韓国にとって当面する最大の問題は、8月に決めたGSOMIA(日韓軍事情報包括管理協定)破棄の扱いである。大統領府は、形式論で日本の「ホワイト国除外」を撤廃しなければ、GSOMIA廃棄を撤回しないと駄々をこねている状態だ。
日本政府は、こういう韓国の言い分を一顧だにせず、韓国が自主的に徴用工問題を解決するよう繰り返している。韓国は、日本の言い分に反論もできず、「GSOMIA」か「徴用工問題」か、この両難問を抱えて困惑している。完全な外交戦術の失敗である。文氏は弁護士として難問解決の実績がなかったのだ。ただ、「べき論」だけで生きて来た弁護士であったに違いない。左派系特有の弁護士なのだろう。
『朝鮮日報』(10月26日付)は、「安倍首相、来月は文大統領と会わず12月に略式会談」と題する記事を掲載した。
(1)「天皇即位式のため日本を訪問した李洛淵(イ・ナクヨン)首相が24日に安倍首相と会談し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の親書を手渡した。しかし日本政府による韓国への強硬姿勢は全く変わっていないことが25日に明らかになった。ただし日本政府内からは「韓日関係改善の必要性」に言及する声も出始めている。ある外交筋は25日「李首相は安倍首相に対し『韓日両首脳の出会いが実現してほしい』という趣旨の言葉をかけたが、首脳会談の実現は難しいようだ」とした上で「強制徴用問題の解決で接点が見いだせない状態では、安倍首相は首脳会談を考えていないと聞いている」と伝えた」
安倍首相は、徴用工問題が解決しない限り、首脳会談に応じない態度をはっきりさせている。韓国は、ともかく首脳会談にこぎ着け、それを理由にGSOMIA廃棄を撤回する意向であった。その思惑が外れたショックは大きい。GSOMIAは、韓国が日本への「当てつけ」で決めたことで深く考えた結果ではない。韓国は、米国から厳しく批判されており、進退に窮している。ここは、大いに悩んで「大人の外交」をするべきだろう。
(2)「日本政府のある関係者は「ASEANプラス3(韓中日)首脳会議など、年末には複数の多国間会議があり、それらに日韓の首脳が同時に出席する機会はあるが、二国間会談は難しいだろう」「ただし12月に北京で開催される日中間三カ国首脳会議が開催されれば、立ち話形式の略式会談なら可能なはずだ」と述べた。複数の日本メディアは今回の韓日首相による会談について「戦後最悪と評価されている両国関係の空気を変えるには力不足だった」と報じた。読売新聞は「安倍首相は李首相から文大統領の親書を受け取ったが、これを開くこともせずただちに強制徴用問題における韓国側の解決策を要求した」と報じた。東京新聞は「安倍首相は親書に目をやりもしなかった」と伝えた」
日本は、12月の日中韓三カ国首脳会議が開催されれば、その際に略式会談には応じる姿勢を見せているという。こうなると、11月の会談はないことになる。GSOMIAの失効日は11月23日。安倍首相が文大統領に会わなければ、韓国は打つ手がない。
(3)「日本の茂木外相はこの日行われた定例会見で「安倍首相が直接韓国の政治指導者(李首相)に対し、わが国の一貫した立場を確実に伝えたことに意義がある」「(首脳会談は)韓国側が首脳会談を行える環境を整えられるかどうかにかかっている」と説明した。李首相の日本訪問に随行した韓国外交部(省に相当)の趙世暎(チョ・セヨン)第1次官もこの日「強制徴用問題については相変わらず双方の立場の違いが大きい」と伝えた。これについて外交部の別のある幹部は「日本は請求権協定を守るべきとするのが出発点だが、われわれも大法院(最高裁に相当)判決を尊重すべきというのが基盤だ」「互いに譲れない原則の上で解決策を見いだすべき状況だ」と述べた」
韓国は日本を甘く見てきた結末が、現在の日韓関係をここまで悪化させた。韓国の国内でもソウルの公立高校の生徒が「反日教育」反対で立ち上がっている。その裏には、父兄も同意見であることを覗わせている。文政権は、韓国経済悪化の中で最大の「支援者」になるべき日本に対して、「克日」呼ばわりして粋がっている。心ある韓国国民であれば不安になって当然だ。韓国は、完全に戦術を間違えて迷路にはまり込んでいる。