勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年11月

    ポールオブビューティー

       

    文政権の大統領府に集まった参謀は、ひたすら自己の利益で動いている集団のようである。次期政権も進歩派が続き、失業しないことが最優先の傾向がきわめて強い。「チョ・グク前法相」任命の際も毎日、世論調査を行なって支持率の動向を見ていたという。この驚くべき大衆迎合性が、チョ・グク氏の在任30日間という早期辞職を招くことになった。大局を見失っているのだ。

     

    今回のGSOMIA(日韓軍事情報包括的保護協定)騒動も同じである。破棄決定も破棄一時中断もすべて党利党略優先である。国家の利益を考えず、ひたすら大統領府勤務が長く続くことを願っている身勝手集団の行動である。

     

    『中央日報』(11月27日付)は、「GSOMIA終了を主張した青瓦台参謀、イラク派兵の時を思い出させる」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のチェ・ビョンゴン国際外交安保チーム長である。

     

    (1)「韓国ギャラップが19~21日に実施した世論調査によると、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了決定に対して回答者の51%が支持を表明した。不支持は29%に過ぎなかった。過半数がGSOMIAを終了させることに賛成した。ところが支持政党と理念指向でみると、賛否が鮮明に分かれる。共に民主党支持者の78%が支持していた反面、自由韓国党支持者の70%は不支持だった。保守だと指向を明らかにした回答者では不支持は57%なのに、進歩回答者では指示が79%だった。青瓦台(チョンワデ、大統領府)が紆余曲折の末にGSOMIA終了を猶予したが、この世論調査からみると支持層の結集にはあまり役に立つものではなかった」

     

    GSOMIA終了決定に関する世論調査で、政権支持で賛成した比率は79%であり、反対が21%もいた。支持層の結集に役立っていないことが判明した。チョ・グク氏を法相に指名する際、支持層の結集が目的であったとされる。こういう党利党略の決定は、国家の針路を見誤らせる。

     

    (2)「16年前にはこれよりももっとひどかった。2003年米国が要求したイラク派兵をめぐり与党で反対が続出した。故金槿泰(キム・グンテ〕議員が「不道徳な戦争」とし、任鍾皙(イム・ジョンソク)議員はハンストを行った。振り返ってみればイラク戦は名分も実益もない戦争だった。バラク・オバマ前大統領はイラク戦に公開的に反対し、現ドナルド・トランプ大統領も無駄に介入した戦争だと批判した。だが、当時盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権はネオコンが掌握したブッシュ政権の要求を無視できなかった。派兵の有無で同盟の有無が決まった瞬間だった。韓国軍を派兵しなければ在韓米軍、特に北朝鮮軍のソウル進撃を防ぐ前方第2師団が大規模にイラクに向かう可能性があった」

     

    2003年、米国が韓国にイラク派兵を要請。韓国が、これを受入れるのは苦渋の決断であった。進歩派の盧武鉉政権が、あえてこの要請を受入れたのは党利党略を離れた国益があった。下線のような軍事情勢が控えていたのだ。

     

    (3)「盧武鉉政権が派兵決定を下したからといって、保守陣営が票を与えるようなことはなかった。今回もGSOMIA終了決定を猶予したからといって、保守層が現政権に対する態度を変えそうにはない。そうはいっても、政治的な得失ではなく国家的得失として国政を決めることが、国民から国政運営を委任された執権勢力の当然の姿勢だ」

     

    盧武鉉氏のイラク派兵決定により、保守陣営の票が増えることはなかった。下線のように政治的得失でなく国家的な損失として国政を考えるべきという指摘はもっともである。文政権には、この視点が欠如している。

    (4)「2003年4月2日国会本会議場に立った盧武鉉大統領は、経済改革、労使文化改革、言論改革に先立ち、派兵案処理に真っ先に言及した。就任後初の国会施政方針演説だった。「私は名分を重視してきた政治家です。政治経歴の重要な峠を迎えるたびに不利益を甘受しながらも名分を選んできました。(中略)そのようにしてきた私が今回は派兵を決めて皆さんの同意を要請しています。私の決定に国と国民の運命がかかっているためです」。国会はこの日、工兵・医療部隊派兵案を可決処理した」

    下線の部分の演説は、真意がこもっている。この演説を聴けば、誰でも深く感動して賛成票を投じたであろう。文大統領の「小理屈をこね回した話法」には、反対論者を説得する誠意が感じられないのだ。

    a0960_008615_m
       

    中国は、新興国特有のパターンである勢力圏拡大に一直線である。すでに、世界覇権が約束されたような傲慢な一面を見せている。だが、その「快進撃」が数々の軋みをもたらしてきた。

     

    第二次世界大戦後、米ソの冷戦構造の舞台は欧州であった。米中冷戦と言ってもまだ、専門家の意識に上っている程度だが、米中貿易戦争はその嚆矢である。米国は、すでに「インド太平洋戦略」によってアジアを舞台にして、中国と軍事対決する装置づくりに動き始めた。米国・日本・豪州・インドが協力して中国軍と対峙する構想である。

     

    最近の香港学生デモの暴力的な取締、新疆ウイグル族100万人を拘束する歴史的大規模な人権犯罪。これらが、人権意識のことさら強い欧州諸国の対中警戒観を強めている。ドイツ政府のように対中経済依存の高さを理由に、中国へ融和的な姿勢を見せている国もある。そのドイツ議会は、中国警戒姿勢を見せ始めた。いずれ、議会が政府の対中融和を抑制することが確実になっている。

     

    中国は、ロシアへ急接近している。こうなると、欧州は地理的にアジアから離れているという単純な理由で、対中国融和姿勢が問われる局面になってきた。欧州は、中国をビジネス相手として歓迎する段階は終わって、政治的・軍事的に警戒する相手になっているのだ。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月27日付)は、「中国は欧州にとっても問題」と題するコラムを掲載した。筆者のウォルター・ラッセル・ミードは、WSJ「グローバルビュー」欄担当コラムニストである。

     

    (1)「中国の存在感が大きくなる中で、米欧間の新たなコンセンサスが形作られつつある。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は先月、自国の次世代通信網「5G」に華為技術(ファーウェイ)の機器を使うのを認めた。これはメルケル氏の数少ない政治的失策の1つだ。米国はいつも通りの抗議と警告を行い、これをドイツ側も例のごとくはねつけた。しかし、事態はそこで収まらなかった。メルケル氏が率いてきたキリスト教民主同盟(CDU)の会合で、代議員らが反旗を翻し、ある決議を採択したのだ。それはドイツでのファーウェイの5G展開を阻止する連邦議会での投票につながりかねないものだった。通常はメルケル氏のCDUと連携する中道左派のキリスト教社会同盟(CSU)も、この決議に賛同した。中国企業にドイツの通信データを委ねることはできないと考えたのだ」

     

    メルケル首相にとって、中国は経済的な恵みの源泉である。だが、ドイツ議会は中国に対して、その覇権主義を嗅ぎ取っている。警戒し始めたのだ。ファーウェイの5G排除が警戒信号である。

     

    (2)「EUと米国の中国に対する見方を一致させる取り組みは、完了したとはとても言えない状況だ。フランスは自国の5G計画からファーウェイを排除することを拒否した。他の欧州諸国の政府や多くの企業は依然として、バラ色のレンズを通して中国を眺めている。しかし、こうした見方は変わりつつある。米国民と同様に欧州市民も、香港の民主派の動きに共感を抱いており、中国政府によるチベット人やウイグル人の扱いに恐怖を感じている。ドイツ産業連盟は過去1年、中国のビジネス慣行を厳しく批判してきた

     

    人権問題に敏感な欧州は、中国観を訂正し始めている。香港学生デモへの手荒な扱い。新疆ウイグル族100万人への弾圧実態など、次々に表面化してきた人権弾圧国家への警戒観が滲み出ている。これまでは、好調な輸出の影に隠れていた問題が、にわかにクローズアップされている。金の切れ目が縁の切れ目という側面もある。

     

    (3)「米国と欧州に関係強化を促す別の力も存在する。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領だ。プーチン氏は中国との本格的な同盟関係を受け入れたように思われる。クリミア併合から偽情報拡散による欧州選挙への影響力行使まで、ロシアの破壊的な目標は常に資金不足に悩まされてきた。これはロシアの力の投影が抱える問題の元凶となっている。一部のネオ孤立主義者の間では、欧州におけるロシアの活動は米国にとって戦略上の脅威というより、むしろ悩ましい程度の存在との認識が支持を得ていた。しかし、中国がギリシャや南部、東部欧州にわたって大規模投資を行っていることから、こうした認識は変化するかもしれない。ロシアと中国が同盟関係を強めれば、中国に重点を置く米国の外交政策にとって、欧州でのロシア問題がより重要なものになる」

     

    ロシアが中国と同盟を結べば、欧州の中国警戒観が高まる。同時に、米国の欧州への関心が高まってくる。現在の米国は、インド太平洋戦略でアジアを主舞台にしているが、中国が欧州へ勢力圏を広げれば、「第三次世界大戦」が現実問題として語られるようになろう。中国経済がそこまでの余裕を持てるか大いなる疑問もある。ただ、そういうポーズを取るだろう。

     

    (4)「中国に起因する潜在的な脅威を十分理解している米国民はまた、欧州の助力なしに勝利を収めることが困難であり、おそらく不可能であることを認識している。米国民は中国について真剣に考えれば考えるほど、欧州についても一層配慮するようになるだろう。中国政府に関する米国の懸念を十分な規模の欧州市民が共有すれば、世界の政治の中心舞台がインド・太平洋にシフトしても、欧米の同盟関係は引き続き重要なものとなろう

     

    中国が脅威であるのは、価値観が全く異なる点にある。つまり、異教徒であることだ。人権弾圧について何ら良心の呵責もない民族が、世界覇権を目指すのは何としても阻止しなければならない。中国が、人権弾圧という人類への反逆を試みれば、民主主義国は団結して阻止する以外に道はない。妥協はあり得ないのだ。

    a0003_ki_0063_m
       


    韓国の文国会議長が11月5日、早稲田大学で発表した徴用工賠償問題の解決案は法案の形になってきた。韓国国会は25日、法案説明会を開くまでになった。急ピッチで法案化作業を進めている背景には、日本の「ホワイト国除外」を廃止させる「受け皿」を作る目的だ。日韓紛争の原点は、徴用工賠償問題の判決にある。これを解決するため、日韓基本条約と大法院判決に抵触しない寄付金による「代位弁済」方式をとることになった。1500人に慰謝料などとして計約3000億ウォン(約277億円)を支給する内容という

     

    代位弁済とは、第三者による債務弁済である。弁済資金は、日韓の企業・個人の寄付金を原資とする。対象は徴用工だけでなく、慰安婦など日韓の歴史問題から発生する賠償の弁済を行なうという。これによって、日韓でトゲの刺さってきた問題の解決を計ろうという趣旨だ。ただ、原告がこの代位弁済に異議を唱えている。文議長は関係団体と話合うが、個人レベルの接触を避けている。個別問題に関わると、解決案がまとまらないという危惧である。

     

    かつて、東京都知事であった美濃部虎吉は、「都民が一人でも反対すれば公共事業を行なわない」という綺麗事を言って、東京のインフラ投資が大きく立遅れた先例がある。全員の意見を聞けば「千差万別」で結論は出ないもの。文議長もこういう落し穴にはまらないよう、寄付金による弁済の制度設計に着手している。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月26日付)は、「韓国議長、寄付金で賠償肩代わりを提案、元徴用工訴訟で」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「元徴用工や遺族でつくる団体の関係者によると、韓国国会の事務局が26日、文議長が検討を進める法案の説明会を開いた。日韓の企業と個人から寄付金を募り、設立する基金を通じて訴訟の原告らに現金を支払う。韓国最高裁が日本企業に命じた賠償を基金が肩代わりする「代位弁済」の形をとる」

     

    11月5日、日本で構想を発表し、25日には元徴用工や遺族でつくる団体の関係者へ説明会を開くという早いスピードである。12月末には、日韓首脳会談が開催される予定で、それに間に合わせるという「突貫工事」である。

     

    (2)「文議長は来日中の115日に早稲田大学で講演した際、この案を明らかにした。元慰安婦を支援する財団に日本政府が拠出した10億円の残金約6億円を、新たな基金の運営費に投じる構想もある。元慰安婦の支援財団は事実上の解散状態にある。元徴用工訴訟の解決策を巡っては韓国政府が6月、日韓の企業が自発的に資金を出し合って原告と和解する案を日本政府に示した。日本側は1965年の日韓請求権協定に反するとして即座に受け入れを拒んだ」

     

    今回の文議長の提案は、日本企業に直接の法的責任を求めない手法を取る点で、日本側に一定の評価がある。超党派でつくる日韓議員連盟の河村建夫幹事長(自民党)は25日付の韓国紙、中央日報のインタビューで同案を巡り「解決策はこれだけだ」として法案の年内成立に期待を示した。他方、韓国政府の関与が必要との指摘もあるが、文議長は文大統領と刎頸の友の関係にあるから打合せ済みであろう。

     

    日韓議員連盟の河村建夫幹事長は、安倍首相にこの韓国提案を説明している。韓国紙によれば、「それしかないだろう」と語ったという。河村氏と安倍首相は、同じ山口県出身で「ツーカー」の関係にある。韓国も、文議長と文大統領が「ツーカー」だ。日韓双方の窓口が、それぞれ最高首脳と強い関係で結ばれていることを考慮すると、それなりの成算があるのだろう。

     

    もっとも、原告側は日本企業による賠償と謝罪が必要だとして反発している。原告の支援団体は27日に記者会見を開き文議長案に反対する声明を出す予定だ。この辺が未知数であるが、文大統領も解決に乗り出す必要があろう。

     

     

     

     

    a0005_000127_m
       

    どこで、どうなったのか韓国政府は、あり得ない話をメディアに流している。しかも、「複数の消息筋」というきわめて信憑性のあるように振る舞った情報操作である。次の記事がそれだ。

     

    『聯合ニュース』(11月25日付)は、「輸出規制撤回に1カ月程度必要 GSOMIA終了前に日本が言及=韓国政府筋」と題する記事を掲載した。

     

    韓国政府が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了を条件付きで延期する決定をしたことと関連し、日本が韓国に輸出規制関連の対話を提案する際に輸出規制の撤回までに約1カ月程度の時間を要すると言及していたことが分かった。複数の政府消息筋が25日、明らかにした。韓国政府は、日本が規制撤回にかかる時間まで提示して輸出規制に関する協議に向けた対話を先に提案しておきながら、メディアを通じて一切譲歩していないとの立場を示したことに対して怒りをあらわにしている」

     

    この記事は、昨日の私のブログ「韓国、『本当か』日本、1ヶ月後に輸出手続き規制撤廃を『約束した』」において、ありえない「ウソ話」でないかと指摘した。韓国は、昨年12月の海上自衛隊哨戒機の一件でも分るように、次々と辻褄の合わないつくり話をして、責任を回避し最後はウヤムヤにした前歴を持つ。こういう経緯を指摘しながら「韓国作為説」を指摘した。

     

    このブログを読んだ読者の方から、貴重なコメントをいただいたので掲載させていただく。

     

    「22日の(経産省)会見を見ましたが、最後の下線のようなことは話していません。
    また、旧ホワイト国に戻すには、最低限、審査官の増員(日本120名、韓国10名で教育には最低でも数ヶ月)と韓国での法改正が必要(新しい武器に対応できていない)で、その施行状況を確認するための期間も必要です。それから、国内手続き(政令のパブリックコメント等)が必要です。つまり、物理的に不可能であることは、日本の役人は誰でも知っていることで、そんな約束を知るはずはありません。
    したがって、韓国のウソであることは明らかです。ウソに対しては、いちいち反論すべきです。2019-11-26 09:35:51あまこちゃん」

     

    コメント内容から推察するに、かつて、この業務に就かれた経験をお持ちのように思われる。それだけに貴重なご意見と拝察した。

     

    前記コメントを要約したい。

     

    .旧ホワイト国に戻すには、最低限、審査官の増員(日本120名、韓国10名で教育には最低でも数ヶ月)。

    .韓国での法改正が必要(新しい武器に対応できていない)で、その施行状況を確認するための期間も必要。

    .国内手続き(政令のパブリックコメント等)が必要。

    .結論:約1ヶ月では物理的に不可能である。

     

    韓国の戦略物資の審査官は、10名しかいない。これを、日本並に120名に増員するには数ヶ月の教育が最低限、必要である。また、2や3の手続きが必要となれば、韓国大統領府の担当者が言うように「約1ヶ月程度」で、輸出手続き規制撤廃ができるはずがない。

     

    『中央日報』(11月26日付)は、「日本、『韓国3つの条件クリアしなければホワイト国復帰ない』数年かかる」と題する記事を掲載した。

     

    日本の輸出規制問題を議論する韓日両国の課長級協議、局長級の政策対話が、それぞれ12月上旬と下旬に開かれる方向で検討されていると、毎日新聞が26日報じた。政府関係者を引用した報道で、毎日新聞は「課長級協議は韓国で、局長級は日本で開催する見通し」とし「12月下旬に日中韓首脳会談(北京で開催)前に行う方向で調整している」と伝えた。

    (1)「同紙は、▼フッ化水素など3品目に対する輸出規制強化措置の撤回▼ホワイト国への韓国復帰については「日本政府は即時に認めない方針で、韓国への輸出の適切な実施や、韓国側の輸出管理体制の整備を条件とする」と伝えた。これに関連し日本経済産業省の関係者は25日、自民党の関連会合に出席し、「ホワイト国復帰のためには▼両政策対話が開かれていないなど信頼関係が損なわれている▼通常兵器に関する輸出管理の不備▼輸出審査体制、人員の脆弱性--が解消されなければいけない」という3つの条件を挙げた。さらに「3つがクリアされない限り、ホワイト国に戻すことはない」と述べた」

     

    要約すれば、韓国がホワイト国へ復帰するためには、次の条件が必要である。

    .両政策対話が開かれていないなど信頼関係が損なわれている。

    .通常兵器に関する輸出管理の不備。

    .輸出審査体制、人員の脆弱性が解消されなければいけない。

     

    ここで上げられている内容は、私が読者からいただいたコメントをほぼ反映している。こう見てくると、韓国の戦略物資審査体制と制度面のチェックが不備であったことは明白である。これらが、1ヶ月程度で整備されるはずがない。よって、日本政府が「輸出規制撤回に1カ月程度必要」など発言するはずがないのだ。韓国政府の「つくり話」であることは疑いない。

     

    (2)「同紙(注:毎日新聞)は、特に「(両国間)対話を繰り返す必要があり、グループA(ホワイト国)復帰のためには数年かかるだろう」という日本政府関係者の話も伝えた。また、同紙は「韓国が22日に輸出規制をめぐるWTO(世界貿易機関)提訴手続きを停止すると正式に日本に通知し、これを受け、両政府は輸出管理をめぐる政策対話を行うことで合意した」と報じた」

    韓国報道では、この話の順序が逆になっている。日本が、輸出規制を1ヶ月程度で元に戻すと申入れてきたので、GSOMIA破棄を一時停止したとなっている。ペテン師のような「つくり話」である。韓国は不思議な国だ。

    a1180_012431_m
       

    中国にとっては、予想外の屈辱的な大敗になった。本土では、香港区議選結果を報道しないところに、その衝撃の大きさを表している。選挙結果は、次のようなものだ。

     

    定員数 452人(18区)

    民主派 388人 85.8%

    親中派  59人 13.1%

    独立系   5人  1.1%

     

    民主派が、9割弱で親中派は1割強という結果は、香港市民の政治意識を示した。学生デモで、一般市民はそれほど民主派を支持しないのでないかという予想すらあった。それが蓋を開けたら、民主派の圧勝である。専制政治手法は嫌われることを証明した。

     

    行政区長官・林鄭氏はこれまで、政治改革の要求をかたくなに拒否し、サイレントマジョリティー(声なき多数派)は自身の政権を支持し抗議デモに反対しているとの見解を繰り返し示唆してきた。選挙結果を受けて、林鄭氏の香港政府の発表した声明で、「政府は必ず市民の意見を謙虚に聞き入れ、真剣に検討する」と表明。一方で、今後取る可能性のある対応についての詳細は明らかにしなかった。以上は、AFP(11月26日付)が伝えた。

     

    香港行政府長官には、政策決定権がない。すべて、習近平中国国家主席が握っている。今回の選挙結果を受けて、どのような手を打つのか見ものである。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(11月25日付)は、「香港、民主派圧勝で混乱深まる可能性」と題する記事を掲載した。

     

    中国はこの数カ月、香港の抗議デモが多くの市民の意思ではなく、外国勢力に操られたテロリストの仕業だと位置づけてきた。6月にデモが発生してから初めての選挙となる24日の区議会(地方議会)議員選挙で、香港市民は審判を下した。その結果、中国政府のメンツはすっかり失われた。

     

    (1)「選挙前の2週間、抗議デモは一段と過激になっていた。警察は大学を包囲し、デモ隊は交通を妨害し学校を休校に追い込んだ。香港理工大学では包囲されて1週間がたった25日も包囲が続いた。アナリストらは暴力行為により抗議活動への市民の支持は弱まるだろうとみていた。区議選はそうした考えが甘かったことを示した。区議会に政治的な力はなく、その役割は地域に関わる身近な問題で政府に提言する程度に限定されている。しかし今回の勝利により、民主派は一定の影響力を行使する手段を新たに得たことになる。区議選で勝ったことで議会に当たる立法会に6人が立候補できるほか、行政長官選挙でも、親中派が多数を占める1200人の選挙委員のうち117人分を割り当ててもらえるためだ

     

    民主派は区議選で圧勝したが、香港政治に関われる力は限定的である。それでも、香港議会に当る立法会に6人が立候補できるなど「風穴」は開けられる。これを通して、民主化要求を実現する手立ては残っている。

     

    (2)「もっとも、区議選の重要性は香港で最も公正な直接選挙だという点にある。中国本土と関係が深い業界団体に多くの選出枠が与えられている立法会選とは対照的に、区議選は単純過半数で決まる。今回の選挙は事実上、抗議活動への賛否を問う住民投票だった。今や香港政府と中国政府が直面する危機は深刻だ。抗議活動に弾みがつき、参加者らは行政長官を普通選挙で選べるようにすることや、警察の暴力行為を調べる独立調査委員会の設置などの要求をさらに強硬に通そうとするだろう」

     

    民主派が区議選で圧倒的多数を握ったので、抗議活動に弾みがつくことは避けられない。その要求は一層、強硬になってゆくはず。香港政府と中国政府はどのように対応するのか。

     

    (3)「解決策の一つは、中国政府が政治改革を提案することかもしれない。最も可能性が高いのは中国共産党が香港政府に取り締まりの強化を求め続けるシナリオだ。ここ数カ月の展開を受け、習氏は香港に高度な自治を保障する「一国二制度」をこのまま続けるわけにはいかず、香港市民の要求に応じることなどもってのほかだと確信したはずだ」

     

    香港行政長官は、「政府は必ず市民の意見を謙虚に聞き入れ、真剣に検討する」と表明したが、これを信じる者がいるだろうか。単なるリップサービスであろう。習近平氏は、体質的に民主制度を嫌悪するタイプだ。「一国二制度」を踏み潰すと見られる。ここに、大きな落し穴が待っている。米国の「香港人権法」が発動されるに違いない。香港の運命はそこまで。経済環境が激変して、国際金融都市のイメージは剥落する。

     

    このページのトップヘ