文大統領は、「親企業派」に豹変しつつある。弁護士時代からの「反企業派」から脱皮して、現実を直視するようになったのか。大統領として当たり前のことが、就任後2年半もかかったとは嘆かわしい。文氏がいかに理念の人で、現実から乖離していたかが分る。
『韓国経済新聞』(10月29日付)は、「韓国、AI強国の旗を揚げたが核心人材はわずか7人、トルコより競争力落ちる」と題する記事を掲載した。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領が28日、「人工知能(AI)政府になる」としてAI強化を強調したが、現実は厳しい。韓国のAI研究と関連人材のレベルは世界下位圏にとどまっている。研究環境が十分でなく、規制も足かせとなっている。政権が交代すれば予算の執行が中断されたりもするからだ。
(1)「国策研究機関のソフトウェア政策研究所が10月初めに出した報告書「人工知能頭脳指数:核心人材分析と意味」によると、世界AI上位専門家500人のうち韓国は7人にすぎない。主要25カ国を対象に2009年から昨年まで発表された論文と論文引用数を分析して世界AI核心人材500人を選定した結果だ。米国が73人(14.6%)で最も多く、次いで中国(65人)、スイス(47人)、ドイツ(36人)、英国(31人)などの順だった。アジア地域ではシンガポール(31人)、香港(29人)、台湾(9人)が含まれ、韓国よりも多かった。経済規模が韓国よりはるかに小さいトルコも19人にのぼった。韓国は全体25カ国のうち19位だった」
この記事になぜか、日本の記述がない。意図して抜いたものと見られる。韓国メディアでは時々、こういう「日本無視」をすることがある
韓国の核心的な人材が7人しかいないのは心許ない話だ。これで、AI強国になるのは、月に向かって石を投げるような話に思える。
(2)「中国精華大が昨年出した「2018人工知能報告書」でも、韓国の全体AI研究人材(2664人)はトルコ(3385人)より少ないことが分かった。米国と中国のAI人材はそれぞれ2万8536人、1万8232人にのぼる。韓国は国内の人材需要と比べても供給が全く足りていない。ソフトウェア政策研究所は今年不足するAI人材を1595人と推算した。不足人材は2022年には3132人に増える見込みだ。専門家は韓国のAI力量が落ちるのは関連教育制度の影響が大きいと指摘した。イ・スンファン研究員は「海外の先進国ではコーディングなどプログラミング教育システムがかなり以前から整っているが、必要に応じてAI教育内容が随時変化する」とし「国内でも教育制度を改善しているが、人材が出てくるには時間がかかるだろう」と述べた」
韓国では、AI研究者が少ないと指摘されている。この背景は、後のパラグラフで取り上げられているように、データ収集と活用に制約があるためだ。この問題を解決しなければ、前には進めない。
(3)「国内大学院がAI大学院を新設しているが、AI専門家が不足し、充実した授業を維持できていない。国内の大学から輩出されるAI人材が不足しているため、国内の企業はカナダや米国などAI教育が優秀な海外大学と提携している。その間、政府は手放しにしてきたわけではない。朴槿恵(パク・クネ)政権は2016年、「アルファ碁ショック」をきっかけに韓国型AIを開発するという趣旨で民間企業と提携し、AI研究所(知能情報技術研究院)を設立した。サムスン電子、現代自動車、LGエレクトロニクス、SKテレコム、KT、ネイバー、ハンファ生命の7社が30億ウォン(約2億8000万円)ずつ出資して株式会社の形で始まった研究所だ。政府も年間150億ウォンずつ5年間に計750億ウォンの研究予算を投入する計画だった。しかし「崔順実(チェ・スンシル)国政壟断」事態のため政府の予算がすべて削減された」
日本の文部科学省は今年6月、Society5.0(超スマート社会)の到来や18歳人口の減少といった変化を踏まえた国立大学の改革方針をまとめた。人工知能(AI)時代に向け、データサイエンスや数理の教育を文系・理系を問わず全学部で課す。留学生の受け入れを後押しするため、従来の基準を上回る授業料を設定できるようにすることも検討する。これが、実現すれば、日本のAI基盤が大きく押し上げられることになろう。
韓国では、朴槿惠政権時に民間企業と提携し、AI研究所(知能情報技術研究院)を設立した。だが、朴氏の弾劾騒ぎで政府予算がすべて削除する「感情的決定」で出鼻を挫かれてしまった。文政権の責任だ。今になって「AI強国」と旗を振っても空々しく聞える。
(4)「AI研究過程で各種データの活用は必須だ。データを多く集めて活用できてこそAI研究は活性化する。国内では匿名化した個人情報の活用が阻まれている。金範洙(キム・ボムス)カカオ取締役会議長は昨年の国政監査で、「韓国で活躍すべきAIの核心人材が韓国に残らず、みんな海外に出ている」とし「人材が離れるのは国内ではデータ収集と活用が難しいため」と吐露した。政府は関連規制を改善するために「データ3法(個人情報保護法、情報通信網法、信用情報法改正案)」を国会に提出した。データ3法は一部の市民団体の反対と政界の無関心で1年近く国会にとどまっている」
前記のように、朴槿惠政権時の構想が政治的な思惑で消えてしまった。これが、韓国政治最大の問題点である。政権が変っても継続するケースが、ほとんどないことだ。前の政権の目玉政策は、ほぼ100%次期政権が引き継がないという悪例が生きている。これを、変えることだ。