勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年05月

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    世間では、「天文学的」という言葉が使われる。現実離れした数字という意味だ。この「天文学的」なる言葉に「超」を付けざるを得ない債務を背負う企業が中国に現れた。

     

    中国全国の鉄道事業を運営する中国鉄路総公司である。中国の国鉄だ。当欄では、すでにこの問題を取り上げたが、詳細な経営データが入手できたので改めて「中国式経営」の無鉄砲さを見ておきたい。

     

    『レコードチャイナ』(5月4日付け)は、「中国鉄道の負債残高が過去最高の87兆円に 2018年純利益の2580年分」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国メディア『新京報』(51日付)は、中国全国の鉄道事業を運営する中国鉄路総公司の3月末時点の負債残高が、過去最高の52683億元(約872400億円)に達したことが分かった。同公司の2018年通年の純利益は204500万元(約339億円)で過去最高だったが、単純計算では同社は純利益約2580年分の負債を抱えていることになる」

    2019年3月末負債残高 約87兆円

    2018年純利益 約339億円

    前記の負債残高は2580年分の純利益に相当する。中国鉄路総公司は、中央政府所管の国有企業である。同社の抱える債務総額は、中国政府の債務に計算される。

     


    (2)「2018年の売上高は1955億元(約181600億円)で、前年の1154億元(約168100億円)を上回った。純利益は204500万元で、前年の181900万元(約302億円)を上回り、過去最高になった。18年の運輸収入は7569億元(約125500億円)で、客運収入は3570億元(約59200億円)、貨物輸送収入は3522億元(約58400億円)だった」

     

    2018年の売上高 約18兆1600億円

         運輸収入 約12兆5500億円

          純利益      約339億円

    売上高純利益率      0.187%

    辛うじて赤字を免れている決算だが、中国得意の決算操作が行なわれてであろうから、実態は赤字であろう。


    (3)「2018年末の負債残高は52134億元(約864300億円)で、193月末にはさらに増えて52683億元に達し、過去最高になった。純利益も増加しているが、負債残高も増加しており、193月末の負債残高を18年通年の純利益で割る単純計算をすると、約2580年分ということになる

    2018年末負債残高   約86兆4300億円

    2019年3月末負債残高 約87兆2400億円

    たった3ヶ月で8100億円もの債務増加である。米中貿易戦争の影響を受けて急減速する景気を下支えすべく支出した金額(債務)である。正常な経営感覚を飛び越えたもので、中国経済が危機的状況にあることを間接的に証明している。

     

    ここまで来ると、債務が「レバレッジ」(テコ)という成長促進という当初の役割から、生き延びるための「延命」に変わっていることに気付くべきだ。「延命」には寿命という限界がある。中国経済は確実にその「限界」に向かっている。

     

     


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    文在寅大統領の反日は、韓国を発展させる契機になるのか。または、韓国を滅ぼす売国になるのか。そういうコラムが登場した。私も文在寅氏の言動を見ながら感じていたのは、彼が韓国の発展の芽を摘む売国者に成り下がるのでないか。そういう漠然とした感じをもっていた。これから取り上げるコラムは、韓国の将来が反日によって発展の芽を摘み取られる危険性への警鐘である。

     

    『朝鮮日報』(5月5日付け)は、「『反日』で韓国を駄目にして日本を助ける『売国』文在寅政権」と題するコラムを掲載した。

     

    (1)「韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が『親日』フレームを駆使するのは、左派統治のための一種の『陣営の論理』にほかならない。心から問いたい。本当に日本をあがめ慕う親日勢力が韓国社会に存在しているというのか。日本のために韓国の国益を投げ捨てる売国奴がいるということか。光復(日本の植民地支配からの解放)からおよそ70年が流れ、世の中は大きく変わった。民族を裏切って国を売る、1900年代タイプの親日は消滅して既に久しい。にもかかわらず、70年前の物差しを持ち出して魔女狩りを繰り広げ、政敵に『土着倭寇』なる奇怪なフレームを押し付けている。所得3万ドル(約335万円)の『先進国』でこんなことが起こっていいのか、と思う」

     

    韓国は、昨年から国民1人当たりの国民所得が3万ドルになったとして、「先進国クラブ」に加入できたと自画自賛している。そういう誇りを持つに至った韓国が、未だに日本へ自信が持てずにいる。文大統領の「親日排除」は、左翼陣営の論理だと断じている。これを見ると、韓国左翼は民族主義であって、現代の潮流であるグローバリズムに乗れない集団と言える。文氏は、その意味で鎖国主義者だ。これでは、韓国の発展など期待すべくもない。衰退あるのみ、である。

     

    (2)「現政権になって、反日は原理主義の宗教のように暴走している。左派の教育監(教育委員会に相当する教育庁のトップ)らはだしぬけに「親日校歌」攻撃に乗り出し、ある地方の議会は「戦犯企業」を追い出す条例案を持ち出した。全国民主労働組合総連盟(民労総)は、釜山の日本総領事館前を「抗日通り」にすると宣言した。国際条約に違反する恐れがある「強制徴用労働者像」も建てると主張した。感情的にはすかっとするが、決して国益の役には立たない。国家の利益とは、数多くの変数が複雑に絡み合った高度な戦略イシューだ。銅像を立て、抗日の印を付けてこそ民族の自尊心が守られるという発想自体が、安物の民族主義にすぎない。現代版「斥和碑」でも立てようというのか」

     

    韓国は、日本だけに目くじら立てて騒いでいる。次のパラグラフにあるが、サムスンも現代自も日本の技術で発展の基盤をつくった。韓国経済は、サムスンや現代自が支えてきたようなもの。つまり、日本の技術あっての韓国経済である。文在寅は、そういう韓国発展の経済史も理解せず、ただ「反日」を騒ぐ民族主義者に過ぎない。

     


    (3)「サムスン電子は三洋の技術で始まり、現代自は「戦犯企業」三菱からエンジンを持ってきた。サムスンの創業者イ・ビョンチョルは、日本を師匠のように仰ぎ見た。しかし、日本は克服すべき対象だという観点は片時も手放さなかった。現代グループの鄭周永(チョン・ジュヨン)も、ポスコの朴泰俊(パク・テジュン)も、LGの具仁会(ク・インフェ)も同様だった。それは日本を知り(知日)、日本を活用して(用日)、日本に勝つ(克日)という『戦略的親日』だった。企業だけでなく、あらゆる部門、全ての韓国国民がそうだった。各人が己の立ち位置で日本を競争相手として、国力を育むことに力を貸した。光復後の70年史は、また別の独立運動の歴史だった」

     

    「知日・用日・克日」という三つの言葉を並べて見ると、中国の戦略と同じことに気付く。これが、儒教社会の国家論と言える。

     

    中国は、「知米」・「用米」・「克米」の三段階のうち、現在は「用米」から「克米」へ動き出す段階で米国から頭を叩かれた。米国が中国の動きを封じるためだ。

     

    習近平に比べると、文在寅の考えは「閉じこもり」戦術である。韓国が、「用日」によって戦後に急発展したが、文大統領によって「克日」の動きを止めて「反日」というUターン現象を起こしてしまった。「知日」以前の野蛮状態に戻るという意味である。

     

    私は、文在寅が韓国を衰亡の淵へ引っ張り込む「戦犯」と見てきた背景は、前記の「知日・用日・克日」の三段階から転げ落ちたことを意味する。だが、韓国は「克日」はできただろうか。原理的には不可能である。合計特殊出生率の急低下が、韓国という国家そのものの存在すら危うくさせる兆候となっているからだ。

     

    韓国にとって真の「克日」とは、日本への劣等感から解放されることだろう。それは、反日からは生まれない。「知日」である。韓国では、小学生から日本へ留学させ、日本の企業に勤めさせたいという親が現れている時代だ。文氏は、この流れを知るべきだろう。

     


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    訪日観光客の増加が、海外でも確実に日本食レストラン・ブームをつくっている。日本人の平均寿命は世界一。健康の国ランキングでも世界4位と輝いている。となると、そのヒントは、日本食にあると見るのは自然な流れであろう。

     

    世界の三大料理と言えば、フラン料理・中華料理・トルコ料理が定番である。和食は、この中には入らないが、見た目・ヘルシー・味といった総合得点でメキメキのしあがっている希望の星である。

     

    『チャイナレコード』(5月4日付け)は、「中国で日本食レストランが大人気、2年で7割増加」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国メディア『東方網』(5月2日付け)は、中国で日本食レストランが7割増加したと伝えた。記事は、農林水産省と外務省の調査によると、17年にアジアの日本食レストラン数は15年比で2万4000店増、13年比では2.5倍の約7万店に達し、世界全体の約6割を占めたと紹介」

     

    世界三大料理の一つ中華料理の地元で、日本食レストランが急増している。17年調査で15年に比べて7割増だという。卑近な例で言えば、日本の「ラーメン」が本場中国に比べて、あっさりした味で中国人の舌を虜にしているという。味付けが旨いのだろう。

     

    (2)「中国国内での増加率が最も高く、15年は約2万3000店だったが17年には4万店以上となり、増加率は7割を超えたと伝えた。上海だけで3257店あるという。こうした傾向について記事は、『中国の経済レベルと人々の生活レベルの向上に伴い、日本料理はそのオリジナル性によって中国で急速に発展している』と分析。しかし、『日本料理に対する関心が高くなるにつれ、中国人の日本料理に対する要求も高くなっている』と論じた」

     

    訪日観光客で、日本で食べた和食の味を忘れられないという声が強くなっている。刺身や生卵などには手が出ないというが、日本の食品安全管理の厳しさに納得して、おそるおそる箸を付けてやみつきになったという話を聞く。卵では、日中の比較検査で、圧倒的に日本の安全性が立証されている。

     

    (3)「記事は、『中国人の日本料理に対する要求』には『食材のほかに料理人の腕』も含まれると紹介た上で、『中国国内には日本料理を学べる場所や方法に限界がある。専門の教育機関が少なく、多くの料理人が正当な日本料理の訓練を受けていない』と指摘。『日本料理の理念と文化に対する理解が不足しており、玉石混交(優れたものと劣っているものが混ざっている状態)で、日本食レストランの長期的な発展に影響を与えるだろう』と論じた」

     

    日本食の普及は、日本からの農産物の輸出を後押ししている。それには、料理人の腕が問われる。日本で修行せずに適当な腕で「日本料理」という看板を出している所では、日本からの農産物輸出に結びつく可能性は低い。この技術の壁をどうやって突破させるか。日本の新たな課題になってきた。

     


    反日の韓国も日本料理に人気が高まっている。

     

    『朝鮮日報』(5月4日付け)が、「韓国で日本ブーム拡大、背景に日本旅行増加」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「ソウル市麻浦区の地下鉄合井駅から弘益大学方面に向かう通りには日本語が書かれた看板が並んでいる。すし屋から居酒屋、ラーメン店までジャンルも多彩だ。ハングルの看板はむしろ少ないほどだ。弘益大が近づくと、「ロッポンギ弘大」という3フロア分もある大型看板が目に入る。4階建ての建物の外壁には日本語の看板がびっしりと掲げられている。周辺の軽食店の経営者は『45年前からテント式の屋台やクラブがあった場所に日本の飲食店ができ始めた。ここは日本なのか韓国なのか戸惑うほどだ』と話した。弘大入口駅周辺には日本のファッションブランド『ユニクロ』の売り場があり、春物のシャツやウインドブレーカーが売られていた。

     

    (5)「最近低迷している流通・外食市場で日本式の飲食店・ブランドの善戦が目立つ。韓日の外交関係は最悪の状況だが、日本ブランドの服や食べ物は韓国の消費生活に深く食い込んでいる。このため、ただでさえ売り上げが低迷している韓国企業は対応に苦慮している。専門家は「実用性を強調する日本スタイルに韓国の消費者が引き寄せられている。韓国企業の対応が遅れれば、韓国の消費市場で日本ブームはさらに強まるのではないか」と指摘した」

     

    韓国の市民生活レベルで、「反日」を感じることは滅多にないという。ところが、歴史が絡んで来ると厄介である。そういう微妙な問題に触れなければ、和気藹々で暮らせるのだろう。できるだけ、微妙な問題に触れないのが暮らしの知恵というもの。だが、文在寅政権は対立を引き起こすことを目的の政権になってしまった。


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    菅義偉官房長官は、5月9~12日まで渡米する。拉致問題解決のために米当局者との協議やシンポジウムへ出席するのが目的とされている。しかし、内閣官房長官という内閣の要が、日本を留守にすること自体、大きな課題解決という事態が発生している証拠であろう。私は、菅官房長官渡米目的は、北朝鮮要人との接触が目的とみる。5月3日からこの説に立っている。その後、韓国の『中央日報』が同じ視点で報道を始めた。

     

    『中央日報』(5月4日付け)は、「尋常でない日朝接触、韓国政府は機敏な対処を」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「 日朝関係が急速に動いている。安倍晋三首相は5月2日のインタビューで「条件を付けずに金正恩(キム・ジョンウン)委員長と会って虚心坦懐に話し合ってみたい」と述べた。これに関連し、9~12日に訪米予定の菅義偉官房長官はニューヨークで北朝鮮側と高官級接触をしたいと平壌(ピョンヤン)に伝えたという」

    菅長官の渡米日程が決まってから、北朝鮮へ接触意思を提示した訳ではあるまい。逆である。日朝間の連絡ができたから渡米すると考えるのが順当だ。北朝鮮との意思疎通ができたと見るべきだろう。

     

    (2)「安倍首相が金委員長に会おうとするのは、日本人拉致問題の解決のためだ。米国と共に『最大限の対北朝鮮圧力』に集中してきた立場で突然、北朝鮮と対話をするのは容易でなかった。 その安倍首相が電撃的に日朝首脳会談の意思を明らかにしたのは、米国から確実な『OKサイン』を受けた結果と解釈される。安倍首相は先月26日にワシントンでトランプ大統領と4時間以上の首脳会談をした結果、『拉致問題解決のための日朝首脳会談に米国は全面的に協力する』という共同声明を引き出した。2分間の単独会談で共同声明なく終わった4・11韓米首脳会談とは対照的だ」。

     

    北朝鮮は、米国務長官との対話を拒否している。代わりの人物を出せと言っているほど。菅長官が別件(拉致問題)ではあるが、窓口の代役になる可能性はあろう。北朝鮮では、飢饉発生で緊急食糧輸入問題が持ち上がっている。日本が、妙な巡り合わせで代役になる可能性を否定できないのだ。金正恩氏は、先の訪ロでプーチン氏に安倍首相の人柄を聞き出しているはずだ。日本も事前にロシアへ連絡済みであろう。外交は、人間同士の濃密な関係がカギを握っている。

     

    (3)「こうした中、日本は11年間にわたり国連に提出してきた北朝鮮人権決議案を初めて保留し、外交青書から「対北朝鮮圧力を最大限まで高めていく」という表現も削除した。ハノイ米朝首脳会談の決裂以降、対米交渉が壁にぶつかった北朝鮮としては、このように日本と接触して突破口を開くのが有利だと判断する可能性がある。金正恩委員長が文在寅(ムン・ジェイン)大統領の代わりにトランプ大統領と親しい安倍首相を通じて念願の制裁緩和説得を要請すれば、日本が韓国の代わりに新しい『仲裁者』となる可能性もある」

    日本は、北朝鮮との交渉を控えて「微妙な問題」はぼやかしている。相手の感情を逆なでしない配慮だ。北朝鮮が、日米関係の濃密さを理解すれば、韓国に代わって日本を米朝の「仲裁者」にするかもしれないと記事は指摘している。同時に、北朝鮮は日朝の戦後処理問題も話し合える機会ができる。こういう、希望的な観測が出てくる背景は十分ある。

     

    (4) 「韓国政府は、北東アジア情勢の新たな変数に浮上した日朝接触の動きから感じるものがなければいけない。日本が北朝鮮との対話の機会をつかむことになったのは、米国との連携を最優先にして外交の出発点としたからだ。韓国政府は、『ビッグディール』への言及を避けて『制裁緩和』ばかり叫んできた。このため日本が、米国の信頼を受けて北朝鮮に対話を提案し、融和策も駆使する基盤を得ることになった。北朝鮮としても、米国と話が通じない韓国よりも、トランプ大統領の支援を受けた日本の方に視線が向かうだろう。韓日関係が良ければ、このように日本が韓国を避けて北朝鮮と接触することはなかったはずだ」

    北朝鮮は、米国と最も深いコミットをしている日本が、米国とギクシャクしている韓国より米国を動かす力があると判断すれば、日朝交渉を足場にして米朝協議に乗り出す。そういう可能性が出てきたとこのパラグラフは指摘している。

     

    従来は、米韓朝であった組み合わせが今後、日米朝になりかねない事態になると、韓国のメンツは丸潰れになる。流動的である。まだ、決定的なことを言える段階でないが、ある種の形が固まりそうな気配はしている。


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    文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、識者との懇談会で出された批判を聞き流している。政策に反映させる気持ちがゼロにもかかわらず、聞くようなポーズだけ取る。この元「社会派弁護士」は、なかなかの演技者である。

     

    視点を変えれば、政策転換の機会を逃したことに対して、「不作為の作為」ということは問えないだろうか。現在の文政権の指示している「積弊捜査」では、こういう視点のものが含まれているだろう。文政権が重大は事実誤認によって、国民生活を破壊している罪は、決して看過すべきものでない。

     

    『朝鮮日報』(5月4日付け)は、「有識者懇出席者、『文大統領は政策・路線変える考えなさそう』」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅大統領は各界有識者の「苦言」に耳を傾ける場を設けたものの、積弊清算関連捜査や経済政策といった基本路線は「変更不可」の方針を明らかにした。

     

    (1)「5月2日の社会有識者懇談会と、4月3日の経済有識者懇談会に出席した人々は『大統領が耳を傾けるという姿勢は良かったが、政策や路線を変更する考えはなさそうだった』と語った。経済有識者懇談会で、チョン・ユンチョル元監査院長らは『非正規職の正規職化・最低賃金引き上げ・労働時間の短縮で、労働市場における硬直性が強まった』と政府の主要経済政策を批判した」

     

    現在の経済混乱の理由について、下線のような指摘がされている。それでも、その原因を改めようとしないで、事態の悪化を招いている。一体、文大統領の権限はどうなっているのか。全権を動かす力が与えられているにもかかわらず欠陥を是正しない。不思議な大統領である。これは、政策変更を阻む勢力が政権内部に存在していることを証明している。

     

    それが、「86世代」という労組と市民団体に結びついている特殊集団である。これら2団体は、文政権樹立に当たり大きな力を発揮した。これらの支持母体の利益には手を付けないという「密約」でも結んでいるのであろう。利益供与に当る。この不可解な部分は、次期政権が保守系であれば、ぜがひでも究明したいところだ。

     

    (2)「文大統領はその1カ月後に行われた社会有識者懇談会で、最低賃金引き上げなどについて、『それら全体が一つの巨大な確執であって、これを解決するには社会的な合意が活性化される必要がある』と述べた。つまり、政策そのものの間違いは認めず、確執の調整に焦点を合わせて説明したものだ」

     

    最賃引上が、大きな社会的な確執を生んだとは、どういうことか。最賃の大幅引き上げが、小規模企業の従業員の雇用を奪い、大企業労組の従業員に利益なったことを明確に認識している。それでも改善策を取らなかった。これは、立派な「犯罪構成要因」でないのか。是非とも、司法の場で裁かねばならない。文氏を法廷に引き出さなければダメだ。

     


    (3)「文大統領は積弊清算関連捜査についても、『妥協は容易でない』と言った。文大統領は懇談会があるたびに『良い示唆を与えてくださった』と言ってきたが、所得主導成長・人事・脱原発政策などは今も従来の基本路線を維持している」

     

    現在、行なわれている積弊捜査を指示したのは、文大統領である。大統領が一種の「指揮権」を発動して、保守党政権関係者を獄窓に送っている。次期政権が保守党であれば、この識者懇談会で指摘されながら改めなかった点で、文大統領を告発できるはずだ。そのくらい、厳しく追及すべき事案である。

     

    (4)「こうした中、大統領府は懇談会で出た発言の一部を紹介していなかったことが分かった。浦項工科大学のソン・ホグン客員教授は、『政策は失敗に終わったようだ。続ければ致命的な打撃を政権に与える。執着し過ぎる必要はない』と話したという。ところが、大統領府は同教授が、『政策の基本路線を維持するにしても、雇用主導の成長による変化はどうか』と言ったことを中心に紹介した。大統領府側は『中核的な内容はほとんどを明らかにしている』として、発言の一部を紹介していないという疑惑を否定した」

     

    下線を引いた部分が指摘されている。ところが、大統領府は内容を改ざんしている。改ざんしたこと自体、政策の失敗を認めていることの証明である。それにも関わらず、政策を変更しなかった。「不作為の罪」である。政策の不作為が犯罪になるか。ぜひとも究明する必要がある。

     

     


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