何もないからだ。しかし、すべての中国メーカーがこの威嚇射撃で気づいただろう。アンドロイドを捨てるにはもはや遅すぎる。デベロッパーは、ずっとアンドロイド以外のコードを学ばずに仕事をしてきた。海外市場向けにアプリを作った経験もほとんどない。無料のはずのアンドロイドが、非常に高くつく可能性がある」

     

    グーグルのアプリについて、中国と取引条件になり得るという。「ユーチューブにアクセスさせない安全保障上の理由は何もないからだ」。しかし、米国は急所を突いている。スパイ技術では世界一の中国だが、抜かりがあったというべきだ


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    韓国政府は、米国から中国のファーウェイへ製品排除に同調するように求められているので、中国の反発を恐れている。再び、THAAD(超高高度ミサイル網)をめぐる中国の制裁騒動が持ち上がることを危惧しているもの。

     

    韓国政府が恐れることはないのだ。サムスンという「5G」を手がける総合通信機企業が存在する。中国政府が、ファーウェイ製品の購入で圧力をかければ、サムスンで対抗すればすむことである。ともかく、日本から見ればおかしいほど「中国恐怖症」に陥っている。

     

    『朝鮮日報』(5月23日付け)は、「THAAD問題の再現? 反ファーウェイで米中板挟みの韓国」と題する記事を掲載した。

     

    米国政府が韓国政府に「ファーウェイ(華為技術)ボイコット」に参加するよう要求したことから、韓国が米中の「板挟み」になるのではとの懸念が広がっている。韓国政府は米国の要求に対してひとまず、「ファーウェイと韓国の民間企業の間の取引に介入するのは難しい」という原則的な見解を示したが、トランプ政権の勢いからすると、現在の姿勢を維持することができるかどうかは未知数だと見られている。

     

    (1)「米国の「インド・太平洋戦略」に協力する日本やオーストラリアなどが「反ファーウェイ戦線」に参加する中、米国が「同盟国」韓国政府を相手に「味方になれ」と圧力を加える可能性が高いということだ。このほどワシントンを訪問した外交消息筋は「ファーウェイに対する韓国政府の見解や、(ファーウェイ社の通信機器を使っている)LGについて聞く人が多かった。米国側が強固な同盟の尺度をもってこの問題を追求してくる可能性もある」と語った」

     

    米国が、反ファーウェイ対策を打ち出しているのは、2つの側面からだ。ファーウェイ製品を買わないことと、米企業がファーウェイへ製品とソフトを売らないことだ。この後者の規制で、ファーウェイ製品は出荷できない事態になるから、中国がファーウェイ製品を押しつける意味がない。韓国では、この点を誤解している。仮に、ファーウェイ製品を買えと圧力をかけてきたならば、「サムスン製品」で対抗するくらいの気迫を持たないでどうするのだ。

     


    (2)「だからといって米国の要求に応じれば、その後に予想される中国側の反発が無視できなくなる。韓国の中国向け輸出の割合は米国・欧州連合(EU)・日本を合わせた割合よりも多く、韓国経済における中国の依存度はかなりの水準に達している2017年に韓国は中国に対し1421億ドル(約156700億円)相当を輸出し、輸出全体の24.8%を占めた。外交消息筋は「終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備の報復時、中国は米国の代わりに「弱いつながり」である韓国をたたいた。今回の事案で中国の報復措置はTHAAD配備時よりもはるかに強まる可能性が高い」とした。現代経済研究院は、THAAD報復の影響で2017年の1年間に韓国が受けた直接・間接的被害を最小で85000億ウォン(約7860億円)と推算している」

     

    日本のように、日米同盟の強固さを誇っていれば、中国は付け入る隙がないから諦めている。韓国もフラフラしないで、韓米同盟を高らかに強調することである。ところが、「事大主義」で中国の意向を忖度する動きをしてきたから軽く見られている。この際、腹を決めて対応すべきである。「米韓一体感」を見せれば、政経分離がスムースにいく。

     

    豪州やニュージーランドを見るがいい。対中貿易の依存度は高いが、敢然として米国との同盟関係を重視している。韓国のように利益になると思えば中国に付くような「コウモリ的態度」が、中国から甘く見られる原因をつくっているのだ。中国という国は、相手が甘いと見ればどこまでも付け入る国である。毅然と対応すること。日本・豪州・ニュージーランドの外交姿勢を参考にすべきだ。


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    政府系や与党系のシンクタンクが、相次いで政府の経済政策の間違いを正す動きに出ている。となると、これまで2年間の経済政策は、どこが司令塔であったのかが問われる。ここで浮かび上がるのは、大統領府に陣取る「86世代」である。学生運動家上がりで、勉強よりも政治運動に熱を入れてきた面々が、聞きかじりの知識で経済政策を運営してきた驚くべき実態が浮かび上がっている。

     

    この「政策無免許運転」によって、多大の人々が職を失い路頭に迷わされてきた。この償いを文大統領はいかに行なうのか。大きな責任を負わされている。

     

    『中央日報』(5月22日付け)は、「潜在成長率下落対策を、経済政策批判に出た政府・与党系シンクタンク」と題する記事を掲載した。

     

     与党『共に民主党』と政府系シンクタンクが相次いで政府の経済政策に対する内部批判に乗り出している。所得主導成長と福祉拡大にもかかわらず、所得分配、雇用、成長率など指標が相次いで悪化しており、政策改善の必要性を公開的に提起する動きだ。

     

    (1)「政府系シンクタンクである韓国開発研究院(KDI)も政府政策に対する懸念を公開的に表明している。KDIは16日、「経済成長率が鈍化するのは規制改革技術革新などを含んだ総要素生産性が落ちているため。短期的景気浮揚を狙った財政政策は、生産性は向上させられないまま財政に負担だけ与える」と指摘した。奇しくも文在寅大統領が国家財政戦略会議で「低成長二極化など構造的問題解決に向け財政政策を積極的に使わなければならない」と強調した日だった

     

    「サムスンの設備投資資金を国民に分配したならば」、などという想像も付かない議論をしているのが、与党議員の経済知識レベルである。大統領府の知的レベルもほぼ同じと見て良い。こういう面々が、韓国の経済政策を論じていると思うと、背筋が凍るほどの衝撃である。

     

     
    このパラグラフでは、大統領府の意見とKDIの見解が取り挙げられているので説明したい。

     

    大統領府は、「低成長二極化など構造的問題解決に向け財政政策を積極的に使わなければならない」と強調した。これに対してKDIは、それは間違いだと指摘している。

     

    なぜ、これが間違えているか。その理由は、こういうことなのだ。財政支出は、景気循環上の短期的な景気浮揚策で効果を上げる。ただ、それだけだと指摘している。それが、韓国経済の生産性を引き上げる長期的な効果を持たないからだ。

     

    文政権は、失業者急増の苦し紛れに、大学の教室で電灯を消すアルバイトを増やした。その効果は、韓国の生産性を上げる視点で言えば、なんら寄与していないのだ。財政支出は、長期的な生産性上昇効果を生む分野で行なうべきだとしている。これが、正論である。日本も平成バブル崩壊後、これに類したことを行い、財政赤字を積み上げた。この日本の失敗から言っても、文政権の振る舞いは間違えている。


    (2)「KDIのイム・ウォンヒョク国際政策大学院教授は、7日に大統領直属政策企画委員会と経済人文社会研究会主催で開かれた「文在寅政権2周年政策カンファレンス」で、「文在寅政権は初期に不動産政策で問題を表わし、財政政策でも昨年だけで25兆4000億ウォンの超過税収で内需不振を引き起こした。経済では75点以上を与え難い」と批判することもした」

    ここでは、不動産投機を押さえるために行き過ぎた抑制を行い、25兆4000億ウォンの過剰税収で内需不振を引き起こしたと指摘している。不思議なのは、韓国のあちこちにあるシンクタンクの意見を聞かず、大統領府の「政策無免許集団」が勝手に政策を発動させていることだ。不況が鮮明になってきた段階で、シンクタンクが意見を具申しても遅すぎる。韓国を見ると、近代国家の政策形成過程と言えず、「独断政治」そのものである。


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    けさ、下記の目次で発行しました。よろしくお願い申し上げます。

     

    統一の夢が経済を破綻に

    文政権による二大失策は

    あと3年も続くぬかるみ

    ロジャース氏の過大評価

     

    韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の政治姿勢が、経済問題重視よりも南北統一にあることは疑いありません。そう見る理由は、国内景気がこれだけ悪化してきても、手直しする姿勢を一切見せないことです。それは、二つの要因が考えられます。

     

    1)文政権の支持基盤である労組と市民団体へ、南北統一促進を約束していること。

    2)その前提として、労組には最低賃金の大幅引上げを、市民団体には脱原発と自然エネルギー開発を、それぞれ約束し実行に移していること。

     

    要するに、文氏の頭の中では「選挙公約」を忠実に実行しているのです。外部から、とやかく批判を受けるのは、心外に違いありません。最終目的は、南北統一への足がかりを確実にすることにあるはず。そうであれば、国内景気の批判は大した意味を持たないのでしょう。

     

    統一の夢が経済を破綻に

    確かに、選挙の公約ではそうかも知れません。しかし、文氏が大統領就任の際に行なった演説によれば、「自分に投票してくれなかった人たちを含めて全国民の利益に奉仕する」と宣言しています。そうとすれば、最低賃金の大幅引上げと脱原発によって、韓国経済に重大な負の副産物を発生させている現実を無視できません。文政権が、労組と市民団体だけの「階級政党」でなく「国民政党」へ脱皮しなければ、国民全体の利益に奉仕する大統領とは言いがたいのです。

     

    韓国政府の統一研究院は、満19歳以上の成人男女1009人を対象に4月、対面面接方式で「統一意識調査2019」を行いました。その結果では、経済が優先だという回答は70.5%でした。統一優先は8.3%に過ぎず、経済優先が圧倒的に多かったのです。統一か国内経済か、という「二者択一」の設問の仕方には問題があります。だが、韓国国民の切実な問題は統一という将来の問題よりも、差し迫った生活苦や失業問題を優先的にとり上げて欲しいという願いでしょう。

     


    ここで、過去の統一問題への支持率の変化を見ておきます。

    統一研究院の世論調査によると、2014年には70%近くが統一を必要と回答したのに対し、2018年は58%に低下しています。1969年に政府が実施した別の調査では、90%が統一を支持すると答えていました。現在は、前記のように8.3%にまで低下しました。

     

    この背景にあるのは、韓国経済の低迷なのです。今年4月調査で南北統一を選択した比率が一桁に低下したのは、国民生活の疲弊が理由でしょう。もはや、北朝鮮のことまで関心が向かなくなったのは、文政権の経済政策が失敗したからに他なりません。

     

    文政権は、南北統一を最大の政治目標に掲げ、そのために最賃の大幅引上げと脱原発によって支持層への公約を果たした。それが逆に、国内経済を悪化させて南北統一への支持率を引下げたのです。ここで、一つの教訓が浮かび上がります。南北統一を促進するには、何よりも国内経済を活発にさせ、国民に豊かさを実感させることです。それが、北朝鮮への関心を高めるのです。

     

    そうなれば、同じ民族ゆえに「分断国家」の悲劇解消に向かって、自然に南北統一の機運が出るものです。旧東西ドイツの統合の裏には、西ドイツ経済の繁栄があったのです。文政権は、南北統一を政治的に利用しようとしている。その点が、国内経済の悪化も手伝い警戒されているのでしょう。政治手法としては、きわめて稚拙と言わざるを得ません。

     

    文政権による二大失策は

    韓国経済は、文政権による間違った政策の修正がない限り、奈落の底へ落ちるのは不可避でしょう。その理由は、少なくとも2つあります。

     

    1)財政赤字の増大が韓国の格付けを引下げる

    2)労組や市民団体を優遇する政策の見直し

     

    以下に、それぞれのコメントを付けて行きます。

    (つづく)


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    人間は感情の動物であると、よく言われます。喜怒哀楽が、人間の行動に面白みを付けます。「あいつは面白い奴だ」という場合、面白いという尺度はいろいろあるのでしょう。他人から見て、共感を呼ぶような振る舞いが多ければ、「あいつに一票」ということかも知れません。

     

    問題は、国家間となると複雑になります。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、わが安倍晋三首相と波長が合わないようです。これが、日韓関係をギクシャクさせている理由の一つであるようです。

     

    安倍首相は、初対面の人でもすぐに打ち解けるタイプと聞きます。その点で、トランプ大統領と気質が合うそうです。新聞がそう報じていました。

     

    文氏は、堅物で融通は利かないように聞きます。昨年5月、日中間三カ国の首脳会談が日本で開かれました。日韓首脳会談も開催。日本が「サプライズ」で、文氏に大統領就任1年のお祝いケーキを出しました。ところが、文氏はこう言って食べなかったのです。「私は歯周病で甘いものを禁じられている」と。やむなく、お付きの者がお相伴に預かったと聞きました。少しでも食べれば、その場の雰囲気も変わるでしょうに、と残念ですね。これが、文氏の素顔でしょう。

     


    さて、文氏が安倍氏に良い感じを持っていない理由を箇条書にしておきます。記事の出所は、『中央日報』(5月22日付け)「文大統領の一言でオールストップした韓日関係、与党が出口探る」

     

    (1)昨年9月、徐薫(ソ・フン)国家情報院長が訪日して、われわれ特使団の北朝鮮訪問結果を知らせたのが代表的だ。ところが日本は自分たちが持つ情報を一つもくれなかった。

     

    (2)昨年、欧州で文大統領と安倍首相が2回遭遇した。鄭義溶室長が前もって文大統領に『安倍氏に会ったら先に会談の提案を』と助言し、文大統領はこれに従った。ところが安倍氏は2回とも知らないふりをしてしまった。鄭室長だけ面目を失い、慌てることになった。

     

    (3)文大統領は、金正恩(キム・ジョンウン)氏に会うたびに日本人拉致問題の解決と朝日(日朝)修交を促した。安倍首相から頼まれた内容をそのまま聞き入れたのだ。それなのに安倍氏は、韓国に対して強硬策一辺倒なら、気分が悪くなるほかない。

     

    私が、新聞で読んだ印象を書いておきます。

    (2)ですが、確かに文大統領が安倍首相に話しかけた瞬間、他国の首相も安倍首相に話かけている場面が映っていました。あの場面が、文氏には釈然としなかったのでしょう。外交問題も、意外に「人間臭い」話であることが分ります。もともと、文氏と安倍さんは、「ウマがあわない」のでしょうか。

      

     


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