勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年12月

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    昨年7月から日韓関係は、超緊張状態へ突入した。日本が、半導体3素材の輸出手続き規制を強化したことで、狂ったような反日不買運動を行なってきた。だが、頭を冷やしてくると、韓国側の言い分に無理があることも分ってきたようだ。韓国側が日本へ寄ってきたので、12月末の日韓首脳会談で懸案事項が打開できるか。韓国は、4月の総選挙前に正常化をアッピールしたいのでなかろうか。反日では、経済が保たなくなっているのだ。

     

    日本が、韓国へ戦略物資管理強化を要求したことは、国際的にも理屈にあった話である。半導体3素材は、核開発にも転用可能な物質として厳しい管理が要求されている。韓国は、その面でルーズである。当時は、韓国は規定通りに監視していると騒ぎ回っていたが、現実はそうでなかった。

     

    韓国は、日本の経済産業省から半導体3素材の輸出手続き規制撤廃に、次のような3点を補強する必要があると指摘されている。

    .両政策対話が開かれていないなど信頼関係が損なわれている。

    .通常兵器に関する輸出管理の不備(注:キャッチオール規制)。

    .輸出審査体制、人員の脆弱性が解消されなければいけない。

     

    韓国はその後、日本の要求の線に沿い改善する方向を見せ始めた。

     

    『中央日報』(12月3日付)は、「日本の規制に対応、戦略物資輸出管理の人員拡大へ」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国政府が戦略物資の輸出入管理を専門的に担当する人員を拡大することにした。2日、政府によると、産業通商資源部は戦略物資の輸出入管理業務を支援する傘下機関である戦略物資管理院の人員拡大を推進している。戦略物資管理院の役職員は今年7~9月期を基準として56人となっている。政府は現在より約25%増となる70人にする方案を検討中だ。4日、韓日局長級政策対話準備会議を控え、日本が問題提起した事項を改善しようとする趣旨だ」

     

    韓国が、戦略物資管理人員を56人から70人へ増やすという。25%増になる。ただ、3年程度の経験が必要と言うから、増員でもフル稼働になるわけでない。この増員で、冒頭の日本が提示して要求の3番目は、辛うじてクリアする。1番目の信頼関係の構築は、待ったなしで日本の要求を実行することだ。

     

    残りの2番目の「キャッチオール規制」とは、次のようなものである。日本の安全保障貿易管理の枠組みの中で、大量破壊兵器及び通常兵器の開発等に使われる可能性のある貨物の輸出や技術提供行為を行う際、日本の経済産業大臣へ届け出て、許可を受ける制度である。韓国は、理由もなく自尊心が高いから、そこまでする必要がない、と思っているにちがいない。しかし、「ホワイト国」へ戻りたければ、日本へ連絡を密にすることだ。

     

    (2)「日本は韓国をホワイトリスト(輸出手続き簡素化国)から除外しながら

    両国政策対話が一定期間開かれておらず信頼関係が損なわれた点

    在来式武器への転用が可能な物資の輸出を制限する「キャッチオール」規制が不備な点

    輸出審査・管理人員の不足、など3種類を理由に挙げている。
    産業通商資源部の李浩鉉(イ・ホヒョン)貿易政策官は、最近の記者会見で「日本の輸出規制の原状回復を最終目標に最大限努力する」と話した

     

    この記事は、間違っている。「日本は韓国をホワイトリスト(輸出手続き簡素化国)から除外しながら」と不満そうに書いているが、3要件に欠けていたから「ホワイト国」から除外されたのだ。この因果関係をしっかりと頭に入れて置くことである。

     

    韓国産業通商資源部では、「日本の輸出規制の原状回復を最終目標に最大限努力する」と日本の要求を飲む覚悟である。こうして、「ホワイト国除外」を解除して欲しいというのだ。

     

    ここまで話が進んでくれば、日本は「ホワイト国除外」の解除となるが、もう一つ山が控えている。徴用工賠償問題である。韓国文国会議長が、日韓の企業・個人による寄付金で賠償金問題を解決しようと努力している。日本政府も水面下で連絡しているようで、日韓政府で妥協が成立すれば、こちらも解決の目途がつくであろう。

     

    「ホワイト国除外」解除と徴用工賠償問題が片付けば、日韓の間で突き刺さっていた「トゲ」が抜ける。来年の1~3月には、日韓紛争の原因が取り除かれれば、反日不買も撤回になる。こういう青写真が描けるかどうか。それは、12月末の日韓首脳会談の成果いかんである。

     

     

    テイカカズラ
       

    最近、悪いことはすべて文在寅政権のせい、という流れが強くなってきた。文政権在任の2年間で、全国の地価上昇分が2000兆ウォン(約182兆円)にも達したからだ。不動産対策が生温いからだと批判されている。この文政権責任論は飛躍し過ぎている面が強い。

     

    原因は、韓国独特の家賃制度「チョンセ」にある。「チョンセ」とは、次のような制度である。

     

    「チョンセ」では、一定の高額の保証金を支払えば、月々の家賃支払いがない。しかも退去する解約時に、保証金が全額返ってくるというもの。これだけ見ると、入居する側にとっては、すごく有利と見られる。それでは、家主はどうしているのか。チョンセ保証金の運用による利子が家主に入ってくるので、これが家賃収入になるのだ。預金金利が下がってくると、家主は損失を招くので、保証金自体を引上げざるをえなくなる。ここから、問題が起こってきた。

     

    こうして、低金利=保証金引上げというパターンで、住宅価格そのものを押し上げるという不可思議な現象が生まれている。韓国人が、この矛楯に気付かないのは、保証金が全額返ってくる上に、月々の家賃が要らないという表面的な点にある。総合的に考えれば、高額保証金を払う点で損(高い機会費用)していることを無視しているのだ。毎月、家賃を支払う「ウォルセ」の方が、高い保証金を必要とせず合理的な選択である。「チョンセ」で払う保証金で持家を買うという有効活用すれば、はるかに大きいメリットを受けられるであろう。

     

    ここら辺りに、韓国人の思考様式が窺える。物事を深く考えずに、表面的な現象で損得を決めていることだ。日韓問題もその最適例であろう。感情的に「不買運動」をやっているが、それが不安心理を高め、韓国のGDPを押し下げるというブーメランに見舞われるのだ。韓国人に見るこの不可思議な行動が、不動産価格を押し上げている

     

    『中央日報』(12月3日付)は、「文政権2年間に地価2000兆ウォン上昇、歴代政権で最高と題する記事を掲載した。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)政権の発足後2年間で、全国の地価が2000兆ウォン(約184兆円)ほど上がったことが調査で分かった。歴代政府のうち最高水準だ。経済正義実践市民連合(経実連)と鄭東泳(チョン・ドンヨン)民主平和党代表は3日、国会で記者会見を開き、このように明らかにした。経実連は1979年から2018年まで政府が発表した土地公示地価に相場反映率を逆適用し、地価変動の流れを算出した。

    (1)「各政権の年平均地価上昇率を計算すると、

    文在寅政権 1027兆ウォンで最も高かった。

    盧武鉉政権  625兆ウォン

    朴槿恵政権  277兆ウォン

    金大中政権  231兆ウォン

    李明博政権 -39兆ウォン」


    上記のデータを見れば、文政権2年間で、他の政権5年間を大幅に上回る地価高騰である。この原因は、「チョンセ」という一定額の保証金を払う家賃制度の矛楯にある。つまり、低金利=保証金引上げというパターンが、地価を押し上げている。この制度を禁止すれば、大家は、不動産を処分するであろう。まさに、家賃という制度改革が必要である。

     

    (2)「経実連は、「文在寅政権での2年間、物価上昇率による上昇分を除いて1988兆ウォンの不労所得が発生した」と分析した。これは1所帯あたり9200万ウォンにのぼる規模。国民の70%が土地を保有していない点を考慮すると、土地保有者1500万人が2年間に1人あたり1億3000万ウォンの不労所得を握ったという計算だ土地保有者のうち上位1%が全体の土地の38%を保有しているという国税庁の統計を適用すると、土地保有者上位1%は2年間に1人あたり49億ウォンの所得があったということになる。これは上位1%に該当する勤労所得者の勤労所得(年間2億6000万ウォン、2017年度)と比較して9倍にのぼる金額だ。全国民の平均勤労所得(3500万ウォン、2017年度)と比べると70倍にもなる」

     

    国民の70%が、土地を保有していないという事実に驚かされる。一生、貸家で住んでいるとすれば、家賃高騰が生活を圧迫するはずだ。何とも、おぞましいことをやっているものだと呆れる。高い保証金を払うよりも、持家の方がはるかに低コストで済むはず。こういう、損得計算が、韓国人にできないとすれば言葉を失う。 

     

    土地保有者のうち、上位1%が全体の土地の38%を保有しているという。これも驚きである。「チョンセ」がもたらした、国民収奪であろう。文政権は、こういう矛楯点に切り込むことだ。それが、政治というものであろう。反日の前に、内政でやるべきことは山ほどある。

     

     

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    『反日種族主義』は、韓国で出版されて話題を呼んだ本である。朝鮮近代化の歴史から説き起こし、日本への正当な評価を下している。韓国現代史では、絶対に触れたくない部分にメスを入れている。韓国で発売された8月に、本欄でも取り上げて正しい評価をすべきと指摘した。日本人的な感覚から言えば、「うん、そうだ」と納得できる部分が多い。

     

    韓国では現在、チェ・ソンラク著『100年前、英国メディアは朝鮮をどう見たか?』(ペーパーロード刊)が出版されて話題を集めているという。これは、英誌『エコノミスト』(1899年11月18日号)の記事から、同誌が朝鮮をどう見ていたかを取り上げている。

     

    それによると、旧韓末の韓国が海外列強の目にどう映っていたかが分かる。19世紀の開港後、韓国が最も多く輸入した品は英国産の綿織物だった。清や日本の商人がインドを通して貿易取引を行った。韓国は食料不足にもかかわらず、コメを輸出しなければならなかった。風前の灯火のような立場にあった旧韓末の韓国に対し、エコノミスト誌は一抹の同情も示さない。韓日強制併合前年の1909年、同誌は「朝鮮はいっそ外国から現代的行政システムの助けを受けた方が、朝鮮国民の利益にとって役立つだろう」と報じたのだ。以上は、『朝鮮日報』(12月1日付)が伝えた。

     

    前記の『英誌エコノミスト』は、当時の朝鮮がどうにもならない疲弊した状況にあったことを報じている。日本が併合して朝鮮を助けたとも言えるのだ。現在の韓国人には、理解不能であろう。

     

    『中央日報』(12月2日付)は、「『嫌韓ビジネス』が触発した『反日種族主義症候群』」と題する記事を掲載した。

     

    先月21日に東京で開かれた李栄薫(イ・ヨンフン)元ソウル大教授〔李承晩(イ・スンマン)学堂学長〕の記者会見にはOB・現職記者100人余りが集まった。李氏が書いた『反日種族主義 日韓危機の根源』(以下、『反日種族主義』 文藝春秋出版)の日本語版出版にあたって日本記者クラブが用意した席だった。開始前からすでに満席で、会見場外にも椅子20脚余りを置かなければならないほどだった。彼らのために記者会見は扉を開いたまま行われた。

     

    (1)「記者会見場には熱気であれていた。「韓国人の反日感情を理解できるようになった」「このように衝撃的な本は初めて」という反応もあった反面、「日本の植民支配に対する責任はどう思うか」「強制徴用者らが自由に生活をしたと主張しているが、その根拠はなぜ提示しなかったのか」という鋭い質問も飛んだ。YouTube(ユーチューブ)に掲載された李氏の記者会見動画は再生回数が17万回を超えた。普段3000回程度であることと比べると、その50倍以上となる人々が動画を見たことになる」

     

    下線分は、先に紹介したチェ・ソンラク著『100年前、英国メディアは朝鮮をどう見たか?』の中に答えがある。日本が、「面倒を見てやった」のが歴史的に見た正解であろう。世界的に朝鮮の扱いに困っていたのだ。日本を恨むことはない。自らの民族の不甲斐なさを反省すべきだろう。

    (2)「『反日種族主義』は出版2週間で日本の出版界で「嫌韓ビジネス」の新たな商品に浮上した。2週間で30万部を印刷し、アマゾンジャパンでは出版以来ベストセラー1位を記録している。紀伊國屋書店では「1人につき1冊のみ販売」との案内があった。「小説でもない社会科学系の書籍としては非常に珍しい」(出版業界関係者)という評価だ。今年6月に出版された太永浩(テ・ヨンホ)元北朝鮮公使が書いた『3階書記室の暗号』も1万部水準だったことと比較すると注目に値する数値だ」

    韓末の李朝が、日本との併合によって「一等国民になりたい」。朝鮮の日本併合派は、このように主張したのだ。日韓の対等併合を申し出たが、日本がそれを認めず「吸収合併」になった。もし「対等合併」であったのであれば、現在のように日韓対立は起こらなかったかも知れない。歴史に、「if」はないから言えないが、朝鮮は対等併合を申し出ていたのである。

     

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    文政権は、野党の自由韓国党を「積弊一掃」と称し、悪の権化に見立ててきた。その文政権が、何と蔚山市長選に介入し現職で自由韓国党候補を捜査させ、落選に追い込む卑劣な事件が明るみになっている。蔚山市長選で当選したのは、文大統領の友人で与党「共に民主党」候補である。文氏にとっては、「チョ・グク事件」に次ぐ、二度目のスキャンダルである。

     

    この種の事件は、戦前の日本でも起こっていた。警察が、時の権力と近い存在であった。現在の日本では、選挙が終わってから捜査に着手するのが慣例である。韓国政治が、この面でも日本から80年は遅れていると言えそうだ。それにも関わらず、「日本より道徳的に高い」としている。思い上がりも甚だしい民族である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月3日付)は、「韓国大統領府に市長選介入疑惑、野党候補の捜査指示か」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国大統領府が20186月の統一地方選に介入した疑惑が浮上している。南東部の蔚山市長選で、野党系現職市長の側近による不正の捜査を警察に指示し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領に近い与党系候補の当選を後押ししたとされる。検察が捜査に乗り出しており、「公正公平」を掲げる文政権の支持率に影響する可能性もある」。

     

    文政権は、次々と悪事が露見している。「クリーン」が売り物だった文大統領が、側近からボロが出始めてきた。これまで、朴槿惠政権を罵倒しつくしてきた文政権だ。前政権とどこが違うのか。そういう深刻な事態を迎えている。

     

     

    (2)「蔚山市長選は保守系で現職の金起炫(キム・ギヒョン)氏と、文氏と親交がある革新系の人権派弁護士、宋哲鎬(ソン・チョルホ)氏の一騎打ちだった。警察は昨年3月、金氏の側近が特定の業者に便宜を図ろうとしたとして、金氏の秘書室長室などを家宅捜索。5月に側近らを送検した。韓国メディアによると、金氏は市長選序盤の世論調査で宋氏を15ポイント上回っていたが、捜査の影響で逆転され落選した」

     

    選挙戦の最中に、警察は候補者である現職市長の側近を送検するという、露骨な選挙干渉を行なった。これでは、現職市長といえども選挙に勝てるはずがない。この「偽情報」のたれ込み先が、大統領府の民情首席秘書官で、スキャンダルで法相を辞任した曺国(チョ・グク)氏であった。チョ氏は随分、悪役を演じていたもの。これが、ソウル大学教授の仕業であるのだ。

     

    (3)「勝敗を分けた警察の捜査が「大統領府からの下命だった」というのが疑惑の核心だ。1127日付の朝鮮日報によると、大統領府の民情首席室が疑惑を警察に伝え、警察が捜査に動いたという。当時の民情首席秘書官はスキャンダルで法相を辞任した曺国(チョ・グク)氏。曺氏は2012年の総選挙に出馬した宋氏の後援会長でもあった」

     

    大統領府の民情首席室は、国政に関する世論の把握と大統領周辺の人事管理が主な業務である。選挙を経て就任する高位公職者は情報収集の対象ではなく、越権行為の可能性があるとして検察が捜査に着手した。チョ氏には、もう一つ罪名が付いて捜査対象になりそうだ。

     

    (4)「こうしたなかで、当時大統領府に勤務していた職員が1日、検察の参考人聴取を前に遺書を残して死亡しているのがみつかった。疑惑に関わったとみられていた職員は検察から大統領府への出向者で、遺書には「検察総長に申し訳ない」と書かれていたという。

    市長選で敗退した金氏は2日に記者会見し、選挙の無効を求めて提訴すると発表した」

     

    大統領府は一連の疑惑を否定している。盧英敏(ノ・ヨンミン)秘書室長は11月29日、国会で「金氏を監察したことはない」と述べた。ただ「不正の情報を警察に伝えただけだ」とも語り、警察に情報を伝えたことは認めた。明らかに共犯であろう。

     

    (5)「大統領府に浮かぶ疑惑は蔚山市長選への介入だけではない。文氏の盟友である故・盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領が信頼を置き、釜山市経済副市長などを歴任した柳在洙(ユ・ジェス)氏の収賄疑惑をもみ消したとの指摘もある。「身内びいき」の疑惑が晴れなければ、苦境が続く文氏の政権運営にさらなる打撃となる可能性がある

     

    下線を引いた柳在洙氏は、賄賂を受けて監察対象になっている。要職の金融監督委員会金融政策局長、民主党首席専門委員、釜山市経済副市長を歴任した人物である。文大統領を「在寅兄さん」、李鎬チョル(イ・ホチョル)元民情首席秘書官を「鎬チョル兄さん」と呼ぶほど親しかったとされる。進歩派には、このように権力機構を渡り歩き、懐を暖める人間が跋扈(ばっこ)している。文大統領が判で押したように言う「積弊一掃」対象は、進歩派の中にゴロゴロいるのだ。

     

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    米国は、「香港人権法」を発効させ、「一国二制度」が条約通りに運用されているかをチェックすることになった。中国による香港の人権弾圧を阻止する目的だ。違反していれば、米国が香港に与えた特権(関税、ビザなど)を剥奪するというもの。中国は、内政干渉として反発し、「報復」すると息巻いていた。

     

    その報復策が、中国外務省から発表された。「形式的」という結果に終わった。米韓の香港寄港禁止とNGO制裁という「小ぶり」である。事前報道では、今回の「香港人権法」に関わった人物のビザを発給しない。また、米企業の中国本土からの追放などが上がっていた。だが、蓋を開けたら「小粒」で驚くほかない。米国からのさらなる報復を恐れたに違いない。

     

    中国が、この程度の「報復」に止まったのは、中国経済の破綻が進んでいるからだ。もはや、崩れる寸前の中国経済である。信用機構は、厳戒体制である。ドル建て債券のデフォルトさえ起こっており、米国のご機嫌を損じてはならない局面だ。中国企業について、米国市場での上場禁止論も出ている。ともかく、米国の神経に障ることを極力控えるという状態だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(12月2日付)は、「米軍の香港寄港を当面禁止、中国外務省」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国外務省の華春瑩報道局長は2日の記者会見で、米国で「香港人権・民主主義法」が成立した報復措置として、米軍の艦船が香港に寄港するのを当面禁止すると発表した。米国の非政府組織(NGO)を制裁対象とする方針も明らかにした。追加措置をちらつかせて米国をけん制した。混乱が続く香港情勢への「米国の関与」を国内に印象づける思惑もありそうだ。華氏は「香港人権・民主主義法は国際法に違反しており、中国への重大な内政干渉だ」と強調した。米軍の艦船や航空機が整備などで香港に立ち寄る際に必要な手続きを停止することにした。「情勢に応じてさらに必要な行動をとる」とも述べた」

     

    香港人権法は、中国にとってはきわめて深刻な法律である。中国は「内政干渉」というが、民衆弾圧の挙に出れば、それによって中国自身が「香港人権法」で間接的な損害を被るシステムになった。つまり、米国が与えた「香港特権」を剥奪されるのだ。こうなると、中国は事実上、「一国二制度」を法規通りに運用せざるを得ない。

     

    (2)「香港への艦船などの立ち寄りの可否はそのときの米中関係を表しやすいとされる。

    米海軍が南シナ海で哨戒活動を実施していた20164月には米国の空母などが香港への入港手続きを拒まれた。チベットや台湾問題を巡り米中の対立が起きていた07年も米空母の入港手続きが拒否された。対照的に1811月には米海軍の原子力空母「ロナルド・レーガン」が香港に寄港した。同年12月の米中首脳会談を控え、中国側に貿易協議を巡る摩擦が高まるのを回避する思惑があったとの見方がある」

     

    香港への米艦寄港禁止は、一時的措置とされている。ただ、『ロイター』は、「米軍の立ち寄り申請の受け付けを無期限で停止した」としている。日経の報道と食違いがある。

     

    (3)「当面香港への入港ができなくなっても米海軍の行動に大きな影響がでる可能性は小さい。過去の入港拒否では中国側が発表しなかったケースが多かったが、今回は香港への立ち寄り禁止を内外に宣言したのが特徴だ。米国をけん制する政治的メッセージを出す狙いがあったとみられる」

     

    寄港禁止が一時的とすれば、影響は少ない。ロイター報道のように「無期限」とすれば、米国がさらに反発して、圧力を加える可能性が出るだろう。

     

    (4)「中国共産党の習近平指導部は同法の成立後、米国に猛反発していた。香港区議会選で民主派が圧勝した香港情勢に米国が関与していると印象づけ、国内の結束を促す狙いもありそうだ。一方で、報復措置は「当面の間」とした。華氏は「いつまで香港への立ち寄りを停止するかは米国の実際の行動を見てからだ」と述べた。トランプ米政権は同法を成立させたものの、同法に基づく制裁の発動などには踏み込んでいない。米中貿易協議の先行きも不透明感が漂っている。米国の出方を見極め「交渉材料」にしようとしている可能性がある」

     

    トランプ大統領は、香港人権法に署名した。実施は、大統領特権に基づくと含みを持たせている。中国もこれに応えて抑制的な対応に止めている側面があろう。

     

    (5)「華氏は米国の全米民主主義基金(NED)や米人権団体フリーダムハウス、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチの名前を挙げて「(香港の抗議活動を)さまざまな手段で支持した」と主張。制裁対象にしたと述べたが具体的な内容には踏み込まなかった」


    国際NGOを制裁対象にしたが、具体的な内容に踏込んでいない。国際NGOは、もちろん民間組織である。その役割においては、「準政府的」な存在である。それだけに、中国政府は制裁を躊躇している面もあろう。

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