勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年01月

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    文大統領は、4月15日の総選挙が、「審判の日」と見ているようだ。与党「共に民主党」が敗北すれば、文大統領が退任後に盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の二の舞になると恐れているという。自身の「身の安全」のためにも与党を勝たせねばならないと思い込んでいる。そのためには、禁じ手でも何でもやると殺気だった雰囲気である。

     

    『中央日報』(1月22日付)は、「文大統領の危険な勝負手」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のイ・チョルホ/中央日報コラムニストである。

     

    (1)「4月の総選挙が、「文在寅(ムン・ジェイン)選挙」に固まっていく雰囲気だ。与党ではひたすら文大統領だけが見える。官僚らは「青瓦台(チョンワデ、大統領府)政府」に圧倒されており、民主党も垂直的な与党・青瓦台関係に踏み付けられて存在感が感じられない。青瓦台出身の「親文(文大統領寄り要人)」だけで60人余りが総選挙に出て「非文」は見当たらない。文大統領のよどみない独走だ」

     

    大統領府に秘書官として、かき集められた「86世代の浪人」が、再就職の積もりで総選挙へ60人も立候補させるという。これら「浪人」は、かつての学生運動家上がりで、ブルブラしていた連中という。文氏が、大統領を退けば「失業」必至の人たちだ。総選挙が再就職の機会のようである。



    (2)「大統領の言葉にも凄じい力が加えられている。文大統領が新年記者会見で「チョ・グク前長官にとても大きな負い目を感じている」と言うと、2日後に新任検察幹部が「チョ・グク氏を無嫌疑で処理しなければならない」と主張した。青瓦台に向かって捜査の矛先を向けていた検事長は全員交代され、明日は部長・検事補に対する報復粛清が予告されている。軍事独裁政権もこれほどではなかった」

     

    検察改革は、文氏とその支持者を守るためにやっていることがはっきりしてきた。これまでは、いかに検察が横暴であったかを力説してきた。横暴であったのは、裏にまわって検察を利用してきた大統領府であることが、下線部分で証明されている。

     

    (3)「文大統領の「もう米朝対話だけを見つめない」という発言もものすごい波紋を起こした。それにけちをつけたハリス駐韓米大使に向かって「朝鮮総督か」(民主党議員)、「鼻ひげが日本巡査のようだ」(親文ネットユーザー)という人種差別・人格殺人の無差別的な攻撃が注がれた。大統領の一言に青瓦台・政府・民主党がスクラムを組んでひとまず押しつけるわけだ。常識や合理的な判断は姿を消した。文在寅・青瓦台で勤めたことのある人々はこのように口をそろえる。「首席と秘書官は過去の政権よりさらに大統領の顔色をうかがい、文大統領は民主労組と参加連帯だけを意識する」。そのため、左派政策だけがあふれるということだ。固定支持層に集中しているためだ」

    本欄は、文大統領が支持団体の労組と市民団体だけに関心を向けていると主張してきた。下線の通り、文氏の頭はこれら「スポンサー」の顔色を覗っている。気の毒な大統領である。

     


    (4)「大統領府の人々が語る共通分母は、文大統領が政権再創出に失敗(注:総選挙敗北)するかもしれないという漠然とした恐怖だ。文大統領は盧武鉉氏のそばで総選挙・大統領選挙に敗北する場合、どのようなみじめな末路を迎えるのか最も近くで見守った。そのせいか昨年末から無理に選挙法を直して総選挙の変数になり得る検察の捜査は急いで無力化している。また、「検察改革」という名で検察トップの「尹錫悦(ユン・ソクヨル)ライン」を直接除去した。想像することさえ難しかったことを全く恥とも感じずに全うしている

     

    文大統領は、高尚な政治家ではない。ただの「政治屋」に成り下がっている。選挙に勝つために、「禁じ手」を次々と繰り出しているからだ。選挙法を変える。検察トップを支えてきた人たちを一斉に左遷する。軍事政権時にも考えられなかった手を使っている。こういうなりふり構わない姿を見ると、自分の政策がすべて失敗したという自覚があるのだろう。

     

    (5)「これ以上陣営論理かどうかを問い詰めるのは無駄なことだ。文大統領は4月の総選挙を全面戦争であり、最後の勝負所とみて報告総力戦を覚悟している

     

    文大統領は、4月の総選挙結果が自身に直接、影響してくると認識している。政策を真面目にやらず、良い結果だけを求める。そんな虫の良いことが実現するはずがあるまい。


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    文政権が、大法院(最高裁)を舞台にして「積弊一掃」の派閥争いを繰り広げている。18人もの判事が、裁判所まで進歩派判事で固めるという政府の動きに反発し、大量辞任するというショッキングなニュースが飛び込んできた。

     

    文政権は、「無血革命」を狙っているのだろう。検察からは大統領府を捜査する権力を取り上げることに成功した。最高裁は、進歩派判事で埋めて気に入った判決をさせる。こういう独裁体制を固めて、進歩派政権を20年間継続させ、南北統一によって、韓国で社会主義政治を実現させる。神をも恐れぬもの凄い「韓国乗っ取り」を始めた。

     

    文政権は、ナチスの全体主義に通じる「敵―味方」論で、相手を徹底的に選別している。この全体主義手法を、大法院まで持ち込んだことは、韓国の民主主義が危機に直面している証拠だ。日本では、裁判官の地位は保証されている。そうでなければ、公正な裁判は期待できない。韓国は、そう言っては失礼だが、宗族意識で「敵-味方」に分類して争っている。近代化が遅れているのだろう。

     


    『朝鮮日報』(1月22日付)は、「韓国大法院長官の『積弊清算』でエリート判事18人が辞表提出」と題する記事を掲載した。

     

    今月末の裁判所定期人事異動を前に辞表を提出した裁判所行政処および大法院裁判研究官出身の判事たちは少なくとも18人に上ることが21日、分かった。裁判所行政処・大法院裁判研究官は有能だと評価された少数のエリート判事たちが経る職務で、これだけの人数の「エリート判事」たちが一度に辞める事例はまれだ。

     

    (1)「昨年初めの定期人事異動で辞表を提出した判事は全体で43人だったが、その40%に相当する。裁判所行政処・大法院裁判研究官出身判事の「相次ぐ辞表提出」に、裁判所内部は衝撃を受けている様子だ。ソウル高等裁判所のある部長判事は「裁判所行政処審議官(平判事)や大法院裁判研究官出身判事たちがこれほど多く辞めたことはなかった。裁判所としても、裁判を受ける国民としても大きな損害だ」と語った」

     

    昨年1月の人事異動で43人が辞表を提出。今年1月には少なくとも18人が辞表を提出したという。合計61人だ。韓国司法の「宝」であろう。そういう人材を追出すようなことをしてはいけない。行政が司法に手を延ばしてきた訳で、文氏のいう「三権分立原則」は空洞化している。

     

    (3)「本紙取材の結果、今回の裁判所定期人事異動前に辞表を提出した裁判所所長は2人で、高裁部長は3人だった。この5人はすべて行政処や大法院裁判研究官出身だ。これらのうち、ハン・スン全州地方裁判所所長は梁承泰(ヤン・スンテ)前大法院長官時代、裁判所行政処の要職にあった。また、キム・ギジョン・ソウル西部地方裁判所所長は大法院裁判研究官を務めた。あとの高裁部長3人も行政処企画調整審議官などを務めた。残り13人は裁判所の「腰」や「中枢」に当たる地方裁判所の部長判事クラスだ。13人のうち9人は梁承泰前大法院長官時代に裁判所行政処で勤務していた。あとの4人は大法院で租税分野などを担当した判事だ。ある裁判所所長は「裁判所を担う柱が全部抜けていくだろう」と言った。また、ある高裁部長判事は「将来の大法官にふさわしい人材と言うべき後輩たちなのに…」と語った」

     

    梁承泰(ヤン・スンテ)前大法院長官は、朴槿惠(パク・クネ)政権の意向を受入れたとして文政権に追放された。今回は、金命洙大法院長官が文政権の「積弊一掃」の派閥争いを持ち込んでいる。やっていることは、前大法院長官と同じである。その矛楯に気付かないところが「幼稚」に見えておかしいのだ。

     


    (3)「裁判所内部では、金命洙大法院長官が就任後に本格化した「司法積弊(前政権の弊害)」清算の動きが今回の相次ぐ辞表提出の主な原因だという指摘がある。行政処で中核となる職務を務めた経験があり、今回辞表を提出したある中堅判事は「そのままとどまっていても『積弊判事』と後ろ指をさされるだけだ。とどまる理由がない。これまで耐えてきたのは『自分が間違っていたから辞めた』と認める形になるのではと思ったからだ」と説明した」

     

    裁判所に派閥争いを持ち込んだ文大統領の罪は重い。大統領になれば、何でも好き勝手ができると錯覚しているのだろう。次期政権が保守党になれば、こういう不条理な選別をさせた「文在寅」をぜひ法廷に立たせなければならない。二度とこういう事態を招いてはならないからだ。

     

    (4)「金命洙大法院長官とその下にいる「進歩系判事」たちは梁承泰時代の大法院の司法行政権乱用や「裁判取引」疑惑について3回にわたり裁判所の独自調査や検察捜査を推し進め、この過程で100人前後の行政処・大法院研究官出身判事が検察の捜査を受けた」

     

    金命洙大法院長官も法廷に立たせる必要がある。最高裁長官が、大統領の要請で「積弊一掃の派閥争い」に加担するとは言語道断である。嘆かわし最高裁長官である。


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    民族主義者を側近にした不幸

    二大制約条件の一つ人口問題

    環境破壊で華北は炎熱地獄へ

    二酸化炭素の排出ゼロが急務

     

    習近平中国国家主席が、もっとも輝ける時期は終わったようだ。2012年11月中国共産党総書記に就任、翌年3月中国国家主席の座へ。以来、不動産バブル経済を背景に恣に振る舞い「中華復興」を唱え、内外で威勢を振るってきた。膨張したバブル経済が、中国の実力であると見誤ったのである。

     

    当時、中国の経常収支黒字は他国を圧倒していた。2015年には3041億ドルを稼ぎ出して世界1位になった。それが、2018年には490億ドルに縮小して、世界11位と大幅な後退である。経常収支黒字は、多くは外資系企業の輸出が稼ぎ出したものだ。それを、中国企業と錯覚して、前記の「中華復興」という夢を語らせたのであろう。「他人の褌で相撲を取っている」ことに気付かず、有頂天になったのだ。

     

    民族主義者を側近にした不幸

    習氏は2017年、有力側近に民族主義者である王滬寧(ワン フーニン)氏を序列5位の中央政治局常務委員に選んだ。この人事が、習氏の外交政策を大きく変えさせ、米国と対決する路線に誘い込んでしまった。王氏は、米国留学経験を持つが、「真面目」に米国で学んだのでなく、米国の欠点ばかりをあげつらう異端児であった。これが、米国軽視を習氏に吹き込んだ背景である。

     


    習氏には、留学経験がない。毛沢東と同じである。周恩来や鄧小平はフランスに「遊学」している。だから、前記の二氏は国際感覚を持ち、米国と交渉でき基盤があった。習氏の場合、留学経験はない。選んだ側近が、米国を軽視する民族主義者であるという悪条件が重なり、今回の米中貿易戦争では、無残な敗北を喫したのである。東条英機が、外務省の米国通外交官の意見を無視して、米国と開戦し大敗北を喫した経緯とよく似ているのだ。

     

    習近平氏は、2035年までに米国経済へ追いつき、抜き去るという目標を立てた。この裏には、前記の王滬寧氏が采配を振るったことは容易に想像できる。この夢の計画は、国家主席任期制限撤廃とともに、2017年の中国共産党大会で了承された。この前提には、「中国が6%成長、米国が2%成長」を継続するという非現実的な仮定が置かれている。そもそも、こういう非現実的な目標を立てたこと自体、中国の奢りがみえみえだ。

     

    中国が、2035年までに米国経済を追い抜く夢が、儚く消える運命になってきた。この計画は、もともと人口問題(労働力供給)と環境破壊という、100%予測できる問題を無視した不完全な計画で、大きな誤解を生むものである。

     

    経済予測に当っての絶対不動の条件は、人口制約と環境制約である。これらは、短期的に動かせない要因であり、「所与の条件」として受入れざるを得ないのだ。驚くことに、中国は深刻な人口動態や環境破壊の実態を無視して、「バラ色」のデタラメ計画をつくっていた。日本が、太平洋戦争開戦時に行なった国力調査と大差ない代物であろう。中国に都合のいいデータだけを集めたに違いない。ここまでした、中国がGDP世界1位の夢に憧れた理由は何かだ。

     

    それは、中国共産党の統治能力の高さを内外に示して、国内政治の安定化を実現する。同時に、米国から覇権を奪って「中華の夢」を実現する。名実ともに、世界の盟主交代によって、世界を共産主義化するというのであろう。このシナリオ・ライターが、王滬寧氏であることは間違いない。日本で言えば、軍部の若手将校を操った大川周明という役どころであろう。あるいは、帝政ロシアの怪僧ラスプーチンになぞらえる人物と思われる。習近平氏は、大変な人物を抱え込んでしまったのだ。(つづく)

     

     

     

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    巧みな弁舌を武器にして、大統領へ上り詰めた文在寅(ムン・ジェイン)氏が、韓国の大学教授から批判を浴びている。その政策運営姿勢が、全体主義的であることだ。ナチスの「敵・味方分断論」という陣営論に立っていると指摘されている。文政権支持基盤の利益は徹底的に擁護するが、国民全体の利益増進にソッポを向いている現実が、韓国国内の対立を深め、経済を泥沼に追い込んでいる。

     

    『中央日報』(1月22日付)は、「韓国教授6094人の時局宣言 彼らはなぜ青瓦台に向かって行進したか」と題するコラムを掲載した。筆者は、イ・ホソン/国民大学法大教授・「社会の正義を望む全国教授会」共同代表である。

     

    「社会の正義を望む全国教授会」(教授会)に所属する6094人の韓国の大学教授が今月15日、第2次時局宣言を発表した。チョ・グク前法務部長官事態を目にして、非常識と破廉恥、反知性に憤怒したためだ。

    (1)「教授らはソウルプレスセンターで時局宣言文を発表して、続けて青瓦台(チョンワデ、大統領府)前まで行進した。彼らは文在寅政権の偽善と偽り、暴走の危険性を警告して国政の大転換を促した。昨年に続いてこのように多くの教授たちを集結させた最大の動因は、何よりも自由憲政秩序の破壊という危機感と、これに対する国民的覚醒が必要だという切迫した気持ちのためだ。教授らがこのような判断を下すに至ったのは、一言で政権の「偽り」形態のためだ」

     

    文政権は、進歩派の政権を今後20年間継続させて、韓国社会を「社会主義」に変えさせ、北朝鮮と統一するという「空想」を描いている。そのためには、進歩派の支持基盤を強化して、反対派を排除できる体制を作らなければならない。検察改革と選挙法改正を実現させたのは、途中で「邪魔」が入らないようにする重要な「制度設計」であろう。

     

    韓国の大学教授6000名余が、危機感を募らせているのは当然である。これまでの韓国進歩派の理論的指導者が、自ら文政権の危険性を指摘するまでになっている。その理由は、先に示した「敵・味方論」というナチズムの指導理念と合致している事実によるもの。物腰の柔らかい文大統領が、「まさかそこまで」と思いがちである。だが、現実に行っていることは、「政権20年維持構想」に沿っていることは疑いない。

     

    (2)「今まで共同体の存続と発展という一つの目標の下で、方法の違いはあれども、民主主義の大原則があった。ところが「同意しないことに対する同意」という基本が無視されるだけでなく、悪用されているという疑問を持つようになった。さまざまな専門がある教授たちは、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)、准連動型比例代表制、所得主導成長などこの政権の主要政策を集中的に分析した。その結果、この政策を貫き、それぞれを一つにまとめている巨大なあるものを発見するに至った。それは「偽り」だった

     

    進歩派政権は、表面的には「平等・民主・自由」を軽いタッチで発言する。中国の習近平氏でも同じことを言っている。現実には、全くの逆の道を選んでいるのだ。そういう意味で「進歩」「革新」と名乗る政治勢力には、常に胡散臭さがつきまとっている。社会は、進歩派が善で、保守派は悪という単純な図式で測れない複雑さがある。文政権は、下線部分のように、巧妙に大衆を騙す「装置」を考案して法律化した。大学教授6000名余が、研究成果を持ち寄りこういう結論を出したという。

     

    (3)「真たる左と右、真たる保守と進歩は、真実の上で競争するものだ。価値観と信念に基づく過去の経験によって、見通しが違うこともあり、方法も違うこともあるが、その解釈の土台は真実でなければならない。しかし残念ながら、文政権と執権与党はすでに捕獲したメディアを通じて、また「盲目」支持層を通じて、真実を隠したりわい曲したり、そして時には「親衛クーデター」のような扇動もはばからなかった。検察の「生きている権力捜査」を無力化した執権勢力の形態は、自分のことは棚に上げて他人を非難する「ネロナムブル(私がすればロマンス、他人がすれば不倫)」をチョ・グク事態にもじった「チョロナムブル」という表現だけでは不足するほど露骨だった」

     

    韓国のテレビ局の労使は、すべて文政権寄りとなっている。学校教育では、左派理論を教え込み「親中朝・反日米」を鮮明にしている。高校生の歴史教科書は、「親中朝」を基調にしており、南北統一への「洗脳」を開始しているのだ。こういう事態を見れば、韓国の行く先は、中朝という社会主義への道であろう。国民にそれを明示せず、知らないうちに政治路線の変更をさせる。実に巧妙な戦術を駆使している。韓国の大学教授が抱く危機感はここにある。


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    韓国は長年、日本経済の停滞を嗤ってきた。日韓併合時代の恨みを晴らす意味で、ことさら日本を軽く見る傾向を強めてきた。その韓国が、日本よりも悪い形で人口高齢化の悪影響に染まっている。「低成長・低物価」が、韓国経済の長期停滞を予告しているのだ。

     

    韓国は、文政権になって「死期」を早めている。最低賃金の大幅引上げが雇用構造を完全に破壊してしまったからだ。自営業の比率(約20%)の高い経済であるが、それはそれで、社会の安全弁として貢献してきた。その自営業が、最賃の大幅引上げでメチャクチャにされてしまったのである。自営業主は、最賃の大幅引き上げに耐え切れず、従業員を解雇する一方、自営業者もそれに伴い事業を縮小・廃業という荒波に飲み込まれている。

     

    これをもたらしたのは、文政権の「所得主導経済」という実験である。ものの見事に失敗したが、国民の前で一度も認めずにいる。つまり、修正されないままに、その悪影響が拡散されているのだ。韓国経済は、文政権によって「死期」を早めてしまったのは、こういう意味である。

     

    『中央日報』(1月21日付)は、「韓国経済、『日本化の泥沼』に陥っている」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のイ・サンリョル/コンテンツ製作チーフエディターである。

     

    (1)「悪口を言いながら似ていくということか。韓国経済がまさにその状況だ。あちこちで「日本化」現象が目撃されている。1990年代から30年近く長期不況に陥った日本が体験したことが韓国で起きているのだ」

     

    下線部では、「30年近い長期不況」としているが間違っている。安倍政権再登板(2012年)によるアベノミクスで、日本経済は立ち直ったからだ。正確には22年である。

    (2)「まず物価だ。消費者物価上昇率は昨年過去最低の0.4%を記録した。通貨危機当時もこれほどではなかった。全般的な物価水準を示すGDPデフレーターは3四半期連続で下落(注:マイナス)した。韓国政府の統計作成以降で初めてだ。これほどになれば日本が体験したデフレの前兆と言っても間違いない。デフレは経済に毒をまき散らす。物価が持続的に落ち込んだり、底を這えば消費も生産も弱まるためだ」。

     

    GDPデフレーターは、昨年1~3月期以来、7~9月期まで3期連続でマイナスに落込んだ。この基調で言えば10~12月期もマイナスであることは不可避である。昨年のGDP成長率は、初めて「名実逆転」となろう。名目成長率が実質成長率を下回ることである。


    (3)「人口減少と高齢化も日本の軌跡に沿っていきつつある。韓国は事実上人口減少時代に入り込んだ。昨年10月の出生数は2万5648人、死亡者数は2万5520人。人口増加率は「ゼロ」になった。今年は減少が本格化する。経済成長に必須の15~64歳の生産可能人口はすでに2017年に減少傾向に転じた。日本の生産可能人口は95年に減少し始めた。これまで高齢化は概ね20年の間隔を開けて日本に沿って行くと観察されてきたが、この格差はますます狭まっている。出生率が世界最低である韓国の人口減少速度があまりにも速いためだ。韓国の妊娠可能年齢女性の1人当たり出生率は2018年に0.98人だが日本は1.42人だ」

     

    韓国の総人口に占める生産年齢人口(15~64歳)比率は、ピークが2014年の73.4%である。それ以降は「人口オーナス期」を迎え、潜在成長率は低下している。日本の生産年齢人口比率のピークは1990年の69.7%である。日韓のピーク時を比較すると。韓国の方が、3.7%ポイントも高かったのである。それだけ、潜在成長率の天井は高かったはずだが、経済政策の失敗で日韓のGDP成長率にそれほどの差が出なくなった。

     

    ちなみに、韓国の生産年齢人口比率は2018年、72.61%である。日本は、同59.73%である。この差は、13.88%ポイントもある。それが、日韓の実質成長率で大差がなければ、韓国経済の政策が間違っている証拠であろう。こうなると、韓国経済は「日本化」どころでなく、「韓国化」そのものの停滞局面へはまり込んだのだ。

     

    日本は65歳以上でも、健康で働く意欲のある人たちに雇用の場を確保するよう努力している。これが、就業者を増やす原動力だ。「働き方改革」によって、都合のいい時間に働けるシステム作りが効果を上げている。韓国では、それができないのだ。労組が、労働市場の改革に反対しているからである。

     

    (4)「人々が日本化を心配するのは、低成長と低物価がかみ合わさり固定化する長期不況に一度陥るとなかなか抜け出せないためだ。韓国はバブル崩壊後の日本経済がぐらついていた数十年間(注:正しくは22年間)、日本を見守りながらも日本の失敗に学ばなかった。その間に韓国の人口増加グラフは鈍化し、経済を立て起こす改革らしい改革は推進されなかった。それでも成長率が急落し、収縮社会が加速化する日本の悲劇を他人事とばかり考えた

     

    韓国は、日本経済の停滞から「明日は我が身」という認識がなかった。「いい気味だ」ぐらいにしか見ていなかった。それが、現在の大きな穴を招いている。中国も、同じ失敗である。日本経済の長期停滞は、バブル経済の崩壊と生産年齢人口比率低下という2つの要因が絡み合っている。その意味で、中国は日本と相似形である。韓国は、生産年齢人口比率低下減少面で、一致している。


    (5)「事実、日本化は韓国だけの事件でもない。高齢化は先進国の共通現象で、低物価・低成長・低金利の3低は世界随所で進行している。金融危機以降容赦なくお金を刷った後遺症で各国の金利引き下げ余力は底をついている。それだけ日本化は先進経済圏で普遍的現象になりつつあり、各国はそれぞれ日本化の泥沼から抜け出そうともがいている」

    経済停滞の日本化は、先進国共通の減少になっている。その背景には、少子高齢化が進んでいることだ。生産年齢人口比率低下が、潜在成長率を引下げている。韓国の場合、これに経済政策のミスが加わっている。


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