勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年01月


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    WHO(世界保健機関)は31日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ようやく「緊急事態」を宣言した。ただし、渡航や貿易の制限は推奨しないとしている。WHOの動きが遅いのは、WHO事務局長が中国寄りの人物とされており、その影響があるとの見方も出ている。

     

    すでに130日の時点で、中国の新型コロナウイルスの感染者は7711人、死亡者170人(政府公式発表)だ。武漢市では、緊急病院として2番目の治療施設の建設が始まっている。SARS時よりも大掛かりな治療体制である。このことが、現地の深刻さを伺わせている。これは、中国の生産再開の遅れをもたらす。2月10日までの休業発表企業も出ており、世界経済への影響が懸念され始めた。

     

    『中央日報』(1月31日付)は、「武漢肺炎でサムスン電子株がなぜ下落?」と題する記事を掲載した。

     

    上向き始めた半導体景気が新型コロナウイルス感染症(武漢肺炎)という予想外の伏兵にあった。世界の半導体需要の半分以上を占める中国で武漢肺炎が拡散し、上向き始めた半導体市場がまた冷え込むという懸念が出ている。半導体が韓国の輸出の20%以上を占めるだけに、回復の兆しが表れていた韓国の輸出にも悪材料として作用する見込みだ。


     

    (1)「市場調査会社IBSによると、中国は世界半導体市場の53%を占める最大の市場だ。「世界の工場」と呼ばれるように各種電子機器の組み立て設備が中国に集まっている。中国の半導体消費額は2006年の795億ドルから2018年には2531億ドルに急増し、2030年には6240億ドルまで増えると予想されている」

     

    中国の半導体需要は、世界の53%を占めている。その中国での需要が、新型ウイルスの蔓延でIT企業の操業が遅れれば、大きな影響を受けるのは当然であろう。半導体市況は敏感に反映する。

     

    (2)「昨年の半導体景気は世界的な需要不振と米中貿易紛争の影響で振るわなかった。しかし予想より早く米中貿易が合意し、第5世代(5G)移動通信スマートフォンおよびサーバー・ネットワーク投資が増え、今年の半導体景気について前向きな見方が出ていた。それだけにIT企業で操業できない事態が長期化すれば、半導体の需要もそれだけ減るしかない。さらに武漢肺炎のため中国の内需および消費沈滞がスマートフォンなど各種IT機器の需要減少につながる場合、半導体価格の下落が避けられない」

     

    中国での半導体需要が低下するだけでない。新型ウイルスによってIT製品の売れ行きにも影響が出れば、半導体市況の低迷に拍車をかけるだろう。



    (3)「半導体に限られたことではない。中国国内で事態が収まらない場合、生産への支障にとどまらず、主要産業の原材料・副資材供給自体がまひする。世界の供給網が崩れるということだ。例えば自動車や家電などの製品1台には世界各地域から供給された部品が数百個も入る。部品一つでも供給に支障が生じれば生産ラインが停止することもある。中国は世界経済の生産量の6分の1を占める世界最大の製造国家だ」

     

    中国国内の操業再開が遅れれば遅れるほど、中国から世界への部品供給遅延をもたらす。東日本大震災では、東北地方の部品生産がストップした。世界生産へ大きな影響を与えたが、中国でもその再来リスクを考えなければならない。

     

    (4)「『ニューヨークタイムズ』(NYT)は、グローバル企業の中国国内の生産施設および店舗の運営中断を伝え、「予想外のウイルス出現で、世界はこれまで中国にいかに多くを依存してきたかを実感している」と伝えた。国際通貨基金(IMF)は「世界の経済活動と貿易・旅行に大きな障害となり得る」と指摘した。IMFのベルネル西半球担当局長は「中国と緊密につながっている国の経済サイクルに影響を及ぼすだろう」という見方を示した」

     

    大きな影響を受けるのは、対中輸出比率の高い国々である。その筆頭が韓国だ。半導体をはじめ部品など中間財が影響を受ける。ウォン相場は、すでにジリジリと下げてきた。1ドル=1191ウォン(31日終値)となって、1200ウォンの「マジノ線」目前に迫っている。ウォン相場が落込めば、本格的な「韓国経済危機」が叫ばれるようになろう。その事態になれば、「通貨スワップ協定」という錦の御旗が必要になる。その中に最強の「円」が抜けている。長年、日本を侮辱してきた「報い」を一挙に受けるのかも知れない。

     

     

     

     

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    韓国人が、これほど身勝手であることを証明する話はないであろう。中国武漢から緊急帰国する人々が、一時的に収容される施設を巡って、地元住民は猛反対しているのだ。ウイルスに感染するというのが理由である。

     

    日本では、同じ武漢からの帰国者がホテルや警察関連施設に宿泊して、経過観察を受けている。地域の人たちは、これに反対する騒ぎを起こしている訳でなく静かなものだ。この日韓の差を見ると、失礼ながら韓国の民度は相当に低いと言うほかない。

     

    韓国には、国民をつなぐ連帯感が存在しない。宗族制度のままの意識である。もっとはっきり言えば「ムラ意識」である。排他的な社会を指すもので、「新参者」を差別して優越感に浸るのだ。「虐め」と言って良い。同じ韓国人でありながら「武漢帰国者」を新参者扱いし、インフルエンザ感染という理由で排除している。脱北者についても全く同じ扱いで虐めている。この韓国人が、南北統一など「絵空事」である。集団で北朝鮮出身者を排除するであろう。


    『朝鮮日報』(1月30日付)は、「『満足いく回答を』『武漢帰国者の収容反対』隔離施設周辺住民が長官に卵投げる」と題する記事を掲載した。

     

    行政安全部の陳永(チン・ヨン)長官が30日午後、中国・武漢から帰国する韓国人を隔離収容する忠清南道牙山市の警察人材開発院を訪れた際、地元住民から抗議を受けた。

     

    (1)「陳長官は同日午後320分ごろ、警察人材開発院前で、同施設が武漢からの帰国者の隔離施設に指定されたことに関して地元住民を対象に説明会を開いた。一部住民は、「われわれはまだ満足できる回答を聞いていない」「対話にならない」「ここになぜ来たのか」などと陳長官に向かって卵や石を投げ付けた。住民らの抗議が続くと、警護員が投入され、傘で陳長官を保護した。警察は万が一の出動に備えるため、現場に警察官約700人を投入した」

     

    (2)「住民はこの日、陳長官が到着する前から「武漢からの帰国者収容 決死反対」と書かれたプラカードを掲げてデモを繰り広げていた。警察の強制執行により、同日午前に道路を封鎖していたトラクターやフォークリフトなどの重機は撤去された。しかし、衝突は続いた。警察人材開発院前の道路には33万の牙山住民に武漢からの帰国者収容、牙山に何の罪があるというのか」「武漢からの帰国者の収容に絶対反対」などの横断幕が掲げられた」

     

    下線部分は、韓国社会の身勝手さを余すところなく伝えている。相手のことを考えず、自分の利益だけを主張しているからだ。「反日」の原点もここにある。すべて韓国が被害者であるという前提に立つ。日韓併合のメリットは一切認めずに日本を非難するのだ。朝鮮李朝の統治力からみて、中国かロシアに吸収されてもおかしくない状態だった。そういう過去を振り返ることのない民族である。

     

    『中央日報』(1月30日付)は、」伝染病が再び見せた底」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「政府が中国武漢に孤立した国民をチャーター便で帰国させることを決めると、なぜ危険な人々を連れて帰ってくるのかという抗議の叫び声が爆発した。政府は帰国後2週間、天安(チョナン)の国家施設に隔離して感染していないかどうか確認するとした。なぜ、よりにもよって天安に連れてくるのかとの怨念の声があふれ、その後牙山(アサン)・鎮川(ジンチョン)の施設に方向を定めた。総選挙(天安には地方区が3つ)と天安市長補欠選挙が影響を及ぼしたものと察する。すると今度は牙山・鎮川住民が「決死の反対」を叫び始めた。さあこれからどうするべきか」

    文政権にも問題はある。一度、決めた場所を変えたからだ。その理由が選挙がらみとすれば、言語道断である。下線のように「決死の反対」という常軌を逸した行動を始めている。帰国者への思いやりはゼロである。

     

    (4)「武漢から来る国民は罪人ではない。伝染病保菌者という確証もない。武漢は自分の家族と知り合いが仕事をし、勉強しに行ったかもしれない場所だ。すでに数カ国が自国民を武漢から団体で帰国させたが、このような大騒ぎをすることはなかった。「無条件集団隔離」もなかった」

     

    日本では帰国者受入れが静かなものである。「武士(もののふ)の精神」と言うべきだろうか。西洋の「騎士道精神」にも喩えられるように、日本には噓をつかない、義に生きるという根本的な倫理観がある。韓国とは異なっている。他人の痛みを自分の痛みとして捉える。そういう民族は、そう多くない。これができなければ、韓国は先進国の仲間に入れないのだ。


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    韓国の家計債務が急増している。不動産価格高騰による担保価値増加が債務を増やすという悪循環に陥ったものだ。韓国銀行(中央銀行)が、28日に発表した報告書「金融・実体連係を考慮した金融不均衡水準評価」で明らかになった。

     

    韓国の家計は、債務「不感症」の傾向が強い。これは李朝時代からの特色であり、持ち金すべてを散財することに抵抗感がない国民性を反映している。参考までに、日韓の家計債務残高の対GDP比が、それを明確にしている。

     

    家計債務残高対GDP比(%)

            韓国     日本

    2015年  83.10   56.70

      16年  87.30   57.10

      17年  89.40   57.60

      18年  91.90   58.40

    (資料;国際決済銀行)

     

    日韓の家計債務残高対GDP比を見れば、一目瞭然で韓国が飛び抜けて高いことが分かる。日本は、1999年の72.20%がピークであるが、韓国に比べればきわめて慎重な家計行動であることが分かる。国民性の違いであろう。

     

    韓国銀行が、家計債務残高の増加に警鐘を鳴らしているのは、家計債務の破綻が金融危機を招くからだ。本来、家計は貯蓄の源泉である。韓国はそれが逆になっており「債務のプール」である。

     


    『韓国経済新聞』(1月30日付)は、「家計負債赤信号、韓国の金融不均衡拡大」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の家計負債が急速に増え、金融不均衡水準が2017年7-9月期から昨年4-6月期まで上昇が続いていることがわかった。「金融不均衡」は家計・企業負債水準が国内総生産(GDP)をはじめとする実体経済の水準と比較してどれだけ過度に増えたかを算出した指標だ。

    韓国銀行が28日に発表した報告書「金融・実体連係を考慮した金融不均衡水準評価」を見ると、次のような推移である。

     

    2017年7-9月期 0(正常)

    2019年4-6月期 25(危機)

    韓国金融部門の危険レベルを示す金融安定指数は、次のように分類されている。

    8未満が「正常」

    8~22が「注意」

    22以上が「危機」と区分される。

     

    上述の通り、2019年4-6月期は25になったから、「危機」に分類される。金融安定指数が注意段階以上の区分に入ったのは3年6カ月ぶりだ。金融不均衡水準は2008年の金融危機当時が100だった。これをピークに下落が続き、2010年からはマイナスを記録した。

     

    (1)「報告書は、「金融不均衡が蓄積されるほど金融システムが中長期的に金融危機につながったり、景気低迷に陥る可能性が大きくなる。現在の水準は金融不安の兆候とは解釈しにくいが、金融システムの脆弱性が大きくなったとはみることができる」と評価した。家計信用が過度に増えれば中長期的に経済成長率を引き下げ、金融危機発生の可能性も高まると診断した

     

    金融不均衡水準評価では、昨年4~6月期に「25」となり、「危機」に分類されている。一般に家計債務残高の増加は、中期的に消費支出を抑制するので個人消費が振るわず、GDP成長率を引き下げる。この分かりきった理屈から言えば、不動産価格高騰後の経済は逆転して不振に陥る。韓国は、その落し穴にはまるリスクが高まっている。

     


    (2)「過度な家計負債増加傾向が、不動産価格上昇につながり金融不均衡をさらに深めかねないと指摘した。「不動産価格上昇住宅担保融資など家計向け貸付増加不動産価格上昇」と続く悪循環が形成されかねないためだ。報告書は、「住宅価格上昇への期待感が広がれば住宅担保融資が増え、それだけ住宅価格が上がる。韓国も最近は住宅価格と家計信用規模が同時に上昇している」と評価した」

    下線が核心部分である。「不動産価格上昇住宅担保融資など家計向け貸付増加不動産価格上昇」をもたらすが、これは不動産バブルに繋がるものである。バブルとは、ファンダメンタルズを逸脱した価格形成である。それ故、必ず「破裂」するもの。永遠に上がり続ける価格は存在しない。寿命がある。

     

    現在、ソウル市内の住宅価格は頭打ち状態である。投機目当てで買った不動産価格が下落すれば、債務返済が困難になる。韓国は、この状態に入り込んでいる危険性が高い。韓国経済は、もう一つ厄介な荷物が転がり込んできた。

     

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    武漢のコロナウイルスが、世界中で感染者を増やしている。1100万人の武漢市は、すでに500万人が脱出しているほどだ。残された人々は、じっと災難の去るのを待つほかない。マスクも防護服も不足していると伝えられている。

     

    日本の民間からはマスク100万枚が寄付されて、中国の人々が感動している。「困った時はお互い様」とはいうものの、国際社会ではトップを切った「贈り物」になったようだ。

     

    『サーチナ』(1月30日付)は、「中国が新型肺炎で困っている時に『我々は日本人の本心を見た』ー中国メディア」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルスによる肺炎の拡大で、中国ではマスク不足も深刻化している。そんななか、日本の民間からマスク100万枚が寄付されるなど、日本では中国を支援しようとする様々な取り組みが見られている。中国メディア『捜狐』(1月27日付)は、「中国が困っている時に日本人の本心を見た」と日本の支援に感謝する記事を掲載した。



    (1)「新型肺炎の感染は拡大を続けており、感染者は中国国内にとどまらず、すでに世界中に広がりを見せ、日本でも感染者が確認されている。記事は、日本でもマスク姿の人が増え、中国人観光客が買い占めたためにマスクの在庫がなくなった薬局もあるなどの変化が見られると紹介。中国からの発注が、先月の128倍に増加したという工場もあるという」

     

    マスクが、ウイルスから身を守ってくれる欠かせない手段だ。訪日中国人観光客が、競って買い集めているほどである。日本では、マスクの値段を挙げる悪徳商人は見られず、逆に値下げしているケースもあるという。

    (2)日本にも影響は広がっているものの、記事は「こんな時にこそ日本の本質が分かった」と紹介している。民間だけでなく、日本政府も支援に積極的だ。茂木外務大臣は26日、中国の王毅国務委員兼外交部長に電話をかけ、「困ったときに力を尽くして助ける友こそが真の友だ」と話し、「全方向的な支持と援助」の提供を約束したという。具体的には、事実上の封鎖状態となっている武漢市から日本人を帰国させるためのチャーター機を派遣し、チャーター機には支援物資として大量のマスクや防護服などを積み込むと報じられている」

     

    中国が受入れたチャーター機は、日本と米国が最初の組となった。韓国は、救援機を送ることで中国と合意できているものの、出発時間がたびたび変更されている。武漢市民の見ている日中に、「堂々」と韓国機が乗り入れることを忌避しているという。その点、日本では深夜に武漢空港へ到着し、早朝に出発するという離れ業で、できるだけ武漢市民の目に触れない工夫をしている。韓国には、そういう配慮がたりないようだ。

     


    (3)「記事は、日本の街中でも「日本人の本心」が見られると紹介。「中国頑張れ、武漢頑張れ」というメッセージがあちこちに見られ、外国人旅行者はマスク半額、あるいは中国人にマスクをプレゼントする店もあると伝えた。ディズニーランドも中国人への入園制限はしないと表明している。記事は「日本は困っている中国を放っておかない」と感激した様子で、伝染病という事態を前に「愛には国境がない」と痛感したという」

     

    上海のディズニーランドは閉園した。東京ディズニーランドは、中国人への入園制限をしないと表明した。サービス業としては、「おっかなびっくり」という面もあろうが、ともかく分け隔てなく中国人観光客を受入れるなど、日本の評価を高めている。

     

    (4)「ネット上では、民間、政府を問わず日本からの支援と応援に感謝するメッセージが続々と寄せられているという。災害の多い日本では、海外からの支援のありがたさをよく理解していると言えるだろう。いずれにしても、新型肺炎の問題が早く収束することを願うばかりである」

     

    国同士の友好関係は、先ず外交面で基盤が固められる。次いで、民間レベルで草の根の交流が盛んになることだ。今回の「マスク贈呈」は、必需品であることも手伝い、末永く語り継がれることであろう。ウイルス問題が解決すれば、中国からの訪日観光客がさらに増えることは間違いない。日本は、「陰徳」を積んだことになる。


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    韓国メディアにはよく勉強している論説委員もいるが、そうではなく「感覚」で記事を書いている向きもいる。その一つが、日本を軽蔑して中国を過大評価していることだ。なぜ、日本経済の成長率が低下したか。中国の成長率が、ピークを越えて右肩下がりになっている理由が何か。韓国の成長率はなぜ下がっているか。日中韓の経済成長率の裏側にあるメカニズムは何か。こうしたことに無頓着なコラムを取り上げ、その軽薄さを指摘したい。

     

    『中央日報』(1月29日付)は、「中国の辺境へ向かう『低成長トンネル』」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のキム・ドンホ論説委員である。

     

    (1)「日本経済は1990年以降ほぼ30年にわたり足踏み状態だ。中国が世界貿易機関(WTO)に加入した2001年当時、日本の国内総生産(GDP)は中国の8倍だった。日本は国際社会で大きな声を出した。それから30年が流れ日本経済は中国の3分の1に縮んだ。国際的な地位も下がった」

     

    人口動態が、経済成長に大きな影響を与えていることに全く気付いていない点が滑稽である。1990年は、日本の生産年齢人口(15~64歳)比率がピークであった。それ以降は、「人口オーナス期」を迎え、経済成長率が低下している。中国の生産年齢人口比率のピークは2010年である。中国も、これ以降は経済成長率が低下している。生産年齢人口比率のピーク時期の差が、日中では20年間もある。これによって、成長率が大きく開いた。

     

    ついでに韓国にも触れよう。韓国の生産年齢人口比率のピークは2014年である。これ以降は、経済成長率は低下するメカニズムになっている。韓国は、経済成長率の減速幅が大きく、経済政策の失敗を示している。

     


    (2)「中国は米国の肩を見下す超強大国に浮上した。国際舞台で声を出さない所がない。偉大な中華民族の復興を宣言した「中国夢」を掲げ、建国100年になる2049年には米国を抜いて軍事力でも世界1位の強大国になるという目標に向かって走っている。対外的には陸上・海上シルクロードを構築するとして一帯一路を推進している。米国の庭である南太平洋から米国の友邦が集まるドイツやイタリアなど欧州まで各地にチャイナマネーをばら撒き、港湾と鉄道を連結し影響力を広げている」

     

    下線部分は、事実に反している。依然、中国のGDPは米国6割見当である。中国は、不動産バブルで強引にGDPを押し上げてきた経済である。GDPの半分近くが固定資産投資という異常な構造だ。個人消費(民間最終消費支出)は40%を割っているアンバランスな経済である。この不均等発展は、必ず正常化されるのが経済の原則である。つまり、固定資産投資比率が低下していく過程が、国民に途端の苦しみを味わわせる時期になる。

     

    七転八倒の現象が今、起きているのだ。米中貿易戦争は、この最も苦しい時期に遭遇しているから、「第1段合意」で米国の要求を100%飲まざるを得なかった。国際収支の経常黒字は大幅に減少している。これにより、他国へ投資する余力は極端に低下している。「一帯一路」も融資余力がなくなっている。だから、日本の支援を求めてきたのだ。AIIB(アジアインフラ投資銀行)を創立しては見たが、融資に慎重である。日本主導のADB(アジア開発銀行)の融資に相乗りするほど、独自の審査能力がないのだ。中国は、前記二つの国際的な融資業務に乗り出し四苦八苦の状態である。

     

    (3)「1980年代に入り米国を飲み込まんばかりに声を高めた日本の存在感はどこにも見えない状況と対照的な姿だ。日本も一時4万ドルを突破したが低成長の沼に落ち再び3万ドル台に落ち込んだ。この低成長の泥沼から脱出できなければ韓国も衰退の道を歩くほかない。韓国も他人事ではない。昨年2%に急落した経済成績表を見れば未来は暗鬱だ。韓国は2018年に1人当たりGDP3万ドルを初めて突破したが、文在寅(ムン・ジェイン)政権になってから低成長の沼に落ち、昨年は国民所得が1555ドルほど減った。児童・青年・高齢者に関係なく人生の全周期にわたり48兆ウォンの現金をばらまいて成長率をかろうじて2%に合わせたが国民所得の減少を防ぐことができなかった」

    下線部分は、人口動態に基づく現象である。中国も同じ理由によって、日本の歩んだ道を進む宿命を負わされている。現在の苦境は、その始りなのだ。韓国の場合は、急激な少子高齢化によって、日本以上の経済減速過程に落込むはずだ。中国も、「一人っ子政策」の後遺症で、韓国並の急減速が見込まれている。こういう現実を見落としてはならない。中国経済の規模は大きいが、中身は「腐食」が進んでいる。表面だけみて、「中国は偉大、日本は衰退」という韓国の判断は、人口動態から言って完全に見誤っている。

     

    (4)「中国は、内需が成長し10年後には経済規模が韓国の30倍に増えるだろうという見通しも出ている。韓国が成長できなければ再び中国の辺境国に転落するという意味だ。こうした運命に陥りたくなければすぐにでも反市場・反企業基調をやめ、成長動力を生き返らせなくてはならない。それでこそ悲惨な運命を避けることができる」

    下線の部分は、完全な誤りである。すでに指摘したように、中国のGDP構造は不均衡そのもの。個人消費は40%を割っている。半分近い固定資産投資比率を20%台まで下げるには、「体重110キログラムを60キログラムに下げる」ような苦しみを伴う。家計は、住宅バブルで過剰債務を抱えている。債務返済が優先するので、消費余力はないのだ。中国経済礼賛論から目を覚ますべきである。韓国は、水ぶくれした中国経済に怯えることはない。冷静に、日中間の実力を比較すべきである。


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