勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年06月

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    ドイツはこれまで、米中共存の中で双方への輸出で稼いできた。その幸運が、米中冷戦に伴い消えかねない危機に立っている。それでも、西側に「本籍」がある以上、最低限の義務を果たさなければならない。G7外相が一致して、中国による香港へ国家安全法適用反対の声明を出した。こういう形の声明では、G7の一員として行動できる。だが、これから舞い込む米中対立局面で、ドイツは外交と経済のバランスをどう取るのか。難しい局面を迎える。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(6月25日付)は、「米中対立で板挟み『三角関係』に揺れるドイツ」と題する記事を掲載した。

     

    貿易や人権などさまざまな問題を巡り、米中の対立が先鋭化する中で、ドイツがいずれの味方につくか立場を決めきれないでいる。ドイツはアジアを除く先進国の中で、米中両国と最も深い経済関係を築いており、米中「冷戦」時代を迎えれば、最大の犠牲者となるのはドイツだ。

     

    (1)「過去20年に米中双方と貿易関係を深めたことで、ドイツは大きな恩恵を受けてきた。安定した経済成長、ほぼ完全雇用にある労働市場、新型コロナウイルス流行を受けた経済対策として1兆ユーロ(約120兆円)をつぎ込めるだけの財政力――これらはすべて米中両国との貿易がもたらしたものだ。だが、ドイツが米中いずれにも肩入れすることを拒んでいることで、中国に対して一枚岩で臨むという欧州の包括的な取り組みを弱めており、欧州が新たな世界構造を形成する力を削いでいる」

     

    ドイツが、中国に対して及び腰であることは事実だ。ビジネス優先という姿勢が滲んでいる。だが、米中冷戦は不可避である。最近見られる中国の「好戦性」は、国内経済の落込みをカバーするように、一段と激烈化している。先のインド軍との紛争も事前に十分な準備をした上での「侵略」であった。宇宙衛星が、中印紛争地点の近くに、新たな建物が秘かにつくられていることを発見している。中国は、悪質な国家に変貌した。米中を主要輸出市場にするドイツにとって、「二股」は難しくなろう。これは、韓国についても言えること。

     

    (2)「米国は、近代ドイツの構築を支援してきた。米独は第2次世界大戦以降、共通の価値観や民主制度、一連の国際合意や提携によって結ばれている。しかし、ドイツの視点から考えると、米中のいずれかを選択するのは微妙な問題だ。実のところ、輸出主導型のドイツ経済にとって、どちらも選べないというのが本音だ。ドイツは米中両方を必要としているのだ。中国はドイツにとって最大の貿易相手国であり、米国は最大の輸出市場だ。ドイツは昨年、1190億ユーロ相当の財を米国に輸出する一方、中国には960億ユーロ相当を輸出しており、その規模はきっ抗している」

     

    ドイツの対GDP比の輸出依存度は、38.20%(2018年:世界45位)である。韓国は38.61%(同43位)である。ちなみに、日本は14.76%(同136位)である。日本の場合、現地生産を強化している。円相場急騰に悩んだ経験から、海外へ工場建設して「現地企業」となって定着している。米中冷戦が起こっても、ドイツや韓国に比べれば、影響すくない。

     

    (3)「コメルツ銀行のチーフエコノミスト、ヨルグ・クレーマー氏によると、独上場企業は売上高の2割近くを米中双方で稼ぐ。ドイツ経済省によると、国内雇用の約28%は間接的なものも含め輸出に関連しており、製造業に限れば、この割合は56%に上る。ドイツの人口は米国の約25%にすぎないが、輸出規模は米国にほぼ匹敵する」

     

    ドイツは、通貨が「ユーロ」に変わって随分と為替上での利益を得ている。EU全体の通貨がユーロである。かつての「マルク」から見れば、安い評価である。これが、ドイツの輸出シフトを強めさせている。ドイツは、EUにおいて為替相場で最大の利益を得た国である。

     

    (4)「ドイツの主力産業である自動車業界にとって、中国はすでに最大の市場だ。独フォルクス・ワーゲン(VW)の先月の中国販売台数は、前年同月比6%増の33万台と、同社の世界販売の半分以上を占めた。VWのヘルベルト・ディース最高経営責任者(CEO)は、中国をVWの「第2の故郷」と呼んでおり、最近では新型コロナに対する中国の対応を称賛した。VWは先月、中国の電気自動車(EV)市場に20億ドル(約2100億円)を投じる考えを明らかにしている。他の欧州諸国は、ドイツほど中国との経済的な結びつきが強くない。世界銀行によると、対中輸出規模でドイツは、フランスとイタリアの合計のおよそ3倍に上る

     

    ドイツの自動車は、先進国の中で最初の中国進出を果たした国である。中国は、これを恩に着て、ドイツへもろもろの便宜を図っている。日本は、先進国で最も中国進出が遅れた国である。この出遅れが、シェアの差となって現れている。だが、トヨタはEV(電気自動車)やFCV(水素自動車)の技術を公開して、提携する仲間づくりに励んでいる。20年後には、中国で最大のシェを握る戦略を発動させた。

     

    (5)「ドイツ企業幹部の多くは、中国による手続き上の障害や技術移転の強要、補助金やさまざまな保護主義的な障壁などに対して、我慢の限界にきていると水面下で漏らしている。中には、中国に対して、トランプ大統領のような強硬姿勢で臨むよう、独政府に求める声もあるという。一方、在中ドイツ商工会議所の首席代表イェンス・ヒルデブラント氏は、独企業の間では、中国での研究・開発(RD)を増やし、サプライチェーン(供給網)を短縮化することで、中国戦略を調整する動きが広がっていると指摘する」

     

    ドイツ企業も、目先の利益で満足しているわけでない。中国の度を超して技術公開要求に辟易している。これを理由に、中国戦略を変更する動きを見せている。中国では、独自のR&Dを展開させ、ドイツ本国とは別の流れにするもの。トヨタは、すでにこの方式に転換した。

     

    (6)「背景には、技術面で世界を2つに分けるとの考えがあるという。米調査機関ピュー・リサーチ・センターが先日公表した調査では、ドイツ人が、対中関係を対米関係と同じくらい重要だと考えていることが分かった。ドイツ当局者も、中国が独裁を強めていることを深く懸念しており、経済問題で譲らないことについても不満を募らせている」

     

     ドイツ人は、日本人に比べれば中国に対して寛容である。日本は、尖閣諸島問題で中国人の身勝手さを骨の髄まで知らされて、警戒している。ドイツは、中国からしっぺ返しを受けないように祈るのみだ。

     

     

     

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    ベトナムは親日国である。TPP11(環太平洋経済連携協定)復活では、日本と協力して米国が復帰できるように当初の条件をほぼ変えず実現に奔走した。理由は、中国嫌いであることだ。中国の影響をできるだけ薄めるには、TPP復活が最大の壁になると見たからだ。

     

    こういう経緯から、今回の新型コロナウイルスが拡大するやいなや、いち早く中国との国境を閉鎖して被害を最小限に抑えた。6月16日時点で新型コロナの感染者数はわずか334人で、驚くべきことに死者はゼロである。こういう背景で、日本との人的交流を開始した。

     

    日本からの臨時便が6月25日午後、ベトナム北部の空港に到着し、日本人駐在員や出張者およそ150人がベトナムに入国した。ベトナムへの臨時便は、26日と27日にも運航され、3日間でおよそ440人の日本人がベトナムに入国する予定だ。ベトナムは、日本における実習生の活動再開につなげる計画。お互いに「持ちつ持たれつ」の関係である。

     

    ベトナムでは現在、およそ300人の実習生が日本への出国を待ちわびている。去年1年間に、ベトナムから海外に送り出された労働者は、15万人余りに上り、このうち半数を占めるおよそ8万人が技能実習生などとして日本に渡った。「日本人気」は高いのだ。

     


    『ロイター』(6月17日付)は、「
    ベトナムが脱コロナ『ひとり勝ち』感染抑制と成長両立」と題するコラムを掲載した。

     

    ベトナムは新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込み、今年の経済成長率が世界最高水準に達しようとしている。世界的に貿易が落ち込む中で、サプライチェーンの「脱中国化」を進め、米中の政治的対立に巻き込まれたくない企業にとって、頼りがいのある国に見えるだろう。コロナ危機の最大の勝者は、ベトナムになりそうだ。

     

    (1)「ベトナム政府による果敢なコロナ対応は功を奏した。中国と1400キロにわたり国境を接するが、世界保健機関(WHO)によると、6月16日時点で新型コロナの感染者数はわずか334人で、驚くべきことに死者はゼロ。しかもこの数字は信用できるようだ。グーグルの移動データによると、職場や住宅地の活動は、感染拡大前の状態に回復。5月の製造業活動は前月から改善し始めた」

     

    ベトナムが、中国と1400キロにわたり国境を接するが、コロナ発症ニュースでいち早く国境を閉鎖したことが幸いした。それと、潜在的な「中国嫌い」であることが功を奏したと言えよう。韓国とは対照的な存在である。韓国は、未だに中国へ宗主国として対応するが、ベトナムは歴史的に中国と対抗してきたので「同等意識」が、非常に強いのだ。

     

    (2)「グエン・スアン・フック首相は、今年の成長率について5%の目標を掲げている。昨年実績の7%には届かないが、コロナ感染の下では野心的な数字だ。観光業が国内総生産(GDP)に占める割合は10%以下に過ぎない。世界的に需要が低迷し、国境を越える移動は事実上、凍結されており、第2・四半期の成長率は過去10年で最低だった第1・四半期の3.8%から大幅に落ち込むだろう。だが、そうだとしても、ベトナムは2020年の成長率がプラスと予想される数少ない主要国の1つとして際立っている。世界銀行は同国の2020年成長率を2.8%と予想した

     

    ベトナムは、GDPに占める観光業のウエイトが10%以下で、製造業のウエイトを高めている。世界におけるサプライチェーンの「脱中国」先の一つとして、受け皿になっている。賃金安も手伝い、これから急成長が望める新興国のホープに躍り出た。すでに、ベトナム戦争で戦った米国との関係も修復した。ベトナムの「脱中国」が、米国企業を引き寄せている。

     

    (3)「若者層が多い人口構成や企業寄りの政策のおかげで、韓国のサムスン電子のような製造業大手が以前から進出している。ナティクシスのエコノミスト、チン・グエン氏によると、過去5年間の海外輸出におけるシェアの伸びは東アジア地域で最も高い。すでに過去最高水準にある外国からの直接投資額が、さらに加速するのは間違いない。新型コロナに鮮やかな対応を示したことで、製造業の誘致を望みながらコロナ対策に苦闘するインドなど他の国に対して、優位に立つだろう」

     

    ベトナムが、コロナ禍をいち早く脱したことは大きな経済成長要因になった。新興国では、インドと経済的なライバル関係であるが、有利な立場を固めた。こういう中で、日本との関係強化はさらに後押しになろう。

     

     

     

     

     

     

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    北朝鮮は、これまで韓国を軍事脅迫してきたが突然の中止となった。米海軍が、3隻の空母を太平洋へ終結させたことに驚いた結果であろう。米空母の朝鮮半島接近は、北朝鮮にとって最大の軍事リスクに転化するからだ。

     

    北朝鮮が、韓国へ軍事挑発すれば取り返しのつかない事態を迎える。金正恩氏も、実妹の跳ね返り行動を抑えざるを得なかったのであろう。改めて、「力には力を」という政策の必要性を示したと言える。相手の脅迫には、時に軍事力で対抗することも必要なのだ。

     

    米インド太平洋司令部によると、「セオドア・ルーズベルト」と「ニミッツ」が6月21日、フィリピン海で作戦活動に入った。米海軍は、これら空母が第7艦隊に配備されると説明した。第7艦隊は、朝鮮半島を含む太平洋西側を作戦区域としている。第7艦隊はすでに横須賀を母港とする「ロナルド・レーガン」を保有している。その「レーガン」は、太平洋で訓練中だ。これに、「ルーズベルト」と「ニミッツ」が加われば、計3隻が朝鮮半島へ移動できる態勢だ。

     

    北朝鮮は、米海軍の空母三隻の出撃態勢で、韓国への脅迫にブレーキを踏まざるを得なかった。軍事的暴走を仕掛けさせた主因の深刻な経済危機は、未解決のままだ。

     

    『朝鮮日報』(6月25日付)は、「北朝鮮で内部引き締めショー、平壌まで3カ月間食糧供給が途切れ、市民の怒り爆発直前」と題する記事を掲載した。

     

    北朝鮮が対北朝鮮制裁と新型コロナウイルスの長期化による影響で平壌市民に3ヵ月以上にもわたり配給を行えず、一部大都市で餓死者が出るなど最悪の経済難に直面していることが24日までに分かった。

     


    (1)「専門家は北朝鮮が韓国に対する挑発に出た背景には「平壌のエリート層」の民心まで揺らぐほどの経済難で内部の動揺が高まり、状況悪化の責任を韓国に転嫁するためだと分析した。北朝鮮消息筋は同日、「黄海道から供給されていた首都米(平壌市に供給される食糧)の在庫が減少したほか、今年初めに中国との貿易が中断し、4月から平壌市民に3カ月間配給を行えない状況だ」と指摘した。また、平壌では6月初めから新型コロナウイルスが再び拡散し、市場が閉鎖され、住民の移動が規制されているという。食料価格が高騰する兆しを見せると、北朝鮮当局は食料価格を値上げした場合、食料を没収するといった強硬な価格統制措置を取っているとされる」

     

    平壌のエリート市民すら4月から食糧配給がゼロである。経済制裁とコロナ禍がダブルパンチとなった。この危機感の原因は、韓国の「裏切り」にあるというこじつけであろう。

     

    (2)「北朝鮮と中国の貿易に詳しい筋は「北朝鮮当局が食糧輸入を最優先し、貿易会社に食糧輸入を積極的に奨励している」と指摘した。北朝鮮当局はこれまで政権を支える党、政府、軍の核心階層が集まる平壌市を特別管理してきた。「平壌共和国」と呼ばれるほどだ。消息筋は「平壌での配給まで途絶えると、住民の間では『核のせいで制裁を受けている』とする不満が爆発し、金正恩(キム・ジョンウン)の政策に対する不信の声まで出ている」と話した。

     

    北朝鮮のエリートは、「金ファミリー」の近衛兵のような役割を果たしている。この親衛隊が、不満を漏らす事態になって慌て出したのであろう。底の浅い北朝鮮経済である。

     


    (3)「金正恩氏が67日、労働党の中核組織である政治局会議で「平壌市民の生活保障のための当面する問題」を話し合ったのは異例のことで、平壌の経済難を反映しているとみられている。幹部出身脱北者のAさんは「金正日(キム・ジョンイル)は苦難の行軍の時期に平壌市民と軍隊さえあれば体制を守れると考え、平壌に特別供給を行った。金正恩は平壌の民心まで失うのではないかと焦っているのではないか」と分析した。地方の状況は平壌よりもさらに深刻だ。金正恩氏が51日に開所式に出席した順川リン肥料工場も現在は稼働をストップし、労働者の給料も払えない状況だという。対北朝鮮消息筋は「平壌はもちろん、清津、咸興をはじめとする一部都市で餓死する人が出始めた」と指摘した」

     

    順川リン肥料工場も現在は稼働をストップし、労働者の給料も払えない状況だという。現在は、田植えの時期であろう。肥料は必要不可欠。それにも関わらず稼働ストップである。農作物の収穫に大きな影響が出て当然だ。経済は、ますます逼迫化してゆく。餓死者が出始めているのだ。

     

    (4)「特に新型コロナウイルス流行以降、今年15月の対中貿易はほぼゼロに近いとされる。国策シンクタンク関係者は「経済活動に必要な必需物資の輸入が途絶えるなど北朝鮮経済がまひする危機に陥っている」と述べた。現在の事態が長期化した場合、早ければ年内にも北朝鮮が保有する外貨が枯渇し、通貨危機が起きるとの見方もある。統一研究院のチョ・ハンボム上級研究委員は「最悪の経済難のせいで北朝鮮住民の不満が苦難の行軍当時の水準まで高まった。今回の韓国への挑発は経済悪化の責任を外部に転嫁する一方、中国と韓国から大規模支援を引き出すための脅迫目的だ」との見方を示した」

     

    現在の経済状況(コロナ禍による貿易激減)が続けば、年内で外貨準備は底を突く見込みという。ここまで追い込まれても、なお、核開発を続ける北朝鮮とは何か。単純に、食糧贈与すれば済む問題でないのだ。

     

    あじさいのたまご
       


    6月25日で、北京市の食品卸売市場を起点に、新型コロナウイルスのクラスターが発生して2週間を迎えた。例によって、しらみつぶしにPCR検査を行なっているという。当局は最近、武漢で600万人ものPCR検査を行なったと胸を張っていたが、その矢先に北京でのクラスター発生となった。

     

    しらみつぶしのPCR検査は、「全数調査」と言われるものだ。防疫学的には、正攻法でなく多分に政治的ショーである。これは、医療資源を枯渇させるので、医療崩壊を招く原因とされる。それよりも、クラスター調査が防疫上、最大の攻め方とされている。日本は、この方法を取っている。正攻法なのだ。

     

    『日本経済新聞』(6月25日付)は、「北京は人出急減・外食苦境、クラスター発生から2週間」と題する記事を掲載した。

     

    街頭の人出は目に見えて減り、日本料理をはじめ外食店が悲鳴を上げる。周辺を含めれば中国のGDP1割弱を占める北京経済の再失速は中国全体に影を落とす。

     

    (1)「天安門広場から東に9キロメートルの四恵。市内最大級のバスターミナルは23日、閑散としていた。長距離バスが運休し、乗り場の入り口は閉鎖されていた。係員は「乗客はかなり減った」とつぶやく。北京では11日、食品卸売市場で2カ月ぶりに新規の感染者が見つかった。関連する感染者数は24日までに累計269人に達した。週末の13、14日にいずれも36人の新規感染者が確認されると、北京の繁華街から人が消えた。多くの企業が在宅勤務に移行し、寄り道せずに帰宅する人も増えた。15~19日の北京市内の1日平均の地下鉄乗客数は560万人で、前の週から35%減った。前年の同じ時期より55%少ない。2月上旬の約60万人を底に回復。6月12日は880万人に達したが、4月下旬の水準に戻った」

     

    北京市での感染者増加は、食品卸売市場で始まった。武漢も感染源は、食品卸市場とされている。共通点は、余り衛生的な環境でなかったのだろう。当局は、サーモン説を広めている。北欧からの輸入品に責任を擦り付けるあたり、「転んでもただで起きない」野心を忘れない。

     

    (2)「首都北京での感染拡大は習近平(シー・ジンピン)指導部のメンツにかかわる。北京市は新規感染者ゼロにこだわり、驚異的な速さでPCR検査を進める。会社員の呉さんが住む団地は「中リスク地域」に指定され、19~21日の3日間で住民6万人が検査された。「近くの公園で朝8時から夜11時まで調べた」と呉さんは話す。市内全域の飲食店員、宅配便の配達員も調べられ、検査対象は300万人を超えた。25日からの端午節の3連休も北京市は市民に外出自粛を呼びかける。市内の観光地には厳しい入場制限がかかる。市外に出るにはPCR検査の証明書が要る。「東京より感染者が少ないのにやり過ぎではないか」との声はかき消されている」

     

    「中リスク地域」は、中国最高指導部の住む中南海を含んでいる。それだけに、3日間で住民6万人がPCR検査させられたという。市内全域の飲食店員、宅配便の配達員も調べられ、検査対象は300万人を超えた。これだけの検査をやっても撲滅はできないであろう。クラスターになりそうなところを、早手回しにチェックするのが防疫原則であるからだ。

    『ブルームバーグ』(6月23日付)は、新型コロナは静かに広がる北京の現状見よー暗く湿った場所に潜伏かと題する記事を掲載した。

     

    発熱と悪寒の症状のある中国・北京市の52歳の男性が6月11日、新型コロナウイルス検査で陽性と判明した。食品卸売市場「新発地」に買い物に行った8日後のことだ。北京での感染者の確認は55日ぶりだったが、今や200人を突破した。

     


    (3)「北京での感染再拡大は、ウイルス伝染の連鎖を断ち切ったかに思われる諸外国に厳しい警鐘を鳴らす。感染者の大部分が軽症か無症状という特性のため、ウイルスは数週間ないし数カ月かけて静かに広がる。中国疾病予防コントロールセンターの高福主任は、上海で先週開かれた会議で政府顧問らに対し、「非常に多くの無症状ないし軽症患者が周囲に多くのウイルスを既に拡散させ、1カ月前には感染が始まった可能性がある」と指摘。ウイルスが人に感染して増える前に暗く湿度の高い環境に潜んでいたこともあり得ると分析した」

     

    感染症専門家は、1カ月前には感染が始まった可能性があるという。また、ウイルスが人に感染して増える前に、暗く湿度の高い環境に潜んでいたこともあり得ると分析している。私は、武漢と北京の感染源が卸売市場であるという共通点を指摘したが、専門家もここに注目している。つまり、全数調査に時間と金をかけるよりも、事前にクラスターになる可能性のある場所をPCR検査することだ。

     

    (4)「北京の状況は、効果的なワクチンがない限り、静かに広がる感染をなくすことが難しい現状を浮き彫りにする。感染対策で政府に助言するオーストラリア国立大学メディカルスクールのピーター・コリニョン教授(臨床医学)も「どこであれ撲滅されたとは考えられない」との見解を示した」

     

    新型コロナウイルスは、「撲滅されたと考えられない」と専門家が指摘している。その通りであろう。この「金言」に照らせば、これまでの中国や韓国の「勝利宣言」は、なんと軽薄なことであったかを物語る。


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    米国は、民間企業を装いながら、中国軍の支援・管理下にあると見なす中国企業20社のリストを明らかにした。ファーウェイやハイクビジョンなどだ。ファーウェイは、社員株主制をとっている。これを理由に、民間企業と称しているが、株主登記簿に社員名は記載されていない。労働組合名義である。中国では、労組が政府を意味しているので、社員株主制は真っ赤なウソである。米国の法学者が、この実態を明らかにした。

     

    『ロイター』(6月25日付)は、「米、ファーウェイなどを中国軍の「支援企業」に指定、罰則の可能性」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ米政権は、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)や杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)などの中国大手企業について、中国軍に所有または管理されていると判断した。ロイターが24日に確認した政府文書で分かった。ある米国防当局者は匿名を条件に、文書の内容を認め、議会に送付されたと明かした。

     

    (1)「米政府が中国人民解放軍の支援を受けたと判断した中国企業は20社に上り、中国移動(チャイナモバイル)や中国電信(チャイナテレコム)、航空機メーカーの中国航空工業集団(AVIC)なども含まれる。中国軍の支援企業の指定案は国防総省が作成。米国では1999年に制定された法律で、人民解放軍が「所有または管理する」商業サービス、製造、生産、輸出を提供する企業のリストを作成することが義務付けられている。同省の指定は制裁には直結しないが、同法によると、大統領は国家緊急事態を宣言して、リストに載っている企業が米国内で活動する場合に罰則を科すことができる」

     

    警戒リスト20社の社名は、次のようなものだ。

    ファーウェイ、ハイクビジョン、中国移動(チャイナモバイル)、中国電信(チャイナテレコム)、中国航空工業集団(AVIC)、中国中車(CRRC)、中国鉄建、中国航天科工集団(CASIC)などである。これら企業は、状況次第で罰則を加えられるという。

     

    ハイクビジョンは、米政府の主張には根拠がなく、当社は「中国軍の企業」ではないと表明している。軍事転用の研究開発に参加したことはないとも述べた。ただ、問題解決に向けて米政府と協力していくとコメントしている。

     


    (2)「ホワイトハウスは、リストに掲載された企業に制裁を加えるかについてはコメントしなったが、「(リストは)米連邦政府、企業、投資家、学術機関、同じ考えを持つパートナーにとって、こうした企業との提携について調査を進める際に有益なツールとなる。特にリストが増えていく場合はそうだ」と述べた。今回のリストが米中の対立を激化させる可能性は高い」

     

    米国が、前記20社に罰則を加えるというが、理由がはっきりしなければ反発を受ける。

     

    (3)「貿易や技術分野、外交政策を巡り米中間の緊張が高まる中、国防総省はかねてより、民主・共和両党の議員からリストを公表するよう圧力をかけられていた。ともに共和党のトム・コットン上院議員とマイク・ギャラガー下院議員は24日、国防総省のリスト公表を称えるとともに、トランプ大統領にリストに載った企業への経済的罰則を要請する声明を発表した

     

    トランプ大統領が、罰則を加える場合、民間企業を装っている、という理由であろうか。

     

    (4)「リストでは、米企業と中国企業との関係の深さも明るみになっている。リストに掲載された世界最大の鉄道車両メーカーである中国中車(CRRC)は、競争入札を経てボストン、フィラデルフィア、シカゴ、ロサンゼルスと契約を結んでいる。ほかに中国鉄建、中国航天科工集団(CASIC)もリストに入っている。リストの掲載企業の多くはすでに米当局の監視対象となっている。米政府は昨年、事実上の禁輸リストである「エンティティー・リスト」にファーウェイとハイクビジョンを追加している」

     

    中国中車(CRRC)が、車両の入札に参加する際、秘密カメラで乗客の映像を北京に送って、要人暗殺を決行させたらどうなるか、という懸念がすでに指摘されていた。十分にあり得る話だ。下線のように、リストに上がった中国企業20社は、FBIの監視下に入っているという。違法行為(スパイ行為)を警戒されているからだ。ファーウェイの場合、地下に秘密の通信設備が隠されており、北京と極秘情報連絡が可能という告発がされている。

     

     

     

     

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