勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年05月

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    中国共産党は、プロパガンダの一環として、世界中に孔子学院を開設している。その実態は、文化施設の範囲を超えている。スパイ活動や中国留学生の監視など、およそ文化事業にそぐわない活動を行なっている。米国では、FBI(連邦捜査局)が常時、監視体制下において、違法行為に目を光らせている。

     

    米国のシカゴ大学と言えば、リベラルな思想で有名である。ノーベル経済学賞受賞者も多く輩出している。この大学にも、孔子学院が開設されていた。だが、自由と民主主義のメッカに、共産党のプロパガンダを行なう孔子学院は似つかわしくないと、すでに閉鎖されている。こういう動きが、全米で始まった。

     

    孔子学院は、中国政府教育部(文部科学省)の下部組織・国家漢語国際推進指導小組弁公室(漢弁)が管轄している。近年、米国では学生父母や教職員の反対を受けて、いくつかの孔子学院が閉鎖された。またベルギー政府は、孔子学院代表がスパイ行為を働いたとして、欧州22カ国への8年間の入国禁止措置を取った。

     

    『大紀元』(5月29日付)は、「孔子学院の永久閉鎖を求める公開書簡、米両党学生指導者が署名」と題する記事を掲載した。

     

    米民主党と共和党に所属する学生団体のリーダーらはこのほど、国内のすべての孔子学院の閉鎖と、米国の大学における中国共産党の影響力の制止を政府に求める共同公開書簡に署名した。

     

    (1)「非営利団体「アテネ研究所」が5月13日に発表した公開書簡は、中国共産党が「米国の大学に孔子学院を設置し、米国や世界の大学での言論をあからさまに強要・統制しようする、学問の自由に対する脅威」とした。協会は書簡を通じて、米政府に対して、国内すべての孔子学院の即時かつ恒久的な閉鎖を求めている。この書簡は、超党派の学生団体リーダーたちも支持した。共和党の青年団体「大学共和党全国委員会」は公開書簡を支持する声明をSNSに発表した。「私たちは米国の大学に強いメッセージを送る。中国共産党と提携し、中国政府によって資金提供されている孔子学院との関係を断ち切るべきだ。大学の学問の自由が危険にさらされている」としている」

     

    孔子学院が、中国語と中国文化の普及という純然たる教育活動に専念しているならば、閉鎖要求は、「学問の自由」を侵害する行為として許されない。だが、共産主義の宣伝活動を行い、中国批判の文化的行事を圧迫中止させるという横暴な振る舞いは論外である。米国の学生が超党派で閉鎖要求を出したのは、自然の流れである。

     


    (2)「公開書簡の発起人のひとりは、アテネ研究所会長は、米国のカトリック大学の2年生ローリー・オコナー氏だ。 オコナー氏はボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に対して、全米で超党派の学生団体を含む多くの支持を得たことは、米国の若い世代の、中国共産党による影響の懸念を反映しているのではないかと述べた。全米学者協会によると、米国ではまだ約80の孔子学院が運営されている。中国政府の公式説明では、孔子学院は中国語と中国文化を普及させるために設立された。一時には国務院が「中国の社会主義を拡散する」目的があると説明していた。漢弁の総主任はかつて、共産党中央統一戦線工作部部長の劉延東氏が務めた」

     

    孔子学院は、中国国務院(内閣)から「中国の社会主義を拡散する」目的があると説明されていた。孔子学院が、共産主義を拡散させる政治目的で開設されていることは事実なのだ。共産主義シンパを増やし、スパイ要員に仕立てようという狙いだ。

     

    (3)「米大学民主党のバージニア州委員長エリカ・ケリー氏は公開書簡に署名した。ケリー氏が通うジョージ・メイソン大学にある孔子学院は、中国問題専門の教員の学術活動を妨害し、チベットや新疆ウイグル問題のイベントも中止に追い込んだ。ケリー氏は、孔子学院は米大学の学術・言論の自由を侵害しているだけでなく、一部の中国人学生に不安を与えたと指摘した。 書簡は、中国共産党の全体主義体制と中国人民とを区別しなければならないとした。公開書簡は、すべての孔子学院の恒久的な閉鎖のほか、中国大使館によるプロパガンダや抗議活動の招集の禁止、中国政府からの資金提供の禁止などを提案した

     

    中国共産党が、ここまでプロパガンダを行なう理由は何か。世界での孤立を恐れているのだろう。共産主義政治は、民主主義政治と比べて独裁制であり、普遍的価値観から逸脱している。いわば、非人間的存在である。国民を監視しなければ存続できない政治。それが、共産主義政治の現実である。自由を謳歌している民主主義政治下の学生に、共産主義を受入れる余地はない。だから、執拗なまでのプロパガンダが必要なのだ。

     

     

     

     

     

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    中国による香港への国家安全法適用決定は、大きな波紋を呼んでいる。自民党外交部会は、香港国家安全法適用を非難決議した。同時に、習近平国家主席の国賓訪日の再検討を政府に申入れている。

     

    欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は5月29日、中国が反体制活動を禁じる「香港国家安全法」導入を決定したことに、EUは「深く懸念している」と述べ、EU外相理事会が対中戦略の厳格化で合意したことも明らかにした。米英両国は、中国が香港の統制強化に向けた「香港国家安全法」導入を計画していることで、29日の国連安全保障理事会に非公式に提起する方針。中国の香港国家安全法適用は、国際問題化している。

     

    中国は、香港国家安全法適用決定で世界の三極である、日本、EU、米国から非難される事態に直面した。コロナのパンデミックで世界中へ被害をばらまく一方、さらに香港の自由弾圧の懸念により、厳しい局面に立たされた。中国民族主義が、国際法拒否という破天荒な行動に出た結果、今後の中国外交には茨の道が待っている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(5月29日付)は、「習氏の国賓来日『再検討を』自民部会、香港巡り非難決議」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「自民党の外交部会と外交調査会は29日、「香港国家安全法」の制定方針を採択した中国を非難する決議文をまとめた。新型コロナウイルスの感染拡大で延期した習近平国家主席の国賓来日も再検討するよう政府に求めた。中山泰秀外交部会長らはその後、首相官邸で菅義偉官房長官と会談し、決議文を手渡した。菅氏は「真摯に受け止めたい」と語った。

     

    自民党の外交部会と外交調査会が、合同で「香港国家安全法」を採択した中国を非難した。同時に、習近平氏の国賓来日も再検討するように政府へ求めている。管官房長官は、「真摯に受け止めたい」と回答した。日本が、国賓来日時期を先延ばしにする案もあろう。もともと、自民党の一部には、習氏の国賓に反対する意見があった。

     


    (2)「決議文は香港への統制を強める中国に「自由と民主主義を尊重する観点から重大で深刻な憂慮」を表明した。「民主的な議会などの価値を減殺しないよう強く求める」とも明記した。新型コロナの感染拡大のさなかの動きに「由々しき事態であり決して看過できない」と訴えた。習氏の国賓来日は「再検討も含め、政府において慎重に検討することを要請する」と盛り込んだ

     

    下線部分には、国内で共鳴する向きもあろう。中国発症のコロナ禍で、経済も生活もメチャクチャになっている現状から言えば、こういう時期に習氏がどんな顔をして訪日するのか。世界的にも注目される動きだ。今秋に予定されているEU・中国首脳会談は延期の方向で検討されている。日本でも、習氏の国賓訪日に延期論が強まろう。

     

    『ロイター』(5月30日付)は、「EU、中国の香港法制『深く懸念』対中戦略厳格化で合意」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は29日、テレビ会議形式で実施された外相理事会後の記者会見で、香港国家安全法の導入は香港の高度の自治を認める「一国二制度」が阻害される「深刻なリスク」と指摘。「EUと中国の関係は相互の尊重と信頼に基づいているが、今回の決定はこれに疑問を呈するものだった」とし、「香港の自治は大幅に弱体化された」と述べた」

     

    なにやら、天安門事件(1989年)の虐殺に抗議する雰囲気に似てきた感じだ。「EUと中国の関係は相互の尊重と信頼に基づいているが、今回の決定はこれに疑問を呈するもの」は、外交的に最大級の非難であろう。EUにとって、「自治」とは市民社会と同義語である。市民社会弾圧は、EUとして絶対に見逃せない暴挙だ。

     

    中国は、「内政干渉」というお決まりの言葉で反論しているが、価値観の根本的な相違を浮き上がらせている。天安門事件での民衆虐殺と相通じる香港国家安全法の適用は、中国がいかに危険な国家であるかを示している。

     


    (4)「EU各国外相は、中国が香港の自由を制限しようとしていることに「深刻な懸念」を示し、対中政策の厳格化で合意したと表明。「中国とオープンで率直な対話を行う必要があり、EUにはその用意がある」としながらも、市場アクセスなどを巡り「交渉は進展していない」と述べた。各国政府はその後、ボレル上級代表の発言内容を反映した声明を発表。全人代の決定は「中国が国際的なコミットメントを順守するのか、一段と大きな疑問を呈するものだった」とした。英、米、オーストラリア、カナダの4カ国は28日、全人代の決定を非難する共同声明を発表している」

     

    EU各国政府は、「中国が国際的なコミットメントを順守するのか、一段と大きな疑問を呈するものだった」と非難している。当然のことだが、こういうEU各国政府の声明が出た手前、日本は習氏の国賓訪日を先送りすることが賢明であろう。

     

    (5)「EUの執行機関である欧州委員会は来月、公開入札への中国のアクセスを制限する方法などに関するガイドラインを策定する見通し。また、9月14日にドイツのライプチヒで開催される予定のEU・中国首脳会議について、独外交筋は延期される可能性があると示唆。独政府報道官はこの件に関するコメントを控えている

     

    9月に予定のEU・中国首脳会談は延期される可能性があるという。当然だ。日本も参考にしなければなるまい。



    テイカカズラ
       


    歴史の場面を読むようなシーンだ。中国が、国内情勢緊迫化を隠蔽するため、香港に国家安全法を適用せざるを得ないという場面である。このシーンを分解すると、次のような局面から成り立つ。習氏にとっては、①中国共産党の正当性護持のため、国民の不満を外に逸らす、やむを得ぬ措置になった。これが、②香港に約束されてきた「一国二制度」を形骸化させ、香港の自治が葬り去られる。この結果、③中国は米国の怒りを買う。以上の連続シーンは、玉突きに喩えられるであろう。

     

    米国は、香港の自治が維持される前提で、これまで本土と異なる待遇を香港に与えてきた。その好意が、香港国家安全法適用で消えるのである。中国は、香港を出島にして多大の利益を受けてきた。それだけに、米国の対応変化から大きな影響を被るはずだ。中国は、米国へ報復すると息巻いているが所詮、「引かれ者の小唄」となろう。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月28日付)は、「米国務省、香港は自治を失ったと正式に判断」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米国務省は、香港が中国からの自治を失ったと正式に判断した。マイク・ポンペオ国務長官が27日付の発表文で明らかにしたもの。今後の米中の経済関係に影響を及ぼし、対中制裁につながる可能性がある。国務省は1992年の「香港政策法」に基づき、香港の自治状況に関する評価を義務づけられている。同省はこの日、香港の自治が守られなくなったと米議会に報告した。

     

    米国は、昨年11月制定の「香港人権・民主主義法」によらず、1992年の「香港政策法」に基づいた行動を中国に発動する。伝家の宝刀を抜く場面である。具体策は、29日(米時間)にトランプ大統領か発表される。

     


    (2)「ポンペオ氏は発表文で「この判断には全く喜びを感じないが、健全な政策決定には現実を認識することが必要だ」とした上で、「中国が自国を香港のモデルにしようとしていることは今や明白だ」と述べた。米国が当時是認した特別な地位は、これまで香港が欧米式の法治下にある世界金融の中心地であるとの「お墨付き」として機能してきた。だが国務省が判断を変えたことで、米国をはじめとする外国企業の香港に対する信頼が揺らぎそうだ」

     

    米国が、これまで香港に与えてきた特恵の背景は、欧米式の法治下にある世界金融の中心地であることを高く評価したものである。その前提として、欧米式の法治が保証されてきたことが大きい。世界の金融センターには、自治が不可欠である。その空気が消える以上、金融センターであり続けられない。米国は、「一国二制度」違反を理由にして、中国に死刑判決を与えるに等しい「特恵」取消しに動く。その具体的内容は、次のパラグラフに示されている。

     

    (3)「米国は香港への特別待遇の一環として、中国へは販売禁止の先端技術を搭載した機器の輸出を認めている。また世界保健機関(WHO)、アジア開発銀行(ADB)などの国際機関に香港が代表を送ることを支持してきた。米国への入国も香港市民は中国人より簡単だ。米国は香港政策法の下、香港を中国本土とは別の存在として扱ってきた。これまで米政府は毎年、香港の自治が守られていることを認め、貿易や投資といった分野で独立国家並みの待遇を与えてきた」

     

    米国は、香港に対して次のような独立国家並み待遇を与えてきた。

    1)中国へは販売禁止の先端技術を搭載した機器の輸出を認めている。

    2)香港にWHOやADBへ代表を送ることを支持してきた。

    3)香港市民は米国への入国も中国人より簡単な手続きで済んだ。

    4)貿易や投資の分野で本土よりも優遇してきた。

     

    中国が、香港を「出島」として利用してきたのは、4)の貿易や投資の優遇であろう。事実、中国は貿易や投資で香港が統計上で最大の取引先になっている。香港をクッション役に利用してきたのだ。

     

    2)で、香港がWHOやADBで参加できたのは、米国の1992年の「香港政策法」に基づいた結果である。今後、香港はWHOやADBに参加を送れなくなるのか。台湾との扱いで、バランスを取るのだろう。台湾のWHO参加の道が、開かれる可能性も出てくるだろう。

     

    (5)「ポンペオ国務長官は今回の判断の要因に、中国政府が香港に一方的・恣意的に国家安全法を導入しようとしている点を挙げた。米政府は今後も自治を求めて苦闘している香港の人々と共にあると述べた」

     

    米国としては、香港市民に対して厳しい扱いになることに心を痛めていることがわかる。米国への入国では、従来通りの措置を継続することになるのかも知れない。


    ムシトリナデシコ
       


    コロナ禍が、米中対立を一段と激化させている。パンデミックに伴う世界経済混乱に乗じて、中国企業が先進国へ手を延ばすことへの警戒である。中国の周到に準備された戦術で、針の穴でも利用する貪欲さに対して、米国は同盟国へ最大限の警戒体制を取らせている。

     

    『韓国経済新聞』(5月29日付)は、「日本・イスラエル、米同盟国が『中国たたき』に次々と同調」と題する記事を掲載した。

     

    米国と中国の対立が深まる中、米国の同盟国も「中国たたき」に次々と加わっている。日本は省庁のほか公企業もファーウェイ(華為技術)など中国の情報技術(IT)機器を使用できないようにし、イスラエルは大型インフラ事業で有力候補だった中国企業を脱落させた。

    (1)「日本政府は日本年金機構や産業技術総合研究所など96の公共機関および政府傘下の研究機関の運用指針を決め、中国の情報通信機器を事実上排除することにしたと、読売新聞が27日報じた。今回の新しい指針に基づき、96の公共機関は早ければ来月からコンピューター、通信回線装置、サーバーを購入する際、内閣サイバーセキュリティーセンターと相談しなければいけない。サイバーセキュリティーセンターは安全保障上のリスクがあると判断すれば、調達先の変更を要求することができる。調達先を決める際の基準も、価格だけでなく安保リスクまで総合的に考慮しなければいけない。外部勢力の個人情報窃取およびサイバー攻撃を防ぐためだが、ファーウェイやZTEなど中国IT企業を狙った措置と解釈される

    これまで、ファーウェイ・スマホは、「バックドア」をつけていることが知られていた。米国では、販売禁止措置を取っている。ファーウェイは、次世代通信網「5G」にも「バックドア」を仕掛けている。豪州が、これを昨年1月に発見して、米国へ通報した。当初、米国も信じなかったが実証試験で確認したもの。愕然とした米国は、同盟国へ向けてファーウェイ「5G」導入の危険性を訴えている。

     

    欧州では、ファーウェイ製「4G」が普及しており、次世代通信網「5G」もファーウェイ製導入は当然のこととしてきた。ここへ、「バックドア」問題が提示され、導入の可否に揺れている。英国もその一つである。だが、今回のパンデミックに伴う中国疑惑で、ファーウェイ製「5G」導入拒否に向けて態度を一変させている。

     

    日本が、ファーウェイ製拒否に舵を切っている背景も上記の通である。ファーウェイ製「5G」を導入すると、北京で相手国の情報をすべて聴取でき、戦争状態に入った場合、インフラ機能を不全にできるという事態が予知されている。



    (2)「イスラエルも世界最大規模の海水淡水化プラントの入札で、予想を覆して中国企業を脱落させた。イスラエル財務省は海水淡水化プロジェクト「ソレク2」の業者に自国企業のIDEテクノロジーを選定したと26日(現地時間)、発表した。このプラント事業は計15億ドル規模で、2023年の完工が目標。これまでは中国系のCKハチソンウォーターインターナショナルが無難に落札すると予想されていた。香港の富豪・李嘉誠氏の息子が運営するCKハチソンは資金力があり、イスラエル以外でも淡水工場を運営するなど経験も豊富だからだ」

     

    中国は、米国が技術漏洩に厳重警戒体制を取っていることから、イスラエルに技術窃取の焦点を絞ってきた。中国企業が、イスラエル企業に合弁計画を持ちかけ、技術情報を開示させたうえ、合弁計画を立ち消えにさせる、あくどいやり方が表面化している。イスラエルは、これまで中国との接触が少なく、「中国音痴」であった。その虚を突かれて、重要技術が漏洩している。米国は、同盟国中でも日本と並んで親密なイスラエルが、まんまと中国の術中にはまっていることに業を煮やしている。そこで、ポンペオ米国務長官がイスラエルに乗り込んだものである。

     

    (3)「ポンペオ米国務長官が13日にイスラエルを訪問した後、雰囲気が変わった。ポンペオ長官は当時、イスラエルのネタニヤフ首相に会い、「CKハチソンのプラント投資は米国の安保に脅威となる」と述べ、中国企業の排除を要求したという。入札の結果発表直後、イスラエル財務省は「IDE側が提示した価格条件が良かった」と説明したが、ウォール・ストリート・ジャーナルは「米国と中国の対立に巻き込まれないための決定」と分析した」

    ポンペオ国務長官のイスラエル訪問について、次のように報じられている。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(5月18日付)は、「米イスラエル関係を阻害する中国問題」と題する寄稿を掲載した。筆者のダグラス・フェイス氏は、米ハドソン研究所のシニア・フェロー。2001~05年に国防総省の政策担当次官を務めた。

     

    (4)「マイク・ポンペオ米国務長官は5月13日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とエルサレムで会談し、イスラエルと中国の経済的結び付きがさらに強まれば、米イスラエル関係に害を及ぼすと警告した。米国の現政権はイスラエルに対して過去のどの政権よりもずっと友好的な姿勢を示しているだけに、このメッセージには強い影響力がある。ポンペオ氏は、世界が中国との関係で新たな時代に入っていることを強調した」

     

    (5)「オバマ政権下でも、中国の敵対的行動に対する反発は一部で見られたが、トランプ政権になってからはさらに反発が強まり、それは超党派的な動きになった。中国への反撃は今や米国の政策であり、11月の米大統領選挙で誰が当選しても継続するとみられる。イスラエルの主な関心事は依然としてイランなど周辺地域の状況だが、世界にとっての新たな重大戦略課題を無視することはできない」


    イスラエルのネタニヤフ首相は、以上のような状況をポンペオ米国務長官から聞かされたとすれば、中国警戒に転じるのは当然のことだ。これで、中国の「イスラエル攻略」計画は、封じられることになろう。こうなると、中国は再び日本へ「ニーハオ」とにこやかに笑ってくるに違いない。

     

    日本では、6月7日から海外資本がトヨタやソフトバンクなど日本の主要上場企業の株式を1%以上取得するには日本政府の事前審査を受けなければいけない、という法改正に踏み切っている。財務省は最近、こうした事前審査対象企業518社を選定した。事前審査基準を出資比率10%から1%に大幅に強化した改正外為法(外国為替及び外国貿易法)が、昨年9月成立によるものだ。日本政府は、中国への技術漏洩防止体制を強化している。


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    中国は、まんまと米国の標的ゾーンへ自ら入り込んできた。香港への国家安全法適用が、28日の全人代で可決されたからだ。米国は、香港との一国二制度が廃止されたと解釈しており、中国へ制裁を発動することが決定的になった。

     

    米国は昨年11月、香港人権・民主主義法を成立させた。中国による香港への国家安全法適用は、まさに香港人権・民主主義法に抵触するものだ。米国が、香港に与えた特恵(関税など)を廃止するに値する中国の行為である。中国は、これによって大きな損害を被る。同時に、米国企業にも類は及ぶ。米国は、それを覚悟で中国に一太刀浴びせるのだ。

     

    『ロイター』(5月28日付)は、「米中全面対決『火の粉』を浴びる香港の不運」と題するコラムを掲載した。

     

    米国は中国に、新型コロナウイルス感染のパンデミック(大流行)を引き起こした代償を支払わせる新たな手段を見つけ出した。香港に狙いを付けることだ。

     

    (1)「ポンペオ米国務長官は27日、香港にもはや高度な自治はないと宣言した。これにより、米国が香港を中国本土と区別し、貿易や旅行に関して与えてきた特別待遇が打ち切られる可能性がある。ポンペオ氏の主張はおおむね正しい。中国は香港への政治統制を強化する目的で国家安全法制の導入を提案しており、米議会の与野党双方が反発しているのだ」

     

    香港への国家安全法適用は、香港の自由と民主主義を制約するものだ。香港人権・民主主義法によって、米国務長官の権限で行動を開始できる。米国が、香港へ与えた特恵廃止が政策のテーブルに乗った。米国は、パンダミックへの怒りも手伝い、中国へ打撃を与える一撃を撃ち込むであろう。

     

    (2)「優遇措置がなくなれば、当然香港が真っ先に、そして最も大きな痛手を受ける。香港に展開する米企業は1300社で、米国とのモノ・サービスの貿易額は年間700億ドルに達するだけでなく、トランプ政権が中国に対して発動した関税の適用も受けていない。香港は中国本土が輸入できないような先端技術も利用可能だし、米政府のビザ発給基準は香港市民の方が本土より緩やかだ」

     

    米国と香港のモノ・サービスの貿易額は、年間700億ドルに達する。これは、特恵があってのことである。特恵廃止になれば、この年間貿易額は減少する。中国は、香港を出島として利用してきたから、大きな打撃を受ける。

     

    (3)「確かに香港は中国に接した、ちっぽけな領土だ。しかし中国は別のリスクとも向き合っている。27日には数千人の香港市民が国家安全法制への抗議のため街頭に繰り出し、数百人が拘束された。そこに米国の優遇措置廃止に伴う経済的打撃が加われば、市民をさらに刺激しかねない。今のところ中国側は天安門事件当時のような強硬手段行使を控えているとはいえ、騒乱がさらにエスカレートすれば、中国政府がどこまで我慢できるか分からない」

     

    中国共産党による台湾への強硬策は、本土の内部矛楯を隠蔽するための措置である。だが、香港の騒乱は、本土の不満へ火を付けることにならないか。中国は、大量の失業者を抱えており、香港での強硬策が凶と出るか吉と出るかは分からない。

     

    (4)「トランプ大統領はこれまで、香港の民主主義が危機的状況を迎えていても、それほど強い対応を取らず、香港での人権侵害に関与した当局者に制裁を科す権限を得ているにもかかわらず実行していない。優先してきたのは中国との貿易協議の合意だった。ただ11月の大統領選を前に、政治的計算が変わったのかもしれない。新型コロナで4月の米失業率は15%近くに跳ね上がった。そしてトランプ氏は今、中国が適切な感染対策を講じなかったとして責任を追及している」

     

    トランプ氏は、今秋の米大統領選を控えて、中国へ強硬策に出ざるを得ない事情がある。米中双方が、それぞれの事情を抱えて、激突するであろう。中国の受けるダメージがはるかに大きいはずだ。

     


    (5)「こうしたトランプ氏の態度が、米中対立の新たな局面を生み出している。香港への幾つかの優遇措置を撤廃するとともに、中国の政府当局者や企業を対象とする制裁措置が検討されつつある。一方トランプ氏は、自身の対中強硬姿勢を再選戦略の一部に組み込んだ。野党・民主党の候補指名を獲得しそうなバイデン前副大統領を中国に弱腰だと批判するようになった。米中が政治的にぶつかり合って火花を散らす中で、香港は不運にもその火の粉を浴びてしまう恐れがある」

     

    香港では、市民の台湾移住が積極化する。台湾側は、蔡総統の演説によって「受入れ」を表明した。香港民主化派と台湾民進党(与党)との連携強化が行なわれる見通しが強まっている。

     

    香港では、中国当局が国家安全法により、香港にある資産を追跡し、差し押さえるとの懸念が広まる。これを受け中国富裕層は、香港から他国へ資産移転に動く可能性が取沙汰されている。香港市場に投資されている資産は、約1兆ドルを超えるという。このうち、半分以上は本土の個人投資家が持つ資金と見られる。この多額資金が香港から流出すれば、香港資本市場は大打撃だ。5000億ドル以上の中国富裕層資金が香港から流出すれば、香港資本市場の縮小は必至であろう。香港は、国際金融都市としての地位が低下する。


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