勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2019年12月

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    文在寅(ムン・ジェイン)大統領の外交感覚は正常だろうか。北朝鮮が、米国と対決している中で「南北融和による平和経済」を主張している。韓国国民は、米朝緊張を他人事のように扱う大統領に命を託しているのだ。何とも不思議な政治家が存在するものである。

     

    文大統領は24日、中国成都で開催された日中韓ビジネスサミットでの講演で、「平和が経済となり、経済が平和をもたらす平和経済がアジア全体で実現することを期待する」と述べたのだ。北朝鮮が米国を威嚇するという瀬戸際政策を演じているさなかに、はるか先の平和を論じている。燃えさかる火を前にして語る言葉ではない。

     

    『朝鮮日報』(12月25日付)は、「北の挑発が予告される中、文大統領は『平和経済』『東北アジア鉄道』の話ばかり」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「文在寅大統領は24日(現地時間)、中国成都で開催された韓中日ビジネスサミットでの講演で「平和が経済となり、経済が平和をもたらす平和経済がアジア全体で実現することを期待する」と述べ、前日に続いて「東北アジア鉄道共同体」構想を呼び掛けた。北朝鮮が米国に向け「クリスマスプレゼント」を予告し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)などによる挑発の動きを表面化させる今において、文大統領は北朝鮮との経済協力や対話に重点を置く考えを示したのだ。これは中国とロシアの対北朝鮮政策と軌を一にするもので、米国との足並みが乱れるのはもちろん「北朝鮮の非核化にもプラスにならない」との指摘も相次いでいる」

     

    日中韓首脳会談における文大統領の一連の発言は、米国を強く刺激したことは間違いない。文氏は、習近平氏との会談で新疆ウイグル族問題や香港問題を「中国内政問題」と認めたような素振りを見せたこと。また、北朝鮮制裁緩和に賛成するポーズをとっていることだ。いずれも米国の基本姿勢と正反対である。米韓同盟国として、こういう同床異夢的発言をすることは、文氏の外交センスが狂い始めてきた「惨事」に映る。

     

    米国は、韓国のこういう言動が北朝鮮問題解決にとって何ら利益にもならず、北朝鮮に塩を送る行為と見て厳しく批判している。米国から強いリアクションを受けることは必至であろう。米国に向かってどのように弁明しようとも、米国の不信を解くことは困難だ。

     

    (2)「この日は韓中日首脳会議のメディア向け共同発表が行われたが、その中で文大統領と中国の李克強首相は北朝鮮に対して「警告」ではなく「対話」と「交渉」に重点を置いた。これとは対照的に日本の安倍首相は「(北朝鮮による)相次ぐ弾道ミサイル発射は国連安保理決議違反」と明言し「北朝鮮の完全な非核化に向け、安保理決議の完全な履行が3カ国の共通した立場であることを確認した」と述べた。「制裁緩和を考慮すべきときではない」とする米国の主張と積極的に歩調を合わせた形だ」

     

    韓国が、北朝鮮問題であえて米国に背を向け、中国へ接近している姿は異常である。韓国防衛で米軍は駐留している。その同盟国の戦略と異なることを平然と行なっている。米国は、何のために韓国と同盟を結んでいるか、深い疑惑に包まれてはいるに違いない。

     

    (3)「今月16日(米国時間)に中国とロシアは国連安保理に「南北鉄道・道路協力プロジェクト」を制裁対象から除外することを含む新たな決議案の草案を提出したが、文大統領は今回これによく似た発言を行ったことになる。韓国与党・共に民主党などからは「意図された行動」との声も出ている。同党のある関係者は「最近、韓国政府は南北関係改善にあまりにも消極的という懸念も強まっていた。できそうなことはやってみるべきだ」とコメントした」

     

    韓国は、北朝鮮から罵倒されながら、北朝鮮を経済的に支援する政策に賛成している。韓国が、南北統一への夢を捨てない証拠であろう。だが、核を捨てない北朝鮮に甘い顔することは、間接的に核開発を支援することである。韓国は、「核武装した北朝鮮」と統一する積もりであろう。それが、仇敵日本を倒す道である。こう秘かに期しているとすれば、それは自滅への道。北朝鮮は、必ず韓国を潰しにかかるだろう。「飛んで火に入る夏の虫」の愚を演じるのであろう。気の毒だ。

     

     

     

     

     

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    韓国は2018年で、94%が大学(短大含む)へ進学する学歴社会だ。その学歴が、就職で生かされない最悪事態に陥っている。やむなく、高校卒の人たちの職場へ就職する事態になっている。4年間も大学で学んでも、それを生かせる職業がないのは「不幸」の一語だ。原因は、経済の不振と労働市場の硬直化にある。

     

    米国は3年後に、大卒が現場に大量進出すると予想されている。これは就職難でなく、製造現場が機械化・AI(人工知能)化され大卒者でなければ、オペレーションが不可能な事態になる結果だ。米経済が、新たなフロンティアで疾走するのに較べ、韓国のケースは、全く逆である。製造業が不振で研究開発などが停滞しているからだ。これに労働市場の硬直化が絡んでいる。

     

    『ハンギョレ新聞』(12月24日付)は、「大卒、『下方就業率』初の30%台 サービス・販売職が57%」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「大卒就業者が、志望先企業よりも、就職しやすい職業を選択する「下方就業率」(注:大卒が高卒職場に就職)は、初めて30%台を超えたという研究結果が出た。これは、過熱した教育投資によって溢れる高学歴労働者を吸収する良質の働き口が足りないということを意味する。また、下方就業者10人のうち89人は12年後にもその状態にあり、「ステップアップ」が円滑に働かないと分析された」

     

    日本でも就職氷河期と言われた時代、大卒者が公務員試験で身分を隠して高卒資格で受験して問題になったケースがある。これは、一時期のことであって、その後は聞いたこともない。韓国では、一般の就職でこれが常態化している。就職氷河期がずっと続いている状態である。

     

    (2)「22日に韓国銀行調査局が発表した報告書「下方就業の現況と特徴」によると、大卒者の下方就業率は20001月の22.6%から徐々に増え、今年3月に初めて30%を上回り、9月には30.5%だった。外国の最近の研究資料によると米国では、下方就業の割合が約40(19832013)に達したものと推定される。高学歴であればあるほど、職業不一致による失業が増加するという分析も出た」

     

    韓国の場合、大卒が高卒職場に進出する「下方就業」は、2000年代から始まっている。その間に、改善する政策もなく放置されてきたことに驚く。誰も疑問に思わず、運命と諦めているからだ。この事態を改革するには労働市場の流動化が必要だ。年功序列・終身雇用を打破して欧米風に変えることが、結果として失業を減らすことに気付かないのだろう。

     

    ここで、韓銀調査の重大ミスを指摘したい。米国は、機械化・AI化に進行で、大卒でなければ現場オペレーションが不可能になっている。韓銀は、この現実を理解していないのだ。米国の「下方就業率」が、約40%にもなっているはずがない。もし、それが事実なら、GDP成長率はもっと低下し、失業率が高まるはずだ。こういう「機械的」解釈をしているのは困ったものである。

     

    (3)「今回の韓銀の研究では、大卒就業者が管理者、専門家、事務職で働くケースは適正就業その他の職業についたケースは下方就業に分類した。下方就業者の職業はサービスや販売(57)が最も多く、単純労働も12%に達した」

     

    大卒就業者の「適性就業」は、管理者、専門家、事務職としている。それ以外は、「下方就業」と分類されている。

     

    (4)「下方就業率は金融危機当時に急増して以降、上昇傾向がさらに強まっている。大卒者の増加に高学歴者向けの雇用の増加が追いつかない労働市場の需給不均衡が膨らんでいるためだ。20002018年の間に大卒者は年平均4.3%増えた一方、適正雇用は2.8%増に止まった。20001月時点では、大卒者(663万人)と適正雇用数(631万件)は大きな差がなかったが、今年(9)は大卒者1512万人に対し適正雇用数は1080万件と、その差は大幅に拡大した」

     

    2000~18年の間に大卒者は年平均4.3%増えた一方、適正雇用は2.8%増に止まった。これは一見、雇用のミスマッチ現象である。だが、大学(短大含む)進学率は88%(2018年)で韓国と差のない米国の失業率は、なぜ韓国よりも低いのか。それは、労働市場の流動化が行なわれている結果だ。採用側が、「終身雇用・年功序列」の枠をはめられず、労働需要に合せて採用できるからである。逆に労働需要が減れば、解雇可能な制度になっている。

     

    一度、採用したら「解雇できない」条件の下では、企業の新規部門への進出は大幅に制約される。自由に起業するには万一、経営が不振となれば解雇できる自由度を持たせることだ。これが結局、経済を活性化させるのである。米国経済に活力があるのは、労働市場の流動化も大いに寄与している。

     

    韓国経済は、どうするのか。労組の主張するままに、終身雇用と年功序列を守っていれば、「下方就業」という事態から抜け出すことは不可能である。

     

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    中国は、これまで南シナ海のフィリピンやベトナムの島嶼を不法占拠し、軍事基地化する傍若無人の振る舞いを行なってきた。前記の2国は、弱い国防力で泣き寝入りさせられてきたのだ。フィリピンは、中国の経済援助を期待し、常設仲裁裁判所で得た対中国への勝訴判決を封印する譲歩までしてきた。だが、中国からの経済援助は空手形に終わっており、ついに力で中国へ対抗する道を選択した。

     

    南シナ海は、米国のマジノ線にもなっている。米国は、第二次世界大戦後の欧州防衛任務から、今後はアジア防衛に力点を置く。欧州防衛では、ソ連が標的であった。アジア防衛では、中国が「主敵」になる。米国単独でなく、日本、豪州、インド、ASEAN(東南アジア諸国連合)という連合軍を形成して、中国の勢力拡大に対抗するのだ。

     

    今回、フィリピンが海軍基地を建設するのは、米国や豪州との連携を視野に入れており、中国の野放図な版図拡大を阻止するべく立ち上がるものである。

     

    『日本経済新聞』(12月24日付)は、「フィリピン、新たな海軍基地、南シナ海巡り中国けん制」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「フィリピン海軍が同国北部ルソン島の南シナ海に面する湾岸で基地の建設を計画していることが分かった。経営破綻した造船所の一角を整備し、海軍の拠点とする。南シナ海でフィリピンと領有権を争う中国は同海に軍事拠点を建設している。フィリピンは新たな基地を軸とした米国やオーストラリアとの連携を視野に中国のけん制を狙う」

     

    中国は、フィリピンを甘く見たようだ。経済援助のエサをぶら下げれば、中国の意向を受入れるものと見てきた。この姿勢が、フィリピン国内の反中国熱を高めた。特に軍部の警戒感が強く、中国への強硬策に転じる原動力になっている。米・豪との連携を強めれば、南シナ海は波乱含みになろう。

     

    (2)「経営破綻した韓進重工業フィリピンの造船所(ルソン島西部サンバレス州)

    海軍トップのロバート・エンペドラッド司令官が日本経済新聞の取材で明かした。ルソン島西部のスービック湾沿いにある造船所の一部を取得する方向で政府と協議中とした。「造船所北側の一部を新たな基地として活用する」と述べた。造船所の敷地約3平方キロメートルの2割程度を譲り受け、桟橋や発電設備、軍事施設を建設するという」

     

    スピーク湾は、かつて米海軍の基地が置かれた場所である。その近くにフィリピンは海軍基地を建設する計画だ。

     

    (3)「韓国の中堅造船会社、韓進重工業の傘下にあった造船所は1月に運営会社が経営破綻し、銀行団が現在、再建を担うスポンサー企業を探している。豪州の造船大手オースタルと米投資会社サーベラスの企業連合が唯一の候補となっており、安全保障で協力する米豪の企業が参画する公算が大きい

     

    経営破綻した造船所跡を、安全保障を重視した企業連合に再建を任せるという方式で海軍基地を建設する計画だ。

     

    (4)「オースタルのデービッド・シングルトン最高経営責任者(CEO)は取材に対し、「我々も海軍の駐留を望んでいる」と語った。同社は中部セブ州に造船所を持ち、海軍の巡視船6隻を建造する計画を進める。ルソン島の造船所ではより大型の艦船を建造できるため、海軍と関係を強める思惑も透ける」

     

    再建する造船所は、海軍艦艇の建艦も行なうもので、艦艇修理も行なう計画だ。米豪海軍との連携を視野に入れるとすれば、ここで修理も行い、フィリピン海軍と一体的な運営構想もできあがるだろう。

     

    (5)「新たな基地は海軍が首都マニラ南のカビテ州に構える主力基地より南シナ海に近く、艦船が出航しやすい。スービック湾を挟んだ向かいには冷戦時代に米軍がアジア最大の基地を置いた拠点があり、今も米空母や潜水艦が寄港する。エンペドラッド司令官は新たな基地について「安全保障上、戦略的な施設になる」と指摘した。米軍との連携を強める可能性がある

     

    米海軍も、この基地に大きな関心を持っている。将来、米海軍艦艇の修理も可能となれば、米海軍にとっては大きな意味を持つことになる。

     

    (6)「司令官は明言を避けたものの、南シナ海のスカボロー礁などの領有権を争う中国を意識していることは間違いない。ドゥテルテ政権は対中融和姿勢を見せるが、島や岩礁を一方的に埋め立てて軍事施設を建設する中国に対するフィリピン軍の警戒は強まっている。経営破綻した造船所の再建に中国企業が関心を示したと伝えられた際には軍が懸念を表明し、政府が候補から外した経緯がある」

     

    中国の身勝手な行動は、ついにASEANから立ち上がる国家によって押し込められる事態に変ってきた。これまでのような勢力拡大は、頓挫する可能性もあろう。

     

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    上海と言えば、町並みは中国風イメージよりもヨーロッパ的な感じを受ける。欧米資本が19世紀から進出していた影響であろう。北京が政治都市ならば、上海は商業都市である。この上海人が、中国訪日旅行者の40%も占めているというニュースが表れた。なぜ、上海人は日本が好きなのか。

     

    戦前の日本では、長崎の人々が「下駄履き」で上海へ遊びに行っていたという話を聞く。客船で1泊すれば、上海へ着くという手軽さが人気を得ていたという。日本にとって上海は身近な中国であった。

     

    中国の作家・魯迅と内山書店店主・内山完造の長い交遊歴は有名である。上海には、今も当時を忍ぶ資料が、大切に保存されている。内山完造だけが上海に住んでいたわけでない。多くの日本人が住んでいたのだ。

     

    例えば、大正から昭和の始めまで、上海には数10万人の日本人が居住していたと言われる。谷崎潤一郎、芥川龍之介、金子光晴などの日本人作家が、上海に滞在していたと記述されている。上海の日本人租界跡は、文学を通して日本人と中国人の交流があったことを示している。こういう歴史を知っている上海人は、日本に足を運び、自分の目でそれを確かめたいという気持ちになるのだろう。

     

    このように、戦前の上海と日本の関係は切っても切れないものがあった。現在の上海人が、この影響を受けて日本への旅行を楽しんでいるのだろう。

     

    『サーチナ』(12月24日付)は、「訪日観光客の4割が上海人、どうして彼らは日本に行きたがるのか=中国メディア」と題する記事を掲載した。

     

    中国のポータルサイト『百度』812月22日付)は、日本を訪れる中国人観光客の40%を占めるのが上海人であるとしたうえで、上海人が日本旅行を好む理由について紹介する文章が掲載された。

    (1)「中国経済の発展に伴い多くの中国人が海外旅行を楽しむようになるなか、とくに日本が人気の観光地の1つになっていると紹介。そして、あるデータでは、日本を訪れる中国人観光客の中でも上海人が40%と非常に高い割合を占めているとし、経済的に発展している以外にも上海人が日本旅行を好む理由があると伝えている」

     

    上海人の1人当り名目GDPは、1万8117ドル(2017年)、日本は3万8343ドル(同)である。上海は、日本の47%の水準である。ちなみに、中国全体の1人当り名目GDPは、8677ドル(2017年)である。上海は、中国平均のざっと2倍である。上海人の1人当り名目GDPが、日本のほぼ半分の水準になっている以上、少し貯めれば、日本旅行を楽しめるわけだ。

     

    ビジネス面では、日本が上海の輸出先で3位。輸入先で2位にランクされている。日本との関係が密接であることが分かる。日本への旅行が増えても当然という感じだ。

     

    (2)「最初の理由として、上海が中国の中でもとくに日本から近く、飛行機に乗って2、3時間ほどで着いてしまうことを挙げた。搭乗時間が短いため疲れないうえ、飛行機のチケットも比較的廉価であることから、日本旅行のコストパフォーマンスがかなり高くなるのだとした」

     

    交通機関の利用は、最大3時間程度とされている。上海からのフライトが2~3時間で済めば、気軽に日本旅行ができる条件と言える。

     

    (3)「次に、上海人の食べ物の好みが日本の食文化に似ている部分があると説明。日本人は甘さと塩気が主体の味付けを好むのに対し、中国の多くの場所では油っこい濃厚な味を好む傾向があるものの、上海の人は甘めの味付けを好むことから日本の食べ物を受け入れやすいのだと紹介した」

    上海の味付けは、日本人と変らないという。これでは、日本食に拒否感はないだろう。

     

    (4)「さらに、上海は日本の気候に近いため、旅行するのに着る衣服を考えることなく普段着で出かけられることも日本旅行の利便性が高まり人気が集まる要因の1つになっているとの見方を示している」

     

    気候も夏は高温多湿、冬は乾燥ということで日本の九州や沖縄に近いことも、気軽に日本旅行できる環境とされている。

     

     

    ムシトリナデシコ
       

    釜山市は、韓国自治体の中で先頭を切って日本自治体との交流を中止した。今度は、まだ雪解けが始まったかどうか微妙な段階で,交流再開第1号となった。釜山市長は、今月21~22日、長崎県で開かれた「第28回日韓海峡沿岸県市道交流知事会議」へ出席して、交流再開を決めたものだ。

     

    今回の日韓交流知事会議の共通テーマは、「雇用創出と若者雇用問題」である。大学生の就職難に悩む韓国側としては、絶対に見逃しにできない会義である。釜山市長は、見栄も外聞も捨てて、地元学生の就活に奔走せざるを得ない立場であろう。

     

    『ハンギョレ新聞』(12月24日付)は、「釜山市、6カ月ぶりに日本との交流を再開」と題する記事を掲載した。

     

    日本の経済報復措置に抗議し、広域自治体の中では初めて日本との行政交流を全面中止した釜山市が、6カ月ぶりに行政交流を再開した。冷え込んだ韓日関係を回復させる呼び水になるという期待感と、行政交流を再開するのは時期尚早だと懸念する視線が交錯する。長崎県で開かれた「第28回韓日海峡沿岸県市道交流知事会議」だった。知事会議は1992年に初めて開かれ、韓日海峡と隣り合った韓国と日本のそれぞれ4つの都市が毎年交互に開催する。韓国からは釜山市と慶尚南道、全羅南道、済州道が参加し、日本からは福岡県と佐賀県、長崎県、山口県が参加している。

     

    (1)「オ・ゴドン釜山市長が日本を訪問したのは、昨年7月の就任後初めてだ。また、今年7月、日本の経済報復措置の撤回を求めて17の広域自治体のうち初めて日本の自治体との行政交流を全面中止すると発表してから6カ月目のことだ。今回の訪問と関連し、オ・ゴドン釜山市長は23日、フェイスブックへの書き込みで「行政交流の中止宣言は中止のための中止ではなく、交流に向けた中止だった。不当な経済報復措置を撤回し、韓日友好関係を回復しようという意志だった。まだ不十分だが、変化の兆しが見える。それを踏まえて訪問を決めた」と述べた。日本が最近、経済報復措置を一部撤回したことを考慮し、日本を訪問したということだ」

     

    下線のように釜山市長は、苦しい弁明をしている。日韓行政交流中止は、「交流に向けた中止」というのだ。理由は、何ともつけられるが、日韓首脳会談が開催されるという「雪解けムード」に先駆けて、動き出したのであろう。釜山は、地理的に見て日本での就職希望者が相当にいるはずだ。釜山と福岡の距離から言えば、「通勤」すら可能な距離である。釜山市長は、地元民からかなり突き上げられていたであろう。

     

    (2)「注目すべき点は、今回の知事会の合意文だ。韓日8つの県市道は、各自治体と雇用関連機関、企業、大学生が参加する「若者雇用のための実務会議」を行うことにした。また、福岡モーターショーや対馬厳原港まつりなど日本で開かれる来年度の7件の行事と、釜山世界卓球選手権大会など韓国で開かれる来年度の4件の行事を積極的に支持して協力することにした。事実上、韓日自治体の全面交流を宣言したのだ」

     

    下線を引いた部分で、釜山市長が会議に参加した理由は明らかになる。各自治体と雇用関連機関、企業、大学生が参加する「若者雇用のための実務会議」を開くという合意文がこれだ。釜山市長は、最大の土産になった。就職活動に大学生も参加させるというのである。こんな夢のよう話が舞い込めば、韓国国内でどんな批判を浴びようと、選挙民へ顔向けができる。韓国経済が、ここまで疲弊している現実に注目すべきであろう。

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