勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年01月

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    中国は、「科学強国」を目指している。米国へ積極的に留学生を送っており、米国大学での留学生数では1位だ。この裏には、トリックが仕掛けられていた。米国へ留学させて、研究成果を「盗み出す」という違法行為を目的にしていたのだ。また、研究者として米国で就職させ、本来は米国に帰属すべき研究成果が、「中国発」に塗り替えられていたのだ。

     

    こういう経緯があって現在、FBI(米連邦捜査局)は中国出身の留学生、研究者の身元を厳重に調べる事態になっている。同時に、入国ビザも審査が厳しくなった。こうして、中国の目指す「科学強国」の夢は、米国の高い壁に遮られ始めている。自力で乗り越えられるだろうか。

     

    『サーチナ』(1月1日付)は、「ノーベル賞受賞者を多数輩出してきた日本の神話、そこから学ぶべきこと=中国メディア」と題する記事を掲載した。

     

    中国メディア『澎湖新聞』(12月26日付)は、「日本のノーベル賞神話と中国に対する警告」と題する記事を掲載した。

    (1)「記事はまず、中国が目指す姿を体現している国こそ日本だと紹介。日本は欧米以外で最も多くノーベル賞受賞者を輩出している国であるため、2035年までに「教育強国」になることを目指した「中国教育現代化2035」を発表した中国は、日本から学ぶことがあるという。記事によると、日本は欧米を目指した高等教育の改革を段階的に進めたことが成果を上げてきたと分析。そのうえで、これまで積み重ねてきた人材育成が結果を出していると論じた」

     


    昨年までのノーベル賞受賞者数では、中国人(中華民国時代を含む)は5人である。現在の中国になってからは3人だ。日本は27人である。2000年以降の自然科学部門では、米国に次ぐ受賞者数になっている。

     

    ノーベル賞受賞は、過去の研究成果に対する評価であり、現在と未来の動向を暗示するものではない。そういう意味で、日本が今後とも受賞者を輩出できる保証はない。最近では、「日本危うし」という警告も出ており、大学での研究費配分が議論されている。問題点は、早く改善すべきであろう。

     

    中国は、冒頭に指摘したように米国へ「へばりついている」状態だ。国際共著論文数(2016年)では、次のようになっている。

    1位 米国 19万2375

    2位 中国  9万5476

    10位 日本  3万2074

    (資料:NSF)

     

    日本は従来、5位にあったが後退している。一方の中国は、米国との共同研究という形で研究費を負担しているケースが多い。ノーベル賞では、共同研究の多いことが、世界中で認知される機会も増えて有利である。中国には、二つの狙いがある。世界へのPR効果と共同研究で成果を中国へ持ち帰ることだ。

     

    FRBが、この危険性に気づいて身辺捜査を厳重に行なっている。最近、米国の著名な国立医学研究所の部長級(中国系米国人)が解雇された。当局に申告せずに中国の複数大学で教授に就任し、米国での研究成果を持ち出していたからだ。中国は、「中国系」に照準を合わせて、「研究成果持出し」を唆しているという。

     

    R&D(研究開発費)の対GDP比率(2017年)は、次のようになっている。

    2位 韓国 4.55%

    6位 日本 3.20%

    10位 米国 2.80%

    11位 中国 2.13%

    (資料:UNESCO

     

    このデータは多くの示唆を与えている。韓国は、研究予算を目先のテーマに振り分け失敗。日本は、大学での研究システムに問題が出てきた。米国は、研究費はそれほど多くないが、ノーベル賞を独占している。米国には、創造の自由という研究に不可欠な基盤を誇っている。世界中から、米国に憧れて人材が集ってくるのだ。中国は、研究費が多くない上に自由もない。米国から締め出されれば、自然淘汰の危険性が高い。

     

    (2)「しかし記事は、現状の教育環境を考慮すると、日本がこの先ノーベル賞受賞者を輩出し続けるのは難しいと指摘。科学予算が減り、論文の被引用数も減少しているためで、日本の科学技術レベルは全体的に落ちると警鐘を鳴らす声も多いことを指摘した。このほか、海外留学希望者が減少していて海外交流も減っていることや、OECDの学習到達度調査で日本は読解力などで大幅にダウンしており、日本の基礎教育能力が中国より低くなっていると問題点を指摘した。中国の教育は、科学研究の予算や競争とゆとりある研究環境のバランス、人材育成、基礎教育の詰め込み式など、日本と共通して面している問題点が多く、大いに参考になるとしている」

     

    下線を引いた部分は、日本国内の基礎学力の試験結果を指している。これは、たまたまそういう悪いデータが出たもので、日本人の「頭脳」が急に「柔く」なった訳ではあるまい。日本人は、こういう結果が出るとすぐに微調整する。その能力は世界一である。


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    日本在住の韓国人学者が、十数年の在日経験を基にして「日本人は政治に無関心」というとんでもない結論を出している。日本人は、韓国人と異なり他人の前で政治的な発言を好まないということを知らないらしい。韓国人は、口角泡を飛ばす議論が好きな民族だ。すぐに、賛成・反対の意思表示をしてデモ行進する。これを以て、韓国人の政治意識が高いと結論づけるのは間違いである。政治意識は、新聞購読数にも関係しているだろう。

     

    世界主要国の新聞発行部数を見ておきたい。成人1000人当りの部数(2017年)である。

     

    日本     381.4部

    フランス   105.8部

    ドイツ    201.5部

    オランダ   174.3部

    スウェーデン 169.0部

    イギリス   144.4部

    (資料:日本新聞協会)

     

    日本が、新聞購読率で欧州諸国を抜いて「断トツ」である。韓国人よりも3倍、新聞を読んでいる。だから、日本人が政治に無関心とはとんでもない。自民党政権が続いているのは、政治に無関心な結果ではない。政策の良し悪しを黙って見ており、「間違いないだろう」という安心感の表明と読める。現に、野党に政権が渡ったら、内部対立が深まり瓦解した。これを見れば、保守党政権に託さざるを得ないという背景が分かるだろう。

     


    『中央日報』(12月30日付)は、「
    日本を政治的にばかり接近していては関係回復は難しい」と題するコラムを掲載した。筆者は、チョン・ジュヨン国際基督教大学教授である。

     

    筆者が2003年に日本へ引っ越してきたころ、初めて会った日本人たちとの話はほとんどがドラマ『冬のソナタ』に関することだった。筆者が韓国人だと知ると、ドラマ『冬のソナタ』の話が出てきた。彼らと話をするために『冬のソナタ』のDVDを買って来て、数日の間のうちにすべて見た覚えがある。筆者が日本で暮らしているこの16年間の中で、今年が政治的に韓日関係の最も良くない時期ではないかと思う。日本の政治家の発言やマスコミの報道を見ると、韓国との関係を悲観的に見る論調が強くなっている。どこから接近すれば(解決の)糸口が見つけ出せるのか、先が見通せない状態だ。

     

    (1)「一つの理由として、一般人の政治に対する低い関心を挙げることができる。韓国は全年齢層にわたって政治的関心が高いほうで、日常対話でも政治の話がしばしば登場する。これに反し、日本人は全般的に政治に対する関心が低い。今年7月の参議院選挙の投票率は48.8%で、過去70年間の主な選挙投票率で2番目に低かった。今年、朝日新聞の世論調査では、32%の有権者が政治に全く関心がないと答えた。また、日本の人々は相手が自身と政治的性向が違う場合に引き起こされる葛藤を避けるために、政治に関する話を避ける傾向がある」

     

    下線部分は、日本人が日々に生活に概ね満足していることを示唆している。過去の総選挙で自民党が勝利を収めたのは、経済状況が安定している結果である。自民党が敗北した背景には、経済状況の悪化があった。

     

    日本人が、不平不満を人前で表わさないことは国民性である。天災時の被災者が、黙々と行列を付くって待っている姿に、外国人は驚愕している。あれは不満を言ったところで事態は改善しないという「諦観」の表れである。韓国人だったら必ず大騒ぎするはずだ。こういう国民性の違いを知るべきである。

     

    韓国が、人前で意見をよく言いデモ行進するのは、政治意識が高いことの表れと言えない。不満の発散をしているだけであろう。文政権は、「ロウソク・デモ」から生まれた政権と言うが、政策的ミスは目を覆うばかり。韓国は、そういう「欠陥大統領」を選んだのだ。安倍政権の実績と較べると、足元にも及ばないのだ。

     


    (2)「政治に対する無関心により、日本の一般市民は最近の韓日関係が悪いことを皮相的には知っているが、正確に何が原因で葛藤しているのかよく知らない。相手が自身を批判して嫌っていることは分かるが、正確な理由は理解できていない状況だ。比較的率直な人が珍しく「なぜ韓国は日本を嫌うのですか」「慰安婦問題に関し、何を望んでいるのですか」と聞いてくる場合がある。日本メディアは根本的な内容を詳しく扱うのではなく、葛藤を深める両国政治家たちの発言に集中している。このような状況で、韓日間の歴史認識と政治に関する立場の溝が狭まらないのは残念だが当然の結果と思われる

     

    下線部分は、とんでもない誤解だ。日本国民は、日韓関係の悪化理由を知っている。それは、韓国の身勝手さが理由だ。韓国の主張する理屈に賛成するはずがない。韓国社会の欠陥は、自分だけが正しい。相手が間違っているという韓国朱子学の主張をオウム返しに唱えていることにある。

     

    韓国の慰安婦問題の認識は、すべての女性が騙されて連れて行かれたと言い張っている点にある。日本人は、こういう韓国の主張がウソであること知っている。韓国は、戦前の国家による管理売春制度の存在について、無視して議論しているのだ。こういう立論に無理がある。それを隠して、ひたすら日本を批判する。だから、日本人が韓国人教授に「どういうことですか」と聞くのだろう。原因を知らずに聞いているのではない。相手の知識のレベルを試す、という側面もあるのだ。

     

    日韓の歴史認識を共通にするには、日韓併合時代をデータ的にも正しく知ることである。日本の搾取論だけではダメなのだ。日本が自らの財政負担でインフラ投資を行ない、教育制度を普及させ京城帝国大学まで創建した。植民地で、大学まで作った例は日本だけである。こういう事実を韓国人はどう理解するのか。日本の「善政」に目を開けば、日韓の理解が進み日本への見方が変るはずだ。

     

    (3)「このような状況を理解して、韓日関係を政治的問題だけから見ないことが、葛藤を解く糸口を見つける道にならないだろうかと考える。政治と経済、政府と民間交流を分離して考え、地方政府や民間次元で持続的な交流を通じて、歴史問題に対して建設的に学び、話す機会を作ってみてはどうだろうか。韓日関係が良くないため、学生や地方自治体の交流が取りやめになったというニュースを聞くと本当に残念に思う。日本を政治的にばかり接近していては、その社会を理解して説得することは難しいということを知り、メディアも政治問題だけではなく、他の観点からも幅広く日本社会と韓日関係について報道してほしい。ぜひ新年には韓日関係が改善されて、不安な国際情勢の中で両国が共生できることを願う」

    韓国は、歴史問題を前面に出したならば、必ず日本の反論を受けるはずだ。それは、事実を知らないからではない。事実を知っているからだ。韓国社会の口角泡を飛ばすような政治談義でなく、もっとスマートに日本的な交際術を身につけるべきであろう。韓国の流儀は、前近代的社会そのものだ。スマートな交際術は、宗教と政治の話をせず、趣味の話をしていれば人間関係は円滑にすすむ。このコラムの筆者が来日の際、韓国ドラマ「冬のソナタ」で話が盛り上がったという。これが、交際術のルールである。日本人の方が一枚上であったのだ。


     

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    中国訪日観光客は、うなぎ登りである。昨年1~11月までの累計では、888万4100人に達した。前年比で14.2%増である。年間では、970万人にもなる勢いだ。訪日観光客全体の30.2%を占めている。

     

    中国の人たちが、これほどまでに日本を評価してくれる理由は何か。数年前までは、訪日観光客に対して、中国国内の視線は厳しかった。戦争で多大の被害を与えた日本へ旅行するなど「国賊」扱いされていた。だが、土産話として日本の好印象ぶりが伝わるとともに、反日は下火になりもはや消えたと言っても良い状況までになってきた。旅行の持つ魅力の大きさを伝えている。しかも、リピーターが次第に増え、現在は半分程度になってきた。

     

    『サーチナ』(12月29日付)は、「日本を訪れた中国人はなぜリピーターになってしまうのか」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日本政府観光庁がまとめた2019年4~6月期の「訪日外国人の消費動向調査」によれば、日本を訪れた中国人旅行客のうち、49.4%が「初めての訪日」だった。つまり残る50.6%は訪日回数が2回目以上のリピーターだったことになる」

     

    中国人訪日観光客の50%は、リピーターであることが判明した。ショッピング目的でなく、日本の風景と日本人の生活の営みに関心を寄せている。



    (2)「中国メディアの今日頭条はこのほど、「なぜ日本を訪れた中国人は2回、3回と日本を繰り返し訪れるようになるのか」と疑問を投げかけ、中国人ネットユーザーたちが日本旅行の魅力について議論を交わした。記事には、日本を訪れたことのある中国人ユーザーから多くのコメントが寄せられている。たとえばあるユーザーは日本には中国人を虜にする魅力がある」という意見とともに、「中国人は歴史的要因から日本に好印象を抱いていないが、旅行で訪れると実際の日本は『これまで抱いてきた日本のイメージ』と大きくかけ離れていて、そのギャップが日本への好印象につながる」と主張した」

     

    戦時中の日本兵のイメージが、未だに残っているのであろう。あのときからすでに、75年もたつ。平時の日本人の姿を見て貰えれば理解を得られるであろう。だが、韓国人だけは別のようである。75年前も現在も変らずに、「謝罪と賠償」を繰返している。

    (3)「過去に2回、旅行で訪日したことがあり、近いうちに3回目の日本旅行を計画しているという中国人ユーザーは「日本には秩序があって、買い物をするにも騙される心配は一切ない。満足度の高い旅を体験した人が『また日本に来たい』と思うのは当たり前ではないか」と主張した。また、別のユーザーは「日本は治安が良く、食事も衛生的であるため、旅行客としては安心して旅を楽しめる。しかも、四季があって季節それぞれに違った魅力があり、日本政府も中国人向けのビザ発給要件を緩和し続けているため、訪れやすくなっている」とのコメントを寄せた」

    中国人観光客にとってのメリットは、漢字が読めることであろう。日本人が中国や台湾で気が休まるのは、この漢字のもたらす影響もある。

     

    (3)「記事には大量のコメントとともに中国人ユーザーが「日本を訪れた中国人が2回、3回と日本を繰り返し訪れるようになる理由」を議論していたが、そのいずれにも共通していたのは「日本にはまた訪れたくなる魅力がある」、「日本への旅行は満足度が非常に高い」という意見であった。今後も中国人旅行客の数は増えることが予想されているが、同時にリピーター比率も高まっていきそうだ」

     

    草の根交流は必要である。同種同文ということもあろう。日本では長いこと、高校生が「漢文」の授業で中国文化を学んでいる。日本文化の淵源は、中国文化であるので共通点があって当然だろう。中国の政治体制が民主化されていれば、スパイなどという疑いの目で見ることもないのに残念である。

     

    中国メディア『今日頭条』(12月29日付)は、中国人観光客に人気の海外旅行先として1、2を争うタイと日本について、タイにはなくて日本に存在する魅力について紹介する記事を掲載した。

    記事は、近年多くの中国人観光客が海外旅行先としてタイを選んでいると紹介。その理由は中国より近く、物価が比較的安いこと、非常に濃厚な東南アジアの雰囲気を持っていることだとする一方で、訪れる人の増加に伴って中国人のタイ旅行への情熱はやや冷めてきたとし「やっぱり日本の方が旅の目的地としてはすばらしいのだ」と伝えた。

    そして、日本が旅行の目的地として優れている点について、美しい環境が整っていること、アジアを代表する経済発展国であることのほかに、「日本らしさ」が至るところで感じられる一方、中国に相通じる部分も垣間見える点を挙げた。また、日本には非常に多くの観光スポットが存在し、みんなが知っている大きなスポットのほかにも、味わう価値を大いに持ちながらあまり知られていないスポットもたくさんあるのだとしている。

     

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    韓国政府は、半導体3素材の輸出管理問題で大きな勘違いをしている。韓国が正しく、日本が意地悪をしているという認識である。日韓の戦略物資管理責任者による会義が、3年半も開かれなかったことについて、異常であったという認識がないのだ。会議が開かれなかったのは、日本が会議を申入れても対応しなかったことによる。韓国は、先ず自らの不手際を認めるべきだろう。韓国の手落ちを棚に上げて、韓国政府は、とんでもない結論を出している。

     

    『聯合ニュース』(12月31日付)は、「日本の輸出規制強化から半年、撤回まで徹底対処の方針=韓国政府」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国政府は31日、日本による対韓輸出規制強化への対応を話し合う関係閣僚会議を開き、この半年間の取り組みを点検するとともに、日本政府が規制強化を発表した7月1日以前の状態に戻るまで徹底して対処していくことを申し合わせた。企画財政部が伝えた」

     

    下線を引いた部分は、二通りの解釈ができる。一つは、日本側が要求するラインまで韓国の管理体制を充実させる。もう一つは、韓国側の体制整備よりも、早く日本に輸出管理体制を撤回させる、というものだ。前者であれば問題ないが、どうも後者のようである。はなはだ「不遜」な態度と言うべきだろう。自らの体制整備を怠り、「果実」(撤回)だけを狙っているように見受けられる。

     

    (2)「日本政府は7月4日、フッ化水素とフッ化ポリイミド、レジスト(感光材)の半導体・ディスプレー材料3品目について韓国への輸出規制を強化し、8月2日には輸出管理の優遇対象国「グループA(旧ホワイト国)」から韓国を除外した」

     

    韓国の戦略物資の管理体制が、日本のように厳格でないことが問題の発端であった。韓国も日本側の指摘に応えて、安全保障にかかわる戦略物資の輸出審査を担当する専門部署の職員数を2020年1月1日付で5割増やし45人体制にすることになった。韓国側は日本が問題視してきた輸出管理体制を補強することで、政策対話の加速を図る姿勢を見せていた。

     

    こういう韓国側の真摯な対応は、今後も続くだろうか。韓国側が、「日本政府が規制強化を発表した7月1日以前の状態に戻るまで徹底して対処していくことを申し合わせた」という記事に出会うと、自らの努力をしないで「成果」だけを求めているように見えるのだ。

     


    (3)「これを受け、韓国政府は日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の終了を通告したが、協定の期限切れ直前で終了を「条件付き延期」すると発表した。政府は、日本が規制強化を撤回することを前提に、協定延長を検討するとの立場を示している。会議ではあわせて、素材・部品・装備(装置や設備)の競争力強化に向けた100大戦略品目の育成案について議論し、これを20年初めから本格的に推進していくことを決めた。会議は洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相兼企画財政部長官が主宰し、外交部や産業通商資源部、中小ベンチャー企業部の長官らが出席した」

     

    下線部分は、韓国政府が自主的にGSOMIA停止決定をしたことを意味する。日本が、条件(半導体3素材輸出管理問題撤回)を出した訳ではない。GSOMIAと輸出管理には、何の関わりもないのである。韓国は、これを強引につなげているだけだ。

     

    韓国は、戦略物資の管理体制についてきわめて安易に考えている。この点で、日本側との間に大きなギャップが存在する。

     


    『中央日報』(12月24日付)は、「経済産業省、『輸出規制、韓国と認識の違い』信頼回復に長い時間も」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「12月18日、韓日記者交流プログラムのため東京を訪問した韓国外交部の記者団と面談した席で、次のように語った。(日本の)経済産業省の関係者は、「輸出規制は先進国の技術が大量破壊兵器などの武器を製造する国に渡らないように管理しようという国際的な約束に基づく」とし、「韓国政府と認識にギャップがある」と述べた。続いて日本が韓国をホワイト国から除外したことに関し「これは高度な措置であり(国家間の)高い信頼がなければいけない」とし「法と政策の問題だが、信頼関係を再び築いたりギャップを埋めるのに時間が長くかかりそうだ」と説明した。韓国側に高度な信頼回復措置がなければ原則的に回復は難しいという趣旨だ」

     

    このパラグラフで指摘されている点は、日本が戦略物資の管理に神経を使っていることだ。半導体3素材が、大量破壊兵器などの武器を製造する国に渡らないように管理しなければならない。日本は、この強い使命感に燃えており、韓国にもそれを求めているに過ぎないのだ。韓国が、この主旨を理解するならば、安易に日本へ半導体3素材輸出手続きを解除せよとは言えないはず。韓国の認識は甘いのだ。

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    昨年7月以降の「反日不買運動」で、韓国は日本に大きな打撃を与えたと喜んでいた。日本製ビールを初めとして、徹底的に「メード・イン・ジャパン」を排撃したと胸を張っていた。「韓国は独立を守れなかったが、反日不買はできる」と敵討ち精神であったのだ。当欄では、反日不買が必ず、消費者心理を不安にさせるので、個人消費に影を落とすはずだ、と指摘してきた。どうやら、そういう結果になったようである。

     

    OECD(経済協力開発機構)による昨年の最新名目GDP成長率予測は、前年比1.4%にとどまった。韓国統計庁発表の昨年の消費者物価指数は、0.4%の伸びに過ぎなかった。単純に言えば、昨年の実質GDPは僅か1%成長に止まることになろう。これは、衝撃的な話である。文政権の大幅最低賃金引き上げと輸出不振、それに「反日不買」に伴う不安心理が消費を直撃した。「人を呪わば穴二つ」で、韓国自身がその穴に飛び込んで大損をしたのである。

     

    『朝鮮日報』(12月31日付)は、「過去57年で初めて日本に負けた成長率、OECDでビリになった韓国経済」と題する社説を掲載した。

     

    (1)「韓国は物価上昇を反映する名目経済成長率が今年は1.4%にとどまり、経済協力開発機構(OECD)加盟36カ国で34位にとどまる見通しだという。2017年の16位から18ランクも後退し、過去57年で初めて日本(1.6%)にも抜かれた」。

     

    昨年の名目成長率予想が、OECD予測では1.4%増である。日本の1.6%増(同)を下回ったと悔しがっている。何でも、日本を上回らなければ気の済まない韓国だ。切歯扼腕(せっしやくわん)しているに違いない。

     

    (2)「これまで韓国経済は悪材料に直面してもすぐに反発する復元力を誇ってきた。オイルショック当時の1980年に1.7%に落ち込んだ成長率は翌年7.2%を記録。通貨危機当時の98年にはマイナス5.5%まで低下したが、翌年には11.5%の成長を達成した。世界的な金融危機の際にも0.8%から6.8%へと急反発した」

     

    過去は、GDP成長率が急落しても、反発力が強くすぐに回復した。これは、総人口に占める生産年齢人口(15~64歳)比率が上昇局面(人口ボーナス期)であったからだ。2015年以降は、生産年齢人口比率が下降局面(人口オーナス期)入りしている。この結果、景気反発力は低下している。こうした人口動態変化を計算に入れなければならない。

     


    韓国の総人口に占める生産年齢人口比率

    2010年 73.21%

      11年 73.28%

      12年 73.35%

      13年 73.40%

      14年 73.41%  ピーク

      15年 73.36%

      16年 73.16%

      17年 72.92%

      18年 72.61%

    (資料:世界銀行)

     

    韓国経済が15年以降、人口オーナス期入りしている現実を認識すれば、文政権による経済政策の失敗は大きな傷跡を残すはずだ。韓国経済は、「初老期」に入っている。

     

    (3)「現政権が発足して以降は通貨危機のような突発的事態がないにもかかわらず、経済の不振が続いている。政府は米中貿易戦争のせいにするが、他国は同じ影響を受けながらもよく持ちこたえている。米国だけでなく、欧州、日本の株式市場は好調で、デモに直面している香港の株価も年初来12%上昇した。これに対し、韓国の総合株価指数(KOSPI)の上昇率は3.6%にとどまり、86カ国中で58位だ」

     

    韓国株価の不振は、企業業績が低調であることを反映している。新年は全業種の格付けが引下げられる方向だ。このような状況で、株価が本格的に上がるのは難しいであろう。

     


    (4)「一連の反企業・反市場政策は企業の意欲をそぎ、経済の活力を失わせている。政府は企業ではなく、全国民主労働組合総連盟(民主労総)と同じ船に乗った。世界で最も厳しい環境・安全規制が加わり、企業の代表理事(代表取締役)になった瞬間に2200項目もの刑事処罰法規の対象になる。国民年金までもが経営に干渉すると宣言し、怖いものがない強硬労組は企業の理事会(取締役会)の掌握を試みている。「韓国経済が社会主義化している」という言葉が現実化し、多くの企業が生産拠点を海外に移転したり、移転する準備を進めたりしている。韓国に投資しようとしていたグローバル企業は他国に投資先を変えている。「団体トップは新年のあいさつで「企業が政治に足を引っ張られた」「再起するのか、沈むのかの岐路に立っている」などと訴えた。それでも何の反応もないことだろう」

     

    文政権は、企業経営に大きな制約条件をかけている。「企業性悪説」であり、企業に自由度を与えると労働者や消費者を食いものにするという、「古典的な企業観」である。これが、労組の経営介入を許すという本末転倒の事態を招いている。労使は、節度ある態度で臨むべきだ。労組の経営権挑戦は、百害あって一利なしである。

     

     

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