勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年10月

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    文大統領は、「親企業派」に豹変しつつある。弁護士時代からの「反企業派」から脱皮して、現実を直視するようになったのか。大統領として当たり前のことが、就任後2年半もかかったとは嘆かわしい。文氏がいかに理念の人で、現実から乖離していたかが分る。

     

    『韓国経済新聞』(10月29日付)は、「韓国、AI強国の旗を揚げたが核心人材はわずか7人、トルコより競争力落ちる」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領が28日、「人工知能(AI)政府になる」としてAI強化を強調したが、現実は厳しい。韓国のAI研究と関連人材のレベルは世界下位圏にとどまっている。研究環境が十分でなく、規制も足かせとなっている。政権が交代すれば予算の執行が中断されたりもするからだ。

    (1)「国策研究機関のソフトウェア政策研究所が10月初めに出した報告書「人工知能頭脳指数:核心人材分析と意味」によると、世界AI上位専門家500人のうち韓国は7人にすぎない。主要25カ国を対象に2009年から昨年まで発表された論文と論文引用数を分析して世界AI核心人材500人を選定した結果だ。米国が73人(14.6%)で最も多く、次いで中国(65人)、スイス(47人)、ドイツ(36人)、英国(31人)などの順だった。アジア地域ではシンガポール(31人)、香港(29人)、台湾(9人)が含まれ、韓国よりも多かった。経済規模が韓国よりはるかに小さいトルコも19人にのぼった。韓国は全体25カ国のうち19位だった」

    この記事になぜか、日本の記述がない。意図して抜いたものと見られる。韓国メディアでは時々、こういう「日本無視」をすることがある

     

    韓国の核心的な人材が7人しかいないのは心許ない話だ。これで、AI強国になるのは、月に向かって石を投げるような話に思える。

     

    (2)「中国精華大が昨年出した「2018人工知能報告書」でも、韓国の全体AI研究人材(2664人)はトルコ(3385人)より少ないことが分かった。米国と中国のAI人材はそれぞれ2万8536人、1万8232人にのぼる。韓国は国内の人材需要と比べても供給が全く足りていない。ソフトウェア政策研究所は今年不足するAI人材を1595人と推算した。不足人材は2022年には3132人に増える見込みだ。専門家は韓国のAI力量が落ちるのは関連教育制度の影響が大きいと指摘した。イ・スンファン研究員は「海外の先進国ではコーディングなどプログラミング教育システムがかなり以前から整っているが、必要に応じてAI教育内容が随時変化する」とし「国内でも教育制度を改善しているが、人材が出てくるには時間がかかるだろう」と述べた」

     

    韓国では、AI研究者が少ないと指摘されている。この背景は、後のパラグラフで取り上げられているように、データ収集と活用に制約があるためだ。この問題を解決しなければ、前には進めない。

     

    (3)「国内大学院がAI大学院を新設しているが、AI専門家が不足し、充実した授業を維持できていない。国内の大学から輩出されるAI人材が不足しているため、国内の企業はカナダや米国などAI教育が優秀な海外大学と提携している。その間、政府は手放しにしてきたわけではない。朴槿恵(パク・クネ)政権は2016年、「アルファ碁ショック」をきっかけに韓国型AIを開発するという趣旨で民間企業と提携し、AI研究所(知能情報技術研究院)を設立した。サムスン電子、現代自動車、LGエレクトロニクス、SKテレコム、KT、ネイバー、ハンファ生命の7社が30億ウォン(約2億8000万円)ずつ出資して株式会社の形で始まった研究所だ。政府も年間150億ウォンずつ5年間に計750億ウォンの研究予算を投入する計画だった。しかし「崔順実(チェ・スンシル)国政壟断」事態のため政府の予算がすべて削減された」

    日本の文部科学省は今年6月、Society5.0(超スマート社会)の到来や18歳人口の減少といった変化を踏まえた国立大学の改革方針をまとめた。人工知能(AI)時代に向け、データサイエンスや数理の教育を文系・理系を問わず全学部で課す。留学生の受け入れを後押しするため、従来の基準を上回る授業料を設定できるようにすることも検討する。これが、実現すれば、日本のAI基盤が大きく押し上げられることになろう。

     

    韓国では、朴槿惠政権時に民間企業と提携し、AI研究所(知能情報技術研究院)を設立した。だが、朴氏の弾劾騒ぎで政府予算がすべて削除する「感情的決定」で出鼻を挫かれてしまった。文政権の責任だ。今になって「AI強国」と旗を振っても空々しく聞える。

     

    (4)「AI研究過程で各種データの活用は必須だ。データを多く集めて活用できてこそAI研究は活性化する。国内では匿名化した個人情報の活用が阻まれている。金範洙(キム・ボムス)カカオ取締役会議長は昨年の国政監査で、「韓国で活躍すべきAIの核心人材が韓国に残らず、みんな海外に出ている」とし「人材が離れるのは国内ではデータ収集と活用が難しいため」と吐露した。政府は関連規制を改善するために「データ3法(個人情報保護法、情報通信網法、信用情報法改正案)」を国会に提出した。データ3法は一部の市民団体の反対と政界の無関心で1年近く国会にとどまっている」

    前記のように、朴槿惠政権時の構想が政治的な思惑で消えてしまった。これが、韓国政治最大の問題点である。政権が変っても継続するケースが、ほとんどないことだ。前の政権の目玉政策は、ほぼ100%次期政権が引き継がないという悪例が生きている。これを、変えることだ。

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    韓国の文大統領は、最大野党・自由韓国党制作のアニメで「裸の王様」として描かれ嘲笑の的にされている。国家元首の大統領が、ここまで愚弄されている状況に、韓国社会の置かれている疲弊・混乱を見る思いがする。

     

    経済的な混乱はいうまでもない。2年間で約29%も引上げた最低賃金の混乱が、失業者を増やしアルバイトで食いつなぐ「非正規雇用者」を増やすという悲喜劇を生み出している。この厳しい現状について、一言の反省もなく「経済は正常に軌道を走っている」と嘯いている大統領だ。

     

    長官(大臣)任命では、「チョ・グク」問題を引き起こした。大統領がチョ氏を任命する前に、検察から「余りに疑惑が多すぎる」という情報を得ていた。文氏は、与党支持者の結束を固める意味で、あえて検察情報を無視して大失態を招いた。その後、「チョ・グク」事件の捜査が身辺に及んで、ついにチョ氏は法務部長官(法務大臣)を辞任するという醜態を演じた。

     

    日韓関係では、泥沼にはまり込んでいる。文氏は、大法院の徴用工裁判で日韓基本条約を骨抜きにする判決を誘導した。大法院判決の出る2ヶ月前、文氏は徴用工の「人権判決」を主張する演説を行い、司法部にゴー・サインを出したのである。本来ならば、沈黙を守るべき大統領が「サイン」を送ったので、大法院はその期待に応えたものであろう。韓国に、「三権分立」を守る政治的な雰囲気はないのだ。朴槿惠・前大統領の釈放を拒んでいる「元凶」は、大統領夫人であろう。「女の闘い」の凄まじさを感じるのだ。

     

    『ハンギョレ新聞』(10月29日付)は、「裸になった文大統領、手錠を掛けられたチョ・グク、 アニメでバカにした自由韓国党」と題する記事を掲載した。

     

    10月28日、自由韓国党の「オルンソリの家族」製作発表会のアニメーションで、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は裸のままで登場して、与党を怒らせた。

     

    (1)「『裸になった王様』編として製作されたオルンソリ(「正しい声」を意味する自由韓国党の公式YouTubeチャンネル)の動画で、文大統領は奸臣の言葉に騙され、安保ジャケット、経済ズボン、人事ネクタイを着たと勘違いして裸になった姿で戯画化された。特に人事ネクタイを説明する場面で、チョ・グク前法務部長官はパトカーの前で手錠を掛けられた姿で登場する。文大統領のキャラクターは、「ただでさえ素敵なチョ長官が、ブレスレットを着けるからもっと素敵だね」と、チョ前長官に直接言及したりした」

     

    下線部分は、すべて真実である。文大統領は奸臣(側近)の言葉に騙され、安保ジャケット、経済ズボン、人事ネクタイを着たと勘違いして裸になっている。大統領府に集められた元学生運動家の闘士が、文氏に現実を無視した進言を連発して、韓国を危機に追い込んでいる。安保ジャケットでは、南北融和という理念先行で、北朝鮮の口車に乗せられている。経済ズボンは、最低賃金の大幅引上げによる経済混乱。人事ネクタイでは、チョ・グク氏の疑惑を見抜けず、こともあろうに法務部長官(法務大臣)に任命し、30日余りで辞任に追い込まれた。

     

    (2)「文大統領は即位式で裸になったまま、「楽しく国を滅ぼしたら、ついに狂ってしまったな」、「国がいくら難しくても、服を着ることができないバカを王様にしておくことはできないでしょう。いっそ勤勉に働く我が家の牛の方がましだ」などの嘲弄を受ける。アニメーションの終わりは、お爺さんが孫に「まさに絶えない災い! ムン、災(ジェ)、害(アン)!なのだよ」とエピソードを紹介して終りになる」

     

    このパラグラフも、その通りだと思う。「楽しく国を滅ぼしたら、ついに狂ってしまったな」の表現は意味深長である。あるいは、文氏の「認知症」についての決定的な証拠を掴んだのだろうか。

     

    (3)「自由韓国党はこの日、国会議員会館でオルンソリの家族製作発表会を開き、キャラクター7種類を公開して、人形劇とアニメーションを披露した。ファン・ギョアン代表は、動画の視聴が終わった後に祝辞で、「私たちの政党の歴史において、党のレベルで家族キャラクターを作り、国民に対して身近に近付こうとする試みは、多分初めてだろう」と話し、「私たちの党が良い政策を上手に作っていても、あまりに固くて面白くなく、知ってもらえることができなかった側面がある。オルンソリの家族が作っていく面白い話に、国民の皆さんも大いなる関心を示してほしい」と明らかにした。製作発表会では、マグカップや帽子、トートバッグ、タオル、ノート、Tシャツなどのキャラクターグッズを販売したりした」

     

    前政権党である自由韓国党が、来年の総選挙を控えて「打倒文政権」に立ち上がる。こういうアニメで、文政権を批判せざるを得ないのは不幸である。すべて、現実の裏付けがあるだけに、余計に笑うに笑えない、寒々としたものを感じるのだ。与党「共に民主党」がまともな政党であれば、政策論争ができるだろうが、それもできないほど低レベルの政策立案能力である。


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    韓国のコンビニ経営者は、最低賃金の大幅引上げに最も反対した人たちである。アルバイトの最低賃金が、コンビニ経営者の手取り以上になるという理由だった。「自分がアルバイトになりたいほど」という話が多かったのである。

     

    天下の悪法である「最低賃金の大幅引上げ」によって、コンビニ業界は「24時間営業」は建前で、夜間は営業休止するコンビニが増えているという。理由は、アルバイトの人件費が出ない、という切実な問題である。

     

    日本のセブンイレブンの場合、1店舗あたりの平均的な月間売上高は約1900万円という。商品の販売によって平均570万円の粗利益が得られる計算だ。この半分が本部に徴収されるので、店舗オーナーの手元に残るのは285万円しかない。店舗オーナーは、この中から自身の給料やアルバイト店員の給料、その他経費などを支払うので、場合によっては利益がほとんど残らないこともあるという。それでも、韓国のコンビニよりも恵まれているのだ。

     

    『朝鮮日報』(10月29日付)は、「24時間コンビニ4万店時代、現実はバイト代支給できず夜間休止」という記事を掲載した。

     

    24時間営業」の代名詞と考えられてきたコンビニエンスストアが、深夜営業を減らしている。1人暮らし世帯の増加に伴い、コンビニは全国で4万店を突破したが、景気低迷に最低賃金引き上げが重なって、深夜時間の営業が赤字になっているのだ。働き手が確保できず深夜営業を中止する日本のコンビニの状況とは対照的だ。

     

    (1)「10月29日に流通業界が明らかにしたところによると、9月末基準で国内の3大コンビニエンスストアの店舗数は37156店で、前年同期比で約1600店増加した。イーマート24やミニストップなど、他のコンビニの店舗も合わせると4万店を上回る。一方、深夜営業を中止するコンビニは増えている。同じ期間にCUの深夜営業休止の店舗は20%で、昨年末(17%)より3ポイント増加した。セブンイレブンは18.4%で昨年末(17.6%)より増えた。GS256月末基準で100店のうち14店が深夜営業を行っていない。24時間営業を自主的に選択できるイーマート24は、10店のうち8店が24時間営業を行っていない」

     

    コンビニの開店数は増えているが、深夜営業店は減りつつあるという。24時間営業を自主的に選択できるイーマート24は、8割が24時間営業を行っていないという。

     

    (2)「コンビニが24時間営業を取りやめる理由は、深夜に営業しても採算が取れないからだ。今年の最低賃金は昨年より10.9%(8350ウォン=約778円)上昇し、加盟店オーナーにとっては費用支出が大幅に増えた一方で売上は逆に減少した。今年8月基準で国内3大コンビニの店舗当たりの売上額増加率は、前年同月比-0.9%で、7か月連続でマイナスを記録した

     

    売上減少に見舞われている韓国コンビニにとっては、最賃大幅引上げは「死刑宣告」と同じである。深夜営業による割増し賃金を支払える余裕などあるはずもない。日本のコンビニの売上をみると、僅かずつでも増えている。ただ、過剰出店の弊害は指摘されている。

     

    (3)「ソウル市鍾路区のあるコンビニの加盟店オーナーは、「アルバイトに支給する夜間手当が夜間の売り上げと逆転した」として「時がたつにつれ赤字幅が大きくなり、営業時間の短縮を要求するほかなかった」と話した。加盟店は直前3か月間、深夜0時から午前6時までの時間帯に営業損失が発生すれば、コンビニ本社に24時間営業の短縮を申請することができる。24時間営業をやめれば加盟本部から電気料金の支援など各種支援金が受けられなくなるが、増えた赤字幅を考えると、やはり24時間営業をやめて短縮営業を実施した方がましだと判断したわけだ」

     

    夜間売上が、アルバイト代と逆転する現象が起こっているという。これでは、何のために深夜営業をしているか分らなくなろう。過去2年間の最賃引上幅は、約29%にもなっている。いくら好調のコンビニでも、この最賃引上幅をクリアできる売上増は期待できまい。

     

    (3)「「コンビニ王国」の日本でも、深夜営業を取りやめる動きが出ている。「コンビニ24時間営業」を初めて導入した日本最大のコンビニ企業、セブンイレブンは、今月21日に24時間営業の原則を見直すことを明らかにした。ファミリーマートなど日本の別のコンビニ企業も実験的に短縮営業に乗り出した。しかし、日本のコンビニの24時間体制の見直しは、働き手がいないためだ。韓国では、急激な最低賃金上昇のせいで人件費を賄えず深夜営業を諦める状況である」

     

    日本では、人手が足りずコンビニの深夜営業が困難になっている。韓国では、人手は余っていてもアルバイト代が高くて採算が採れず、深夜営業を休止する。この日韓のコンビニ事情に、経済政策の巧拙のすべてが表れている。「アベノミクス」を「アホノミクス」と揶揄したエコノミストに聞かせたいような話だ。

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    文大統領から、これほど自己過信の発言が出てくるとは思わなかった。文氏が国民に最も愛されていると記者団に語ったのだ。最近、文氏は「認知症」にかかっているのでないかと懸念する声も聞かれるが、こういう発言を聞くと「やっぱり!」という心配に変る。

     

    『レコードチャイナ』(10月29日付)は、「『私ほど国民に愛された政治家はいない』と文大統領、ネットは『国が心配だ』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国紙『国民日報』(10月25日付)によると、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「私ほど国民に愛された政治家は、そういないのでは」と述べた。

    (1)「記事によると、文大統領は同日、青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)で記者団との懇談会を開催。その席で「最近いろいろと困難はあるが、私ほど国民に愛された政治家はそういないのではないか」と述べ、「それは全面的に記者の皆さんのおかげだと思っている」と感謝の言葉を伝えたという。また「メディアが政権に力を与え、温かい批判もし、文在寅政権の成功に向けた大切なパートナーの役割を担ってくれている」との考えを示し、「任期半ばを過ぎたが、残り半分もこれまでと変わらぬことを願う」とも話したという」

     

    「私ほど国民に愛された政治家はそういないのではないか」という発言は、側近がそう言って勇気づけているのであろう。来月で任期の半分を過ぎるが、成功した政策はゼロ。すべて失敗している。これでは、気がおかしくなって当然であろう。側近が、落込む文氏を激励しているのだ。

     

    (2)「その他、「立法、行政、司法の三権にメディアが加わった四権が国を動かす」「これまでももちろん、国の発展に四領域の大きな寄与があった。メディアには、三権のような現実的な権力はないが、真実が最も大きな力になる」となどと述べ、「今はメディアが真実を伝えることを邪魔する権力はなく、存分に真実を明らかにすることができるようになったが、果たして私たちは真実をバランスを持って伝えているのか、自らを省察する努力が必要だ」とも呼び掛けたという」

     

    このパラグラフは、正論である。メディアが真実を伝えることが不可欠である。ただ、メディアの正統な批判を受入れないという文政権の硬直性が問題である。文氏の最大の失敗は、元学生運動家の左派連中を大統領府の秘書官に採用し過ぎたことだ。これで、風通しが完全に悪くなった。

     

    (3)「この記事に、韓国のネットユーザーからは「愛してます、大統領」「いつも応援してます。尊敬してます!」などの応援の声も上がっているものの、多くのコメントは批判的であった。

    「笑える」

    「ちょっとおかしいんじゃないの」

    「本気で国が心配になる」

    「本人がフェイクニュースを作ってるよ(笑)」

    「本当にそう思ってるんなら、かなり深刻な状態じゃない?」

    「国民から愛されてるんじゃなくて、支持者の熱狂が過去最高レベルなんでしょ」

    「国民ときちんと疎通できている大統領なら、国民がここまで分裂しているというのに、愛されてるなんて言葉は出てこないんじゃないか?」など、批判的な内容となっている」

     

    これらの批判に同感せざるを得ない。この大統領が率いる韓国はどこへ行くのか。後任大統領は、立て直しに大変なエネルギーを必要としよう。

     

     

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    世界のスマホ戦争で勝ち残るには、思い切った生産再編によるコストダウンを図るしかない。サムスンは、中国でのスマホ生産を全量打切り、ベトナムへ移転させた。だが、中国国内メーカーへODM(委託先ブランドによる設計・生産))として6000万台を委託することになった。これにより、国内の部品メーカーは仕事を失うので対応に追われている。

     

    『朝鮮日報』(10月28日付)は、「サムスンのスマホ6000万台 中国に生産を引き渡す」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「サムスンが1年間に生産するスマートフォン3億台のうち20%に当たる6000万台を、世界各国にある自社工場では製造せずに中国企業に丸ごと任せることにした影響で、中小部品企業の仕事がなくなってしまうからだ。サムスン側で価格帯だけ決めて、あとは中国企業が設計・部品調達・組み立てまで全て行う方式(ODM、委託先ブランドによる設計・生産)だ。サムスンはこのような中国製スマホに「サムスン」ブランドを付けて世界市場で販売する。世界1位の製造競争力を自負してきたサムスン電子の歴史では前例のないことだ」

     

    サムスンが、ここまで思い切った生産再編に踏み出すのは、スマホの需要が一巡していることもある。中国の中小企業に委託生産させて、それにサムスンブランドをつけて販売するもの。全生産量の約20%が、「ODM」方式になる。

     

    (2)「理由は、中国の低価格スマホの攻勢の中で生き延びるためだ。安くて品質の良い100ドル前後の中国製と競争するために、自らが中国製になるという最強手段を選んだわけだ。生存という絶対的使命の前に「サムスン製造」というプライドはおごりだ。アップルは台湾のフォックスコン(鴻海科技集団)に自社が選んだ部品と設計図を渡して組み立てを依頼しているが、サムスンはそれより数段階、委託の度合いを高める。サムスンに納品しているある中小企業の代表は「われわれにとっては死刑宣告」と話した。また、別の中小企業の代表は「非常対策チームが苦境を訴え、当初の7000万台から1000万台減った」とした上で「サムスンの物量を受注した中国メーカーを訪ねて、われわれの部品を買ってもらうよう泣きついている」と話した」

     

    国内の部品メーカーにとっては、サムスンからの受注が20%も減ることになるので恐慌を来たす。サムスンにとってはコストダウンでも、韓国経済全体にはマイナス要因である。新たなビジネスが起こらない限り、韓国にとっては縮小効果をもたらす。新ビジネスを創出するには規制緩和である。文政権では、それが遅々として進まないのだ。

     

    (3)「サムスン・現代自動車・SKLGなど国内4大グループが、死活を懸けた事業再編に乗り出している。安価な製造基地だった中国が、今ではもっと安い製品を市場に送り出すライバル社として浮上した上、人工知能や電気自動車といった製造業のパラダイムシフトが急速に進み、ともすれば「二流」に没落する危機に直面しているのだ。現代自は、今後は自動車の割合を半分まで下げる劇薬処方を打ち出し、SKグループはグループの根幹である化学事業を一部売却している。LGグループも毎月のように系列会社の売却や別会社の買収などを通じて「1等遺伝子(DNA)」への変身を遂げようとしている。専門家たちは「4大グループが中小企業数百社を従えて完成品を作る『船団型生態系』には限界がある」として「韓国の製造業が、生死を分けるターニングポイントに立っている」と話した」

     

    韓国4大グループが、それぞれ事業再編に着手する。この結果しだいでは、韓国経済の盛衰に大きな影響を与えかねない。とりわけ、現代自動車が立ち直れるかどうかである。自動車部門を売上の半分に縮小するとしても、小型飛行機・ロボティクスで伸すには容易なことではない。安易に「新規部門」と言うけれど、小型飛行機で成功するには大変なコストを要する。ホンダが、一度は小型飛行機開発を諦めかけたほどの「カネ食い虫」である。収益的に苦しくなってきた現代自に、その負担余力があるか疑問である。

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