勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年11月

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    中国では、「医が算術」である。治療費が目玉の飛び出るほど高額であるからだ。医者は、治療前に「カネはあるか」と聞くのが普通という。北京でも、外国人専用の病院は、酒を飲み過ぎて気分が悪くなった程度でも、数万円の治療費を請求された知人の話を聞いて驚かされた。すべてが、金儲けの手段になっている国だ。経済倫理の存在しない国の哀しさである。

     

    中国の治療費が対GDP比でどの程度か。なんと、5.02%(2016年)にすぎず、調査対象44ヶ国中41位である。軍事費には湯水のようにカネを使っているが、国民の健康にはカネ惜しみしている現状が、このたった一つのデータに表れている。他国の例も出しておこう。

     

    米国 16.94%(2018年) 1位

    日本 10.92%(  〃  ) 6位

    ロシア 5.26%(2016年)40位

     

    元共産主義国のロシアと現共産主義国の中国が、揃って治療費の支出を惜しんでいる。「人命軽視」が、共産主義では看板に偽りありである。

     

    中国の庶民は、病気になっても簡単に医者のところへ行けない。高額の治療費を請求されるためだ。そこで、漢方薬を飲んで済ませるのが大半という。その漢方薬に、「ニセ物」が多いという。訪日中国人が、知人や親戚に依頼され大量の漢方薬を買って帰国する理由でもある。

     

    『サーチナ』(11月1日付)は、「中国人が日本で漢方薬を買い漁っている事実はショックだ」と題する記事を掲載した。

     

    漢方薬は、言うまでもなく中国に起源を持つ薬だ。日本の漢方薬は伝来後に独自に発展を遂げたため、中国の漢方薬とは異なる存在となっている。日本の漢方薬は中国人旅行客の間でも人気となっているが、中国人旅行客が中国生まれのはずの漢方薬を日本で購入しているという現状について、中国人はどのように感じているのだろうか。

    (1)「中国メディアの『今日頭条』はこのほど、日本を訪れる中国人の間で人気の品の1つが「漢方薬」であると紹介し、漢方薬には5000年の歴史があり、中国こそ漢方薬の起源を持つ国でありながら「中国人が日本で漢方薬を買い漁っている事実はショックという言葉以外の何物でもない」と論じる記事を掲載した。記事は、日本の薬局チェーン店などでは「中国人客が漢方薬を争うように購入し、自分のためはもちろん、中国にいる友人や家族のためにお土産にしようとしている姿を見かけることができる」と伝えた。さらに、世界の漢方薬市場における中国のシェアはわずか2%ほどにすぎず、日本が世界で大きなシェアを獲得しているという事実は、中国側にとっては大きなショックであると論じた」

     

    日本では、健康保険に漢方薬が取り入れられている。身体に優しいという理由で、長期服用でも副作用が出ないという特色がある。その漢方薬の世界シェア1位は、日本が握っている。原料の生薬も国内で生産するなど、量産化を実現している。

     

    (2)「中国のなかでも広西チワン族自治区には漢方薬の原料になる生薬が数多く存在するうえ、同自治区に住む少数民族に伝わる医薬の知識もほとんど有効活用できていない現状を紹介。中国人客が日本で漢方薬を爆買いしているという状況に対して、中国国内では「漢方薬という自国の貴重な資源を発展させていくべき」という声が高まりつつあることを強調した」

     

    中国が、自国特産の漢方薬に関心が向かないのは、外延的発展である他国の領土簒奪を国策にしている結果であろう。内政に目を向けて国民の生活向上を目指す政策に転換する時期である。

     

    (3)「中国でも、日本と同じように薬局で手軽に漢方薬を購入できるほか、生薬を調合して処方してもらうこともできる。それでも中国人旅行客が日本で漢方薬を購入している背後には、日本メーカーが生産した薬ならば「安心して服用」できるという安心感があるのかもしれない。また、記事に寄せられたコメントを見てみると「子どもが咳に苦しんでいた際、病院で処方された薬を飲ませても効果が見られなかったが、別の病院で処方された日本の漢方薬を飲ませたらすぐに良くなった。日本の漢方薬のほうが中国の漢方薬より研究されていると言わざるを得ない」といった声が寄せられていた」

     

    中国の漢方薬を飲んでも効かないが、日本産では効いたという。日本製品にはニセ物がないからだ。改めて、経済倫理の大切さが分る。

     

    中国の最大の欠陥は、漢民族が「来世を信ずる」という信仰を持たない民族であることだ。当然、経済倫理も存在しないから約束を守らない民族である。どこで、裏切られるか分らない点が不気味である。黄河の中原に始まった漢民族が、周辺諸国を飲み込み現在の版図に拡大した経緯を考えれば、権謀術策に長けているのだ。

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    韓国は、「二重人格」である。日本に対しては謝罪を求め「反日」に熱を入れるが、中国からはいくら虐められても沈黙し、決して「反中」的な行動を取らない二面性が不思議だ。日韓併合時代は36年間である。中国からは属国としてどれだけ虐げられたか分らない哀しい歴史を背負わされてきた。若い娘は強制的に中国へ連れて行かれるので、幼子でも結婚させ「中国連行」を防いだほどである。慰安婦問題どころの騒ぎではなかったのだ。

     

    そういう中国に対しては、従順そのものである。韓国が、北朝鮮のミサイル防衛のために導入した米国のTHAAD(超高高度ミサイル網)に対して、中国は未だに経済的な報復を続けている。それについて、文政権は一言半句の抗議もできないで泣き寝入りしている。「NO JAPAN」「NO 安倍」と同じ勢いで、「NO CHINA」の幟を立て、「反中」運動をやってみたならどうか。心から薦めてみたいと思う。

     

    『朝鮮日報』(11月1日付)は、「THAAD合意から2年、痛めつけられてばかりの韓国」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「10月31日、中国の大手旅行会社「北京中国国際旅行社」のホームページで、海外旅行の目的地に「韓国」と入力してクリックしても、検索結果が何も表示されなかった。ツアーが一つもないという意味だ。中国最大の携帯電話旅行アプリ「Ctrip」にも海外旅行の目的地項目に韓国の都市がない。日本の都市は26カ所紹介されている。旅行業界関係者は「中国の大手旅行会社各社は韓国ツアーのインターネット広告・集客を禁止されている。個人的に韓国に自由旅行で行くのはともかく、団体観光では当局が統制する『限韓令』が続いている」と言った」

     

    韓国政府は、中国政府からこういう差別政策を受けながら、なぜ抗議もしないのか。「反日」の勢いを以てすれば、「反中」抗議ぐらいは簡単にできるはずだ。それが、できない卑屈な心情は何か。1000年単位で中国に抑圧されていた歴史が、中国への諦めを誘っているのだろう。これが、韓国の「負け犬根性」をつくっているのだ。「反日」の勢いで、中国へ立ち向かう勇気を持て。そうしたならば、韓国を見直そうという向きが表れるかも知れない。

     

    (2)「韓国政府は、中国が終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備に反発して報復措置を取ったのを受け、20171031日に「米国のミサイル防衛(MD)システム参加」「終末高高度防衛ミサイル(THAAD)追加配備」「韓米日軍事同盟」をしないという「三不」見解を表明した。その代わり、両国は「あらゆる分野の交流協力を正常な発展軌道に速やかに戻す」ことで合意した。韓国政府は当時、THAAD問題は「封印」され、交流協力が正常化されるだろうと言っていたが、2年経った今も安保・経済・観光分野などで中国の報復は続いている」

     

    韓国が、一国の安全保障に関わる問題について、「三不」という形で中国へ約束すること自体、国家の尊厳を損なう行為である。文政権は、それを恥とも思わないところに「傀儡的」性格を秘めている。米国が、韓国を嫌う理由は簡単である。韓国の「米中」どっちつかずの「こうもり外交」に不信の念を持っているのであろう。米韓同盟国として、あり得ない行為だ。

     

    (3)「2016年のTHAAD配備以降、韓国の芸能人の中国内における商業公演は中止されている状態だ。公演ビザ自体が下りないのだ。小規模なサイン会も行われない場合がある。韓国政府関係者は「中国人の団体観光と韓流に対する一部の制限は残っているものの、ほとんどの分野では韓中関係が大幅に改善された」と言っているが、現場の実態は全く違う。韓国人を対象とした報復はむしろ執拗(しつよう)になってきている。米ロチェスター大学イーストマン音楽学校のイーストマン・フィルハーモニー管弦楽団が中国で巡回公演をしようとしたところ、韓国人団員3人の公演ビザ発給のみ拒否したという問題がその代表例だ。THAAD報復が、韓国人が所属している海外の団体にまで拡大されたものだ」

     

    これが、「中華帝国」の素顔である。4000年の歴史が紡いできた、陰謀国家の手練手管である。韓国は、まんまとこの策に乗せられている。そのことに気付かずにいるのだ。中国のやり口と、日本との交流の実績を比較するがよい。日中、どちらが誠実に対応しているか。冷静に考えてみれば、「反日」で騒いでいることが恥ずかしくなるであろう。

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    韓国は、トランプ大統領に嫌われていることにショックを受けている。文大統領は、機会あるごとにトランプ氏を持ち上げているのだ。「南北融和が進めば、ノーベル平和賞はトランプ大統領に」と最大限の賛辞を贈っているが、トランプ氏の心にはなんら響いていない。

     

    これには、理由がありそうだ。文政権の基本姿勢が「親中朝・反日米」という北朝鮮の「チュチェ思想」に凝り固まっていることである。大統領府に陣取る、元学生運動家は前記の「チュチェ思想」の信奉者である。折りに触れて、「反日米」傾向が強く出ているのは当然だ。

     

    GSOMIA(日韓軍事情報包括的保護協定)破棄も、「反日米」姿勢の一環である。米国は、事前に韓国へ政府要人を送り込んで、GSOMIA継続の根回しをしたにもかかわらず、あっさりと破棄した。米国が怒るのは無理からぬことである。ホワイトハウスの中で、日常的に韓国が話題になるときネガティブな雰囲気になるのは、韓国に責任がある。

     

    『朝鮮日報』(10月31日付)は、「トランプ大統『韓国は最悪』一度も経験したことがない事態」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「米国のトランプ大統領が就任直後、「韓国は最も米国につけこむ国だ。中国と韓国は右側と左側からわれわれを食い物にしている」と発言していたという。ジェームズ・マティス元国防長官のスピーチライターだったガイ・スノッドグラス氏が自らの著書で明らかにした内容だ。トランプ大統領が「韓国は毎年600億ドル(約65000億円)を払わなければならない」と言い、ティラーソン元国務長官も「(トランプ)大統領の目に韓国は(同盟の中で)最悪」と語っていたそうだ」

     

    韓国国民の根強い反米感情が、ホワイトハウスの中で反発を受けていることは容易に想像できる。米国は、朝鮮戦争で米国人の血を流して韓国を守った。その米国を批判し、朝鮮戦争を仕掛けて侵略した中国や北朝鮮に親愛の情を示すのは間違いだ。米国は、そういう韓国のご都合主義を見抜いているに違いない。日本に対しても同じである。独立後の技術や資本で支援したことは口にも出さず、心からの謝罪がないと批判のオンパレードだ。

     

    日本でも、韓国をもてあましている位だから、米国が韓国の心底を見抜いて、距離を置くのは当然であろう。米韓が真の同盟国になるために韓国がなすべきことは、「中朝」へ秋波を送らないことだ。米国と中朝を天秤にかけるような外交姿勢は厳に慎むべきである。

     

    (2)「彼(トランプ)はわずか数カ月前にも韓国を念頭に「すごい金持ちなのに『われわれをあまり好きではない国』を守るため、多くの金を失っている」と述べたが、この発言からもトランプ大統領の就任時の考えは変わっていないと言えるだろう。実際に今も行われている防衛費分担金交渉で米国はこれまでの5倍以上の負担を韓国に求めているという。しかもトランプ大統領は「北朝鮮のミサイルは韓国を狙ったものなので、特に問題にはならない」として韓国国民の安全には関心を示していない。米政府内にはトランプ大統領をけん制できる影響力のある人物も残っていない。トランプ大統領はシリアからの米軍撤退を衝動的に決めたが、今後同じような事態が韓半島で起こらないとも限らないだろう」

     

    韓国は、米国に対して同盟国としての温かみを持って接したことはあるだろうか。米国を利用することしか考えていないのでないか。米国務省で、日韓の外交官がどのように振る舞っているか興味深い実例がある。

     

    日本の外交官は、特別の用事がなくても国務省を訪ねてきて、「何かお役にたつことはありますか」と聞くそうだ。韓国の外交官は、用事のあるときしか国務省に現れない。しかも、必ず「頼み事」を持出すという。この日韓の外交官のビヘイビアは、どちらが好印象与えるか。それは、日本の外交官であろう。韓国人は、はなから相手を利用するという狡猾なところがあって、米国から嫌われているのだ。

     

    (3)「米国大統領は韓国を「最悪」などと言い、中国とロシアは軍事同盟を締結する動きを示している。北朝鮮は無観客・無中継の暴力サッカーにとどまらず、重量挙げ大会で韓国の若い選手が受賞する際には集団で退場し、日本国民は韓国との関係改善は必要ないと考えているという。これら全てがまさにこれまで経験したことのない事態だ」

     

    日本人の69%は、韓国と無理して関係改善をしなくても良いという世論調査だ。これは、韓国の身勝手さに辟易している結果であろう。すぐに感情的な振る舞いをし、「反日」と騒ぎ立てる。もっと、大人になって貰わなければ困るのだ。


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    韓国は、世界中で日本批判を繰り広げている。この熱気はいつまで保つか。あたかも、韓国だけが「正義の士」として振る舞っている。それほど立派な国ならば、経済政策はまともなものになるはずだが、まったく筋違いのことをやっている。しかも、驚くことにそういう大統領を約40%強の国民が支持しているのだ。

     

    これだけの支持率を維持していることは、支持層には利益になる政策を行なっているからである。つまり、現政権を支持する層には手厚く報いている。具体的には、労組には最低賃金の大幅引上げによって、財閥企業の労組員まで最賃引上効果が及ぶように「細工」をしていたのだ。また、市民団体には脱原発による太陽光発電組合を作らせ多額の補助金を流し込んでいる。脱原発が、韓国の原子力産業を衰退させ、輸出産業の座を放棄させた。

     

    韓国政治は、労組員と市民団体以外に、経済的な疲弊を押しつけている。その何よりの根拠は、出生率の急低下という形で表面化している。これが原因で、韓国経済の活力を奪われ、長期停滞を招くことは不可避である。現政権には、その危機感がゼロである。人口対策すら、空洞化させてしまった。

     

    韓国の合計特殊出生率は、昨年「1」を割って「0.98」と歴史上初めての最悪記録をつくった。今年に入って、さらに悪化し続けている。文政権は、韓国経済を決定的に崩壊させる種を蒔いた政権として記憶されるであろう。

     

    『朝鮮日報』(10月30日付)は、「8月の出生数が過去最少、前年比10.9%減」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国統計庁が10月30日発表した「人口動向」によると、8月の出生数は2万4408人で前年同月比10.9%減少した。8月の出生数としては、月別の出生統計を取り始めた1981年以降で最も少なかった。出生数は同月基準で、2016年4月から今年8月まで41カ月連続で過去最少を更新している」

     

    7月の出生数は、前年同月比6.5%の減少であったが、8月には前記のように同10.9%減少である。減少率が加速化していることに恐怖感すら感じるのだ。この背景にあるものは、経済悪化による失業率増加である。


    (2)「1~8月の出生数の累計は20万8195人で、前年同期比8.0%減少した。 出生数から死亡数を引いた人口の自然増加数は730人にとどまり、83年に統計を取り始めてから8月としては最も少なかった。8月の婚姻件数は前年同月比5.2%減の1万8340件で、こちらも8月としては81年の統計開始後で最低となった」

     

    今年1~7月の出生数は前年同期比7.6%減であった。1~8月は、同8.0%減へと拡大している。この調子で減少幅が広がっていけば、昨年よりも10%減は確実であろう。今年の合計特殊出生率は、昨年の「0.98」から予測値の「0.89」をさらに割り込むことにもなりかねない。

     

    8月の人口の自然増加数は730人と小幅増加になった。年内に「人口減」に陥る可能性が強まっている。ソウル大学人口学研究所では、2020年の人口減を予想していたが、年内に繰り上がることもあり得る状況だ。

     

    韓国が「人口減社会」に落込めば、先行き悲観論が一挙に噴出するだろう。その責任論が賑やかになるはずだ。責任は、もちろん文政権にある。就職状況を改善させる努力をしないどころか、最低賃金の大幅引上げで雇用構造を破壊した責任を免れないからだ。

     

    このように急激な「人口縮減社会」へ突入する韓国が、従来通りの「反日」を貫けるだろうか。韓国の経済危機の進行は、進歩派にとって不利な政治状況になる。「反日」を掲げる現政権には逆風となるに違いない。この反動で再び、保守派が政権に戻ってくれば、「反日」の勢いは鎮まるであろう。

     

    「反日」は、現在がピークとなるように思われる。日本は、それを待っていれば良いわけで、先に手を差し出せば元の木阿弥に終わる。韓国に自省の機会を持たせることだ。そうでなければ、今後とも日韓間関係に変化はないであろう。韓国にとって、日本がかけがえのない国であることを、はっきりと認識させるまで、安易な妥協をすべきでない。

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    中国経済は、明らかに不動産バブルの終焉を迎えた。大手不動産企業が、北京・上海にあるタワー・オフィスの大量売却に踏み切ったというニュースが登場した。不動産相場が天井圏をつけたという認識だろう。

     

    このオフィスビル売却と呼応するように、中国景況感は一段と悪化傾向を深めている。中国国家統計局と中国物流購入連合会が10月31日発表した10月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は、前月より0.5ポイントも低い49.3であった。拡大・縮小の節目となる50を5月から6カ月連続で下回っている。PMIの水準は19年2月以来、8カ月ぶりの低水準。春節(旧正月)休暇で統計がふれやすい例年12月を除くと、11年11月(49.0)以来、約8年ぶりの低さだという。

     

    米中貿易戦争は、相互不信もからみあって解決に向けての道が見えない状況だ。もはや、中国経済についての楽観論は禁物である。

     

    『大紀元』(10月31日付)は、「中国不動産大手のSOHO中国、オフィスタワーの大量売却を計画、総額約9000億円」と題する記事を掲載した。

     

    この記事で注目すべきは、商業用ビルの売却である。中国経済の右肩下がりの状況が続く以上、オフィスビルの需要が回復することはないと見ている結果だ。これまでの中国経済観が100%否定されている。

     

    (1)「中国不動産開発大手のSOHO中国が、北京市と上海市の商業不動産の売却を検討していることが明らかになった。同社は今後、海外市場への投資を加速すると報じられた。いっぽう、中国の経済失速で、大都市のオフィスビルの空室率が大幅に上昇した。中国メディア「財新網」30日付は情報筋の話として、SOHO中国は北京市と上海市にある8棟のオフィスタワーの売却を計画していると報じた。総額500億~600億元(約7713億~9256億円)の取引になる。同社は将来2年間で、これらの物件売却を完了する見通しだ」

     

    北京と上海のオフィスビルの売却とは、穏やかな話でない。中国経済の失速の結果ではあるが、不動産バブル崩壊後の典型的な現象が起こっている。日本も同じ経験をしている。

     

    (2)「米投資大手のブラックストーン・グループとシンガポール政府投資公社(GIC)から構成した企業連合は、8棟のうちの3棟を購入する意欲を示した。情報筋によれば、SOHO中国は今後、海外市場への投資を拡大する方針で、中国国内の不動産売却は同戦略転換の重要な一歩だという。SOHO中国は近年、国内のオフィスタワーを次々と売却し、国内市場から撤退する兆候があった。201416年までに、同社は不動産売却で236億元(約3641億円)の資金を入手した。2017年には、上海市虹口区にある不動産を36億元(約555億円)でシンガポールの不動産会社に売却した」

     

    下線部分は、重要な点を示唆している。中国経済には、もはや発展余力がないと見ていることだ。オフィスタワーの売却とは、中国経済の将来を見限った証拠である。

     

    (3)「10月22日と29日、同社はそれぞれ北京市と上海市のオフィスタワー、計20棟の売却計画を発表した。「財新網」などが30日に報道した8棟とは別だった。業績低迷も同社の大規模な売却計画の一因とみられる。同社の2019年上半期決算報告では、今年上半期の純収益は56500万元(約871300万円)にとどまり、前年同期と比べて48.36%減少した」

     

    オフィスタワーの売却は、空室率の高まりや不動産価格の下落兆候を総合的に考え、中国国内の事業を手仕舞い、新興国へシフトするのであろう。中国経済の時代が、終わる象徴的な話である。2010年5月から、このブログを毎日書き始めて、ようやく「中国経済にトドメが刺された」という実感を強くした瞬間である。

     

    (4)「国内経済景気の後退や米中貿易戦の長期化で、企業の中国撤退や倒産が増えたため、北京市などの大都市でのオフィスタワー空室率が上昇している。英不動産顧問大手のDTZデベンハム・タイ・レオンの統計では、201919月期において、北京市全域と市内5つの重要ビジネス地区のオフィスビル空室率は、前年同期比でそれぞれ40.9%と20.6%上昇した。上海市の場合、今年上半期で、高級オフィスビルの空室率は同18%上昇し、10年ぶりの高水準となった。19月期の空室率は同20%と大幅に上がったという。一部では、SOHO中国が採算の取れない商業不動産を売却しているとの見方を示した」

     

    下線を引いたように、オフィスビルの空室率が急速に高まっているという。外資企業の中国撤退と企業倒産の増加が原因である。これでは、中国経済の未来に期待など持てるはずがない。

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