3~4年前の朝鮮日報の論調は、相当の「反日」であった。私のブログでは、しばしば批判の対象になったものだ。現在のような、是々非々に変わったのは、文在寅(ムン・ジェイン)政権登場以降である。私も共感して引用頻度がぐんと上がってきた。その中で、これから取り上げる社説は、4割が賛成であり、6割方は反対せざるをえない内容である。どこが反対か。事実誤認があるようだから、率直に指摘したい。
『朝鮮日報』(7月4日付)は、「経済報復、日本は中国と同じレベルの国なのか」と題する社説を掲載した。
(1)「日本による貿易報復に対し、米国や英国など海外のメディアは懸念を示している。例えばウォールストリート・ジャーナル誌は「日本は自らの足元に火を付ける結果になる恐れも」と指摘し、フィナンシャル・タイムズ誌は「最終的には全世界の消費者が被害を受ける」などと報じた。日本の読売新聞も「自由貿易に逆行する措置であり、結果的に逆風を受けるだろう」などと批判したことから、日本メディアの中にも同じような見方があることが分かる」
ここに登場する内外の有力メディアは、私が毎日執筆する上での有力情報源である。そこへ批判の矢を向けるのは気が重い。日本政府の今回の措置は「ホワイト国」(27ヶ国)から韓国を外して、他国同様の輸出手続きを行うというもの。「ホワイト国」から外されている他国が、日本から輸出で大きな不利益を受けている訳でない。
「ホワイト国」は、韓国を除外したので26ヶ国になるが、いずれも日本と伝統的に友好国であり、韓国のごとく「反日」を国是にするような国は一ヶ国もない。煩雑になるが、その国々を掲示する。
アルゼンチン、オーストラリア・オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国
日本の皇室が安心して旅行できるような「親日国」でばかりである。この「ホワイト国」に「反日国」の韓国が入っていること自体が異質にみえるほどだ。韓国は、ことごとく日本に対決する国である。その国へ、輸出手続きで恩典を与える意味があるだろうか。日本政府が、除外しても不思議はない。
もう一点、韓国が外された理由で、気になるものがある。詳しいことは不明だが、北朝鮮へ流れた製品に、日本の素材が加工されてものが含まれているという疑いが持たれている。これは、韓国当局が調査すれば分ることだ。
(2)「日本政府は今回の措置に乗り出した理由について「韓国との信頼関係が崩れたため」と説明している。強制徴用判決を巡る韓日間の外交対立が原因であることを認めた形だ。自由貿易を原則とする国際通商規範は、政治が貿易に介入することに反対している。経済以外の理由で貿易を差別化するとか、規制するなどあってはならないということだ」
下線を引いた部分は、原則であり正論である。しかし、例外も認められている。安全保障面で障害になれば許されるのだ。現に、中国のファーウェイ(華為技術)は、安全保障を理由にして、米国が輸出規制を掛けている。韓国から北朝鮮へ半導体が流出しているという疑惑があれば、日本が韓国を「ホワイト国」から外しても問題はない。
韓国海軍艦艇が、海上自衛隊哨戒機にレーダー照射した一件もウヤムヤにされている。友軍である日本の哨戒機に行うことではない。安全保障上の重大問題に当る。韓国が、日本の旭日旗を排除するのも友軍としてあり得ない行為である。こうして日本は、安全保障のパートナーとして、韓国を従来の2位から5位に引下げた。韓国が、日本の安全保障において占める位置が大幅に下がったことを意味する。これも、『ホワイト国』から外す要因になる。
(3)「世界での好感度調査で日本は常にトップ近くを維持する国だ。これほどの高い評価を受ける理由は、ルールを守る国民と、その国民性によって形成された国と考えられてきたからだ。しかし今回の貿易報復を見ると、日本も結局は無道な経済報復を平気で行う中国と何も変わらないレベルにあることが分かった。過去の韓日請求権協定に「両国間の請求権問題は完全、最終的に解決されたことを確認する」と明記されているのは事実だ。韓国がこの協定を破ったとして、日本が怒るのも当然理解できる。しかしそれを外交的な方法ではなく、経済報復という暴力的で野蛮な手段を持ち出してよいのだろうか。両国関係の未来を考えると実に嘆かわしいことだ」
下線をつけた部分は、日本が中国のような振る舞いをするなと言う「忠告」である。ありがたく聞きたいと思う。ただ、現状は「ホワイト国」から韓国を外したことで、韓国の反応を見ている段階である。中国のような道理に反することを行えば、世界の半導体需給に大混乱を及ぼし、日本も深傷を負う。はっきり言えば、韓国との外交折衝の糸口に始めたのが今回の動きと見るべきだ。韓国が感情的になって対抗手段を取ると、泥沼に入り込み望まぬ方向へ行くだろう。