勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年06月

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    中国は、自らが発症地となった新型コロナウイルスによる都市封鎖によって、経済基盤は大きな痛手を受けている。先進国は、一斉に財政支出を拡大し救済に乗出している。中国には、もはやその力が尽きたのか、2005年に禁止したはずの露店を奨励し、雇用対策の柱にし始めている。李首相までがこれを奨励する事態だ。中国経済の基盤は、これほどまでに脆弱そのものだ。

     

    習氏は48日、中国共産党の最高指導部の会議で「我々は複雑で厳しい国際的な感染状況と世界経済の情勢に直面しており『底線思考』を堅持しなければならない」と訴えた。「底線思考」とは、最悪の事態も想定して行動するとの意味である。『日本経済新聞』(6月1日付)がこう報じるように、中国経済は「最悪事態」へ嵌り込んだ。すべて、習氏の独裁体制がもたらした危機である。

     

    『大紀元』(6月1日付)は、「中国、取り締まる対象の『露店』を奨励へ 景気回復の対策に」と題する記事を掲載した。

     

    中国当局が5月下旬、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)と全国人民政治協商会議の閉幕後、景気回復対策として、「地攤(ディータン、露店)経済」を推し進めている。当局は2005年以降、都市景観を悪化させているなどとして、各地の「城市管理行政執法局(城管)」を通じて、露天商への取り締まりを強化してきた。当局の政策転換について、中国ネット上では、もてあそばれたとの声が上がった。

     

    (1)「中国の李克強首相は5月28日、全人代閉幕後の記者会見で、月収1000元(約1万5000円)の中国国民は6億人いると発言した。また、「1000元では、中規模の都市で部屋を借りるのも難しい」と話した。李首相は「雇用の安定、国民生活を守ること」が政府の最も重要な任務だと強調し、四川省成都市政府が雇用のために「露店経済」を導入したことを称賛した。中国当局は1980年代初期、文化大革命で壊滅的な打撃を受けた経済を立て直すために、露店や屋台などの路上の経済活動を奨励していた

     

    「朝令暮改」と言うが、「露店経済」もその類いだ。2005年、都市の美観を損ねるとして、強引に露店を禁止した。それから15年、今度はその露店を奨励するという。2005年と言えば、中国経済がGDP世界2位に向けて大車輪の急成長を遂げていた時期である。最早、露店に依存せずとも雇用を確保できるという強気の姿勢であった。それが現在は、露店を奨励しない限り失業者を減らせない。そういう切羽詰まった環境に追い込まれている。習近平氏の完全な敗北である。1980年代の文化大革命時、経済の大混乱を乗り切る手段として露店経営が奨励された。現在は、その二の舞いを演じているのだ。

     

    (2)「新型コロナウイルスのまん延に伴い、国内での経済活動停止や消費低迷、海外からの受注激減などで、中国経済は大打撃を受けた。今年3月、成都市の都市管理当局、城市管理委員会は新たな規定を公表し、市民が繁華街で露店や屋台を経営することや、商店が道端に臨時の出店を置くことを許可した。これ以降、上海市、甘粛省、浙江省など各地の地方政府も同様の政策を打ち出した

     

    成都市で、この3月から始まった露店奨励は現在、上海市、甘粛省、浙江省など各地に広がっている。華やかな都市の上海の路地裏では、この露店が軒を連ねて呼び込みをやっているのだろうか。

     

    (3)「5月27日、中国共産党中央精神文明建設指導委員会は、今年の「文明都市」ランキング評価の基準に、「道端での露店や市場の開設、露天商による営業」の項目を設けないと発表した。李首相の発言を受けて、「露店経済」はSNSやメディアの注目ワードとなった。中国メディア・証券日報などは、相次いで評論記事を掲載し、露店経済は雇用の安定化に重要な役割を果たすと主張し、「露店は不衛生で無秩序だ」とする今までの論調を変えた」

     

    「文明都市」ランキング評価では、「露店のない」ことが基準に入っていた。それが、今ではこの露店項目を削除しているという。メディアの評論記事では、「露店経済は雇用の安定化に重要な役割を果たす」と主張する始末だ。中国経済が、1980年代の文化大革命時に匹敵する混乱状態であることを物語っている。

     


    (4)「一部の中国人ネットユーザーは、当局の政策転換について深刻な経済悪化を反映したと冷ややかな見方を示した。

    「露店を推進しているということは、景気がかなり悪いということだ」

    「中国経済に冬がやってきた。単に資金を供給するだけでは、もう問題を解決できないという状況だ」

    「私が子どもの時、(文化大革命の)四人組が失脚した後、中国は露店経済を発展させた。自分が中年の大人になった今、またも露店経済に出会うなんて」と、中国経済の現状は文化大革命が終わった後の状況に似ていると示唆した」

     

    (5)「中国当局が2005年に各地で屋台や露店への取り締まりを強めて以降、城管の職員と露天商の衝突や、職員らによる暴力事件が頻発した。ネットユーザーは、当局の政策に翻弄されていると不満の声を上げた。

    「景気が悪くなったから、(メディアは)毎日喜んで露店経済を報道して、政策をほめている。でも、城管が露天商に暴力をふるって、商品を無理やり没収した時、なぜ報道しなかったのか?」

    「露店や屋台を排除するとき、景観に悪いとか不衛生だとか批判していたのに、今は『(屋台から食べ物の)いい匂いがする』と称賛しているのはおかしい」

     

    SNSに現れた庶民の怒りと嘆きだ。習氏は、「中国の夢」を煽って8年、追放したはずの露店経済を奨励せざるを得なくなった。習氏の罪は重い。


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    世界経済の牽引車である米国経済に復活の兆しが出てきた。4月が景気の底という見方もあるほど。毎週発表される失業保険の新規申請件数は、4月上旬のピークから46%減った。米国は、防疫面と経済面のバランスを取っており、死亡者数がピークを打ってからすぐに経済再開に向けて動き出している。新規感染者数よりも、死亡者数の減少に焦点を合わせている。長くロックダウンを続けていると、経済困窮が原因で自殺者が増える面も無視できない。そこで、前記のような「バランス論」が登場したもの。

    あえて、米国のケースを取り上げるのは、日本の本格的なコロナ解禁が、6月1日から始まったからである。米国の「アフター・コロナ」を見れば、日本の推測もある程度可能になる。その意味で、この記事は、参考になるように思える。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(5月30日付)は、「米経済、息吹き返す兆し」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルスの感染拡大で米国の経済活動はほぼ停止したが、国民は正常化に向けて慎重に歩み始めている。交通量の増加やスーパーでのパニック買いの減少などはこうした兆しだ。

     

    (1)「ロックダウン(都市封鎖)が数カ月に及んだため、回復にはなお時間がかかる。だが(トランプ大統領が言うところの)「2カ月間のリセッション(景気後退)」の底は恐らく4月だったのではないかと、カナダのBMOファイナンシャル・グループのチーフエコノミスト、ダグラス・ポーター氏は指摘する。新型コロナの感染者数が依然増えている州もあるが、米国のほぼ全ての州で経済活動が再開した」

     

    景気の底は4月と見られる。回復スピードは遅い。100%回復は2022年頃というのが、カナダのBMOファイナンシャル・グループのチーフエコノミスト、ダグラス・ポーター氏の結論である。最後のパラグラフに記されている。

     

    (2)「位置情報から人の移動を推計する米ユナキャストによると、客足の戻りが最も大きいのは衣料品・アクセサリー店で、趣味・娯楽店が続いた5月に買い物客の増加幅が非常に大きかったのは、アラバマやミシシッピなどの南部の州やサウスダコタなど中西部の州だった。アラバマ州は夏の行楽シーズン到来を告げる5月25日の祝日「メモリアルデー」の3連休にビーチを訪れた人が1年前に比べて71%増え、恩恵を受けた。同じようにメキシコ湾に面しているルイジアナ州などでも客足が増加した」

     

    客足の戻りが最も大きいのは、衣料品・アクセサリー店で、趣味・娯楽店が続いている。ロックダウンによってショッピングの楽しみを奪われていた。それがまず、回復している。アラバマ州では、5月25日の祝日「メモリアルデー」の3連休に、ビーチを訪れた人が1年前に比べて71%も増えている。日本では、「3蜜」で非難されそうだが、米国はおうらかである。

     

    (3)「他人との接触が少ない仕事かどうかも、早期に活動を再開できるかの目安になる。セントルイス連銀が発表した接触度指数では、林業や証券取引業、製造業の一部カテゴリーなどが最も接触度が低い業種に入っていた。実際、長期にわたり閉鎖していたマンハッタンのニューヨーク証券取引所は5月26日に立会場を一部再開し、接触度の低い企業が多いテキサス州では、5月の製造業景況指数が依然マイナスではあるものの、前月比34%改善した

     

    他人との接触度の低いのは製造業である。テキサス州では、5月の製造業景況指数が依然マイナスではあるものの、前月比34%改善した。

     

    (4)「車を運転する人も増えている。米データ会社MS2によると、直近のトラック通行量は前年比5%減にとどまった。4月末時点では13%減だった。米フォーアイズのデータを見ると、5月第3週の全米各州の自動車販売台数は平均で前週比24%増えた。飛行機の航路の追跡サイト「フライトレーダー24」からは、週ごとの平均運航本数が最も少なかった4月中旬より50%以上増加したことがわかる」

     

    これを見ると、人々が「穴蔵」から出てきたことは疑いない。それが、大きなうねりになるかどうかである。これまでの予測では、コロナ感染と同じで、景気回復の第1波の後に落込み、第2波の回復後に落込むという動きが、第3波まであるというもの。ジグザグ模様を描くとしている。手放しの楽観はできないだろう。

     


    (5)「
    米連邦準備理事会(FRB)のエコノミストと米ハーバード大学の経済学者らがコロナ危機の当初にリアルタイムの経済活動を観測するために考案した指標「週間経済インデックス(WEI)」は低下が緩やかになり、ほぼ横ばいになっている。それでもなお、経済が回復するまでには時間がかかるだろう。4月時点の米国の失業者と潜在失業者の数は4300万人以上に上った。公式の失業率は14.%で、世界大恐慌以降で最悪となっている」

     

    現状は、L字型回復になっている。4月時点の失業者と潜在失業者の数は4300万人以上に上った。これだけの被害が出ている以上、V字型の早期回復はあり得ない話だ。

     

    (6)「規制が解除されたからといって、市民が通常の生活に戻っても安心だと感じるわけではない。移動データでは、政府が正式にロックダウンを導入するかなり前から多くの市民が自主隔離していたことが示されており、封鎖の解除後もこの傾向が続く可能性が高い。ポーター氏は「経済活動は今年か来年に100%回復するだろうか。それはないだろう」と話す」

     

    自主隔離している人たちが、完全に動き出さなければ米国経済は回復しない。米国の名目GDPに占める名目民間最終消費(個人消費)比率は、68.01%(2018年)である。米国は自律型経済とされるが、それでもこの遅いスピードの回復である。他国経済が、米国以上の早さで回復するとは考えにくい。


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    中国による香港への国家安全法適用が、国際金融都市・香港の地位に赤信号を灯らせた。米国が、これまで香港へ与えてきた特恵(関税・ビザなど)の廃止方針を打ち出したからだ。本欄は、香港に代わり東京が国際金融都市になる可能性を指摘してきた。現実に、東京が有力候補という報道が現れた。

     

    『朝鮮日報』(6月1日付)は、「1兆ドルの資金が香港脱出準備、シンガポール・東京が新たな金融ハブ狙う」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米国が香港に対する特別待遇の剥奪する方針を示したことで、1兆ドル規模のアジアの金融ハブの座を巡るアジア各国の競争が激しさを増すとみられる。米中対立の真っ只中にいる香港では最近、人材だけでなく、資本が大規模に離脱する「ヘクシット」の兆候が見られる。香港は1兆ドルもの投資資金が集まっている場所だ。英中央銀行のイングランド銀行によると、昨年6月の香港民主化デモ以降、6兆ウォンを超えるファンドマネーが香港から引き揚げられた。金融街からは「ヘクシットの地獄の門が開き始めた」との評価が聞かれる」

     

    香港が、ニューヨーク、ロンドンと並んで国際三大金融都市であるのは、「一国二制度」と米国による香港への特恵。それと、香港が中継貿易地点であることだ。香港の貿易額の対GDP比は300%を超えて世界一である。こういう条件によって、香港は国際金融都市の活躍が可能になった。今回の香港国家安全法適用は、米国による香港への特恵を奪い、香港に国際金融都市の座を不可能にさせる。

     

    (2)「1992年に米議会が「香港政策法」を制定した際、香港はアジアで自由経済が最も理想的に具現されている場所だった。同法を通じ、香港には米国の敏感な技術へのアプローチが認められ、米ドルと香港ドルの自由な交換など中国本土とは差別化された経済貿易特権が与えられた。その結果、世界の100大銀行のうち70行余りがアジアの拠点を香港に置くほど、世界的な金融ハブとしての競争力を備えるようになった」

     

    世界の100大銀行のうち70行余りが、アジアの拠点を香港に置いている。これは、世界2位のGDPとなった中国情報をいち早く得られるというメリットあってのことだ。それに、香港が中継貿易で世界一に伴う国際金融が活発であるという実需も背景にある。中国人民元取引は、香港のオフショア市場で自由に行えるというメリットもある。

     


    (3)「米国が香港に対する特別待遇の撤回に公式に言及し、中国が「国家安全法」という猿ぐつわまでかませたことで、香港の都市競争力は大幅に低下する可能性が高まった。3月に英国の世界的な金融コンサルティンググループ「Z/Yen」が世界108都市の金融競争力を算出して発表した「国際金融センター指数(GFCI)」で香港は6位にとどまり、昨年より3ランク後退した。香港より順位が低かった東京、上海、シンガポールが香港を抜き去った。世界的な信用格付け会社、ムーディーズは今年1月、香港の信用格付けを1段階Aa2Aa3引き下げた。香港に対する特別待遇が剥奪されれば、1ドル=7.757.85香港ドルに為替レートを固定するペッグ制が脅かされ、金融市場が不安になる可能性も指摘されている

     

    最新の「国際金融センター指数」で、東京はニューヨーク、ロンドンに次いで3位へ浮上しているようだ。香港が6位へ後退していることは、香港の民主化運動で金融業務が阻害されかねないという事情もあろう。香港にとっては、気の毒である。民主化運動は、当然の権利行使であるからだ。「一国二制度」の廃止は、香港の政情を一段と不安定にさせる。その意味でも、香港が国際金融都市の座を維持できる背景を失ってきた。

     

    香港ドルが、ペッグ制(固定相場)で米ドルに繋がっていたことは、中国人民元にメリットである。このつながりが切断されれば、最大の被害者は中国となろう。中国は、米国による香港への特恵廃止で報復すると虚勢を張っているが、「引かれ者の小唄」に過ぎない。

     

    (4)「法律、英語、税制など香港の持つあらゆる長所を兼ね備えたシンガポールは香港に代わる存在として浮上している。シンガポールの法人税は17%で香港(最高16.5%)とほぼ同じ水準だ。東京も積極的だ。昨年末に日本政府関係者が大挙香港を訪れ、投資会社に税金の減免などさまざまな優遇を提示した。東京はニューヨークに次ぐ世界2位の株式市場を持ち、世界3位の経済大国・日本の首都という地位を前面に掲げる」

     

    シンガポールの利点は、中継貿易が香港に次いで盛んなことである。法人税率も17%と定率である。東京は、都知事の小池氏が先頭に立っている。日本政府と連携して、香港に代わる国際金融都市に昇格できれば、日本経済の構造改革に大きく寄与する。さらなる国際化の進展である。雇用も増える。

     


    (5)「上海は、世界最大の市場中国に対するアクセスという点ではライバルを寄せ付けない。株式市場の時価総額もニューヨーク、東京に次ぐ3位だ。しかし、こうしたライバル都市が香港に取って代わるにはまだ力不足だとの意見も存在する。中国に対するアクセス、英語人材、資本市場の発達程度などで香港がまだ相対的優位にあるからだ」

     

    上海は、国際金融都市になる基本条件を欠いている。人民元取引に多くの制約がかかっているからだ。管理変動相場制、資本自由化が行なわれていない、情報管理で自由な通信が行えないなど。これでは、国際金融都市になれるはずがない。

     

     

     

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    事大主義をいまだ信奉

    米国の香港制裁で沈没

    中国を過大視する滑稽

    回復力鈍く長期停滞へ

     

    中国の全人代(国会)が、香港への国家安全法適用を採決した。この結果、韓国の受ける影響は大きなものが予測されている。それにも関わらず、韓国政府の反応はいたって鈍感だ。「影響は限定的」と静観の構えである。中国への気配りが、こういう国際感覚ゼロの姿勢を見せているに違いない。日本政府は、在日中国大使を呼んで「憂慮している」と懸念を伝えた。

     

    実態は、韓国政府の言うような「影響は限定的」ではない。中英共同宣言によって、香港に保証された「一国二制度」が形骸化されるからだ。「一国二制度」は50年間(2047年まで)、中国の法制度が香港に適用されず、自由と民主主義政治の継続が可能というものだった。米国は、これを前提にして香港へ中国に与えていない特恵を付与した。

     

    香港へ国家安全法が適用されれば、香港は中国と同じ「一国一制度」となる。米国トランプ大統領は、これを受けて香港に付与した特恵廃止の方針を発表した。詳細は後で触れるが、これにより香港の経済的地位は陥没する。香港への輸出比率の高い韓国は、大きな影響を受けるはずだ。それを「限定的」と嘯(うそぶ)くのは、経済的知識がないのか、外交的配慮で中国を刺激したくないという「事大主義」による妄言なのか。あるいは、その双方であろう。

     

    韓国は従来から、中国マターになると途端に慎重姿勢へ豹変する。日本への対応とは、180度異なるのだ。中国へものを言えない反射で、日本へは感情的な振る舞いをするのだろう。朝鮮李朝時代からのパターンである。事大主義の見本のような行動なのだ。日本は、それを見抜いているから、腹の中で笑っている。韓国は、本心で日本より上位と錯覚している。この錯誤に気付くのは遠くない先であろう。米中冷戦激化で、韓国の安全保障問題が深刻化すれば、自ずと米韓同盟の枠に復帰せざるを得なくなるからだ。

     


    事大主義をいまだ信奉

    韓国が、香港問題を経済と外交の両面で複眼的に捉えられないのは、米中冷戦の実態を見誤っているためであろう。それを証明する実例を取り上げたい。

     

    韓国国立外交院の金峻亨(キム・ジュンヒョン)院長は5月28日、「ポスト・コロナにおける国際政治の大激変の中で犠牲者にならないためには、米国などからの排他的選択に抵抗する避難先が必要だ」との考えを示した。ソウル大学経済学部の李根(イ・グン)教授は、ポスト・コロナにおいて「国際社会における米国のリーダーシップが、弱体化するだろう」との見通しを示した。以上は、『朝鮮日報』(5月29日付)が報じた。

     

    上記記事を整理すると、次のようになる。

    1)米国などからの排他的選択に抵抗する避難先が必要(金・国立外交院長)

    2)国際社会の米国のリーダーシップが弱体化する(李ソウル大経済学部教授)

     

    ここで、私のコメントを付したい。

    1)は、米国が韓国を米韓同盟の枠に戻れと圧力を掛けているから、中国を避難先にして中国の傘に入り、米国との外交バランスをとる、というものだ。米中バランス外交論とは、これを指している。だが、安全保障は米国の傘に入り、外交問題は中国の傘に入るという「ヌエ」的振る舞いが、国際外交で認められと考えている点に幼稚さを感じるのだ。米韓同盟を結びながら、米国の仮想敵の中国と誼を通じる韓国に対し、米国が防衛義務を負うという不合理さを認めるはずがない。いずれ、白黒を迫る局面を迎えるはずだ。

     

    2)は、経済学部教授の発言である。米国は、トランプ氏という破天荒な大統領で毀誉褒貶が激しい。意表を突く発言も多いが、米中デカップリング論は、コロナ禍によって確実に進む気配になってきた。英国は、中国と「黄金時代」を築き親密な関係を維持していたが、今回の香港国家安全法適用とコロナ禍によって、「脱中国」の動きを見せている。

     

    コロナ禍は、西側陣営の内輪もめを止めて、対中国で結束させる効果を示している。この現実を見落として、トランプ発言に困惑し「米国衰退」を云々するのは的外れである。李氏が、経済学部教授であるので一言したいのは、米国ドルが国際基軸通貨であることだ。世界の金庫番である。米ドルが、世界経済を支配している以上、米国の影響力が落ちて中国が浮上するとは、完全な夢想である。中国人民元が、米ドルに代われる力はゼロである。この現実を忘れてはならないのだ。世界の政治的影響力は、経済の総合的実力で左右される。

    (つづく)

     

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    中国14億人の市場は、企業にとって魅力的である。だが、中国を輸出基地にすることは、米中対立で危険過ぎる。こういう企業の判断が強くなっているようだ。中国は、不動の世界のサプライセンターにするつもりだったが、足元からその計画は崩れている。調子に乗って、世界制覇の幻想に取り憑かれた結果である。外資系企業の中国進出が、押し上げた中国GDPは、中国独自の力によるものとする錯覚に陥っている。中国の真の実力はどれほどか。それを、冷静に見つめることが必要だ。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(5月28日付)は、「米中新冷戦、企業は消耗戦」と題する記事を掲載した。

     

    中国でウィンウィンの取引といえば中国側が2度勝つことだ、というのは海外企業の間で有名なジョークだ。ところが米中の対立で企業は「ルーズルーズ(両者とも負け)」になろうとしている。ここ数カ月間、両国は新型コロナウイルスを巡り、非難や陰謀論の応酬をしてきた。加えて米上院は先日、中国企業の米市場からの締め出しにつながりかねない法案を可決した。米商務省は華為技術(ファーウェイ)への制裁を強化し、中国も報復を検討している。中国の国会に相当する全国人民代表大会が「香港国家安全法」の制定方針を決めたことで、中国本土と海外企業の橋渡し役としての香港の地位も危うくなった。

     

    (1)「米中対立は、一時的な対立ではない。コロナ危機に見舞われる前から政治も企業の姿勢も変化していた。上海の米国商工会議所が昨夏行った調査によると、向こう5年間の中国事業の見通しに悲観的な企業が21%に上った。9%を超えたのは2000年以降で初めてだ。広大な中国市場に巨費を投じてきた企業は今更撤退することなど考えられない。だが国境を越えるモノの移動が難しくなるにつれ、中国市場向けには現地生産し、それ以外のところでは中国企業抜きの供給網を拡充するという二正面作戦をとる動きが強まっている」

     

    生産機能の分散は、リスク分散でもある。最近のコロナ禍克服のために、生活改革のモデルとして、「集中から分散」が指摘されるようになった。企業の生産拠点の立地でも、「集中から分散」へと転換する気運だ。となれば、世界生産の「集中」で最大の利益を上げてきた中国経済に逆風が始まったと言える。こういう流れは、いったん始まると大きなうねりになる。第4次産業革命で、少量生産でも生産コストアップを回避する手法が編み出されている。時代変革は、コロナ禍が大きく突き動かし始めたのだ。

     


    (2)「ハードウエア業界は信じがたいジレンマに直面している。仮に米政府の輸出規制強化後も、米クアルコムがファーウェイにスマートフォン向けの半導体を供給し続けられれば、中国人民解放軍と深い関係を持つこの企業に最先端の米国技術が流れることになる。
    供給できなくなればクアルコムは海外の競合企業に市場シェアを譲ることになり、売上高が落ち込む。研究開発費を削らざるを得ず、IT(情報技術)分野での米国の優位は揺らぐだろう。中国で長い間ビジネスをしてきた米企業のトップは「双方に犠牲が出ることは避けられない」と話す。企業は目立つ行動を避け、当局者への説明を果たし、他国へも事業を広げるしかない。あとは状況改善を願うだけだ。とはいえ11月の米大統領選でのトランプ大統領の落選に望みをつなぐべきではない。トランプ氏が両国関係悪化の根本原因ではないからだ」

     

    米中対立は、トラン氏が大統領を止めれば解決するレベルの問題でない。次のパラグラフで指摘されているように、中国の「不法ビジネス」に原因がある。これは、口幅ったいことだが、本欄の一貫した見方でもある。トランプ氏は、マッチを擦っただけ。中国が、そこに不法という名のガソリンをまいていたことが原因だ。

     

    (3)「中国はこれまで自由貿易や企業の独立性、国際ルール、知的財産の尊重などで他国と協調する意志を何ら示してこなかった。もはやウィンウィンの関係を目指そうとすることはあるまい。米軍も地政学的に競合する国に頼って最良のIT機器をそろえることはしないだろう。米国の貿易規制に詳しい弁護士のピーター・リヒテンバーム氏は「半導体は21世紀の国家安全保障に絡む最も重要な産業で、国防総省は現状のような海外頼みにはしたくないはずだ」と言う」

     

    ソ連崩壊で、世界は永遠平和が到来したと歓迎した。それも束の間、中国という新興勢力が台頭して、米国へ挑戦を始めた。どこの国も中国を侵略した訳でない。米国は、お人好しにも中国の民主化を手伝うという名目で、米国の技術のすべてを長年、開放してきたのだ。その善意を逆手にとって、米国に代わって世界王者になりたいという野心を持ったのが中国である。こうなれば、米国は「ヤンキー魂」でトコトン戦う。これが、米中冷戦の真相である。米国が、絶対に退かないと見るのは、過去の米国の行動から明白だ。

     


    (4)「トランプ氏が大統領でなくなれば、両国の対話は今より次元が上がるかもしれないが「問題が消え去りはしない」と話す。中国市場を見切れないグローバル企業は、この先も両国の対立に備える必要がある」

     

    米中対立は、中国経済が行き詰まるまで続くであろう。習近平氏が、国家主席でいる限り「和解」はあり得ない。習氏が、国家主席を辞めざるを得ない時になって、初めて中国は米国と話合う姿勢を見せるであろう。その時はいつか。誰にも分からない。ただ、そういう時期が、必ず来ることは間違いないだろう。世界史と大国の興亡史をひもとけば、中国の専制主義が不利であることは明らかである。民主主義が滅んで専制主義が勝ち残る。世界史の逆転である。そういうことが起これば、人類の一大不幸である。


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