文政権の大統領府に集まった参謀は、ひたすら自己の利益で動いている集団のようである。次期政権も進歩派が続き、失業しないことが最優先の傾向がきわめて強い。「チョ・グク前法相」任命の際も毎日、世論調査を行なって支持率の動向を見ていたという。この驚くべき大衆迎合性が、チョ・グク氏の在任30日間という早期辞職を招くことになった。大局を見失っているのだ。
今回のGSOMIA(日韓軍事情報包括的保護協定)騒動も同じである。破棄決定も破棄一時中断もすべて党利党略優先である。国家の利益を考えず、ひたすら大統領府勤務が長く続くことを願っている身勝手集団の行動である。
『中央日報』(11月27日付)は、「GSOMIA終了を主張した青瓦台参謀、イラク派兵の時を思い出させる」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のチェ・ビョンゴン国際外交安保チーム長である。
(1)「韓国ギャラップが19~21日に実施した世論調査によると、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了決定に対して回答者の51%が支持を表明した。不支持は29%に過ぎなかった。過半数がGSOMIAを終了させることに賛成した。ところが支持政党と理念指向でみると、賛否が鮮明に分かれる。共に民主党支持者の78%が支持していた反面、自由韓国党支持者の70%は不支持だった。保守だと指向を明らかにした回答者では不支持は57%なのに、進歩回答者では指示が79%だった。青瓦台(チョンワデ、大統領府)が紆余曲折の末にGSOMIA終了を猶予したが、この世論調査からみると支持層の結集にはあまり役に立つものではなかった」
GSOMIA終了決定に関する世論調査で、政権支持で賛成した比率は79%であり、反対が21%もいた。支持層の結集に役立っていないことが判明した。チョ・グク氏を法相に指名する際、支持層の結集が目的であったとされる。こういう党利党略の決定は、国家の針路を見誤らせる。
(2)「16年前にはこれよりももっとひどかった。2003年米国が要求したイラク派兵をめぐり与党で反対が続出した。故金槿泰(キム・グンテ〕議員が「不道徳な戦争」とし、任鍾皙(イム・ジョンソク)議員はハンストを行った。振り返ってみればイラク戦は名分も実益もない戦争だった。バラク・オバマ前大統領はイラク戦に公開的に反対し、現ドナルド・トランプ大統領も無駄に介入した戦争だと批判した。だが、当時盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権はネオコンが掌握したブッシュ政権の要求を無視できなかった。派兵の有無で同盟の有無が決まった瞬間だった。韓国軍を派兵しなければ在韓米軍、特に北朝鮮軍のソウル進撃を防ぐ前方第2師団が大規模にイラクに向かう可能性があった」
2003年、米国が韓国にイラク派兵を要請。韓国が、これを受入れるのは苦渋の決断であった。進歩派の盧武鉉政権が、あえてこの要請を受入れたのは党利党略を離れた国益があった。下線のような軍事情勢が控えていたのだ。
(3)「盧武鉉政権が派兵決定を下したからといって、保守陣営が票を与えるようなことはなかった。今回もGSOMIA終了決定を猶予したからといって、保守層が現政権に対する態度を変えそうにはない。そうはいっても、政治的な得失ではなく国家的得失として国政を決めることが、国民から国政運営を委任された執権勢力の当然の姿勢だ」
盧武鉉氏のイラク派兵決定により、保守陣営の票が増えることはなかった。下線のように政治的得失でなく国家的な損失として国政を考えるべきという指摘はもっともである。文政権には、この視点が欠如している。
(4)「2003年4月2日国会本会議場に立った盧武鉉大統領は、経済改革、労使文化改革、言論改革に先立ち、派兵案処理に真っ先に言及した。就任後初の国会施政方針演説だった。「私は名分を重視してきた政治家です。政治経歴の重要な峠を迎えるたびに不利益を甘受しながらも名分を選んできました。(中略)そのようにしてきた私が今回は派兵を決めて皆さんの同意を要請しています。私の決定に国と国民の運命がかかっているためです」。国会はこの日、工兵・医療部隊派兵案を可決処理した」
下線の部分の演説は、真意がこもっている。この演説を聴けば、誰でも深く感動して賛成票を投じたであろう。文大統領の「小理屈をこね回した話法」には、反対論者を説得する誠意が感じられないのだ。