勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年09月

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    米中貿易戦争で、米国が最も警戒した産業高度化プロジェクト「中国製造2025」は、米国とサムスンの技術支援拒否により、実現は大幅に遅れる見通しとなった。中国は、「中国製造2025」に多額の研究補助金を与え、半導体などの先端部門の強化を図る目的であった。だが、米国企業が支援を断ったのに続き、サムスンも技術提携申入れを拒否した結果、独力での開発のやむなきに至った。

     

    「中国製造2025」が米国を刺激した結果、中国政府はできるだけ目立たないようにしている。技術開発で提携相手を探す上で、米国の横槍を警戒したものであろう。最後に白羽の矢を立てたサムスンからも断られ、独自路線を決断せざるを得なかった。

     

    『中央日報』(9月30日付)は、「サムスン、中国の半導体素材・装備同盟拒否」と題する記事を掲載した。

     

     中国政府がサムスン電子に半導体素材・装備の共同開発を提案していたことが分かった。サムスン電子はいくつかの理由を挙げて中国政府の要求を断ったという。中国は、韓国および米国企業との協業計画を変更し、独自で半導体素材を開発してメモリー半導体を生産する方向に転換した。

    半導体業界によると、中国政府は7月中旬、サムスン電子に半導体素材・装備を共同開発し、関連産業を共に育成しようと提案した。日本政府が半導体生産に必須の3大核心素材(高純度フッ化水素、フォトレジスト、フッ化ポリイミド)に対する輸出規制措置を発表した直後だ。

    (1)「中国政府が世界半導体市場を掌握する、いわゆる「半導体崛起」を実現させるためには、世界1位メモリー半導体企業のサムスン電子の支援が必要だと判断したというのが業界の見方だ。日本の半導体輸出規制で韓国も中国と協業する必要性が高まったというもサムスン電子にラブコールを送った要因の一つに挙げられる。韓国の半導体素材および装備の国産化に中国が少なくない役割をするという意図だ」

     

    サムスン李副会長は、頻繁に日本を訪問している。先のラグビー・ワールド・カップ初戦での日本・ロシア戦にも顔を出すほど、日本に神経を使っている。あくまでも日本との関係強化の姿勢を示すためだ。今回、中国の提携申し入れが、いかなる国際的な波紋をもたらすかを計算した上で、断ったと見られる。日本側の意向も反映しているのであろう。

    (2)「サムスン電子が中国政府の提案を受け入れなかったのは、短期的には半導体素材・装備国産化にプラスになっても中長期的に韓国半導体産業を脅かすと判断したからだ。中国国有半導体会社はサムスン電子とSKハイニックスが二分しているDRAM、NAND型フラッシュメモリーなどメモリー半導体生産を推進中だ」

     

    「中国製造2025」における目玉は、半導体の自給率を上げることだ。現時点の自給率目標は20%だが、実際はこの半分にも達していないという。それだけに、サムスンとの提携は喉から手が出るほど必要なものであったはずだ。

    (3) 「サムスン電子が拒否の意を伝えると、中国は独自開発に方向を定めた。中国国有半導体企業の紫光集団は16日、韓国や米国との協力を通じて半導体競争力を強化するという従来の計画をあきらめると宣言した。その代わり独自の研究開発(R&D)でメモリー半導体を生産すると発表した。中国重慶産業基金の支援を受けて今後10年間に8000億元(約15兆円)をDRAM量産に投資する計画という。紫光集団は2015年、DRAM市場3位の米マイクロン買収を進めたが、米国政府が承認しなかった。今年2月には米中貿易紛争の影響でインテルとの第5世代(5G)移動通信モデムチップ協力を中断することにした」

     

    下線の部分は、きわめて重要だ。米国の強い圧力の下で、独自開発を余儀なくされた訳で、「中国製造2025」の遅延は必至である。これが、米中貿易戦争の集結を早めるのかどうか微妙である。


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    けさ、下記の目次で発行しました。よろしくお願い申し上げます。

     

    儒教は経済発展にマイナス

    落込んだ中国の潜在成長率

    文政権顕著な国民生活圧迫

     

    韓国は、中国の儒教文化圏に属している。朝鮮李朝(1392~1910年)は、国教を朱子学(儒教)と定めたので、韓国思想は中国とほぼ重なり合っている。現代韓国が、中国に対して外交面で一歩も二歩も下がっている姿勢は、宗主国・中国への気配りの現れだ。

     

    儒教では、地理的に中国から遠くなるに従い、儒教文化の恩恵が及ばないので「化外(けがい)の地」として蔑まされてきた。韓国にとっての日本は、「化外の地」そのものである。こうした伝統的な思考方式に慣らされてきた韓国が、日本に対して「道徳的に一段高い」という潜在意識で臨んでいることは明らか。文在寅大統領が時折、「道徳的に高い韓国」と発言するのは、儒教文化による影響とみるべきだろう。

     

    儒教は経済発展にマイナス

    中国と韓国を彩る儒教は、社会の進歩に対してアクセル役か、ブレーキ役であるか。この違いを明確に知ることが重要である。中国は、「共産主義」を標榜している。社会発展の過程から見れば、資本主義社会の次に来るのが共産主義社会である。マルクスはこう規定していた。資本主義が高度の発展を遂げた後に、共産主義社会が到来すると見ていたのである。

     

    この点で言えば、中国は資本主義を経験していない社会だ。専制主義から「封建主義と資本主義」を経験せず、共産主義へと暴力革命で一挙に権力を奪った政権である。未だに、国民へ選挙の機会も与えず、「一党独裁」を強要している。なぜ、国民に選挙権を与えないか。それは、選挙制度を恐れているからなのだ。

     

    「選挙」という新しい文明に出遭った中国が、魔物でも扱うような姿勢で、中国伝統の専制主義に逃げ込んでいるのは、これまでの人類文化に先例がある。20世紀の英国歴史学者アーノルド・トインビーによれば、新文明に遭遇した時、その未知なる文明に挑戦せず、伝統文化に逃げ込むのは「狂信派」(ゼロット派)と呼ばれている。儒教文化圏とアラブ文化圏がこれに該当するのだ。こうして中韓は、今なお「ゼロット派」に属しており、新しい文化への取り組みに尻込みする文化パターンである。

     

    新文明に遭遇した時に逃げ帰らずに戦い、それを通して新しい知恵を学ぶ一派が存在する。トインビーは、これを「ヘロデ派」と名付けた。現在の先進国は日本を含めて、すべて「ヘロデ派」である。こう見ると、日本が韓国と文化摩擦を起こすのは当然と言える。価値基準が異なるゆえに、日韓は潜在的に衝突する可能性が大きい関係性にある。

     

    韓国は選挙制度もあり、先進国と同じ価値観である。だが、韓国は「ゼロット派」という肌着を身につけていることを忘れてはならない。外見とは異なって、最後は「本性」を見せてくるのだ。韓国国内で制度改革を拒否して、合理化が進まない裏に、こういう改革へのブレーキが作動している。

     

    一例を挙げれば、労働市場の改革は御法度である。終身雇用制と年功序列賃金に固執するので、労働市場の流動化が進まず転職の可能性は小さい。よって、失業率が高止まりするなど弊害が顕著だ。また、転職できずに中途退職して自営業へ走り、それが一層雇用を不安定にさせるなど、多くの社会問題を引き起こしている。

     

    中国と韓国の経済は、「ゼロット派」ゆえに制度改革に消極的であり、生産性向上が不活発という共通要因を抱えている。この中韓両国は、貿易関係において相互依存性が高い。韓国の場合、対中国輸出は25.1%(2017年)で首位である。中国経済の好不況に影響を受けやすい輸出構造だ。中国のGDPが1%ポイント下落すれば、韓国のGDP成長率が0.5%ポイントの下落を招くという試算があるほど。韓国が、中国経済へもたれかかっているのだ。

     

    このことから分るように、韓国経済は中国の好不況に強い影響を受ける。それだけに、中国が制度改革に消極的という文化的要因を考えると、韓国も同じ消極性を秘めているゆえに、今後の韓国経済について一段の警戒観を持つべきだろう。(つづく)

     

     

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    韓国の文大統領は、南北関係を最重要している。先の国連演説では、南北非武装地帯を世界遺産に登録したいというほど先走っている。韓国が、GSOMIA(日韓軍事情報総括保護協定)の延長破棄を決めた裏には、南北重視の姿勢がはっきりと読み取れる。一方の米国トランプ大統領は、一段と「米国ファースト」で関心が米国内に向いている。来年11月の大統領選挙を考えれば、致し方ない面もあろう。

     

    問題は、こうして米韓同盟のトップの視点が異なることから、米韓同盟が揺らぐという懸念が増えていることだ。先の米韓首脳会談では、GSOMIA問題が一切出なかったことに、韓国では「不気味さ」を感じているほどだ。

     

      青瓦台(チョンワデ、大統領府)高位関係者は9月23日(現地時間)、韓米首脳会談直後に記者団と会い、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)問題に対し、米韓首脳間で議論はあったかと尋ねる質問に、「GSOMIAに対しては全く言及がなかった」と答えた。日本関連の懸案に対する韓米首脳間の対話があったか尋ねる質問にも「全くなかった」と返答した。このように、米国側からの言及を待っていた韓国は、日韓関係打開の糸口が掴めないと焦りの色を見せている。

    GSOMIA問題は、韓国にとって自らが引き金を引いただけに、日本を悪者に仕立てて、韓国はやむなく破棄したという姿勢を崩さず、「日本悪者論」を展開している。米国は、こういう韓国の説明を受け流し、11月23日までにGSOMIA廃棄を撤回するように韓国側に迫っているのが実態だ。

     

    『中央日報』(9月27日付)は、「文大統領の南北優先主義、トランプ大統領の米国優先主義を結合して韓米同盟の危機」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)政府の任期の折返し点を控えた現在、安保と経済が同時に危機にさらされているという警告が出てきた。中央日報の後援で26日「漂流する大韓民国、座標を探して」を主題に西江大学で開催した討論会の席で出た見解である。

    (1)「 国立外交院のユン・ドクミン元院長とシン・ウォンシク元合同参謀作戦本部長は、文大統領の「南北関係優先主義」とドナルド・トランプ米大統領の「米国優先主義」が結合して韓米同盟が前例のない危機に直面していると指摘した。  ユン元院長は、「韓米同盟が弱まる間、北朝鮮は核武装を増大させた」として「過去2年間、韓半島(朝鮮半島)の平和プロセスを進めたにもかかわらず北朝鮮の核・ミサイルは、ただの一つも除去されたものはない」と話した。また「米情報当局によると、北朝鮮は毎年核弾頭12個を作ることができる施設を備えている」として「米行政府、議会でも北朝鮮の非核化が可能だと考える見方はほとんどなく、米本土が脅威を受けない線で北核を管理しようとする状況」と分析したこれに伴い、近い将来開かれる米朝実務交渉もトランプ大統領が来年再選を管理する水準で消極的に行われるだろうと見通した」

     

    下線を引いた部分が韓国で懸念されている点だ。北朝鮮は毎年12個の核弾頭生産能力をもつ施設を整えている。トランプ氏は、来年の大統領選挙を意識して北の核保有を認めて凍結させる案を探っているのでないか。そうなると、韓国が最大の被害者になる。まさに、米韓同盟の土台が揺さぶられる事態になるのだ。

     

    文大統領は、南北重視の姿勢一辺倒である。文氏は内心で、北が核を持ってもやむを得ない。これで、憎い日本へ対抗できれば良い、という程度の認識でないかと疑われている。与党「共に民主党」議員が、こういう主旨の発言をしたことがあるからだ。こうなると、文政権の唱える「北核廃絶」ははなはだ疑わしいことになる。

     

    (2)「シン・ウォンシク元合同参謀作戦本部長は、「過去2年間北朝鮮を意識して米国は戦略兵器を一つも韓国へ持ち込まなかったのは深刻な安保空白」としながら「国防力はちょっとした空白にも被害が大きくなるほかはない」と指摘した。「昨年第1回米朝首脳会談で韓米合同演習および戦略資産配備の中断、在韓米軍撤収の可能性を示唆し、9・19平壌(ピョンヤン)共同宣言を通じてはわが国防態勢の弱化が現実化された」と話した。彼は「トランプ大統領が北朝鮮の短距離ミサイルの発射に対して『気にしない』と明らかにし、文大統領はGSOMIA(韓日情報包括保護協定)を破棄したのは韓米同盟が揺れる端的な兆候」と話した

    朝鮮半島で軍事演習ができなくなった米軍が、アラスカを新しい演習場所にしている。大規模な米韓合同軍事演習が次々と調整・縮小されているからだ。9月26日の米軍事専門ミリタリードットコムによると、米海軍と海兵隊の約3000人は9月、アラスカで極地遠征力量演習(AECE)を実施したという。アラスカの寒い気候の中で合同上陸、燃料調達、水中ロボットの機雷除去訓練などを行ったもの。こうなると、韓国に駐留する米軍は、演習もままならぬ状態に陥っているわけで、米韓同盟の本質が問われる事態だ。

     

    下線を引いた部分は、意味深長である。韓国は、米韓同盟の揺らぎを察知して、GSOMIA破棄に動いたとも読めるのだ。もし文氏が、日韓関係の悪化、米韓同盟の揺らぎを利用してGSOMIA廃棄に動いたとすれば、北朝鮮と密接な関係をつくり始めていると読めるのだ。これには、深読み過ぎるという批判もあろう。                                        

     

     

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    現在の韓国大統領府を牛耳っているのは、「86世代」である。1960年代に生まれ1980年代に学生生活を送り、過激な学生運動を行ってきた「運動圏」と言われる層である。この「86世代」の思想傾向は、北朝鮮の金日成の唱えた「チュチェ思想」そのものである。反独裁、反米国、反日本という単純路線で、自主・自立を叫ぶ点では、旧李朝に似ているとの批判も聞える。文政権の危険性は、時代錯誤的な民族主義を振りかざしている点にある。

     

    『朝鮮日報』(9月29日付)は、19世紀式の自主にかまけた586世代 2030代の登場が望まれる」と題する記事を掲載した。

     

    ソウル大学のハ・ヨンソン名誉教授(72)は、旧韓末に亡国の道をたどった朝鮮の失敗を国際政治的な観点から再考察してきた研究者だ。ハ名誉教授のもっぱらの関心事は、もちろんこうした過ちを二度と繰り返さないために、大韓民国がどのような進路を取るべきなのかに集中している。先週発刊した『韓国外交史の再検討』と『愛の世界政治』(ハンウル刊)は、こうした知的努力の結実だ。旧韓末の失敗から何を学ぶことができるのかを聞いた。

     

    1世紀前の失敗から何を学ぶべきか。

    (1)「21世紀の文明の標準的変化を読み取り、対応していかなければならない。韓国の運命を牛耳るのはグローバルリーダーシップの転換だ。米中が展開している新アジア太平洋(新亜太)の秩序構築競争で、韓国は局面を正確に読み取り、中進国としての力を最大限に活用し、積極的に参加していかなければならない。韓米同盟のフレームを維持しつつ、中国とは適切に関係を結んでいく戦略が必要だ。国内の全ての力を集結させなければならない。現在のように極端な陣営対立を引き起こしているようでは、危機を乗り越えることはできない。自主的な世界化、開かれた民族主義のような柔軟な思考を兼ね備えた若い世代が早々に登場する必要性がある

     

    文大統領は、国論の統一でなく分裂を策している。親日排斥=保守派一掃を実現して、進歩派政権をこの先、何十年も続けさせるという荒唐無稽な計画を練っている。完全に「党利党略」に陥っている。下線を引いたように開かれた民族主義に立ち返るべきである。現在の政府与党は、親日排斥=保守派排除というきわめて危険な道を歩んでいる。

     

    ―反米・自主・平等のような1980年代の古い価値観にとらわれた86世代が大統領府をはじめとする政治・社会で権力を掌握していると批判する声が絶えない。

    (2)「86世代は非常に哀れな存在だ。民主化に寄与した功労は認めるが、これらの世代が大学時代を過ごした1980年代は、反独裁・反米闘争で想像力が抑圧されていた時代だ。自主・自立だけを叫ぶのは、19世紀的で単線的な思考回路だ。朝鮮が、1世紀前の日本よりもいち早く富国強兵に乗り出すことができなかったのはなぜか、と批判する。86世代が変化する国際秩序を読み取り、生存と繁栄を成すことができなければ、再び後世の批判の的となるだろう」

     

    86世代は、反独裁・反米闘争で学生運動をしてきた層である。自主・自立だけを叫ぶのは、19世紀的な単線的志向である。ここには、同盟という概念がなくただ、感情的に叫ぶのと同じだ。カントは『永遠平和のために』で、同盟による安全保障を力説した。これは、きわめて重要な概念である。現在、ますますその価値が高まっている。

     

    ―韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄により、70年間続いて来た韓米同盟に亀裂が入ったとの指摘もある。

    (3)「米国は、韓国が同盟の価値をどのように評価するか検討するだろう。韓米同盟は、朝鮮半島で南北の軍事衝突を抑制し、韓国の経済的成長を裏付けた根幹だ。米国が主導する新アジア太平洋の秩序が形成されつつある21世紀に、韓米同盟の重要性はさらに増していく。韓国は今世紀が自主の時代ではなく、共主の時代であるということを肝に銘じて米国を最大限活用していかなければならない

     

    韓国政府が、GSOMIAの延長を拒否したのは、米韓同盟の価値をどのように評価しているかを表すメルクマールでもある。今世紀が自主の時代ではなく、共主の時代であると力説している。この意味で、GSOMIAの延長を破棄した韓国政府は、同盟=共生の意味を理解していない証拠である。まさに19世紀的な発想法である。

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    最近の韓国メディアでは、半導体素材の国産化に成功したなどのニュースを打ち上げている。数ある素材の中で、韓国が成功するものもあるだろう。だが、半導体素材の特許数では、日本が圧倒的な強さを見せている。韓国は、この日本に対抗してどう国産化を進めるのか。日本の張巡らした特許網をくぐり抜けるのは困難であろう。

     

    『ハンギョレ新聞』(9月28日付)は、「韓国の半導体特許を攻略する日本、技術力・出願の努力が目立つ」と題する記事を掲載した。

     

    大韓弁理士会「材料・部品基盤技術の国産化に向けた特許対策特別委員会」は27日、日本の輸出手続き規制強化の対象になった半導体材料3大品目の韓日特許の現況を公開した。対策委は、日本企業の対韓国特許出願の割合が、韓国企業の対日本特許出願の割合より遥かに高かったと説明した。

     

    韓国特許庁に出願(申請)された半導体感光液(フォトレジスト)関連特許の64%が日本メーカーの所有という分析が出た。また、フッ素ポリイミドは22%、高純度フッ化水素は16%を占めている。今年7月、日本の輸出規制の強化措置対象になった三品目は、国内の次世代半導体工程の主要な材料だ。

     

    (1)「韓国特許庁に出願された半導体3素材の特許数は、次の通りである。

    ①フッ素ポリイミドのうち韓国特許庁に出願された特許の22%が日本メーカーの所有である。日本特許庁における同じ品目の出願特許は、10%だけが韓国メーカーである。

     

    ②フォトレジストは、韓国における日本メーカーの特許保有率が64%だった。日本における韓国メーカーの特許保有率は3.73%に止まった。

     

    ③高純度フッ化水素の場合、韓国に出願された特許の16%が日本メーカーの所有であり、日本出願の特許の1%が韓国メーカーの所有だった。

     

    ④韓国科学研究院や韓国科学技術院(KAIST)大学、延世大学、産学研究院などの国内研究機関が出願したポリイミド関連特許112件も調査した結果、日本特許庁に出願された事例は0件だった」

     

    日本企業が、特許件数で韓国企業を圧倒している状況が一目瞭然である。これを見ると、韓国が国産化に着手しても、成果が出るまで相当の時間がかかるはずだ。日本から特許クレームがつけば生産は不可能。リスクを伴う話だ。そんな危険をおかすよりも、日韓外交の安定化に努める方が、はるかに効果的だろう。そういう損得計算ができないほど、韓国政府は視野狭窄症に陥っている。

     

    (2)「調査報告を行ったチョ・ウジェ弁理士は、「日本の半導体材料産業の競争力が韓国より高いという意味もあるが、日本企業の特許出願行為が韓国より活発という意味でもある」とし、「昨年基準で世界5大特許庁の統計を見てみると、日本の国外出願量が韓国と比べて最大3.5倍も多かった。日本の国外特許出願行為が韓国より活発だという根拠だ」と述べた」

     

    日本は高度経済成長時代、研究開発費の対GDP比で世界1位(現在6位)の実績を上げてきた。過去の研究開発費成果が、こういう形で現れている。韓国が突然、「R&D」を叫んでもすぐに結果は出ないのだ。ちなみに韓国は、2011~17年まで研究開発費の対GDP比が、1~2位にあるものの目立った成果は見られない。基礎研究が不足しているためだ。

     

    (3)「国外特許出願に積極的な日本の動きは、個別企業の事例にも表れている。感光性ポリイミドを作る日本企業「旭化成」は日本に出願した特許1件を、数件に分けて韓国に出願するか、特許技術の実際の用途・製品まで一緒に出願する方式で韓国における権利行使の範囲を広げている。一歩遅れて生産に乗り出した製品でも、製造過程で改善した部分があれば、特許を出願している」

     

    特許出願とはこういうものである。あらゆるケースを想定して出願する。他者の追随を許さないというのが特許戦術のポイントである。

     

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