勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年07月

    117
       

    韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防部長官と言えば、これまで韓国メディアで「腑抜けの将軍」と酷評されてきた。国会で、「北朝鮮は敵か」と質問され30分もまともに答えられなかったからだ。この裏には、文大統領の「北朝鮮融和策」が強い影響を与えていたはずである。

     

    その「腑抜け」国防相が、ようやく「韓国を威嚇するなら敵」と発言した。だが、従来の「北朝鮮主敵論」を取り下げる一方、「威嚇するもの全て敵」と敵の範囲を広げたので、日本が潜在的な敵に想定さえていることに注意することだ。

     

    韓国軍合同参謀本部は31日、北朝鮮が同日早朝に発射した飛翔体2発は「短距離弾道ミサイル」だったと明らかにした。「わが軍はきょう午前5時6分、5時27分ごろに北が(東部の)元山付近から北東方面の海上に発射した短距離弾道ミサイル2発(の軌跡)を捉えた」と発表した。高度は約30キロ、飛距離は約250キロと推定され、韓米の情報当局が詳細を分析しているという(『聯合ニュース』7月31日付)

     

    この事態を受けた直後、鄭国防相は「韓国を威嚇するなら、北朝鮮は敵」発言が出たもの。北朝鮮が、ここまで軍事的脅威をまき散らせば、「敵」と呼ばざるを得まい。

     


    『聯合ニュース』(7月31日付)は、「韓国国防相、『韓国を威嚇・挑発するなら北朝鮮は敵』」と題する記事を掲載した。

     

    鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防部長官は31日、政府系シンクタンクの韓国国防研究院(KIDA)がソウルで開いた国防フォーラムで演説し、「われわれを威嚇し、挑発するなら北の政権と軍は当然『敵』の概念に含まれる」と述べた。鄭氏が昨年9月に国防部長官に就任して以来、北朝鮮に対する発言で最も強い表現だ。

    (1)「国防部は今年初めに刊行した2018年版国防白書で「北朝鮮は敵」とする文言を削除し、「わが軍は韓国の主権、国土、国民、財産を脅かし、侵害する勢力をわれわれの敵とみなす」と表記。「敵」の概念を包括的に表現していた。 鄭氏は「われわれの安全保障を脅かすのは北の核・ミサイルだけではない」と述べ、「包括的な安保概念に基づき、われわれを脅かすあらゆる勢力を敵と見なすべきだ」と強調した」

     

    下線部分は、敵の概念を広げている。昨年12月の海上自衛隊哨戒機へのレーダー照射事件は、日本を「友軍」と認めず、敵として位置づけていることが明らかになっている。

     

    (2)「軍が北朝鮮を敵と見なす概念をなくし、将兵のメンタル教育も十分に行っていないとの指摘があるものの、北朝鮮に対しては将兵に明確な安保観を持たせるため「北の政権と軍が挑発してくれば断固として報復する態勢と能力を備えるべき」との内容を基本教材に明記していると紹介した」

     

    文政権が、基本的に北朝鮮融和論を唱え、日本敵視論を明確に打ち出していた以上、今回の北のミサイル実験はきわめて不都合な事態だ。日本に対する敵視論は、今回の「ホワイト国」

    除外の背景になっており、文氏の外交政策は全て破綻している。

     


    11
       

    韓国は7月1日、日本から半導体製造3素材の輸出抑制措置を受けている。この間にサムスンとライバルの台湾TSMC(台湾積体電路製造)が、大規模な設備投資への動き始めたと韓国が神経を尖らせている。TSMCだけでなく、東芝、インテルなど韓国半導体メーカーのライバルが足早な動きを見せているというのだ。この裏には、米中対立の影が見られるという指摘が出てきた。謎めいた動きである。

     

    『朝鮮日報』(7月30日付)は、「サムスン・SKが日本に足止めされている間にインテル・TSMCが大規模投資」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「TSMC、東芝、インテルなど韓国のライバル各社は、韓国半導体企業が不確実性に縛られて微動もできない間に、追撃をかわしたり、あるいは追い抜いたりすることを狙っている。半導体業界によれば、サムスン電子が2030年までに133兆ウォン(約12兆2000億円)を投じ、メモリー半導体、非メモリー半導体の双方で首位を目指すとする「半導体ビジョン2030」が本格始動しない段階で、危機に直面したとの分析が聞かれる」

     

    (2)「日本の輸出規制が始まってから4週間が経過した29日時点でも日本製の高純度フッ化水素は韓国に供給されていない。半導体業界は「重要素材の在庫が底をつく10月初めには最悪の状況が訪れかねない」と懸念する」。

     

    (3)「韓国企業が不安に包まれる間、ファウンドリー(半導体受託生産)で世界首位のTSMCは26日、半導体設備エンジニア、研究開発人材、プロセスエンジニアなど3000人以上を年内に採用する計画を明らかにした。TSMCが一度に3000人以上を採用するのは、1987年の設立以来初めてだ。ファウンドリー市場で急速な追い上げを見せる2位のサムスン電子が、日本に足かせをはめられている間、引き離しにかかったものとみられる」

     

    以上のようにサムスンとTSMCが、半導体世界一を目指してしのぎを削って競争している段階で、日本の半導体製造3素材輸出規制が重なったのだ。これには、米中対立の影がちらつくとの指摘がある。サムスンが、中国側についたという疑いを持たれているのだ。

     

    韓国政府は、米国政府からファーウェイ製品を拒否するように度重なる要請を受けながら、「企業の問題」として拒否してきた。これは、ファーウェイ製品を受入れる前兆と判断され、サムスンは中国企業と協力する意向と見られている。そうなると、サムスンの半導体発展は米国に不利益をもたらすに違いない。そこで、サムスンのライバル企業を支援して、サムスンを追い越す戦略が仕組まれているという見方が出ても不思議はない。

     


    『大紀元』(7月30日付)は、「RCEPでの韓国の発言、世耕経産相が国際的な信頼失うと苦言 輸出管理は国内措置を強調」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「経済産業省は74日、軍事転用が容易とされる「リスト規制品」の輸出管理体制の見直しを実施した。これは、輸出管理のずさんな韓国に対する輸出管理の強化措置とみられている。日本メディアによると、日本当局は、日本の先端素材を輸入した韓国が第三国を経由して、北朝鮮やイラン、中国、マレーシアなどへの横流しを疑っている。韓国の朝鮮日報は517日、ミサイルの弾頭加工やウラン濃縮装置など、大量破壊兵器に転用可能な戦略物資の違法輸出が急増していると報じた。同様の内容を7月10日、日本のフジニュースネットワーク(FNN)も放送した」

     

    韓国から第三国を経由して横流しされている疑惑が持たれている。この問題は、すでに日韓のメディアが報じている。

     

    (5)「日刊工業新聞は7月27日、韓国に対する日本の輸出管理措置は、技術覇権を争う米中代理戦争に遠因があると伝えた。同紙によると、現在、最先端半導体を生産できるのは韓国・サムスン電子と台湾・台湾積体電路製造(TSMC)の2社。半導体業界関係筋の話として、「TSMCは米国側だが、サムスンは中国に近づきつつあった」という。同紙によると、日本は、同盟国である米国との安全保障上の協力の観点から、ファーウェイなど中国情報通信企業と協力する韓国半導体メーカーへの材料の供給の制限に動いた可能性があるという」

     

    下線は、きわめて重要な点を指摘している。この視点からサムスンとTSMCの対照的な動きを見ると、この裏には米国が絡んでいるとも読める。米国が、日韓対立の調整に動かない理由も分るはずだ。


    a1370_000549_m
       

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領の政治目標は、南北統一にあります。民族分断は悲劇であり、統一こそ目標であることは不思議でありません。問題は、文氏が統一のために自由主義を捨てる覚悟の点です。文氏は学生時代、北朝鮮の金日成が唱えた「チュチェ思想」に心酔し、現在もその影響から抜け出せないと指摘されています。

     

    韓国のプロテスタント教会の代表が、個人の資格で文大統領辞任要求を突付けた理由は、「チュチェ思想」による自由主義と民主主義抹殺の危険性を理由にしていました。実は、小学校高学年の社会科教科書では、すでに韓国の国是である「自由民主主義」から「自由」が消されています。「民主主義」だけ残したのは、北にも「人民民主主義」があるという屁理屈でした。

     

    文氏は、何が何でも南北を統一させるという民族主義者です。人権派弁護士という看板を掲げてきました。草の根民主主義というスタイルですが、政権を握って明らかになったことは、北朝鮮と思想的に大差ない「自由主義」の否定でした。

     

    経済政策でも、反市場主義であり自由主義を否定しています。サムスンを中国へ接近させるべく、米国の要請した「反ファーウェイ」にも首を縦に振りませんでした。だがその後、日本が韓国を「ホワイト国」から除外する動きを鮮明にするに及んで、米国へ接近する動きを見せています。これは、一時的な「回避策」であり本心は、「親中朝・反日米」にあるのかも知れません。

     

    多感な20代の学生時代、火焔瓶闘争を行った闘士の「文在寅」が、大統領になって自由民主主義に鞍替えするはずがないでしょう。「危険な大統領」と見る決定的な理由があります。

     

    韓国の「統一教育支援法」では、「自由民主的基本秩序を侵害する内容で統一教育が行われたときは、修正を要求するか、捜査機関に告発しなければならない」という一項目があるそうです。ところが、国立シンクタンクの発行する冊子に、この「原則を見直すべき」という主張が記載されたと報じられています。

     

    これが、なぜ問題かといえば、南北統一には韓国の現在の骨格である「自由民主的基本秩序」を骨抜きにして、韓国を「北朝鮮化」させる前提が込められているのです。文政権は、こういう重大な原則変更を、何ごともなかったように変えてしまう策略を巡らしているのです。実に、巧妙なやり方です。韓国与党に、その陰湿性において日本の憲法改正を批判する資格はありません。

     

    韓国は、日本に対して「普通に戦争する国になりたがっている」と罵倒しています。韓国こそ、「知らない間に自由主義を否定する国」へ変えてしまおうとしています。隣国ながら、文政権とその与党「共に民主党」は、危ない橋を渡ろうと策略を練り始めています。日本からも、文政権を「監視」する必要があるでしょう。

     


    a0960_008779_m
       

    韓国政府は、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を「ホワイト国」問題の取引道具に使うという不謹慎な態度を見せている。米国は、日米韓三ヶ国の安保体制維持の象徴として、GSOMIAを位置づけている。先頃、米国大統領補佐官のボルトン氏が、日韓を訪問した理由の一つはこれだ。

     

    韓国外相は、30日の国会審議で、二通りの答弁をしている。午前中は、状況次第ではGSOMIAを破棄すると答弁。午後には、日米韓3カ国の協力体制は必要と、カメレオン答弁を行っている。質問者にあわせた答弁をしているのだろう。狙いは、日本を揺さぶって鬱憤を晴らすという低次元の話とすれば、呆れたと言うほかない。

     

    『聯合ニュース』(7月30日付)の午前は、「韓日軍事情報協定、『状況により破棄検討の可能性も』=韓国外相」と題する記事を掲載した。

     

    軍事情報包括保護協定は日韓が北朝鮮の核・ミサイル関連情報などを共有するために締結したもので、2016年11月に発効。効力は1年で、効力が切れる90日前に両国どちらかが協定を破棄する意思を通告すれば終了する。8月中旬までに破棄を通告しなければ自動的に1年間延長される。

     

    (1)「韓国外交部の康京和(カン・ギョンファ)長官は30日、韓日の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の延長に関して「状況の展開によって(協定破棄を)検討する可能性もある」と明らかにした。康氏はこの日午前、国会外交統一委員会の全体会議に出席し「政府は現在さまざまな状況について見守っており、現時点では協定を維持する立場だ」とした上で、このように述べた。また、政府がすぐにでもGSOMIA破棄の意志を明確に公表すべきだとする野党「民主平和党」議員の要求に対しては、「政府の意志は固く、確実だ」とした上で、「ただ、韓国政府の立場を状況によっていつどのように伝え、発表するかは戦略的思考が必要だ」と答えた」

     

    GSOMIAについては、現与党も野党時代は締結に反対していたが、政権に就いてその重要性を認識するようになった。ただ、その認識度合いは、前政権に比べれば格段に低い。今回も、北朝鮮が破棄を要求している。北朝鮮にすれば、自らの軍事情報を日本が把握して韓国側に通報するケースが多いとされている。そういう不都合なGSOMIAが、存続されては困るはず。それだけ有用性が高いのだ。

     


    午後になると、外相はGSOMIAを維持するニュアンスで答弁している。

     

    『聯合ニュース』(7月30日付)は、「韓米日協力体制は維持必要、韓日関係とは別問題=韓国外相」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「韓国の康京和外交部長官は30日、国会外交統一委員会の全体会議で、韓米日3カ国の協力体制について「韓日両国間の対立は別途管理するとしても、韓米日3カ国の安全保障協力関係は持続的かつ強固に維持しなければならないというのが韓国政府の基本的立場だ」との考えを示した。康氏は、先ごろ訪韓したボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に日本の輸出規制強化措置が不当だとする韓国政府の立場を説明したとし、ボルトン氏からは韓米日3カ国の安保協力が特に重要なこの時期に、米国政府が何をできるかを模索しなければならないとの反応を得たと述べた」

     

    この答弁は、午前中とはニュアンスが異なっている。質問者に合わせた答弁であろう。相手から揚げ足を取られないようにしている情景が目に浮かぶような答弁だ。信念がないのだろう。

     


    118
       

    韓国が、激しい反日不買運動を展開している。その映像が、日本の茶の間にも届いている。韓国の元高官が日本の識者に会う度に、「驚いた」と発言したという。韓国メディアは、これを「日本は韓国のことを知らなすぎた」と報じている。

     

    日本の識者ともあろう者が、韓国人の感情過多を知らないはずがない。「感情8割・理性2割」の民族である。これまで執拗なまでの日本批判こそ、「感情8割・理性2割」の証拠である。日本の識者が「驚いた」と言ったのは、「呆れた」という意味なのだ。

     

    『中央日報』(7月30日付)は、「『我々は韓国をあまりにも知らなすぎた』、韓国内の反日拡散に驚いた日本」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「輸出規制強化による韓日葛藤が高まる中で先週、日本を訪れた韓国政府の元高官が中央日報の電話インタビューに対して次のよう語った。「日本は応酬の様子を見る次元でカードを切ったと考えるが、韓国から非常に激しい反応が出てくると大いに驚いたようだった。『これは何だ』という雰囲気だ」。 自身が接触した、日本国内の知識人や外交専門家が韓国内で激しい勢いで広がっている反日ムードや日本製品不買運動に対して大きな驚きを表したとこの元高官は話した。実際、輸出規制強化による葛藤が1カ月近く持続する状況で、日本メディアの報道の焦点は韓日地方自治体の交流断絶、反日の雰囲気が爆発する韓国社会動きなどに合わせられている」

     

    日本人識者が驚いたのは、あのような過激なことをする必要があるのか、と言うことだろう。韓国労組が、ストライキで警備する警官を失明させる暴力を働いている。それと同じ次元の振る舞いに、日本ではただただ目を丸くして驚いているだけだ。日本政府の対応について、当然と思っている国民が90%以上もいるのが現実だ。

     

    (2)「朝日新聞は7月30日付でも主要面で関連ニュースを大きく扱った。 2面記事で「日本政府による対韓輸出規制の強化などを受け、日韓の自治体交流の中断や延期が広がっている。韓国では日本製品の不買運動が続いており、訪日旅行者数も激減」とし「出口の見えない政府間のにらみ合いが、経済や文化、スポーツの領域にも悪影響を及ぼしている」と伝えた」

    この記事では、例によって韓国を褒め日本政府批判が出なくて良かった。日韓の非正常な関係は糺すには、避けられない通過点である。日中関係も2010年と2012年の「大乱」を経てその後、中国は日本への正しい認識が生まれた。現在、中国からの訪日観光客は異口同音に、日本を正当に評価してくれるようになった。韓国も「大乱」を経て、これまでの「憑きもの」が洗い流されるであろう。日本人は、ソウル中心街をデモする姿に怯えることがあってはならない。過去の日中の大嵐と同じように、大荒れを経験してそこから学び、落ち着くであろう。



    このページのトップヘ