勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年11月

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    23日午前零時、GSOMIA(日韓軍事情報包括的保護協定)は失効する。この秒読み段階の21日午後、日本政府が韓国政府へ最終提案をしていたとの報道が表れた。その案は、韓国文国会議長が11月5日、日本で発表した「1+1+α」である企業・個人の寄付金で賠償金を賄うというものに近いという。韓国の『文化日報』が匿名の政府当局者の話として報じた。これを『ブルームバーグ』(11月22日付)が伝えた。

     

    『中央日報』(11月22日付)は、「安倍首相と会談した河村氏、『徴用解決策は“文喜相氏の案“しかない」と題する記事を掲載した。

     

    日韓議員連盟(韓日議員連盟のカウンターパート)の幹事長を務める河村建夫元官房長官は21日終了が差し迫ったGSOMIA(韓日軍事情報包括保護協定)について「政府間にも最後までギリギリまでやっている。そのような努力を通じて最大限(終了を)避けたい」と話した。この日夕方、東京で開かれた「韓国観光公社日本支社設立50周年」の記念行事で述べた挨拶で、こう述べた。

    引き続き、記者らに会った彼は徴用問題の解決のために文喜相(ムン・ヒサン)国会議長が提案した「韓日両国の企業と国民の自発的寄付で作った基金を通した賠償案」に対して「解決策はこれしかないと考える」と話した。

    彼は「初めて韓国が提示した案(1+1案)は日本(企業)からも拠出して韓国(企業)も強制的に出すということだったが、(今回の文議長の案は)寄付なので強制的に出すわけではないということを確実にした。そのため、解決策になるのではないかと考える」と話した。

    (1)「また、「(日本の立場では文議長の案が)法案として国会に提出され、国会で成立するかどうかを最後までみて確認しなければならない」と話した。同時に「文議長の努力を私たちはよく分かっており、実を結ぶように祈る」と付け加えた。前日、総理官邸で安倍晋三首相と会談を行った彼は「安倍首相は(文議長の案の内容に対して)認識はしているだろうが、『良い・悪い』とは言わなかった」と伝えた。前日、NHKは河村幹事長の話を引用して安倍首相が「きちんと日韓の間の約束を守ったものなら進めばいい」と述べたと報じた。前日の報道とこの日の河村氏の発言にはニュアンスの違いがある

    本欄では、韓国の文国会議長の提案を随時、取り上げ紹介してきた。文国会議長は先頃、与野党代表に法案として提出することで協力を求め、賛同を得たと報じられている。韓国の野党では、徴用工賠償金は全て韓国で支払うべきとの提案もあるので、日韓の企業と個人が自主的に寄付するものであれば、あえて反対することもないのであろう。

     

    文議長は年内に法案を成立させるとしても、GSOMIA失効期限には間に合わない。ただ、韓国政府が「失効しても日本側との話が進めば、その時点で復活させればいい」と発言し始めている。これは、文議長提案を日韓双方が受入れる雰囲気が高まって来たことを反映したものかも知れない。

     

    日本政府は21日、「文議長案」に近い案を提案したと『文化日報』の報じた内容が、どのようなものか不明である。仮に、韓国議会が文議長案を議決すれば、日本も受入れるので、GSOMIAを破棄せず延長するように要請したとも見られる。いずれにしても、「前向き」の提案であろうから、韓国政府がこれをどう判断するかだ。

     

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    文政権の国際感覚は、ゼロであることを証明しようとしている。きょう22日で、GSOMIA(日韓軍事情報包括的保護協定)は破棄される。理由は、「日本が悪いから」だ。反日が理由であることは、来年の総選挙を意識した決定を意味している。文政権の「中核的支持層」が、GSOMIA破棄で固まっているので、これを覆すことができないという自縄自縛に陥っている。

     

    以上に掲げた経緯から分るのは、文政権が国益を考える前に党利党略である総選挙だけが念頭にあることだ。米国は、国務省や国防総省、議会まであげてGSOMIA継続に動いている。米中冷戦の中で、日米韓三ヶ国の安全保障体制が弱体化する要因を韓国によってつくり出すのは容認しがたいことなのだ。韓国政府は、総選挙で敗北しまいという目先の利益で目が眩んでいる。

     

    『朝鮮日報』(11月22日付)は、「きょうGSOMIA運命の日、 韓国政府『日本の態度に変化ない限り終了』」と題する記事を掲載した。

     

    青瓦台は韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了(23日午前0時)が迫った21日、国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開き、GSOMIA終了決定を覆すのは難しいとの方向で意見をまとめたことが分かった。康京和(カン・ギョンファ)外交部長官も同日午後、国会の外交統一委員会全体会議で、「日本の態度に変化がない限りGSOMIAはあす終了する」と述べた。日本政府は輸出制限措置の撤回は難しいという見解を見せており、大詰めに劇的な変数がない限り、青瓦台はGSOMIA終了という決定を下すと言われている。

     

    (1)「青瓦台と政府はGSOMIAを予定通り終了させ、今後は日本の態度の変化に応じて協定を再び結ぶ案を好んでいることが分かった。外交消息筋は「米国の反発も問題だが、日本の態度の変化なしにむやみに決定を覆せば、中核的な支持層の反発が起こることの方を青瓦台は懸念している」と語った」

     

    下線を引いた部分に、韓国政府の本音が出ている。ここで、韓国がGSOMIA破棄を覆して継続させれば、支持団体の離反を起こすことを懸念にしている。ここには、国益も国際情勢の変化という認識もゼロである。哀しいまでの視野狭窄症に陥っている。

     

    「チョ・グク法相」問題も同じ理由で強行した。その挙げ句が、チョ氏は30日で辞任する羽目に陥った。文政権は、支持率が高ければ盲目的にそれを頼りにして意思決定する「ロボット政権」と言えよう。

     

    (2)「韓国政府は同日も日本と水面下で大詰めの話し合いをした。韓国政府の「先に経済報復措置を撤回せよ」という要求に、日本は「先に強制徴用被害補償問題を解決せよ」と対抗したという。日本の河野太郎防衛相はこの日、「北朝鮮情勢に関しては、日米、日米韓がしっかり連携することができるよう韓国に『賢明な対応』を求めている」と述べた。これは、輸出規制措置の撤回はなく、韓国が自分の判断でGSOMIA破棄を覆せということだ」

     

    韓国は、怒りにまかせてGSOMIAの破棄を決定した。その政策決定が間違っていたのである。自分の蒔いた種は自分で刈り取るほかないわけで、日本を悪者にして責任をなすりつけるという「小児的」振る舞いが見苦しい。

     

    (3)「青瓦台の姜ギ正(カン・ギジョン)政務首席秘書官は同日、青瓦台前の噴水広場でハンストをしている野党・自由韓国党の黄教安(ファン・ギョアン)代表のところを訪れ、「我々の外交部ラインが最後まで日本と対話している」と言いながらも、「安倍政権は自分たちの過ちを全く話さず、(韓国は)完全に白旗を上げろとでもいうように、この機会に屈服させるという態度なので、進展が本当にうまくいっていない」と語った」

     

    今回のGSOMIA問題の根源は、大法院の徴用工賠償判決にある。韓国が国際的な「司法自制論」とは異なる判決によって、日韓基本条約を骨抜きにした結果だ。文政権に国際司法の認識があれば、韓国の国内問題として処理したはずである。反日政権の文氏は、これを利用して日本を揺さぶる意図であったのであろう。この邪悪さが、GSOMIA破棄という形で、韓国に舞戻ったとしか言いようがない。

     

     

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    文在寅大統領の思慮の足りなさが招いたGSOMIA破棄は、韓国の国益に重大な損害をもたらそうとしている。米国が、礼を尽くして説得したにも関わらず、韓国は「日本憎し」の感情論から脱却できず、日米韓三ヶ国の安全保障体制に重大なひび割れを起こした。米国は、こう見ているのだ。韓国への報復案を検討していると伝えられる事態だ。

     

    『中央日報』(11月21日付)は、「米上院、GSOMIA終了時、韓国に撤回要求決議案を提出」と題する記事を掲載した。


    米国上院外交委員会のジェームス・リッシュ委員長(共和党)が日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了時に韓国に撤回を促す決議案を提出する計画だと明らかにした。リッシュ氏は20日(現地時間)、スティーブン・ビーガン国務省副長官指名者に対する外交委承認公聴会の冒頭発言で「一部の上院与野党の議員と一緒に決議案を出す」と話した。

     

    (1)「決議案発議には外交委民主党幹事であるボブ・メネンデス議員と、共和党所属ジェームズ・インホフ上院軍事委委員長、ジャック・リード上院軍事委民主党幹事が参加するというのがリッシュ氏の説明だ。リッシュ氏は、「韓国は日本と核心情報の共有を終了しようとする、逆効果を出す措置を取ってきた」とし「我々はこの点において重要な時期を迎えた」と話した。続いて「GSOMIA終了は韓国に駐留した米軍の危険を増大させて韓米同盟を損なわせる」と付け加えた」

    米国上院外交委員会が、韓国非難とGSOMIA継続を要求する決議案を提出する意向である。韓国の言っているGSOMIA破棄理由など、全く関心がないのだ。米国は、「GSOMIA終了は、韓国に駐留した米軍の危険を増大させて韓米同盟を損なわせる」という基本認識である。この前で、「日本が憎い」などと言う感情論が通るはずがない。米国の韓国への評価は、急落して当然であろう。

     

    『聯合ニュース』(11月21日付)は、「GSOMIA終了間近、韓国の外交ダメージ懸念」と題する記事を掲載した。

     

    米国の度重なる説得にもかかわらず韓国と日本の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が予定通り23日午前0時に失効することになり、今後の韓米関係への悪影響が懸念されている。韓国が8月下旬にGSOMIAの終了を決めたのは安全保障を理由とした日本の不当な対韓輸出規制強化を撤回させるための「勝負手」だったが、成果はなく、外交上の負担が増したと指摘される。

    (2)「米国はこれまで「失望」と「懸念」を表明し、GSOMIA終了決定を覆すよう求め続けてきた。次第に批判のトーンを強め、ハリス駐韓米国大使は今月19日に聯合ニュースとの単独インタビューで「韓国がこの問題(日本との歴史問題)を安保領域に拡大させた」と述べてGSOMIA失効の責任が韓国にあることを明確にした。韓国は「安保上、信頼できないという理由で輸出規制措置を取った日本と軍事情報の共有は難しい」と主張したが、米国を納得させられなかった」

     

    米国の認識では、GSOMIA失効の責任が韓国にあると明確にしている。これは、韓国にとって外交上、大きな負担になることは明らかだ。もっと遡れば、韓国大法院判決の不当性である。日韓基本条約で解決済みの問題を持出し、日本の責任にしたことは国際的な「司法自制論」に反するのだ。宮沢賢治の童話に登場の山猫裁判長と同類である。

     

    (3)「米国はGSOMIAを、中国と北朝鮮に対抗するための韓米日3カ国協力のシンボル、中国をけん制するための「インド太平洋戦略」の基本的な枠組みとみなしている。さらには「韓国の防衛をさらに難しく、複雑にし、在韓米軍だけでなく韓国軍もより大きな脅威にさらされることになる」という米国務省の声明に表れているように、GSOMIAの終了を自国の安保に害を及ぼす行動とさえ受け止めている」

     

    文在寅氏の認識は、日本が憎いからGSOMIAを破棄することだ。米国の認識は、米中冷戦の中で、米国の安保に害を及ぼすというグローバルなものである。こうなると、「分からず屋の韓国を懲らしめろ」と話が広がっても不思議はない。

     

    (4)「韓国があくまでGSOMIAの終了決定を覆さなければ、米国は一段と強い批判を盛り込んだ声明を発表するとみられる。問題は、米国の不満表明が「声明」にとどまらない恐れがあることだ。セミナーのため訪米している韓国シンクタンク・世宗研究所のウ・ジョンヨプ研究員は21日、「米国から非常に強い声明が出されるだろう。声明だけで終わらせてはいけないというムードもあり、自動車関税問題などに影響が及びかねない」と話した」

     

    韓国は、米国から経済制裁を受けなければ目が覚めないだろう。韓国が、最も嫌がる自動車関税引上げでショックを加え、「覚醒」させることである。自由と民主主義を守るためのコストと見るべきだ。日本が韓国に対して行なった「ホワイト国除外」など、初歩的で生温い措置であろう。

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    中国にとって、香港を巡る不都合なことが連続して起こっている。米下院本会議は11月20日、香港人権法案(「香港人権・民主主義法案」)を圧倒的多数で可決した。同法案は19日に上院が全会一致で可決していた。トランプ大統領は同法案に署名する見通しとされている。

     

    成立すれば、報復を明言している中国と真っ向から衝突することになり、第1段階の米中貿易合意が危うくなる可能性がある。香港政府は21日、同法案通過を受けて声明を発表。「香港の内政に干渉するだけでなく、暴力的な抗議活動家らに誤ったシグナルを送るものだ。香港情勢の沈静化に役立たない」と批判。法案に「強く反対する」と表明した。

     

    中国は、例によって脅迫している。だが、米国は脅迫で屈服する国ではない。ましてや今回成立した法律名は、「香港人権・民主主義法」である。中国が脅迫したから、大統領署名を取り止める訳でもない。中国は、「無駄な抵抗」に終わるだろう。下院の採決は賛成417、反対1。同法案は早ければ21日にトランプ大統領の元に届く見込みと伝えられる。

     

    『ブルームバーグ』(11月21日付)は、「米下院、香港人権法案を可決ートランプ大統領は署名の見通し」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「ペロシ下院議長は本会議場で、「米国が自由を愛する香港の人たちと連帯し、自由を求める香港市民の闘いを全面的に支持するとの明白なメッセージを議会から世界に送る」とし、「これはわれわれが一つになる問題だ」と語った。同法案は香港に高度の自治を認めた「一国二制度」が守られているかどうか毎年の検証を義務付けるほか、香港の「基本的自由・自治」が損なわれた場合にその責任を負う当局者に制裁を科す内容。米国は一国二制度を前提に、関税などで中国本土よりも香港を優遇している」

     

    下線を引いたように、香港の「基本的自由・自治」が損なわれた場合にその責任を負う当局者に制裁を科す内容である。現在、香港の学生デモによって混乱しているが、警察当局の不法な鎮圧方法などが明るみになろう。

     

    一方で、中国秘密警察が元英国香港領事館員を拘束して拷問を加えていたことが表面化してきた。まさに、今回成立した「香港人権法」違反そのものだ。事件は、法律施行前の事件であるから、「香港人権法」には抵触しないが、中国秘密警察が公然と香港まで出没していることは、「一国二制度」に違反することは明らかだ。

     

    『BBCニュース』(11月20日付)は、「中国で拷問された、一時拘束された香港の元英領事館職員が証言」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「香港のイギリス領事館の元職員が、香港で政治不安をあおったとされ、中国で拷問されたとBBCに語った。香港市民のサイモン・チェン氏(29)は、英政府職員として2年近く勤務した。今年8月に中国本土に旅行した際、15日間拘束された。「手足を束縛され、目隠しをされ、頭に覆いをかぶせられた」とチェン氏は言う。チェン氏は、殴打され自白を強要されたと主張している。英政府関係者は、その主張は信用できると話す」

     

    この記事を読むと、中国の秘密警察が香港で逮捕したデモ参加の学生たちを中国本土に送って拷問をかけて取り調べていることが分る。この違法行為が、堂々と行なわれている。今回成立した「人権法」の適応は十分可能である。秘密警察が、どのような人権を無視した取り調べをしているか、その実態が始めて明らかになった。

     

    (2)「中国国営メディアはこれまで、チェン氏は売春婦を求めたため拘束されたと暗に伝えている。チェン氏の主張は、その説明と異なる。そして、中国とイギリスの両政府に疑問を突きつけるものとなっている。チェン氏の主張は、中国で拘束されていた香港市民を他にも見たというものも含め、香港の自由が中国の支配によって侵食されているとする、抗議者たちの懸念を強めるものだ。自分を拘束した相手についてチェン氏は、「シークレット・サービスの職員だと名乗り、人権などないと言った」と話す。「それから、私を拷問し始めた」」

    これが、共産主義の実態だ。口先では甘いことを言って言い寄り、こういう無慈悲なことを平気で行なう狂気の集団である。

    (3)「チェン氏は、手錠をかけられた状態で鎖につながれた状況を、両手を頭上で広げながら説明する。尋問は、チェン氏と抗議行動との関係に集中した。英政府の代理として、政情不安を生み出したことを自白する狙いがあったと、チェン氏は言う。「彼らは、香港の抗議行動でイギリスがどんな役割を果たしているのかを知りたがっていた。どんな支援や資金、物資をデモ参加者に供給しているのかと聞いてきた」。チェン氏は、負荷のかかる姿勢(壁を背にしゃがむなど)を何時間も続けて取らされ、動くと叩かれたという。「骨に近い足首(中略)や、他の弱い部位を殴打された」。

     

    野蛮人集団が、共産主義の実態である。

     

    (4)「睡眠も奪われたという。尋問者はチェン氏に中国国家を無理やり歌わせ、眠らないようにしたという。チェン氏はまた、そうした扱い受けていた香港市民は、彼だけではなかったと思っている。「多くの香港市民が逮捕され尋問を受けていたのを見た。誰かが広東語で『両手を上げろ。デモでは旗を上げていたんだろう?』と言うのを聞いた」。香港のデモ参加者たちの1000枚以上の写真を見せられ、知っている人の名前と政治傾向を書き出すよう指示されたという。「秘密警察ははっきりと、香港のデモ参加者たちが次々と捕まり、中国本土に運び込まれて拘束されていると言っていた

    香港デモの参加者が、中国本土へ運び込まれて拷問されている。

     

    (5)「チェン氏はいすに縛られ、髪の毛をつかまれた状態で、携帯電話を顔認証によって起動させられそうになったという。彼らはそれに成功すると、抗議行動についての詳細情報を記した、英領事館に送ったメールを印刷した」

     

    くれぐれも、日本人で中国批判したことのある人は、中国でも香港でも旅行したら危険である。秘密警察に拷問される。危うき国に近寄ってはいけない。

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    米韓関係は、急速に冷却化している。朝鮮戦争をともに戦った意識は希薄になっている。文大統領の根底にある「親中朝・反日米」があるからであろう。今回のGSOMIA(日韓軍事情報包括的保護協定)問題は、この「親中朝・反日米」が典型的に表れた問題である。

     

    GSOMIAは、日本との直接的な軍事情報交換である。これを破棄することによって、米国との関係を薄め、将来的には中朝へ接近するという腹案があるに違いない。進歩派政権が、今後20年間継続できるという前提で「積弊一掃」に取り組んでいるからだ。20年間継続させるには、政権の骨格を「親中朝・反日米」に染め上げなければならない。その第一弾が、今回のGSOMIA破棄と読める。

     

    米国は当然、こういう見方を承知であろう。となれば、11月23日午前零時のGSOMIA失効時間前に、GSOMIAを翻意させる作業の一環として、駐韓米軍分担金の大幅引上げを同時並行で進める戦術を立てたに違いない。つまり、GSOMIAで翻意しなければ、「経済制裁」に移ることを臭わせている。

     

    米国は、GSOMIA問題を米国の安全保障問題として捉えている。すでに、「米中冷戦」へ突入している結果だ。米国は「対中冷戦」と一言も言っていない。だが、米国の対中貿易戦争は、安全保障を目的とする経済制裁の一環と見るべきである。

     

    米国が、中国に要求していることは、市場経済に基づく経済システムの構築である。こういう経済システムになれば、専制政治を放棄して普遍的価値観の国になるという前提がある。習近平氏はそれを拒否しているから、あえて関税を引き上げて、中国からの対米輸出を減らさせる経済制裁を実行しているものだ。

     

    昨年5月の米中関税戦争が始まったとき、世界中で米国批判が渦巻いた。現在、そういう声は消えている。むしろトランプに賛成して中国の対外膨張政策に反対する人々が増えている。これは、自由と民主主義が将来、中国によって脅かされるリスクを感じ始めたからだ。今や、中国封じ込めの経済戦略と安保戦略が、世界の市民権を得て堂々と語られる時代である。

     

    韓国文政権は、「親中朝・反日米」という1945年以降の北朝鮮「チュチェ思想」に染まり、正常な国際感覚を失っている。だから、GSOMIA破棄という驚天動地の政策にはまり込んで平然としているのだろう。米国が、経済制裁という痛みを加えない限り、目を醒ますことがないのだ。

     

    『中央日報』(11月21日付)は、「知韓派のビーガン氏も 『韓国、安保ただ乗りはいけない』」と題する記事を掲載した。

     

    米政府内の代表的な知韓派のビーガン北朝鮮担当特別代表が韓米防衛費分担金引き上げ圧力に加勢した。20日(現地時間)に開かれた米上院の国務副長官承認公聴会でだ。対北朝鮮政策を調整する韓米ワーキンググループ代表であり米朝交渉の米国側特別代表を務めるビーガン氏は、「韓国は我々の最も重要な同盟パートナーの一つ」としながらも「誰かは安保ただ乗りが許されるというわけではない」と述べた。

    (1)「ビーガン代表の「安保ただ乗り」発言は、現在韓国が負担する防衛費分担金では足りないという趣旨を直接的に表したものだ。ビーガン代表はこの日、「我々は韓国とタフな交渉をしている」と明らかにし、防衛費交渉に真摯に臨んでいることを明確にした。ビーガン代表までが立場を明確にしたことで、防衛費に関連して米政府内ではすでに「不可逆的」な決定をしたのではという見方が出ている。国務省、国防総省の責任者が次々と防衛費引き上げを公開的に要求しているからだ」

     

    韓国では当初、米軍が金銭問題を口にすると非難していたが、これは米国の意図を読み違えている。米中冷戦という息の長い「戦い」において勝利と収めるには、同盟国が米国頼みではダメであると諭しているのだ。同盟国自らが、中国の野望から身を守る決意を固めさせようとしている。

     

    (2)「エスパー米国防長官は19日、在韓米軍撤収の可能性に言及し「韓国は防衛費分担金にさらに寄与できるはずであり、そうしなければいけない」と述べた。これに先立ちミリー統合参謀本部議長も「普通の米国人は、韓日両国に米軍を前方派遣するのを見て根本的な疑問を抱く」と発言した。ポンペオ米国務長官も「各国が安保のための責任を分担すべき」(8月24日)と述べ、早くから費用の問題に対する立場を各国に伝えてきた」

    米国の軍人は、同盟国が安全保障のために「身銭」を切って自国を守れと迫っているのだ。今後の防衛には相当のコストが必要である。人口動態上、青年の減少をカバーするには高度の武器などの装備を必要とする。米国が、同盟国用に高コストの武器を全て揃えることは不可能である。同盟国は各国が、それぞれの分担を守りながら結束を必要としている。

     

    このような視点で見れば、米国が韓国に対して高い駐韓の駐留費分担を求めるのはやむを得まい。金額で目くじら立てて米国と争うことではないだろう。それよりも、GSOMIAを継続して、日米韓三ヶ国の安全保障体制を維持することが、米中冷戦に不可欠である。

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