勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年10月

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    韓国にとって当面する最大の問題は、8月に決めたGSOMIA(日韓軍事情報包括管理協定)破棄の扱いである。大統領府は、形式論で日本の「ホワイト国除外」を撤廃しなければ、GSOMIA廃棄を撤回しないと駄々をこねている状態だ。

     

    日本政府は、こういう韓国の言い分を一顧だにせず、韓国が自主的に徴用工問題を解決するよう繰り返している。韓国は、日本の言い分に反論もできず、「GSOMIA」か「徴用工問題」か、この両難問を抱えて困惑している。完全な外交戦術の失敗である。文氏は弁護士として難問解決の実績がなかったのだ。ただ、「べき論」だけで生きて来た弁護士であったに違いない。左派系特有の弁護士なのだろう。

     

    『朝鮮日報』(10月26日付)は、「安倍首相、来月は文大統領と会わず12月に略式会談」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「天皇即位式のため日本を訪問した李洛淵(イ・ナクヨン)首相が24日に安倍首相と会談し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の親書を手渡した。しかし日本政府による韓国への強硬姿勢は全く変わっていないことが25日に明らかになった。ただし日本政府内からは「韓日関係改善の必要性」に言及する声も出始めている。ある外交筋は25日「李首相は安倍首相に対し『韓日両首脳の出会いが実現してほしい』という趣旨の言葉をかけたが、首脳会談の実現は難しいようだ」とした上で「強制徴用問題の解決で接点が見いだせない状態では、安倍首相は首脳会談を考えていないと聞いている」と伝えた」

     

    安倍首相は、徴用工問題が解決しない限り、首脳会談に応じない態度をはっきりさせている。韓国は、ともかく首脳会談にこぎ着け、それを理由にGSOMIA廃棄を撤回する意向であった。その思惑が外れたショックは大きい。GSOMIAは、韓国が日本への「当てつけ」で決めたことで深く考えた結果ではない。韓国は、米国から厳しく批判されており、進退に窮している。ここは、大いに悩んで「大人の外交」をするべきだろう。

     

    (2)「日本政府のある関係者は「ASEANプラス3(韓中日)首脳会議など、年末には複数の多国間会議があり、それらに日韓の首脳が同時に出席する機会はあるが、二国間会談は難しいだろう」「ただし12月に北京で開催される日中間三カ国首脳会議が開催されれば、立ち話形式の略式会談なら可能なはずだ」と述べた。複数の日本メディアは今回の韓日首相による会談について「戦後最悪と評価されている両国関係の空気を変えるには力不足だった」と報じた。読売新聞は「安倍首相は李首相から文大統領の親書を受け取ったが、これを開くこともせずただちに強制徴用問題における韓国側の解決策を要求した」と報じた。東京新聞は「安倍首相は親書に目をやりもしなかった」と伝えた」

     

    日本は、12月の日中韓三カ国首脳会議が開催されれば、その際に略式会談には応じる姿勢を見せているという。こうなると、11月の会談はないことになる。GSOMIAの失効日は11月23日。安倍首相が文大統領に会わなければ、韓国は打つ手がない。

     

    (3)日本の茂木外相はこの日行われた定例会見で「安倍首相が直接韓国の政治指導者(李首相)に対し、わが国の一貫した立場を確実に伝えたことに意義がある」「(首脳会談は)韓国側が首脳会談を行える環境を整えられるかどうかにかかっている」と説明した。李首相の日本訪問に随行した韓国外交部(省に相当)の趙世暎(チョ・セヨン)第1次官もこの日「強制徴用問題については相変わらず双方の立場の違いが大きい」と伝えた。これについて外交部の別のある幹部は「日本は請求権協定を守るべきとするのが出発点だが、われわれも大法院(最高裁に相当)判決を尊重すべきというのが基盤だ」「互いに譲れない原則の上で解決策を見いだすべき状況だ」と述べた」

     

    韓国は日本を甘く見てきた結末が、現在の日韓関係をここまで悪化させた。韓国の国内でもソウルの公立高校の生徒が「反日教育」反対で立ち上がっている。その裏には、父兄も同意見であることを覗わせている。文政権は、韓国経済悪化の中で最大の「支援者」になるべき日本に対して、「克日」呼ばわりして粋がっている。心ある韓国国民であれば不安になって当然だ。韓国は、完全に戦術を間違えて迷路にはまり込んでいる。

     

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     中国財政が、どれだけ酷い状況にあるかご存じだろうか。日本でもしばしば話題に上がる「基礎的財政収支の赤字」と言えば、一度や二度は聞いたことがあるはずだ。基礎的財政収支とは、政府収入から政府支出(公債利払いを含まない)を差し引いた収支を指す。日本は1993年から赤字に苦しんできた。1998年には-9.8%にも達したが、今は-2.92%(2018年)と改善している。消費税率引上げも寄与して赤字脱出まであと一息である。

     

    中国は、日本よりも厳しい対GDPの基礎的財政収支赤字に追い込まれている。

     

    2015年 -2.21%(世界順位 118位)

    2016年 -2.95%( 〃   132位)

    2017年 -2.97%( 〃   145位)

    2018年 -3.78%( 〃   165位)

    (資料:IMF)

     

    民間(家計+企業)の債務残高のGDP比率は、日本のバブル崩壊時とほぼ同じレベル達して200%を超えているのだ。この事実と照らし合わせると、中国経済はすでに「重症」になっている。米国と貿易戦争する体力は、とうの昔に消えているのだ。その自覚がないままに、無謀な駆け引きに時間を費やしている。

     

    『サーチナ』(10月25日付)は、「さらなる成長を望むなら 中国は日本の真実の姿を知るべきであるー中国メディア」と題する記事を掲載した。

     

    冒頭に上げたように、中国の基礎的財政収支の赤字が大きな問題になってきた。バブル経済の整理にも着手できない状況で、さらなる景気下支えを求められている。しかも、インフラ投資の拡大という財政政策の発動である。日本が舐めてきた辛酸を、今度は中国が経験させられる。日本の経験を真摯に学ぶ時期に遭遇している。

     

    中国メディア『捜狐』はこのほど、日本は今なおアジアで最も発展した国の1つであると伝えつつ、中国人は日本の真実の姿を知るべきであると論じる記事を掲載した。

     

    (1)「バブル崩壊後の日本経済については、「失われた20年」、あるいは、「失われた30年」などと言われており、この言葉は中国でも日本経済の現状を表現する言葉として多用されている。しかし、記事は、多くの中国人の眼に映る日本の姿と言えば、「衰退が待っている没落しつつある国」というものだと主張。確かに少子高齢化に直面する日本の経済成長率は低迷し続けているが、「他国のあら探しばかりしていても、そこに前進はない」と伝え、視点を変えて見てみれば「日本のすごさが見えてくるはずだ」と論じた」

     

    日本の苦悩は、明日の中国が味わう苦悩である。それが、基礎的財政収支の赤字に現れている。中国はこれから本格化するバブル崩壊の重圧で、財政赤字は自動的に膨らんでゆく。日本を笑った目で、今度は母国・中国の悲惨さを見ることは確定している。それが、基礎的財政収支の赤字拡大に現れるのだ。


    (2)「現在の中国の国内総生産は日本を大きく上回っているが、日本の国土は中国のわずか25分の1、人口は10分の1しかない国だと指摘。また、日本は法治国家であると同時に、世界で最も良好な治安があり、国民は安全で安心できるものをいつでも口にすることができ、寿命は世界で最も長いと強調し、つまり、日本は中国にない環境や体制をすでに構築した国でもあると論じた」

     

    日本は、GDP世界2位の間に、国民福祉面で打つべき手を打ってきた。中国は、国民が豊かになる前に超高齢社会へと落込む。この差は大きい。

     

    (3)「さらに、中国人が日本経済に抱く印象といえば「停滞」という言葉がしっくりくると指摘し、こうした印象は日本の家電メーカーが中国企業に買収されたり、事業を譲渡したりしていることが要因であるとする一方、日本企業はすでに付加価値の高くない家電などの分野から大きな転換を果たしており、医療やバイオ産業、ロボットや素材分野など付加価値の高い産業に注力していると指摘した」

     

    中国が未来産業に着手する寸前に、米中貿易戦争で技術窃取の道を封じられた形だ。もともと、他国の技術を盗んで産業高度化を図ろうという「根性」が間違えている。米国から鉄槌を食って当然なのだ。

    (4)「そのほか記事は、日本の対外純資産残高が世界一であることや、日本の貧富の格差が中国より小さいことなど、日本が中国より優れている点を多々挙げながら、「中国がさらに成長し、成熟するためには、自国の足りない点を知るためにも日本の真実の姿を知る必要がある」と伝えている」

     

    日本の失敗の歴史を学ぶことである。その筆頭は太平洋戦争開戦である。中国が、むこうみずに米国と開戦すれば自滅する。単に米国と戦うのではなく、日米豪印が手を組む。EUも中国を経済封鎖するはず。習近平氏は永久国家主席の座を追われるだろう。こういう愚かな結末を見ないように自重すべきなのだ。

     

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    韓国は、日本の徴用工問題への対応が揺るがないことを再認識して失望感を高めている。その不満イライラが、GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)破棄撤回の条件を強調し、日本のホワイト国除外を前提にしている。そうでなければ、「国民感情が許さない」と得意の弁を述べているのだ。

     

    日本にとって、GSOMIAは不可欠な存在ではない。ただ、日米韓三ヶ国の情報インフラとして象徴的な意味を持つので、日本は協力姿勢をとっているもの。韓国こそ、北の弾道ミサイルの充実振りからみて、GSOMIAの必要性が認知されている。韓国にとって最も有効なGSOMIAを、こともあろうに外交の「捨て石」に使うという、不埒千万な行動を見せている。おかしな政府である。

     

    『ハンギョレ新聞』(10月25日付)は、「日本の報復措置に変化なければGSOMIA復元は国民が容認できない」と題する記事を掲載した。

     

    『ハンギョレ新聞』は、文政権の広報紙的な役割をしているので、政権が何を考えているかを知る上で便利である。

     

    (1)「韓日葛藤の中で両国の首相会談が1年余ぶりに開かれたが、韓日間の立場の溝は埋まらなかった。1123日に韓日情報保護協定(GSOMIA)正式終了を控えて、一角では“GSOMIA復元主張が出ているが、「日本の報復措置(輸出規制)に変化がなければGSOMIAの復元を国民が容認しないだろう」と韓国政府高位当局者が明らかにした」

     

    国民が容認しないだろう、という言葉は便利だ。「大衆迎合」政治の本質がここにある。安全保障という高度の専門的な問題が、国民の人気投票にまかすほど無責任な政治はない。文政権には、大衆迎合はあってもリーダーシップ発揮の気持ちはなくなっている。

     

    (2)「韓日関係に精通した韓国政府高位当局者は25日、記者たちと会い「GSOMIA終了期限まで一カ月を切ったが、日本の報復措置に変化がないならばGSOMIAを復元することは国民が容認しないだろう」とし「日本は報復措置を解くためには強制動員問題を解かなければならないと言っている。結局、3個のボタンがすべてそろってこそ(韓日関係を)解くことができる」と話した。さらに「韓日関係は、米国に解決してくれと言うのでなく、韓日間で解かなければならない」と付け加えた」

     

    韓国は、「ホワイト国除外」を一大損失と喧伝しているが、日本と親しい台湾も「ホワイト国除外」扱いである。台湾は、それについて何一つ不満を言っているわけでない。韓国がこれだけ騒ぎ回るのは、韓国に日本から特別扱いされて当然という甘えがある。その甘えが、日韓問題を引き起こす原因である。

     

    日本の輸出手続き規制が始まって100日過ぎた。韓国ではこの間、何らの損失を受けず、逆に日本が損害を被った。それ故、「韓国の勝利」と報道している。ならば、「ホワイト国除外」で何の問題もないはずだ。

     

    (2)「日本の読売新聞は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が安倍首相宛てに送った親書には「可能なら近い時期に会い、未来指向的な両国関係に向けた議論をしたい」と書かれていたと匿名の日本政府関係者の話を引用して25日報道した。これに対して、この高位当局者は「李洛淵(イ・ナギョン)首相が日本の安倍晋三首相と会談した後に『韓日関係が改善され、両首脳(文在寅大統領と安倍首相)が会えば良いのではないか』と言及し、首脳会談を具体的に提案したことはない」と話した。

     

    文大統領は、親書で安倍首相に会談を申入れてきた。その前提には、韓国が、徴用工問題への解決案をはっきりと提示して、話し合える土俵を整えることだ。肝心の話を棚上げして、ただ会談するという話は危険である。

     

    (3)「また、李洛淵首相が安倍首相に「韓国は1965年の韓日基本条約と請求権協定を尊重してきたし、今後もそうするだろう」と明らかにしたことに対して、前出の韓国政府高位当局者は「日本は韓国が国際法を守らない国というフレームを作ろうとしているが、私たちは請求権協定を遵守してきたことを強調し反論した」と説明した」

     

    下線を引いた部分は、韓国にとって最も言われたくない点である。急所であるからだ。李首相は、「今後も、日韓条約を遵守するだろう」と言っている。この発言に期待したいものだ。

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    AI(人工知能)が予想を上回るスピードで発展して来た。すでに銀行窓口ではAI化によって人員削減が進んでいる。米国のコーネル大学では、AIが偽記事を書いて大量にばらまく危険性を指摘している。経済記事の定型化、例えば企業の業績分析は、AIが可能という実験結果も出て来た。

     

    こういう話を飛び越えて、ロボが3時間の学習で補助教員が勤まるという実験まで出てきた。こうなると、「人間様」のやる仕事が狭まるばかりという危機感も出てくるが、チャンスも広がるだろう。まずは、その現実をお伝えしたい。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(10月23日付)は、「人型ロボ、3時間の学習で役立つ補助教員に」と題する記事を掲載した。

     

    人型ロボットが人間の教師と3時間共に働くことで、補助教員として役立つことができた――。英国でこんな研究結果が出た。

     

    英プリマス大学の研究チームは、ロボットに人間のロールモデルを観察させて社会的振る舞いを習得させる「SPARC」と呼ばれる新しい機械学習システムを開発し、地元の小学校で初めて実証実験した。研究成果は米サイエンス・ロボティクス誌に掲載された。

     

    (1)「研究には、自然界の食物連鎖について学んでいるプリマスの小学校2校に通う810歳の児童75人が参加した。授業は大きな水平置きタイプのタッチパネル型電子端末「サンドトレー」を使ったゲーム形式で実施された。端末の一方には児童が座り、動物を生存のために食べなくてはならない植物や他の動物の方に動かした。もう一方にはソフトバンクロボティクスのロボット「NAO」が立ち、児童に音声で指導やフィードバックをしたり、電子ボードの上で動きを示したりした。NAOは人間とコミュニケーションする「ソーシャルロボット」の研究で広く使われている」

     

    (2)「このロボットのコンピューターは指導や食物連鎖に関する知識が全くない白紙の状態でスタートした。当初は人間の教師がロボットの全ての行動を制御していたが、ロボットは徐々に必要な行動を習得し、教師に行動を提案するまでに進化した。教師はその提案を支持するか無効にした。やがてロボットはミスが減っていき、合計約3時間に及ぶ25回の学習セッションを終えると、人間の教師が介入しなくても自らの判断で動けるようになった」

     

    全く知識のないロボットが、AIの学習効果によって認識を深めて3時間で補助教員ができるまでに「成長」できるとは驚きだ。喜怒哀楽という「感情」が沸かないから、理解が早いのだろう。人間であれば、いろいろと出てくる雑念が記憶を邪魔するのであろう。

     

    (3)「プロジェクトリーダーのエマニュエル・センフト氏は、「私の夢は技術者だけでなく全ての人がロボットの恩恵を受けられるようになることだ。人間がロボットに意思疎通を教えることができるようにするのは一つの手だと思う。我々が提案しているこの方法が広範な状況に適用できるようになることを望んでいる」と語った。研究チームが様々な方法で児童の食物連鎖ゲームについての成績を評価したところ、一部の基準ではロボットの指導により成績が1030%アップした。子どもたちがロボット教師を気に入ったかについては評価しなかったが、センフト博士は「全体的に楽しんでいたようだ」と語った」

     

    下線を引いた部分が示唆するのは、ロボットに感情がないから淡々と「教えてくれる」ことが、子どもたちには素直に理解できるかも知れない。私自身、自分の子どもに教えたときは感情が入ってしまい、つい声を大きくしたりする。ロボットにはそれがないのだ。

     

    (4)「20年にわたりソーシャルロボットについて研究しているプリマス大のトニー・ベルパエム教授は、「授業を支援するためにロボットを活用するメリットは誰の目にも明らかだが、教師が信頼できる形で児童に一貫した支援を提供できるようにすることが真の課題だ」とコメントした。「今回の研究ではそれに向けて一歩前進したが、予想外だったのは教師の間でもっと他人を受け入れ、信頼を築く必要があることが示された点だった。教師はロボットを導入しても業務削減にはつながらないと話していた」。チームはさらに、このロボットが例えば医療や介護など他のソーシャルロボティクスの用途でも活用されるようになることを望んでいる。センフト博士は「私が最も貴重だと思うのは、自宅学習者を支援する補助教員ロボットだ」と話す」

     

    将来、医療や介護などの分野で利用可能かも知れないという。実験を指揮したセンフト博士は、自宅学習者を支援する補助教員ロボットが最も貴重な役割を果たすという。こういう「ロボ先生」に外国語の会話を習ったら上手く行くように思う。好きなだけ発音を直して貰えるからだ。

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    昨日の韓国メディアは、日韓首相会談が「対話継続」を確認したことから、先行きを楽観する見方さへ報じられていた。だが、一夜明けたきょう、冷静になって振り返れば、変ったことは一つもないことに気付き落胆している。次の記事は、会談直後のものだ。

     

    「昨年10月末の韓国大法院(最高裁)の強制徴用賠償判決や今年7月の日本の対韓輸出規制強化、8月の韓国の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了決定などにより、両国関係が悪化の一途をたどっている中、韓国政府は今回の会談が現状を打開する「転換点」になったと評価している。会談を機に、両国の正式な対話が本格化するか注目される」(『聯合ニュース』10月24日付)

     

    一夜明けたきょうになって慎重論に変っている。

     

    『聯合ニュース』(10月25日付)は、「首脳会談の見通し立たず、日本側、まず解決策をー韓国高官」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国外交部の趙世暎(チョ・セヨン)第1次官は25日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と安倍晋三首相による韓日首脳会談開催の可能性に関し、「(韓日関係が悪化している現状に対し)一定の解決案のようなものが講じられなければ首脳会談は容易でないとの立場を日本は持ち続けた」と述べた。前日まで李洛淵(イ・ナクヨン)首相の訪日に同行した趙氏は、韓国のラジオ番組のインタビューで日本の姿勢を問われ、このように答えた」。

    韓国は、下線部分を改めて認識したもので、事態解決は容易でないことを自覚した。韓国の狙いは、徴用工問題を棚上げさせてウヤムヤのうちに有名無実化させる作戦である。これは、韓国の考え違いと言うほかない。すでに条約で解決済みの問題を持出し、反日を煽ろうという文政権の曲がった戦術はこの際、徹底的に直させなければならない。

     

    だが、今日の朝日新聞社説は、例によって「大所高所論」を打っている。

     

    「当時も歴史的な課題が積み残されたが、両国は五十余年間、知恵を出しあい補ってきた。徴用工問題はとりわけ難問ではあるが、互いの努力で克服しなければ前進できない。その意味で日本政府による輸出規制強化は、逆効果だった。強硬手段で韓国政府を動かそうという試みだったが、歴史に由来する懸案に経済問題を絡めたことで文政権と韓国世論を硬化させた」

     

    この朝日の社説は、韓国の言い分を認めて日本を非難している。これは、受け入れ難い話である。日韓基本条約をないがしろにした主張であるからだ。こういう原則無視の韓国に対して抜本改革を求めるのは日本の権利である。朝日の主張は、本質問題を曖昧にしたまままで妥結を求めるもの。この流儀を踏襲すれば、数年後にはまた同じような問題が引き起こされるに決まっている。この際、韓国に対して国際法無視の行動が何を持たすか。それを、トコトン「教え込む」ことだ。

     

    (2)「趙氏は日本の立場は韓国も分かっていたとしながら、「期待を示す婉曲的な表現でわれわれは(韓日首脳会談に)言及した」と説明した。李氏は24日、東京都内の首相官邸で安倍氏と会談し、「韓日関係が改善され、両首脳(文大統領と安倍氏)が会うのが良いのではないだろうか」との意向を伝えたが、安倍氏は特に返答しなかったとされる。趙氏は具体的な首脳会談の提案ではないとしながらも、「政府は常に首脳会談にオープンな姿勢を取っている。日本が応じるならいつでもできる。可能性を排除せず、開かれているという立場だ」と説明した。しかし、現時点で日本が会談開催を考えているようには思われず、実務レベルで水面下の調整をするといった水準にも至っていないと述べた」

     

    下線部分は、事態が全く進んでいないことを認めている。韓国の喜びは糠喜びであった。

     

    (3)「李氏と安倍氏の会談に対しては、強制徴用を巡る韓国大法院(最高裁)の2018年10月の判決後、関係が大変厳しくなった両国の首相が約1年ぶりに会談したことに意味があると評価。ただ「双方の基本的な立場の隔たりがあまりに大きいため、1回会談したからといって溝を狭められる状況ではなかった」とした。韓国としてはまず、「韓国が約束を守っていない」という日本の認識を変える必要があると考えたという」

     

    韓国が、国際法を守っていない現実を認識させることだ。もともと、司法は条約解釈に立ち入らないのが先進国の慣例である。これを無視して、入り込んできたことが間違いのもとだ。朝日の社説でもそのような認識がゼロである。

     

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