勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年08月

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    日本は、韓国を「ホワイト国除外」する法的手続きが終わった。これを受けて、韓国の文大統領は「恨み節」を連発。日本が韓国を「ホワイト国除外」にした理由が曖昧であるという非難である。

     

    日本は、韓国の戦略物資管理が杜撰であることを指摘している。この問題を韓国当局と話合おうとしたが、3年間できなかった点を上げているのだ。韓国にとって、この不都合な点は伏せており、もっぱら韓国大法院による旧徴用工判決への日本の意趣返しだと強調している。

     

    徴用工判決が、日韓関係を悪化させていることは事実だ。韓国政府は、昨年10月の大法院判決後、今年6月中旬まで徴用工問題で日本との話合いを拒否してきた。韓国にとって、この不都合な事実も伏せているのだ。

     

    この徴用工問題が端を発して、日韓政府間で戦略物資取り扱い問題の話合いもできなかったことが、結果的に「ホワイト国除外」を招いたのである。文大統領は、自分の胸に手を当てて見れば、原因はすぐに分るはずだ。それを、「分からない」とか「恣意的だ」とか言い募って、自らの責任をすべて日本に押しつける点で、典型的な「三百代言」と言わざるを得ない。トランプ米大統領によるG7での発言を借用すれば、「文氏はよく大統領になれたもの」と言うのが正直な感想である。

     

    『聯合ニュース』(8月29日付)は、「日本は経済報復を正当化、正直になるべき=文大統領」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は29日の臨時閣議で、「日本は経済報復の理由すら正直に明かしておらず、根拠なくその場その場で言葉を変えながら経済報復を合理化しようとしている」と批判し、「日本は正直にならなければならない」と促した。

     

    (1)「文大統領は、「日本がどんな理由で弁明しようと過去の歴史問題を経済問題に絡めたことは間違いなく、どうにも率直でない態度と言わざるを得ない」と指摘した。日本が韓日関係悪化の原因として安全保障上の理由、韓日請求権協定違反、韓国大法院(最高裁)の強制徴用判決に対する韓国政府の態度など、その場に応じてさまざまに取り上げることを指摘した発言とみられる。また、韓国が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了決定を発表したことを受け、韓日間のあつれきの原因は韓日請求権協定に違反して国と国との信頼関係を損ねた韓国にあるとした日本の安倍晋三首相の主張に反論したともいえる」

     

    文政権登場後、韓国は日本に何を行ったかを考えれば分るはずだ。日韓慰安婦合意を破棄し、徴用工問題では日韓基本条約を骨抜きにする判決を下した。国家間で結ばれた条約と協定の骨抜きや破棄が、文大統領就任2年たらずのあいだに矢継ぎ早に行われた。この事実を日本に突付けておきながら、日本は「過去の反省がない」と言いたい放題である。文氏の「三百代言」振りを浮き彫りにしている。喧嘩を売って来たのは韓国だ。この事実を忘れてはならない。

     

    これでは当然、日韓関係は悪化する。日本が、戦略物資の管理問題で韓国へ話合いを申入れても韓国は応じない。日韓関係を悪化させたのは、文氏が大統領に就任してからである。こういう雰囲気の下では、日本が輸出手続きを厳格にやらざるをえない。ここまで指摘しても、韓国はまだ「自分が正しい」と言い張れるのか。

     

    (2)「文大統領は歴史問題に対する日本の態度も正直ではないと指摘した。「過去の過ちを認めることも反省することもせずに歴史をゆがめる日本政府の態度が、被害者の傷と痛みを深くしている」と述べたほか、独島を自国の領土とする主張も変わっていないとした。文大統領は日本に対し「過去の歴史を直視することから出発し、世界と協力して未来に進まなければならない」と強く求めた。過去を率直に反省し過ちを何度も振り返り、隣人と和解して国際社会から信頼を得たドイツの例を深く心に刻む必要があるとした

     

    ドイツの犯罪行為は、ユダヤ民族抹消という恐るべき「人道への罪」である。韓国では、このドイツの罪と、慰安婦問題と徴用工問題を同一視する「牽強付会」組がいる。文大統領もその一派である。日本を「人道への罪」で問えと言うのは、文氏のような過激派だけだ。左翼の韓国法学者でも、そこまでは無理としている。根本的な理由は、日本人も朝鮮人も同じ職場の過酷な条件に置かれたという事実だ。そこには、差別がなかった。日韓併合で、朝鮮人も日本人になっていたからである。

     

    日本は、太平洋戦争で被害を及ぼした諸国への賠償を済ませた。その後の経済復興では、ODA(政府開発援助)により支援を続けてきた。ASEANで、最も信頼を受けている国は日本である。全体の60%が日本支持派である。韓国は、日本にはるかに及ばない位置にある。この現実を謙虚に受入れるべきだ。二言目には、歴史の反省がないという。偏向した文氏の口からは、もはや聞きたくない言葉である。その裏には、反日を利用して利益を得ようという、さもしい狙いがあるからだ。

     

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    文在寅大統領は、調子に乗りすぎた報いを受けている。来年4月の総選挙に照準を合わせた内閣改造で、法相候補のチョ・グク氏が家族を巡る疑惑で検察から捜査を受ける身になったからだ。チョ・グク氏を法相に据えて、検察改革を行い野党を壊滅させる「黒い計画」が糾弾されている。

     

    チョ・グク氏疑惑は、娘の不正入試や家族での財産形成に絡むので、文政権を支持してきた中道が一斉に離脱を始めている。入試や財産形成は、中道層にとって余りにも衝撃的過ぎるからだ。大学入試で苦労し、社会人になれば就職で苦杯を喫するという連続である。一方では、「親の七光り」で超一流大学を無試験入学、財産は家族でたっぷりと形成している。

     

    こういう醜聞を聞けば、「文政権も保守派と同じ」という絶望感から離脱している。文政権は、「反日」で煽り支持率上昇のテコに使ってきたが、チョ・グク氏疑惑でそれも帳消しになってきた。「悪銭身に付かず」だ。

     

    『韓国経済新聞』(8月29日付)は、「文大統領支持していた中道層 『チョ・グク論争』以降、急速に離脱」と題する記事を掲載した。

     

     韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の友軍を自任していた中道層の離反が続いている。チョ・グク法務部長官候補の「子女入試特恵」や「家族ファンド」論争が「中道層の離脱」に決定的な影響を及ぼしたという分析だ。

     
    (1)「8月27日、韓国ギャラップによると、今月20~22日、全国成人男女1002人を対象に実施した世論調査(95%信頼水準、標本誤差は±3.1%ポイント)で、文大統領に対する中道層の国政遂行支持率は43%を記録した。直前の調査だった8月第2週(50%)より7%ポイントの急落となった。否定評価は同期間43%から50%へ7%ポイント上昇した。仁荷(インハ)大学政策大学院のパク・サンビョン招聘教授は「チョ候補をめぐる各種疑惑が提起されながら、合理的保守と進歩を自任していた20代と50代、地域では首都圏中道層の離脱が現れている」と分析した」

    中道層の支持率が、最新の世論調査では一挙に7%ポイントも下落して43%になった。まだ事件の捜査に着手した段階である。今後の進展しだいで支持率下落は不可避であろう。

     

    (2)「政権の序盤と比較すると、中道層離脱の動きは一層深刻だ。文大統領が国政遂行について初めて調査した2017年6月第1週の中道層の肯定と否定評価比率は、それぞれ87%と5%を記録した。その後、最低賃金引き上げや所得主導成長の副作用が現れた昨年12月第3週には肯定評価が40%台に落ち、否定評価は40%に上昇した。今年1月第3週には中道層の否定評価(48%)が肯定評価(45%)を上回り始めた。現在、政権の序盤と比較すると、否定評価は5%から52%に高まり、肯定評価は87%から半分水準である43%に急落した

    中道層の不支持率推移は、文政権の経済政策失敗(最低賃金の大幅引上げ)をストレートに反映して上昇している。自らの生活に直結するから当然だ。政権の序盤と比較すると、

    否定評価は5%→52%に高まり

    肯定評価は87%→43%に急落

    (3)「与党や野党を支持しない無党派層の支持率変化はさらに顕著だ。2017年6月に第1週「文大統領がうまくやっている」と答えた比率は63%だったが、最近の調査ではこの比率が18%まで落ちた。無党派層で10%台の支持率を記録したのは今回が初めてだ」

    無党派層の支持率変化

    63%→18%


    (4)「 中道層・無党派層の離脱は「8・9改閣」で任命されたチョ候補疑惑に失望した影響が大きい。通常、有権者30~40%は合理的保守・合理的進歩を自任し、どの政党にも帰属しない中道層や無党派層に分類される。明知(ミョンジ)大学政治外交学科の申律(シン・ユル)教授は、「執権3年目は政権に対する期待が現実に変わる変曲点」としながら「『チョ・グク論争』が起きる過程で『進歩勢力の上層部の既得権が保守勢力とそれほど変わらない』という失望感がリアルに迫ったもの」と話した」

    中道層・無党派層の離脱は、チョ候補疑惑が大きな影を落としているという。これでは、反日によって盛り上げた支持率回復も元の木阿弥になる。すべて、文大統領の短見の結果である。

     

     

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    韓国政府が、米国の政府・議会から「GSOMIA破棄」を巡り集中的批判を浴び、血迷った行動に出て来た。従来、韓国政府が米国政府へ異議を申し立てるときは、米大使を非公開で呼び出し意思を伝えてきた。それが今回、メディアに予告して米大使を韓国外交部へ招致するという前例のない行動に出たのだ。国内向けゼスチャーだが、韓国政府の強がりを見せていると不評を買っている。

     

    『朝鮮日報』(8月29日付)は、「韓国政府、米大使呼んで問いただす、前例のない衝突」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国外交部の趙世暎(チョ・セヨン)第1次官が28日、ハリー・ハリス駐韓米国大使を外交部庁舎に呼び、青瓦台の韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄決定に対するトランプ政権の公の場での批判を『自制してほしい』と頼んだ」と外交消息筋が明らかにした。GSOMIA破棄をめぐり米国の懸念が高まっていることに対し、韓国政府が不満を公に伝えたものだ。韓国外交部は2人が会ったことを「面談」と表現したが、外交関係者の間では「事実上の警告・抗議の意味が込められていると見るべきだ」という意見が多かった」

     

    韓国政府が、米国政府から公然と批判されるにいたり、国内的には不利な立場に立たされてきた。文政権が、米韓関係の悪化を意図したGSOMIA破棄であったことが明らかになってきたからだ。そこで、ハリス米国大使を招致して、米国政府による批判の自制を要請したもの。

     

    (2)「ランドール・シュライバー米国防次官補(インド太平洋安全保障担当)は同日、韓国外交部から自制要請があったのにもかかわらず、米ワシントンで行われた講演で、GSOMIA破棄について、「強い懸念と失望感を表明する」「韓国にGSOMIAを延長するよう要求する」と述べた。また、「米国は、文在寅(ムン・ジェイン)政権の決定は否定的な影響を与えるものだと繰り返し明確に言ってきた」とも述べた」

     

    韓国政府の「自制要請」にも関わらず、シュライバー米国防次官補は堂々と韓国政府批判をやっている。「GSOMIA破棄」が、いかに米国の怒りを買ったかという証明だ。トランプ大統領まで、G7サミットで二度も文大統領批判を展開している。韓国は、窮地にたたされている。

     

    『朝鮮日報』(8月29日付)は、「米シンクタンク、『米国大使呼んだ文政権、自分だけが正しいと主張』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国外交部が28日にハリー・ハリス駐韓米国大使を呼んで、青瓦台の韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄決定に対するトランプ政権の公の場での批判を「自制してほしい」と抗議したことについて、米国の専門家たちは「韓米間の緊急危機管理が必要だ」と主張している。また、韓米の確執が深まれば、在韓米軍削減というカードが切られる可能性があるとの予想も飛び出した。

     


    (3)「米国のシンクタンク「民主主義守護財団」のマシュー・ハ研究員は同日、「まだ韓米同盟の構図が崩れたとは思わない」と言いながらも、「文在寅(ムン・ジェイン)政権は常に自分たちだけが正しいと主張するので、対話を通じた解決が容易でない傾向がある」「現在は韓米外相級電話会談など緊急危機管理が必要な状況だ」「GSOMIA破棄は在韓米軍と米国の安保にも直接影響を与える。韓国は米国の安保懸念に共感しようという努力をしなければならない」と語った」

     

    米国は、米国青年の生命を賭けて韓国防衛に当ったという自負心がある。韓国が、米国の琴線に触れるような行動をすれば、反撃されるのは致し方ない。

     

    (4)「匿名希望のシンクタンク関係者は「韓国外交部がハリス大使に正式に抗議したことで、トランプ政権内における文在寅政権への反感はさらに大きくなるだろう」「問題は、トランプ大統領がこの問題をどう感じているかということだ」と言った。同盟を重要だと考えておらず、長期的には在韓米軍を撤収させたいと思っているトランプ大統領としては、「韓国は米国とたもとを分かとうとしている」と感じているかもしれない、ということだ。

     

    韓国は、米国への態度を対日本並みに振る舞えば、絶対に強い拒絶に合うだろう。米国には、米軍の韓国撤収という切り札があるからだ。

     

    (5)「米タフツ大学のイ・ソンユン教授は26日、米国の政治専門紙『ザ・ヒル』への寄稿文で、GSOMIA破棄による韓米衝突を懸念し、「韓国で広まっている反日感情が反米感情にならないよう、発言や行動を慎重にし、韓国を侮辱してはならない」と書いた。だが、その一方では、「トランプ政権は韓国と日本に(衝突するという)進路を変える必要があるとのシグナルを送るべきだ」「(このようなシグナルは)声明や非理性的な防衛費分担金要求ではなく、在韓米軍削減のための『構造調整』交渉でのみ伝えられる」と述べた。韓国が最後まで米国の意向に反すれば、在韓米軍削減というカードを切ることも検討しなければならないという意味だ」

     

    ここでも、在韓米軍の撤退カードが取り上げられている。これは、文政権にとって野党からの批判材料にされるだけに手痛いしっぺ返しである。


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    韓国大統領の文在寅(ムン・ジェイン)氏は、メンツ丸潰れです。口では立派なことを宣うのですが、やっていることと言えば、党利党略のお先棒を担いでいます。生涯の政治目標は多分、排日と保守派の根絶やしでしょう。文氏は、大統領の器と言うよりも、「共に民主党」代表意識のまま、大統領府に移ったと思われます。

     

    孔子は、「巧言令色、鮮(すくな)し仁」と言いました。文在寅氏にそのままあてはまるようです。演説は上手いが、中身がない。文氏は、軽々しく徳を説きます。しかし、仁(真心)がないから米国の要請である「GSOMIA」継続を安請け合いしながら、土壇場で裏切ったのでしょう。同盟国の信頼をこれほど裏切る行為はないのです。

     

    米国の怒りが尋常ではありません。同盟国に向けた怒りの域を超えているのです。それはそうでしょう。朝鮮戦争では、米国の若者5万4000人が戦死しています。その貴い犠牲の上に守った韓国の自由と民主主義を、文政権は「ありがた迷惑」のような扱いをしています。

     

    米国にとって韓国の「GSOMIA破棄」は、許しがたい裏切り行為に映ると思います。アジアで、中朝ロが共同して日米韓に対決しようとしている時期です。その時、味方のはずの韓国が、情報伝達の要である「GSOMIA」を破棄するという粗略な扱いをしました。米国は、これに猛然と怒りがこみ上げてきたのです。

     

    このままでは、朝鮮半島に散った米国青年の命が無駄になりかねません。こういう事情を考えると、米国政府が、韓国に対して波状攻撃のように、非難の矢を放つのは当然でしょう。韓国政府が、あまりにも選挙を意識した身勝手な振る舞いをし過ぎたと言えるのです。

     

    韓国は、ワシントンの外交や政界の関係者から99%信頼を失ったと指摘されています。これまで、ことあるごとに日本の悪口を告げ口して歩きました。韓国は、先のフランスでのG7サミット参加国に、事前に日本批判を告げて歩いています。「ホワイト国除外」への不満を言いつけるためです

     

    ところが、G7サミットでトランプ米大統領が突然、二度も文大統領批判を口にしたというのです。一度は、「文氏は信用できない」。もう一回は、「どうして、あんな文氏が大統領になれたのか」という内容です。出席の各国首脳は唖然として、ただ聞いていただけだそうです。日本を告げ口して回った韓国が、トランプ氏から二度も「直撃弾」を浴びた形です。「形無し」とは、こういう場合に最適かも知れません。

     

    韓国は、「大技」では勝てないので、「小股すくい」というずる賢い手を使うので油断できません。今回は、まさにそれが図星の構図です。韓国はどんな顔をして、G7参加国に日本の告げ口をして回ったでしょうか。朝鮮半島で清国と露西亜に挟まれて、小突き回されてきた哀しい歴史が、こういう人間としてやってはならない振る舞いに出たのでしょう。気の毒ですね。


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    けさ、下記の目次で発行しました。よろしくお願い申し上げます。

     

    米中貿易戦争の歴史意義

    中国の脆弱金融システム

    米アキレス腱は物価上昇

     

    「トゥキュディデスの罠」という言葉があります。歴史的に見て、覇権国と新興国が衝突する事例が戦争に至ったという研究結果があります。それほど覇権争いは、世界を揺るがす大事件へ発展する危険性を秘めています。現在の米中貿易戦争は、この前哨戦であります。

     

    ハーバード大学のベルファー・センターは、過去500年にわたる新興国とその挑戦を受ける覇権国との関係を示す16の事例において、12件が戦争に至ったと分析しています。戦争の起こる確率は75%ときわめて高くなります。戦争を回避できた事例でも、覇権国が国際システムやルールの改変などの大きな代償を強いられたとされます。

     

    前記のベルファー・センターの研究によると、20世紀に日本が台頭した際の日露戦争や太平洋戦争もこれにあたるとしています。となると、日本は過去の歴史で二度も覇権戦争をした経験国となります。こういう表現は許されませんが、「一勝一敗」です。それだけに戦争の虚しさを痛感していると言えるでしょう。

     

    米中貿易戦争の歴史意義

    現在の覇権戦争は米国と中国の間で争われています。

     

    中国は、建国から100年にあたる2049年までに米国を完全に追い抜く超大国となるという「マラソン」を続けています。中国は、南シナ海の他国領土を侵略して軍事基地を建設しています。明らかな軍事行動の拡大であり、米国との軍事的な覇権争いを前面に出しています。前記のような戦争になる確率75%から言えば、危険な兆候と言うべきでしょう。

     

    トゥキュディデスの罠」をひもとけば、戦争を引き起こす主要な要因は「戦争が不可避である」という確信そのものとされています。米中の対立は不可避との意識が、予言の自己実現性がもたらすリスクを抱えるのです。これは、軍備の拡張がもたらす危機です。「安全保障の罠」にはまって、軍拡競争する危険性がもたらしたものです。

     

    こうした米中の熱い覇権争いを、未然に防ぐ方法はあるでしょうか。それは、米国トランプ政権による対中国への「公正な貿易慣行」樹立でしょう。市場経済ルールに則った経済競争による優勝劣敗であれば、敗れた側が自国の経済ルール見直しや資源配分の変更という穏やかな手法を採用すれば良いのです。

     

    ところが、中国はそういう市場経済ルールを無視して、技術窃取を平気でやる。また、補助金政策による保護主義を前面に出しています。この違法ルールで、世界覇権を2049年に握ると公然と表明し、米国との対立を深めています。こうなると、米国は黙ってやり過ごすわけにはいきません。

     

    トゥキュディデスの罠」で戦争を回避できた事例でも、覇権国が国際システムやルールの改変などの大きな代償を強いられたとされています。これを、米中に当てはめるとどうなるでしょうか。米国に対して、中国流の独裁主義と計画経済を採用せよという、逆立ちしたことを求めることになり、それは不可能です。中国が、独裁主義と計画経済を捨てて民主化する以外に、米中が和解する方法はないでしょう。

     

    この原則論に立ちますと、残念ながら米中和解は不可能です。次善の策は、中国が覇権への挑戦を諦めて、世界共通の倫理観に立ち戻る以外に方法はなさそうです。米国が、中国製品に高関税を掛けて、中国の経済ルール変更を迫るのは、やむを得ない措置と見るほかないのです。

     

    ここで、米中対立を止めて互いに握手すべきという「常識論」は、真の危機である「2049年」の世界騒乱(戦争)まで事態を先延ばしさせるだけ。根本的な解決策にはならないでしょう。世界の自由主義と民主主義を守るためには、米国の中国に掛ける「関税戦争」が必要悪という位置づけになると思います。

    (つづく)

     


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