勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年08月

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    けさ、下記の目次で発行しました。よろしくお願い申し上げます。

     

    製造業PMIは50割れ

    不動産バブルに頼れない

    信用不安から信用収縮へ

    146兆円の無価値資産

     

    6月末の米中首脳会談によって、米中貿易戦争は「休戦」状態に入っています。通商協議再開で合意しましたが、ようやく7月末に上海で開かれる始末です。米中は、互いに相手の出方を窺う様子見の状態です。米国は、中国の農産物輸入が遅れていると非難しています。中国は、ファーウェイ(華為技術)への輸出禁止の緩和を求めています。互いに、相手国へ要求を出したままで「組み合って」います。

     

    苛立ちを見せる米国トランプ大統領は、「中国は、自分の大統領再選が決まるまで合意を引き延ばす積もりだろう。だが、再選後には中国への条件はさらに引き上げる。あるいは、合意しないで放置する」とまで言い放っています。中国へ圧力を掛けていますが、中国は、「対等な条件」でなければならない、とやり返しています。

     

    中国は、独裁政権ゆえに国内的には強い立場のはずですが、実際は「反習派」や党長老の意見も無視できません。8月に入れば避暑を兼ねて、党幹部と長老を交えた恒例の「北戴河会議」(河北省:非公式)が始ります。党幹部といえども、長老の前に出れば緊張します。昨年は、米国との貿易戦争が厳しく批判され、習氏は劣勢を強いられたほどでした。昨年の例から言えば、今年はさらに不利な状況です。この「北戴河会議」で、今後の方針についての了解を得た後に、米国と交渉するのでしょうか。

     

    習政権が、こうした党内手続きに時間を取られている一方、中国経済の実態は悪化しています。市場経済の国家であれば、経済データは経済政策決定において、重要な指針になります。中国のような統制経済国家では、悪い経済データが出て来てもさほど悩む気配は見られません。市場機構で処理するのでなく、政治機構で強制的に措置してきた慣例上、「誰かがなんとかするだろう」という高を括っているようです。その結果が、対GDP比で300%を超える債務総額に膨らんでおり、手の施しようがない事態を招いています。

     


    製造業PMIは50割れ

    景気の実勢を示すのが、製造業PMI(購買担当者景気指数)です。7月は、49.7で3ヶ月連続50を割り込みました。これは、景気が縮小過程にあると判断されています。

     

    7月の製造業PMIの中身を詳しく見て行きます。

            7月   前月比

    製造業PMI 49.7   +0.

    輸出受注   46.9   +0.

    生産     52.1   +0.

    雇用     47.1   +0.

     

    サブ指数のなかでは、生産が前月より0.8ポイントも高くなっています。これは、大手国有企業の生産回復が寄与したものです。前月の6月は連休の関係で、7月はその分が「オン」されています。輸出受注と雇用は、50を大きく割っています。輸出の受注が芳しくないので、雇用を削っていることがともに50を割る理由になっています。

     

    以上の3つのサブ指標から「病める中国経済」の姿が浮かび上がりました。7月PMI調査では、国有企業を中心とする大企業の活動が拡大に転じた様子が分ります。中小企業は逆に、前月から悪化したことが明らかになっています。これは、中小企業が信用不安に襲われていることを示唆しています。

     

    中国の国有企業や民営大手企業の金融は、国有銀行を窓口にしていますので安泰です。中小企業は、中小金融機関との取引か、「影の銀行」(シャドーバンキング)に頼ってきました。このいずれもが、多額の不良債権を抱えて身動きができません。企業経営にとって、日々の資金繰りで不安があっては前向きの経営に取り組めません。7月の非製造業PMIは53.7と、前月の54.2から低下し、8カ月ぶりの低水準となりました。

     

    この背景には、金融不安が相当の影響を及ぼしていると見るほかありません。金融不安が、中国経済最大の問題になっています。これには、解決の妙案がありません。解決は長い時間とコストがかかります。詳しくは、後で取り上げます。

     

    中国共産党中央政治局は30日、需要喚起など景気支援に向けた取り組みを強化すると表明しました。だが、不動産市場を活用した短期的な刺激策は行わない考えを示しています。今まで、景気の即効薬として不動産市場をテコ入れしてきました。これが、消費者に「住宅価格は必ず上がる」という住宅神話を植え付けたのです。所得に見合わぬ高値の住宅を買い込んだ理由です。こうして家計部門が、過剰債務を抱えて消費を切り詰める事態を迎えています。個人消費が伸び悩んで当然なのです。(つづく)

     


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    韓国は今、暑い夏がさらに暑くなっている。日本の「ホワイト国」除外に抗議して、日本製品不買運動に燃えている。なぜ、隣国の日本がこういう手を打ってきたか。その原因について考えて欲しいものだ。余りにも、日本と張り合うことばかりに夢中になっており、日本の立場を無視しているからだ。

     

    国と国の関係では、「独り善がり」で日本の反発を受けている。韓国国内では、文政権支持者の利益だけを確保して、他は無視する。これまでの最低賃金の大幅引上げは、大統領選で頑張ってくれた労組への「恩返し」だ。それが、雇用悪化をもたらして失業者を急増させた。こんな状態では就職もままならず、結婚も延期。こうして合計特殊出生率は下げ続けている。文政権になっての下落は顕著だ。

     

    『朝鮮日報』(7月31日付)は、「1.050.980.89…出産率が自由落下」と題する記事を掲載した。

     

    今年の合計特殊出生率が0.89~0.90程度にとどまる見通しとなった。昨年0.98となり初めて1を割り込んだ出生率が、今年は0.9をも下回りそうだ。韓国の合計特殊出生率は徐々に低下し、少子化の悪循環に落ち込んでいる。2016年に1.17人、17年1.05人、昨年の0.98人に続き、今年は0.9も割り込むというのだ。合計特殊出生率とは15~49歳の女性が生涯に生む子供の数のことを言う。

     

    (1)「統計庁が30日に発表した内容によると、今年に入って5月までの時点で生まれた新生児の数は、昨年の同じ期間に比べて7.6%(1万1100人)減少した。統計庁人口動向課のキム・ジン課長は「新生児の数は5月にも大幅に減少し、今年の新生児数は昨年よりもさらに減ると予想されている」とコメントした」

     

    今年の5月の出産が大幅に減少したのは、妊娠時が昨年7月頃であろう。経済要因で思いつくのは、大幅な最賃引上を決定した時期と重なる。国民は、これでアルバイトも減る、就職は難しくなると読んだに違いない。最賃引上は、出産にまで影響したとすれば、文政権は亡国政権と言わざるを得まい。

     


    (2)「今回の出生統計に基づき、今年の人口を暫定的に推計した漢陽大学のイ・サムシク教授は「新
    生児数は29万8200人から30万1740人の間、合計特殊出生率は0.89~0.90程度になるだろう」と予想した」

     

    韓国政府が、出生率低下に危機感を持たないのも不思議である。合計特殊出生率の目標も捨てて、「行き当たりばったり」という無責任な政府になっている。

     

    (3)「統計庁は今年初めに発表した人口見通しで、今年の新生児数を32万5000人、合計特殊出生率を0.94と予想したが、出生率の下落は政府の予想以上に早まっているようだ。児童手当の拡大など、今年は12兆ウォン(約1兆1000億円)の少子化対策が行われているが、その効果が出ていないことになる。新生児数が急速に減少している背景には、景気の悪化による若年層の就職難が深刻化し、8年連続で結婚件数が減少していることが大きな原因とみられる

     

    下線を引いた部分は、文政権が負うべき責任を明確にしている。文政権は、北朝鮮と統一する夢を見ている間に、足下の経済悪化が進行して韓国の地盤が沈下するという締まらない話になった。文政権は、後3年つづく。韓国は確実に将来基盤を食いつぶし、再起不能になるだろう。まさに、「亡国政権」である。


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