勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年06月

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    中国は、新型コロナウイルス発症地を曖昧にする戦術を取っている。WHO(世界保健機関)まで抱き込み、上手く進んでいるように見えたが、「上手の手から水が漏る」という大失態を演じた。英国のジョンソン首相がコロナに感染して入院中、中国寄りの考えが変わってしまったのだ。それまで、ファーウェイ製の次世代通信網「5G」導入に傾いていたのが、考え直したというもの。それだけでない。G7参加国に加えて、豪州・韓国・印度の10ヶ国連合「D10」構想を固め、米国へ提案しているという。

     

    『ロイター』(5月29日付)は、「英国、5G機器供給で中国依存回避へ国際連合形成目指すー現地紙」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「英国は、次世代通信規格「5G」や他のテクノロジー関連機器の供給で、中国依存を回避するため、民主主義の10カ国から成る連合の形成を目指している。英紙タイムズが報じた。主要7カ国(G7)にオーストラリア、韓国、インドを加えた10カ国連合「D10」について英国政府が米政府に打診したという。英紙デーリー・テレグラフは先週、ジョンソン首相が5Gの通信網構築で、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の参入余地を制限する方針だと伝えていた」

     

    「血は水よりも濃し」と言うが、西側諸国は意見の対立はあっても一旦緩急あれば、結束して行動するのが民主主義国である。「5G」で、ファーウェイ製を割安価格に引っ張られて導入すれば後々、5Gに仕組んである「バックドア」で国家破滅の危機を招きかねない、という潜在的な危機に気付いたのであろう。本欄は、最も早い時点でファーウェイ製5Gの危険性を取り挙げてきた。豪州や米国のメディアが、その危険性を指摘していたからだ。

     

    その点で、ヨーロッパは悠長に構えていた。ファーウェイ製5Gが、まさかそんな悪だくみをしないだろう、という性善説に立っていたのだ。だが、今回の新型コロナウイルスと中国の態度を見て、「こういう国であればやりかねない」という潜在的な危険性に気付かされたのである。中国にとっては、「千載一遇のチャンス」を失った形である。

     


    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月5日付)は、「
    英国でもファーウェイ排除の動き、米国の規制強化受け」と題する記事を掲載した。

     

    米国が中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に対する規制を強化したことを受け、英当局は国内通信事業者によるファーウェイ製品の使用を見直す動きを見せている。事情に詳しい関係者が明らかにした。反ファーウェイ姿勢を強める米国にとって追い風になるとみられる。

     

    (2)「ファーウェイは、携帯電話基地局向け機器と関連インフラで世界最大手。関係者によると、英国の安全保障当局者は早ければ6月末に携帯通信事業者に対し、今後の通信網整備計画からファーウェイ製品の使用を減らすか、全面的に排除するよう勧告することを検討している。そうした勧告は、法制化されない限り法的拘束力を伴わないとみられるが、それはファーウェイに対する見方を英国が大きく転換したことを示唆している可能性がある」

     

    下線部分のように英国の安全保障当局が、今後の通信網整備計画からファーウェイ製品の使用を減らすか、全面的排除を勧告するという。中国警戒が、現実になっている。

     

    (3)「わずか数カ月前には、ボリス・ジョンソン首相率いる政権は、米国の圧力にもかかわらず、国内通信事業者に第5世代移動通信システム(5G)網向けの部品をファーウェイから調達することを認めていた。米国はこれまで、英独など欧州の同盟国に対しファーウェイ製品の排除を働きかけていたものの、思うように支持を得られていなかった。英国の方針転換は米国にとって強い追い風になる可能性がある」

     

    英国が、「脱ファーウェイ」に舵を切ったことになる。こうなると、雪崩を起こすようにファーウェイ製品を拒否する動きが速まるであろう。

     

    『大紀元』(6月5日付)は、「カナダの通信事業大手もファーウェイを排除、専門家『米国の制裁が奏功』」と題する記事を掲載した。

     

    (4)「カナダの通信大手・テラスとBCEが、5Gネットワークの構築から中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)を排除することを決めた。BCEは62日、同社の5Gネットワーク構築においてエリクソンと提携すると発表し、テラスもその数時間後に同様の発表をし、エリクソンとノキアと提携することを明らかにした」

     

    カナダの通信大手・テラスとBCEが、5Gでファーウェイとでなく、北欧のエリクソンとノキアと提携することになった。エリクソンとノキアは、世界一流企業だが、ファーウェイの安値攻勢でシェアを落としてきた経緯がある。技術的には、なんら問題のない企業だ。米国は、この二社とサムスンを推奨している。

     

    (5)「マクドナルド・ローリエ研究所の外交政策担当シニアフェローであるシュヴァロイ・マジャンダー氏は、「ファーウェイは、自身が民間企業だということ、信頼できるパートナーだということを証明できませんでした」と話す。最近の調査によると、5Gネットワークの構築にファーウェイの採用を認めるべきだと考えているカナダ人はわずか14%だった。カナダ政府は、同社の5Gインフラへの参入可否について、まだ決定していない」

     

    下線のように、ファーウェイは自らが中国政府と無関係であることと、バックドアのないことを証明できなかったのだろう。米豪が提供した秘密データを否定できなかったにちがいない。カナダ政府は、対中外交の手前、政府としての態度を決めていないが、民間先行で「脱ファーウェイ」が進んでいる。


     

     

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    韓国は、徴用工補償をめぐる日本の強力報復予告にたじろいでいる。GDP3位の日本が、同12位の韓国へ「最大限報復」を示唆しているだけに、韓国側の危機感は相当なものだ。

     

    先の韓国国会で廃案になった、議長提案の補償法案を潰した張本人は、尹美香(ユン・ミヒャン)氏と被害者遺族から名指しで非難されている。尹氏とは、元慰安婦支援団体の前代表(現国会議員)で、検察の捜査対象になっている「時の人」である。遺族側は、議長提案の受入れを表明していたのだ。

     

    『中央日報』(6月5日付)は、「遺族、強制徴用の文喜相案『尹美香が反対して白紙に追い込んだ』」と題する記事を掲載した。

     

    日帝強制動員被害者の遺族が4日、「強制徴用解決のための文喜相(ムン・ヒサン)案を尹美香(ユン・ミヒャン)氏が反対して白紙に追い込んだ」として与党「共に民主党」所属の尹美香(ユン・ミヒャン)議員の辞任を求めた。

    (1)「日帝強制動員犠牲者遺族協同組合のイ・ジュソン理事長はこの日、国会疎通館で開かれた記者会見で「文喜相案が通過して韓日関係が(うまく)いけば自分たちの金儲けの手段がなくなるから尹美香がそれを一番先頭に立って反対した。慰安婦おばあさんに(日本が出した和解・癒やし財団の支援金)1億ウォン(現レートで約897万円)を受け取らないよう言ったのと相通じる脈絡」と主張した」

     

    「文喜相案」を潰したのは、日韓慰安婦合意を破棄させた尹美香氏であると告発された。尹氏は、金銭問題で検察の捜査対象になっている。韓国の報道では、慰安婦問題を解決させず長引かせれば、寄付金集めで利益になるという意図が濃厚であったと指摘されている。こういう疑惑を抱える人物が、徴用工補償案にまで首を突っ込んで来たところに、韓国市民団体の政治屋的一面を見せている。



    (2)「文喜相元国会議長は昨年末、韓日企業と両国国民の基金で記憶人権財団を設立して両国政府は直間接的に関与する「2プラス2+α」方案で徴用被害補償問題を解決しようと提案した。当時、日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯理事長だった尹氏は「とても恥ずかしい案」と批判した」


    (3)「日帝被害者補償連合のキム・インソン会長は、「尹美香らは国会議長室に訪ねて行って、この法が日本に免罪符を与えるものだとして法案通過を邪魔した。尹美香が文喜相法と何の関連があるか」とし「尹美香を直ちに国会から追放し、政府と国会は文喜相法を再発議してわれわれ祖先の生命と血の汗のお金を返してほしい」と要求した。
    これに先立ち文元議長は、先月中央日報のインタビューで「(文喜相案を)切実に望む人々は数万人になるが、市民団体代表や訴訟を引き受けた弁護士だけ反対している」と話した」

     

    尹氏が、国会議長提案の法案すら潰すとは驚く政治力と言うほかない。元慰安婦支援団体は、反日の急先鋒として韓国社会を動かす力を持っていることを証明している。完全な既得権益集団と化していることに驚くのだ。

     

    『ハンギョレ新聞』(6月5日付)は、「日本企業の韓国内資産の強制売却急ピッチで進む、韓日、再激突の危機」と題する記事を掲載した。

     

    韓国政府が日本の輸出規制措置に対し、世界貿易機関(WTO)への提訴手続きを再開したのに続き、裁判所が強制動員被害者の賠償判決を履行しない日本企業の国内資産に対する強制売却の手続きを公式化したことで、韓日の対立が再び激化する見通しだ。日本政府は、現金化措置が行われれば、対抗措置を取ると反発している。

     

    (4)「強制売却の手続きに入る現金化の対象は日本製鉄が20081月、ポスコと提携して設立した製鉄副産物リサイクル会社「PNR」の株式81075(額面価格5000ウォン基準、4537万ウォン)だ。これに先立ち、昨年1月、裁判所は新日鉄住金が日帝強制動員の被害者らに対する賠償判決を履行しなかったことを受け、これらの資産に対する差し押さえ申請を承認した」

     

    韓国が、差し押さえている株式は、額面で4億537万ウォン(約3644万円)である。この1億円にも満たない金額で、日韓が激突するとは考えられない事態だ。韓国は、完全に反日で始めた「嫌がらせ」が、ここまで問題を大きくして途方に暮れているのだろう。文政権支持の『ハンギョレ新聞』が、感情を交えずに報道しているのは、韓国政府の困惑ぶりを示している。

     


    (5)「日本政府は、実際に現金化措置が行われた場合は、対抗措置も辞さない方針を示唆した。菅義偉官房長官は4日、「韓国の司法手続きは明白な国際法違反」だとし、「日本企業の正当な経済活動の保護の観点から、あらゆる選択肢を視野に入れて引き続き毅然と対応していきたい」と述べた。日本製鉄側も「(強制動員の)問題は国家間で正式に合意された日韓請求権協定によって『完全かつ最終的に解決された』と理解している」とし、日本政府の対応と歩調を合わせる意向を明らかにした」

     

    日本側は、韓国大法院判決が国際法違反と主張している。韓国メディアも、この事実に気づき始めているので、「絶叫型報道」が消えている背景だろう。すべての責任は、韓国政府にある。それを逃れて、日本へ責任転嫁しているのが現状だ。

     

    (6)「問題は韓日関係が冷え込んだ中、強制動員問題がさらなる経済・安保対立に広がりかねないという点にある。聖公会大学のヤン・ギホ教授(日本学)は「公示送達の時点と日本の輸出規制に対する世界貿易機関(WTO)への提訴再開がほぼ同時に行われている」とし、「日本は(現金化措置が)国際法違反だと見ており、引き下がるわけにはいかないないだろうし、日本が報復措置を取れば、我々も対抗措置が取らざるを得ず、このままでは衝突が再燃しかねない」と述べた」

     

    下線部分に、韓国が困惑している姿を読み取れる。文大統領の優柔不断さが招いた問題である。韓国側が差押物件を現金化したら、日韓関係は収拾がつかなくなるだろう。


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    日韓基本条約で解決済みの旧徴用工賠償問題は、韓国大法院(最高裁)による日本企業への賠償命令の執行が大詰めを迎える。韓国・大邱地裁浦項支部が、韓国にある日本製鉄の資産差し押さえの公示送達を決めたからだ。送達の効力は8月4日に発生する。法的にはこれ以降、いつでも差押え物件の現金化が可能になる。韓国大法院は、新日鉄住金(現日本製鉄)に対し、強制徴用被害者1人あたり1億ウォン(約900万円)の賠償を命じている。

     

    これが実行されれば、国際法上で日本の報復が認められているから、日本は思い切った対抗策が可能になる。日韓関係はこれにより事実上、破綻の危険性を秘めるという「大博打」になる恐れが強い。国際法上は、韓国が日本企業に賠償金を科すことを認めていない。それだけに、両国関係に多大な影響をもたらすことになろう。

     

    『中央日報』(6月4日付)は、「報復措置を示唆した日本の菅官房長官『日本企業保護のため、あらゆる選択肢を検討』」と題する記事を掲載した。

     

    日本の菅義偉官房長官は4日、大邱(テグ)地方裁判所浦項(ポハン)支部が1日、日本製鉄に資産差し押さえ書類の公示送達を決定したことについて「差し押さえられた日本企業の資産の現金化は深刻な状況を招くだけ避けなければならない」と述べた。

     

    (1)「菅長官は同日午前の定例会見で「旧朝鮮半島出身労働者問題に関わる韓国大法院(最高裁)判決と(日本企業の資産差し押さえと現金化などに)関する司法手続きは明白な国際法違反」と述べた。続けて「3日の日韓外相電話会談などで、このような立場を繰り返し指摘しており、早期に解決策を示すよう韓国に強く求めていくという立場に変わりない」と述べた。「公送達が日本企業に対して効力が及ぶと考えるか」という質問には「韓国の国内制度について説明する立場にはない」としつつも「日本企業の正当な経済活動の保護の観点からもあらゆる選択肢を視野に入れて、引き続き毅然と対応していきたい」と述べた」

     

    日本の最高裁では、徴用工補償は日韓基本条約で解決済みという判決である。韓国大法院は、文政権の意向に合せ国際法違反の判決を出したと見られる。日本が、絶対に応じないという理由はここにある。

     


    (2)「菅長官の「あらゆる選択肢を視野に入れる」という発言は、現金化が実際に行われた場合、これまで準備してきた報復措置を取る可能性を示唆したものと解釈される。これについて日本の安倍政権と近しい産経新聞が最近、「現金化に至った場合、日本政府は韓国側の資産差し押さえや輸入関税の引き上げなど二桁に上る対抗措置を検討している」とし「どの措置を発動するかは安倍晋三首相が文在寅(ムン・ジェイン)政権の対応や日本経済への影響を見極めた上で決断するとみられる」と報じた」

     

    韓国が、国際法違反の判決を出し、それを執行したとなれば、日本はこの国際法違反に対して、二度と起こらないように徹底した報復を取らなければ、日本国民の怒りを収められないだろう。これまでの反日行動に対する報復を含めて、安倍政権は断固、報復をするべしと言う意見が強まるだろう。

     

    下線部分は、産経新聞に報道という。それによると、次のような報復案が用意されている。

    1)輸入関税引き上げ

    2)二桁に上がる報復措置

     

    輸入関税は、韓国産食品か。二桁に上がる報復措置は、次のパラグラフにあるように、日本にある韓国企業の資産差押えである。ともかく、国際法上で報復が認められているのだから、遠慮することはない。韓国への教育効果を含めて強い措置を取るべし、とする意見が多数を占めるであろう。

     

    こういうことが分かりながら、文政権は「司法による執行だから」と第三者を装っているのだろうか。大混乱が予想される以上、韓国が回避する策を立てるべきだ。何もしないでいるとすれば、政治として失格である。

     

    (3)「産経新聞の「韓国側の資産差し押さえ」とは、日本企業の資産差し押さえに対する報復として日本政府が韓国企業の日本国内の資産を押収する案だ。これを含め、少なくとも10個以上の報復カードを日本政府が検討しているというのが同紙の報道だ。定例会見で菅長官は「これまで日本政府は韓国法院が送った現金化関連文書を日本企業に伝達しなかったのはなぜか」という質問に対し「日本政府の対応の一つ一つについて明らかにしない」と発言を避けた。一方、NHKなど日本メディアは4日、「韓国の裁判所はことし8月以降、差し押さえた資産の売却命令を実際に出すかどうか検討に入るとみられる」とし「日本政府は資産の現金化が両国関係に深刻な影響を与えるとし、回避するように強く求めていく方針」と伝えた」

    8月4日の公示送達決定後、すぐに現金化はできないという。債務者の尋問、尋問書送達、売却命令などの手続きがあるためだ。抗告、再抗告などが行われれば、現金化までは多少時間がかかる可能性もある。『聯合ニュース』(6月4日付)は、次のように報じた。
     

    (4)「一部からは、裁判所が韓日関係を破局に追いやる懸念がある現金化命令を出すことに相当な負担を感じるとの指摘も出ている。このため、現金化は早くても年末に可能になるとの見方もある。日本外務省幹部はNHKに「日本企業の資産を現金化したら、大変なことになることは、韓国側も理解していると思う」とし、「今後も外交当局間の緊密に意思疎通を図っていきたい」と述べた」

     

    韓国は、現金化したら日本のいかなる報復を受けても苦情を言えぬ立場である。こう見ると、最終的な被害者は韓国になる。


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    米国トランプ大統領は、中国による「香港国家安全法適用」に抗議して、香港に与えた特恵を廃止すると宣言した。その後、米国は香港を撤退するべく総領事館宿舎を売却したことが判明。総領事館業務の縮小を示唆するものだ。

     

    中国は、米国の対中警告を軽く見て最近、ドカンと一撃を食う事態に見舞われ、目を覚まさせられた。トランプ政権は3日、中国が米航空会社の運航再開を許可する日程を明確にせず、引き延ばしていた。米国は、米中航空協定に違反したとの理由で、中国航空会社の米国への旅客便運航を16日から禁止すると発表したもの。これに驚いたのが中国である。4日、外国航空会社の中国本土への運航拡大を認めると表明したのだ。

     

    中国民用航空局(CAAC)は声明で現在、中国本土への運航を禁じられている適格な外国航空会社が1都市選び、6月8日から週1回運航することを認めると表明した。CAACが3月下旬に出した通達で、中国航空会社の国際旅客便は1カ国につき1路線、週1回の運航に制限するよう求めるとともに、内外の航空会社の運航は3月12日時点の運航便数を限度とした。米国の航空会社は、3月12日までに中国便を全面運休していたため、運航を再開できないでいたのである。

     

    中国は、米国が3月12日に中国便を全面運休にした報復で、3月下旬に出した通達の対象でないという「意地悪」をしたもの。それが、米国の強力な反撃で降参した形だ。6月8日から週1回運航することを認めると表明した。米国の「急襲」に妥協を迫られた訳である。

     

    このように、米国が中国へ躊躇なく「一撃」を加えるところから、香港の米国資産売却の意味するところを見誤ってはなるまい。

     

    『大紀元』(6月4日付)は、「米政府、香港での不動産を売却へ、資金引き上げの見方も」と題する記事を掲載した。

     

    米政府が香港の高級地区にある不動産を売却する動きを見せている。トランプ政権は5月29日、香港市民の抗議活動を禁止する「国家安全法」の導入を決定した中国当局への制裁置として、「一国二制度」を前提とした香港への特別優遇措置を停止すると発表した。今後、香港からの米国資金の引き上げが拡大するとの見方がある。

     

    (1)「ブルームバーグは530日、米国務省の担当者が電子メールの中で、米政府が香港にある不動産を売却していると明かした、と報じた。同担当者は、「国務省資産管理局は、グローバルな再投資プログラムの一環として、米政府は保有している海外不資産を定期的に見直している」とした。また、「米総領事館のオフィスビルを含む香港にある米政府所有の資産の強化のため投資する」という。香港メディア『香港01』が最初に売却を報道した。これによると、同不動産は、香港島南区寿山村道にある6階建てのビルで、米政府は1948年以降所有している。米総領事館の職員寮として使われている。不動産価値は100億香港ドル(約1390億円)だという」

     

    米国が、香港の米総領事館の職員寮を売却したことは、人員の縮小=業務縮小を意味する。この意味を軽視してはいけない。米国の香港に対する評価が、それだけ下がることである。

     

    (2)「香港実業家で、香港科苑電子と香港国葉控股有限集団の創業者である袁弓夷氏は5月30日、大紀元の取材に対して、「米政府は今後、香港からの資金引き揚げを拡大し、米国民の帰国を促していくだろう」との見方を示した。香港と米国の政治・経済界に太いパイプを持つ同氏は、米政府と米企業の香港での投資規模が2兆~3兆ドル(約215~323兆円)にのぼると推測する」

     

    米国と太いパイプを持つ香港実業家によれば、「米政府は今後、香港からの資金引き揚げを拡大し、米国民の帰国を促していくだろう」と見ている。米政府と米企業の香港での投資規模が2兆~3兆ドルとされる。中国に与える影響は大きくなるはずだ。

     


    (3)「トランプ米大統領は5月29日、ホワイトハウスで中国政策について会見を開いた際、香港への特別優遇措置廃止を発表したほか、中国当局の支配下にある世界保健機関(WHO)からの脱退や、香港の自治を損なう動きに関与する中国や香港の当局者に制裁を課す方針などを示した。袁氏は、トランプ政権の対抗措置は、「中国共産党政権を瓦解させていく決心の現れだ」との見解を示した

     

    前記の香港実業家は、米国の中国への対抗措置が、中国共産党瓦解への強い決心の現れて見ているという。この見解は、貴重である。香港が金融的に中国経済の動脈になっているからだ。この事実は、ほとんどの人に知られていない点である。米国の前香港総領事すら、米国が損すると言うほどだ。米国は、金融面で香港を潰し中国に波及させ、中国の息の根を止めるだろう。


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    韓国は、米国トランプ大統領の「G11案」に色めき立ち、正式メンバーになれる夢を持った。だが、EUによって参加国はG7メンバーの承認が必要との発言で、すっかり意気消沈している。これで、日本と同格になって肩を並べられるという夢が消えた。

     

    韓国大統領府は、トランプ氏の発言を額面通りに受け取って、韓国がG11メンバーになると自信を持って対外広報してしまい、今さら引っ込みがつかない形だ。大統領府が、こうした国際慣例に疎かったのは、文政権成立と共に大統領府へ入り込んだ「素人集団」の勇み足と言えよう。日韓外交が混乱している背景には、この「素人外交」が大きな災いをなしている。

     

    『中央日報』(6月4日付)は、「トランプ大統領一人だけの考え、韓国は弄ばれた格好」と題するコラムを掲載した。筆者は、ペ・ミョンボク/中央日報コラムニストである。

     

    G7は経済力がある西欧民主主義先進国のプライベートクラブのように運営された。選ばれた少数の排他性が、G7の握るプレステージの源泉だ。全体メンバーの同意なしには新規メンバーを受け入れにくい構造だ。

    今年のG7議長国である米国のトランプ大統領が文在寅(ムン・ジェイン)大統領を今年秋に米国で開催されるG7首脳会議に招待した。電話で自ら招待の意向を伝え、文大統領は中国のため慎重な態度を見せるはずという予想とは違って快く受諾した。その2日前にトランプ大統領は「時代に遅れたG7では現在の国際情勢を反映しがたい」とし、韓国・インド・オーストラリア・ロシアを招待対象に挙げた。文大統領との電話でも同じ話をし、追加でブラジルに言及したりもした。

    (1)「電話会談の翌日、青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)はG7の拡大と韓国の参加を既成事実化した。トランプ大統領が韓国をG7首脳会議に招待したのは、「一時的オブザーバーの資格ではなくG11またはG12という新しい国際体制の正式メンバー資格」とし「これは韓国が世界の秩序を率いるリーダー国の一つになるという意味」と説明した。G20からさらに一歩進んでG7に上がれば「国格の上昇と国益にプラスになる」という言葉を付け加えた」

     

    韓国大統領府の喜びはひとしおだった。「国格の上昇」とまで発言したのだ。ところが、EUから「ノー」の発言が飛び出したのである。




    (2)「一日も経たないうちから青瓦台が性急に反応した点が表れている。すぐに欧州側から反発が出てきた。欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表は「構成員を変え、永久的に構成方式を変更するのは、G7議長国の特権でない」と強調した。議長国の資格でゲストを招待することはできるが、メンバー拡大は米国が思いのままにできるものではないということだ。ボレル上級代表の言葉はフランス・ドイツ・イタリアなどG7内のEU加盟国の意見を代弁したものと見なければいけない」

     

    EUの外務・安全保障政策上級代表の発言は、フランス・ドイツ・イタリアのG7参加国の意見を代表しているはず。これら3ヶ国が、メンバー国増加に「不賛成」の意思を明らかにしたのだろう。韓国の参加の夢は絶たれた。

    (3)「新規メンバーは、自国の地位が最高先進国グループのG7水準に上がると見るだろうが、従来のメンバーは新しく入ってくる国々のレベルに自分たちの地位が落ちると見るだろう。新型コロナ事態でG7国家の地位は大きな打撃を受けた。一方、韓国は防疫成功の模範事例と評価され、地位が上がった。とはいえ韓国を自分たちと同級と見ることにはならないというのがG7メンバーの内心だろう」

    ここでは、G7の言うに言われない胸の内を語っている。韓国を入れるのには不賛成なのだ。G7のメンバーにふさわしくない、という評価なのだろう。

     


    (4)「日本はなおさらだ。アジアで唯一持つG7メンバーシップに対する日本人の自負心は相当だ。東洋で初めて近代化を成し遂げて「脱亜入欧」に成功した日本に対する西洋人の礼遇で日本はG7地位を受けている。植民地だった韓国が、自分たちと同等なレベルに上るのは日本としては耐えられないだろう。一回きりのオブザーバーで参加するのならまだしも、正式メンバーの地位なんて話にならないという激高した反応がオンラインにあふれている」

     

    日本は、反日を国是にするような韓国と、席を同じにすることに、プライドが許さないということだろう。

     

    (5)「新型コロナのパンデミックを経て韓国の国際的地位は変わった。ようやく先進国隊列にのぼったという国民的な自負心も強まった。このような時に名実共に最高の先進国クラブ入りを意味するG7首脳会議への招待は、断るのが難しい提案だっただろう。しかし、まだだ。英国やフランス水準の国内総生産(GDP)規模から、(まず)備えるのが正しい。いま入ればトランプ大統領の配慮(?)による「定員外入学」として後ろ指を差されるおそれがある」

    韓国のGDPは昨年、世界12位へと2ランク落ちている。ここでは、GDPが英国やフランスの規模に昇格することが先決、と指摘している。韓国のGDP規模は、今後さらに下がるはずだ。世界10位が、過去の最高位である。

     

    (6)「トランプ大統領の甘い提案を直ちに受け入れる前に、韓国はG7メンバーの共感から確認すべきだった。それが外交実務者の役割だ。トランプ大統領の話だけを信じて「キムチの汁から飲む(=捕らぬ狸の皮算用)」格好になる可能性が現在のところ高いようだ。コロナ防疫の成功に陶酔し、この機会に最高先進国クラブまで進入したいという欲がもたらした外交の恥にならないか心配だ。参謀が反対してもトランプ大統領が強行して実現した米朝首脳会談の記憶が依然として強烈に残っているのかもしれない」

    韓国は、隣国の日本と対立することが、国威発揚と誤解している。歴史問題を持ち出して、過去の日韓交流史をメチャクチャにしている愚を悟るべきである。国内政治ではそれがプラスになるとしても、外交的に言えば大失敗である。

     

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