勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年05月

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    かつて、世界の7つの海を支配した大英帝国が、中国からの「離脱」を模索している。理由は簡単だ。コロナ禍で中国の姿勢に不信感を強めたことと、香港返還に伴う中英共同宣言の「一国二制度」が骨抜きにされることである。さまよえる英国は、日本や韓国などの関係強化で難局打開を図ろうとしている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月31日付)は、「幕を閉じた中国との『黄金時代』」と題する寄稿を掲載した。筆者は、英『フィナンシャル・タイムズ』前編集長、ライオネル・バーバー氏である。

    中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が英国を公式訪問した2015年は、両国関係の「黄金時代」と言われた。しかし米国のトランプ大統領が欧州やアジアの同盟国に対して米中貿易戦争への立場を明確にするよう求め、中国政府が香港を締め付けたことなどを受け、中英関係は冷めていった。新型コロナウイルスの感染拡大は、冷え込みをさらに強めた。英国側にとっては、コロナ禍を巡り中国に非があるとの認識を持ちながら、投資家や製品・技術のサプライヤーとして頼っている気まずい構造が浮き彫りになった。

     

    (1)「香港のデモへの対応など中国自身の行動も、不信感の種をまいてきた。英国とオーストラリア、カナダの外相は5月下旬、香港で社会統制が強まることに「深い懸念」を表明した。1984年の「中英共同宣言」に言及し、香港には高度な自治が認められると強調した。実際には、習近平体制下で香港の自治が徐々に奪われ、実質的な「一国一制度」が出来上がっているともいえる。中国を頼り続ける違和感が膨らむにつれ、ジョンソン政権は、敵対しうる国々から見た英国の弱点を洗い出す考えだ。医療用品などの調達について、中国依存をやめる計画を立てるよう指示を出したという。英政府は1月、国内の次世代通信規格「5G」の通信設備を巡り、中国の通信大手華為技術(ファーウェイ)などの製品を一部容認すると発表した。だが23年までには、ファーウェイ製品を排除する意向のようだ

     

    中国の香港国家安全法適用が、中英共同宣言の「一国二制度」に違反していることは言うまでもない。共同宣言を反古にされる英国が、中国に対して不信感を持つのは当然。下線部のようにファーウェイの「5G」を一部、認める方針だったが、23年までにはファーウェイ製品を排除する意向という。米国の警告が、身にしみたのであろう。

     

    (2)「サッチャー元首相の公式伝記作家のチャールズ・ムーア氏は英紙デーリー・テレグラフに、英国が「頭を下げてへつらう」ばかりの外交に終止符を打つべき時が来たと書いた。「(別の鳥の巣に卵を産む)カッコウのような中国に餌をやる代わりに日本や韓国、フィンランド、スウェーデンと技術パートナーシップを結ぼうではないか」。(2代前の)キャメロン政権時代と隔世の感がある。当時のオズボーン財務相は中国との関係強化に力を入れ、159月には北京などを訪れた。オズボーン氏はロンドンの金融センター、シティーを「人民元取引の中核にする」と宣言し、オフショア(中国本土外)の中心地に選ばれるといった戦略的見返りを狙っていたという。英国は中華人民共和国が成立した翌年の1950年、西側主要国として早い段階で承認した。最近10年、中国からの投資は拡大方向にあった」

     

    英国は、中国との関係強化よりも、日本や韓国、フィンランド、スウェーデンと技術パートナーシップを結ぶ方が良いという見方が出ている。異質の政治体制の国へ餌をやるよりも、裏切られる心配のない西側諸国との関係強化が最善、という結論が出てきたのであろう。カントは、『永遠平和のために』で民主国同士の同盟を勧めた。英国は、大英帝国という看板で他国から騙されることがなかったであろう。今や、民主国同士の信頼に託す方が安全なのだ。

     

    (3)「英下院外交委員会のトゥーゲントハット委員長は、20年前に急成長する中国に目を付けたのは、合理的な戦略に思えたと指摘した。しかし、コロナ危機の初期の不適切な対応まで判明しつつある現在、強権支配を強める習政権への接近が「お粗末な」戦略だった印象を受けるとも述べた。トゥーゲントハット氏は、EUからの強硬離脱を掲げた議員グループ「ERG(欧州調査グループ)」をまね、「CRG(中国調査グループ)」を立ち上げた。CRGはERGほどの影響力を持っていないものの、今後の方向性を暗示している。英国も欧州やアジアなどの他国と同様、経済や政治面で「第2の超大国」として振る舞う中国の存在感を無視することはできない。だが当面、「中国寄り」の姿勢が好ましいとは考えられなくなった」

     

    コロナ禍で、中国が世界から不信感を持たれたことは言を俟(ま)たない。加えて、英国には香港問題が突付けられている。これでは、中国との関係見直しは当然だ。見直しをしなかったならば、国家とは言えない事態に直面している。中国が、こうして信頼を失っていくのは、内外で中国共産党独裁体制の矛楯深化が招いた結果と言えよう。中国共産党の敗北である。


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    韓国は、これまで新型コロナウイルスの治療で効果を上げたと、国を挙げて勝利感に酔ってきた。その後、ソウルで集団感染が発生して一時の勝利感は消え失せている。首都圏で物流センターなどを中心に新型コロナウイルス感染者が増えているのだ。29日一日の新たな感染者は39人。防疫当局は、首都圏の感染拡大を防ぐため5月29日から6月14日まで首都圏に限り公共施設の閉鎖を継続する予定だ。

    この緊急事態は、日本にとっても他人事ではない。油断をすると逆戻りするリスクと隣り合わせである。そのように自戒しつつも、韓国におけるこれまでの「コロナ勝利感」は並外れていた。

     

    文政権支持メディアの『ハンギョレ新聞』(5月21日付)は、次のように報じて日本を侮辱していた。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応の過程で立証された開放性、民主性、透明性など、韓国社会の力量は日本のそれを上回る」と書き記したのである。

     

    この傲慢な論調を咎める発言が、飛び出してきた。韓国国立外交院の金峻亨(キム・ジュンヒョン)院長は5月28日、韓国における新型コロナ防疫の成果について、「いわゆるクッポン(自国の文化を自慢して悦に入ること)に陥らないためには、行き過ぎた期待や傲慢(ごうまん)は捨てるべきだ」「防疫に成功したのは偶然ではないが、われわれに全てを可能にさせる機会とはならない」と指摘した。クッポンとは国家とヒロポンを合わせた合成語で、行き過ぎた愛国主義を意味する。以上は、『朝鮮日報』(5月29日付)が伝えた。

     

    『ハンギョレ新聞』は、今になって見ると、「しまった」と恥じ入っているだろう。防疫対策の基本は、全数調査つまりPCR検査数を増やせば、それで良いのではない。クラスター対策こそ防疫対策の基本である。日本のメディアでさえ、こうした認識を持たず、「韓国を見習え」と絶叫していた。防疫対策でも、原理原則に従うことが肝心なのだ。

     

    日本の防疫対策を「模範」とする見方が出てきた。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月30日付け)は、コロナ対策、日本が『手本』、ドイツ第一人者が指摘、戦略転換も」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツの著名なウイルス学者であるシャリテ大学病院のクリスティアン・ドロステン氏が28日、日本の新型コロナウイルス対策を「近い将来の手本にしなければならない」と語った。一部の感染者から多くの感染が広がっている現象に注目し、日本のクラスター(感染者集団)対策が感染の第2波波を防ぐ決め手になりうるとの考えを示した。

     

    (1)「ドロステン氏は、新型コロナの検査の『最初の開発者』(メルケル首相)とされ、ドイツ政府のコロナ対策にも大きな影響力がある。2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の共同発見者としても知られるウイルス学の第一人者だ。ドイツではドロステン氏が連日配信するポッドキャストの人気が高い。同氏は28日の放送で「スーパースプレッディング」と呼ばれる一部の感染者から爆発的に感染が広がる現象を取り上げ、これを防ぐためには対策の修正が必要で、日本の対応に学ぶ必要があるとの考えを示した」

     

    日本の防疫対策の専門家は、WHO(世界保健機関)に勤務した経験者が多く、その対策で手抜かりのあるはずがなかったのだ。WHOの第4代事務局長は、日本出身の中嶋宏氏である。1988~1998年と10年間、その職にあった。WHOの運営に貢献してきた国である。それが、韓国から罵倒されるほど酷い防疫対策をするとは思えないのだ。韓国の甚だしい思い上がりと言うべきであろう。

     

    (2)「ドロステン氏は、日本がほかのアジア諸国と比べれば厳格な「ロックダウン」なしに感染を押さえ込んでいると指摘。ひとたびクラスターが見つかれば、検査よりも先に関係者全員を隔離することが戦略の「核心」になっていると説明したもともとドイツは、多くの検査で新型コロナを封じ込めた韓国を対策の参考にしてきた。日本の対策は分かりにくいとの声が強かったが、英語での情報発信が最近増え始めたこともあり、注目が高まりつつある。

     

    日本の対策は分かりにくいと評されたのは、メディアなどの非専門家の野次馬集団が、政府を攻撃していたからであろう。どれだけ間違えた発言が多かったか。今、振り返っても赤面する人たちは多いはず。素人は、口出しせずに専門家の意見を尊重することだ。

     

    ドイツは、ヨーロッパでコロナ対策の模範国とされている。そのドイツ専門家が、日本のクラスター対策に注目している。日本は、これまでの対策に自信を持ち、足りなかった部分を強化すれば万全の対策となる。

     

    (3)「ドイツは検査数や病床などの医療体制で日本を上回り、ほかの欧州諸国と比べれば死者数も低く抑えている。ただ、感染の第2波を避けながらいかに正常化を進めるかが課題で、日本のクラスター対策やスマホアプリを使った追跡など、新たな対策を取り入れようとしている」

     

    日本も気を緩めず、コロナ第二波、第三波に備えなければならない。最終的には、コロナ犠牲者を一人でも減らすことだ。日本で、人工呼吸器治療を受ける患者の7~8割が、生還している。米国では、その生還率が1割という。日本は患者への初期対応が良く、生還率を高めているというのだ。以上は、日本医師の証言である。米国医師も、横浜での大型クルーズ船感染者治療に参加して、日本の医療技術の高さに舌を巻いていた。このことは、すでに本欄で報じた。


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    韓国は、他国との比較を好む習性がある。科挙(かきょ)の国だけに、すべてを試験=点数に結びつけたがるのだ。科挙とは、儒教文化圏の中国と朝鮮の官僚登用試験である。合格するまでは、浪人生活を何年しても構わないという、激烈な競争が行なわれてきた。その代わり合格すれば、一生、「左団扇」の生活が保障された、夢のライフプランである。韓国では今でも公務員試験で、就職浪人は当り前という科挙の伝統を引き継いでいる。何も変わらない社会なのだ。

     

    こういう「競争社会」ゆえに、韓国のGDPランキングが上がっても下がっても大騒ぎするのは致し方ない。ランクが上がれば大威張りする。下がれば、肩を落として落胆する。2019年のOECD(経済協力開発機構)で、韓国の名目GDPランキングが、カナダとロシアに抜かれて10位になったと落胆している。ランキング落ちの中に、将来の韓国経済退潮を予告する大きな意味が含まれているのだ。

     

    『中央日報』(5月27日付)は、「韓国、GDP順位下落し10位日本は?」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「OECDが27日に明らかにしたところによると、2019年の韓国の名目GDPは1兆6421億8000万ドルで、OECD加盟国と主要新興国など38カ国のうち10位を記録した。2018年の8位から2段階の下落だ。韓国の名目GDPの順位が落ちたのは金融危機当時の2008年に12位から14位に下落してから11年ぶりだ」

     

    先ず、基本的なことをおさらいしておきたい。名目GDPは、市場価格で評価された付加価値である。市場価格が上がれば、名目GDPも増える。市場価格が下がれば、名目GDPが減る計算だ。韓国は、2019年の名目GDPランキングが下がった。これは、韓国の市場価格が下がったことを意味する。つまり、経済が不調であったことだ。GDPデフレーターがマイナスである。

     

    物価が下がる経済は、需要不足が原因である。韓国は、需要不足経済であると理解をしなければならない。問題は今後、この需要不足経済が慢性化するだろうと見られることである。この点が、もっとも深刻である。

     

    その理由は、韓国経済が人口動態において、「人口オーナス期」に入っていることだ。人口に占める生産年齢人口(15~64歳)の比率が下がっていること。潜在成長力が下降状態にあるのだ。これをはね返すには、制度的イノベーション推進が不可欠である。だが、これを阻止する大きな勢力が存在している。

     

    韓国の労組と市民団体が阻害要因である。巨大な既得権益集団と化している。イノベーションをストップさせる役回りを演じているのだ。韓国の政治的保守層(経済界)は、制度的イノベーションを実行しようとしても、前記の二大既得権益集団が政治的進歩派(文政権)と組んで阻止役に回っている。韓国経済の将来が、絶望的である理由はここにある。

     

    韓国メディアは、名目GDPランキングが2ランク下がったと嘆いている。一方、この回復策について、なんら提示していないのだ。「果報は寝て待て」というように、努力もせず都合のいいことは起こらない。韓国有権者は、経済問題に無関心である。南北問題や中国関係の改善という政治要因に多大の関心を向けている。霞を食って生きている集団のような振る舞いである。

     

    (2)「名目GDP1位は21兆4277億ドルで米国となった。2位は中国で14兆3429億ドルだった。継いで日本が5兆818億ドル、ドイツが3兆8462億ドル、英国が2兆8271億ドル、フランスが2兆7080億ドル、イタリアが2兆12億ドルの順だった」。

     

    数字が羅列されているだけだ。記者が、書くことがなくて「穴埋め」に書いている感じである。ここで記憶すべきなのは、OECD内のランクでなく、世界ランクを見ることである。世界全体の2018年名目GDPランキングで、韓国は10位であった。11位はカナダ、12位がロシアである。韓国との差は、カナダが80億1000万ドル、ロシアとは631億9900万ドルに過ぎなかった。韓国はいわば、僅差で世界10位であり、いつ、カナダとロシアに抜かれても不思議はない位置である。

     

    韓国の市場価格が下がれば、簡単にカナダとロシアに抜かれるという関係にあった。過去の世界ランクで韓国の最高位は、2004年と05年の10位である。2018年も前記のように10位であった。それが、昨年は12位へ後退している。このことから言えるのは、世界10位が韓国の最高位であって、今後はズルズルと下がるに違いない、という点である。

     

    その理由は、2つある。

    1)生産年齢人口比が、2014年の73.41%がピークである。2018年は72.61%と微減だが、最近の合計特殊出生率「0.9」は、世界最低記録であることから見て、これから急カーブで下落する。

    2)労組と市民団体が、一段と既得権益集団となって制度的イノベーションの阻害要因になることだ。経済成長を罪悪視する風潮をつくりだし、経済成長よりも南北統合を優先する運動を始めるだろう。文政権を支える与党「共に民主党」の隠れた党是でもある。韓国経済が、こういう状態である以上、発展する希望は皆無なのだ。

     

    テイカカズラ
       

    米中が対立を深める中、さらに紛糾すると見られる判決が、カナダ上位裁判所で下った。中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の副会長兼最高財務責任者(CFO)の孟晩舟被告に対する裁判で、米国側に有利な判決が出たからだ。今回の判決で、孟被告の米国への身柄引き渡しの可能性が高まったと予想されている。中国は、これまでカナダ側へ数々の嫌がらせをして、孟被告の釈放を実現させるべく圧力を加えてきた。カナダ裁判所は、これに屈せず、法律に従い米国への引き渡し判決を下した。

     

    米国の要請で、カナダ当局が2018年12月に逮捕し、保釈中の孟晩舟被告の米国への身柄引き渡し可否の本格的な審理が、今年1月20日に始まった。裁判は、秋まで続く日程が組まれていた。判事は、これより早く判断を下し孟被告釈放の可能性も取り沙汰されていた。こういう事前の予測は、完全に外れた。

     

    『東亜日報』(5月29日付)は、「ファーウェイCFO、米への身柄引き渡し有力、米中対立の新たな雷管に浮上」と題する記事を掲載した。

     

    カナダ・ブリティッシュコロンビア州の上位裁判所のヘザー・ホルムズ判事は27日、「米国の犯罪人引き渡し要請が、カナダの法律の要件を満たした」と明らかにした。米国で起訴された孟被告の容疑が、カナダでも犯罪と認定されたということだ。

     

    ファーウェイの創業者、任正非氏の娘である孟被告は、米国の要請で2018年12月、カナダのバンクーバー空港で逮捕された。米国は、孟被告が対イラン制裁を破ってイランと装備を取り引きする際、金融会社をだました容疑で起訴し、カナダに犯罪人引き渡しを請求した。任氏と最初の妻の孟軍氏の間に生まれた孟被告は、有力な後継者とされている。

     


    (1)「被疑者を犯罪人引き渡し条約によって請求国に引き渡すには、容疑が被請求国でも犯罪と認められなければならないという「双罰性」の要件が、孟被告の裁判の核心争点だった。弁護人側は、「カナダにイラン制裁関連法がない。容疑はカナダで犯罪にならない」と主張した。しかしカナダ検察は、「詐欺容疑はカナダの現行法にも抵触する」と対抗し、裁判所がこれを認めた

     

    孟被告は米国の対イラン制裁を逃れるため、ファーウェイとイランの子会社との関係について2007年ごろから金融機関に対し虚偽の説明を行ったとして、銀行詐欺などの罪で米国が起訴した。米国は、カナダとの間で結ぶ犯罪人引き渡し条約に基づき引き渡しを求め、中国は釈放を求めてきた。

    弁護人側は、「カナダにイラン制裁関連法がない。容疑はカナダで犯罪にならない」と主張した。しかしカナダ検察は、「詐欺容疑はカナダの現行法にも抵触する」と対抗し、裁判所がこれを認めたものだ。

     

    (2)「米商務省は5月15日、米国の技術を活用する海外企業がファーウェイに半導体を供給できないようにするなどファーウェイに対する制裁を強化し、中国はこれに反発している。このような時に出た今回の判決に、駐カナダ中国大使館の報道官は電子メールの声明を通じて、「強い不満と断固たる反対を表明する」と明らかにした。そして、「米国の引き渡し要請はファーウェイなど中国の先端技術の企業を倒すための試み」とし、「カナダが米国と共謀してこれを代行している」と主張した」

     

    弁護側の主張には、かなりの無理があった。米国の違法性が、カナダでも違法として問えるかどうかが争点のはずである。中国は、そういう法理論を外し、「米国の引き渡し要請はファーウェイなど中国の先端技術の企業を倒すための試み」という感情論で対抗したところが、そもそもピンボケである。そんな争いを仕掛けても、水掛け論で負けになるのだ。

     


    (3)「カナダと中国の関係も悪化が予想される。中国は孟被告の逮捕後、自国内のカナダ人2人を拘束した。肉類やキャノーラ油などカナダ産の農産物に対する輸入も停止した」

     

    ここら当りの中国の嫌がらせは、子どもじみている。法律論で対抗できない弱味を、嫌がらせという感情論で押し潰そうとした。これが、カナダの裁判所で見破られた理由であろう。

     

    カナダは、中国と妥協するために次世代通信網「5G」で、ファーウェイ製を購入するなどと報じられたこともある。こういう「取引」で孟被告の米国引き渡しをするという憶測である。「5G」は、米国政府の強い購入拒否要請が行なわれている。

     

    ファーウェイが4月、カナダに数百万枚のマスクを寄付した。ファーウェイは、カナダの5G市場参入を狙っていることから、今回の医療品の寄付は、中国共産党の下心があるとの見方もされている。カナダのトルドー首相は、寄付を受け入れる一方で、5G配備を含む政策決定には影響しないと強調した。また、医療品は基準に適しているかどうかを検査すると発言した。今後も、いろいろと情報が錯綜するであろう。

     

     

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    米国トランプ大統領は、中国による香港への国家安全法適用が、「一国二制度」に違反するとして、香港に与えた特恵(関税など)すべてを廃止すると発表した。ほかに、中国からの人民軍関係留学生の受入れ停止、WHO(世界保健機関)が中国に支配されていることから脱退するとも宣言した。

     

    中国の受ける損害は大きなものがある。香港を「出島」に使って、貿易・金融の面で多大の利益を受けてきただけに、それらすべての利益を失う形となる。香港へ進出している米企業にも大きな影響が及ぶ。

     

    『中央日報』(5月30日付)は、「トランプ大統領が強力な対中国制裁へ、香港優遇措置を撤廃」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米大統領が29日(現地時間)、関税およびノービザ入国を含めた香港に対する優遇措置を撤廃すると宣言した。中国が全国人民代表大会(全人代)で香港国家安全法を制定したことを受け、中国に対する強力な制裁を発表した。安全法制定に関与した中国・香港の高官を制裁するほか、米国の科学技術保護のために中国軍に関連する留学生の入国を遮断し、中国が完全に掌握した世界保健機関(WHO)との関係を終えて脱退するとも宣言した。

    トランプ大統領はこの日、ホワイトハウスの記者会見で「香港はもう1997年の返還以降に我々が提供してきた優遇措置を保証する十分な自治ができない」とし「中国は『一国二制度』の約束を一国体制に変えた」と主張した。続いて「私は行政府に対し、香港に対する優遇措置を撤廃する手続きを始めるよう指示した」と述べた。

    (1)「トランプ大統領は、「私の発表は、犯罪人引き渡し条約から軍・民両用技術に対する輸出規制まで例外なく香港と結んだすべての協定に影響を及ぼすはず」とし「国務省は中国公安機関の強化された監視・処罰危険のため香港への旅行警報も改めることになるだろう」と伝えた。香港との犯罪人引き渡しを中断し、敏感な技術への接近も中国と同じく防ぐということだ。香港を国際商業・金融中心地に成長させた優遇措置の核心である対中国関税免除と香港人の米入国ビザ免除もなくすことにした。トランプ大統領は「香港を他の中国とは別に関税および旅行地域として優遇してきた点も撤廃する」と話した。中国輸出品の約50%の品目に25%、残りの20%にも7.5%の関税を賦課してきたが、これを香港にも同じく適用するということだ。この場合、香港に進出した1300余りの米国企業と米国市民約8万5000人にも被害が及ぶ」

    トランプ氏は、香港に与えた特恵のすべてを廃止すると発表した。これまで、香港は中国本土と異なる政治体制として扱ってきた。今後は、それを同一して扱うとするもの。「香港を国際商業・金融中心地に成長させた優遇措置の核心である対中国関税免除と香港人の米入国ビザ免除もなくす」。これは、香港が国際金融センターの位置を失うことを意味する。国際的に大きな衝撃になる。

     

    (2)「トランプ大統領は、「香港の自治侵害に直接・間接的に関与した中国・香港高官を制裁するのに必要な措置も取る」と警告した。香港国家安全法の制定を主導した韓正副首相や中国公安部幹部、香港のキャリー・ラム行政長官などに対する資産凍結、入国禁止など標的制裁も予告したのだ」

     

    香港国家安全法の適用に関与した人物には、制裁措置を取る。資産凍結や米国への入国禁止措置が発動される。


    (3)「トランプ大統領は「中国政府は長い間、我々の多くの産業機密を盗み出す違法なスパイ行為をしてきた」とし「我々の核心の大学・研究所を保護するために潜在的セキュリティー脅威があると判断される一定の中国人の入国を中断する布告文も発令した」と話した。具体的に中国の軍・民融合戦略を実行する機関と関連する大学院以上の中国国籍者のF(留学生)およびJ(訪問学者)ビザを利用した米国入国を遮断するということだ。また、人工知能(AI)など民間先端技術を活用して人民解放軍を現代化する「軍・民融合」推進大学・研究機関所属や、これら機関で研究した後に米国に入国した中国人留学生と研究員の約3000人も追放される可能性がある」

    中国人民解放軍関係の留学生や研究員の約3000人が、追放される可能性も指摘されている。

     

    (4)「トランプ大統領は「世界最高の米国の金融システムと投資家を保護するため、米金融市場に上場した中国企業の慣行に関する研究を指示した」とし、粉飾決算などのリスクがある中国企業の潜在的追放の可能性も予告した」

     

    米国証券市場に上場されている中国企業で、決算内容に疑義の多い企業について、米国側に調査権限がないので、追放する可能性が出て来た。すでに別の立法措置が進んでいる。

    (5)「トランプ大統領は、「中国の武漢ウイルス危険性の隠蔽は全世界拡大とパンデミックを招き、10万人の米国人の命を奪った」と述べ、WHO脱退も宣言した。続いて「中国がWHOを完全に掌握している」とし「WHOは必要な改革をするのに失敗したため、我々はWHOとの関係を断ち、資金を世界のほかの緊急な公衆保健需要を満たすのに使う」とも述べた」

     

    米国が、WHOから脱退すると宣言した。WHOが、中国に支配されており、WHO本来の機能発揮が阻害されている、との判断を下した。

     

     

     

     

     

     

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