勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年07月

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    米国トランプ政権は、今秋の大統領選を前に、中国共産党員の入国禁止案を検討しているという。余りの影響の大きさに、トランプ氏も決断がつかないという。仮に実行されれば、家族を含めて2.7億人(2020年)が入国禁止となる。当然、中国の報復が予想される。「米中戦争」になろう。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月17日付)は、「トランプ政権、中国共産党員の入国禁止を検討」と題する記事を掲載した。

     

    米国のトランプ政権幹部は、中国共産党員とその家族の入国を禁止することを検討している。事情に詳しい関係者が明らかにした。米中政府の間で一段と緊張が高まる恐れがある。

     

    (1)「査証(ビザ)発給を禁止する可能性についての議論は早期の段階にあり、発効の日程は定まっていないという。関係者によると、ドナルド・トランプ大統領はまだ計画を承認していない。渡米前の中国共産党員と家族だけを対象とするか、あるいは過去にさかのぼって適用するかなど、具体的な内容についてはなお議論が続いている。さかのぼって適用する場合、既に米国に入国している個人の国外退去につながりかねない

     

    米国が、過激な案を検討している。共産党員とその家族について、今後の入国か。過去に遡るとすれば、国外退去になる。当然、中国の報復が予想され、「戦時態勢」に落込む。

     

    (2)「中国共産党員に関する情報は公開されておらず、米国がこうした方針をいかに実行するのかは不明だ。中国共産党は9000万人余(正しくは9200万人)りの党員を抱える。その家族を含めれば、数億人(注:2.7億人)の中国人が渡航禁止措置の対象となる可能性がある。協議を知る関係者の1人は、大統領の経済顧問の間で反対意見が出ていることから、トランプ氏が承認するか懐疑的な見方を示している。経済顧問らはこうした措置によって対中関係が修復不能なほどに損なわれる恐れがあると指摘している

     

    さすがのトランプ氏も、この過激な提案に慎重を期するだろうとみられている。ホワイトハウスの経済顧問らは反対姿勢のようだ。

     

    『大紀元』(7月18日付)は、「『脱党』がグーグル・トレンド入り、米が共産党員の入国禁止の報道受け」と題する記事を掲載した。

     

    トランプ政権が中国共産党員とその家族の入国を全面的に禁止することを検討しているとの報道を受け、グーグルで単語の検索回数の推移を示す「グーグル・トレンド」では、キーワード「退党(中国共産党からの離脱、または脱党ともいう)」の検索回数が急上昇した。

    (3)「米紙『ニューヨーク・タイムズ』は7月15日、政府筋の話として、共産党員のほかに、米政府は中国軍と国営企業の幹部も入国禁止対象にする意向がある。中国当局の公表では、中国には9200万人の共産党員がいる。米政府は2億7000万人に影響が出ると試算した。報道を受け、グーグルで検索ワードの検査回数の推移を示す「グーグル・トレンド」では、17日午後3時24分ごろ、検索ワード「退党」の人気度動向の数値は最高値100となった。検索の大半は中国本土からだという」

     

    グーグルの検索ワードでは、「退党」が最高値の検索になったという。米国への共産党員入国禁止のニュースが、注目を集めるのは当然である。中国で、最大の人気国が米国であるからだ。

     

    (4)「米国の現行の「移民法」では、共産党員の米国への移民を禁じているが、共産党員の入国は禁止していない。一部の中国共産党員は、党員であることを隠し、米国籍を取得した。しかし、隠ぺいが発覚すれば、米国籍は、はく奪される。ネット上では、中国人や香港人ネットユーザーらはこの措置を歓迎する書き込みが多く見られた。「この措置を歓迎しない中国人はいないだろう。あまりにも感動したので泣きそうだ」「とても良い!汚職官僚はもう逃げられない」「中国共産党の高官の悪夢が始まった」「この措置は、香港人が『全党死清光(共産党を滅ぼそう)』と叫ぶより、パンチが効く」などと書き込み、米政府への支持を訴えた」

     

    米国移民法では、共産党員の米国へ移民を禁止しているが、入国は認められている。それが、入国も禁止となれば、多大の影響が米中双方に出る。ネットユーザーは、共産党員の入国禁止に賛成という。共産党員への恨み辛みが表面化したものだ。

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    韓国進歩派は、ことあるごとに在韓米軍縮小案を口にしてきた。その目的は、南北交流を推進できるというもの。北朝鮮は、かねてから在韓米軍撤退要求を出してきた。それだけに、米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月18日付)が、報道した「在韓米軍縮小案」は、歓迎かも知れない。

     

    米国防総省が、在韓米軍縮小案をホワイトハウスへ提案した背景は、南北交流を推進させるという「親心」ではない。米軍のアジア戦略が、大きく変わったことを理由にしている。つまり、インド太平洋戦略こそ、米軍の対中国戦略の骨格になったことだ。朝鮮半島の護りを固めるよりも、インド太平洋を中国の「牙」から守る戦略へと大転換したのである。

     

    韓国では、米国のインド太平洋戦略についての関心が極めて低いのだ。朝鮮半島が、共産主義に染まるリスクよりも、インド洋・南シナ海・東シナ海という海上防衛が一段と重視される時代背景の変化がある。中国軍が、インド洋・南シナ海・東シナ海を制覇する野望を見せ始めているからだ。米国は、この戦略転換に対応した米軍配置を再検討している。

     


    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月18日付)は、「
    トランプ政権、在韓米軍の削減を検討」と題する記事を掲載した。

     

    米国防総省は韓国に駐留する米軍を巡り、削減を含めた選択肢をホワイトハウスに提示した。米関係者が明らかにした。ドナルド・トランプ大統領は韓国に対し米軍駐留経費の大幅な負担増を求めており、両国の間でつばぜり合いが続いている。軍関係者によると、国防総省は縮小の可能性も含めた世界における米軍再編を検討する一環として、韓国に駐留する米軍の在り方を見直している。

     

    (1)「トランプ政権関係者は、在韓米軍を現在の2万8500人から縮小する案の詳細について明らかにしなかった。縮小に関しては何も決まっていないという。トランプ氏は先に、ドイツの駐留米軍を34500人から9500人削減することを決め、同盟国の間に動揺が広がった。政権アドバイザーの1人は、米軍撤収の動きが加速する可能性を示唆していた」

     

    米国防総省がこの3月、在韓米軍縮小案をホワイトハウスへ提出したという報道だ。これは、米軍の世界配置の再検討という触れ込みの一環である。すでに、ドイツ駐留米軍の縮小を正式発表している。アジアが、地政学的に対中国との関係で一層、重要性が増しているからだ。かつては、米ソ冷戦で地政学的に欧州が重視された。今度は、米中冷戦である。アジアが欧州に代わって、米国の国益に重大な影響を与えることになったもの。

     

    (2)「在独駐留米軍の撤収を主張してきたリチャード・グレネル元駐ドイツ大使は先月、独紙ビルトに対し「ドナルド・トランプ氏は非常に明快だった」と述べ、「われわれはシリア、アフガニスタン、イラク、韓国、日本、ドイツから軍を引き揚げたい」と語った。グレネル氏はさらに、米国は「他国の防衛のために過剰な支出をするのに多少うんざりしてきている」とも述べた。米国と韓国は朝鮮戦争以来、軍事同盟を維持してきた。米軍の駐留経費を韓国が負担する協定の第1弾を両国は1991年に締結した。ただ、トランプ氏は一貫して韓国の負担額拡大を求めてきた」

     

    リチャード・グレネル元駐ドイツ大使は6月、独紙ビルトに対し、「われわれはシリア、アフガニスタン、イラク、韓国、日本、ドイツから軍を引き揚げたい」と語った。シリア、アフガニスタン、イラクと韓国、日本、ドイツを並列的に議論しているが大間違いである。日本は、インド太平洋戦略の要である。

     

    在日米軍は、米軍の在外駐留で最大規模の6万余の兵士を抱えている。米軍が、日本から撤退するとなれば、米軍の世界軍事覇権放棄を意味する。あり得ないことだ。日本を失う米軍は、翼をもがれた鳥に等しくなる。こういう非現実的構想は不可能である。その時は、日本も核武装の議論が高まるだろう。米国としては、絶対に避けたい選択肢である。日本には、核を持たせたくないのだ。

     


    『中央日報』(7月18日付)は、「米国防総省、3月に在韓米軍縮小案をホワイトハウスに報告ーWSJ」と題する記事を掲載した。

     

    米国防総省がホワイトハウスに在韓米軍縮小案を提示したと、米ウォールストリートジャーナル(WSJ)が17日(現地時間)、米軍幹部を引用して報道した。韓米が防衛費分担金に合意できない状況で、米国の在韓米軍縮小カードに対する懸念が強まるとみられる。

    (3)「WSJは、ホワイトハウスが昨年秋、中東、アフリカ、欧州、アジアなどを含め全世界に駐留する米軍の撤収のための予備的オプションを提示することを指示し、米国防総省は同年12月、中国、ロシアとの競争のための戦略と米軍の循環配置の重要性などを反映した広範囲のアイデアを出したと説明した。続いて3月には米国防総省が韓国に対する複数のオプションを整理し、これをホワイトハウスに提示したと、WSJは伝えた。現在、在韓米軍は約2万8500人水準。またWSJは、米国防総省のこうした検討は防衛費分担金をめぐる韓米間の隔たりが続いている中で出てきたと強調した。在韓米軍縮小の可能性に関する報道は、トランプ大統領がドイツの米軍縮小を公式化した中で出てきたものであり、関心が集まっている」

     

    韓国が、米国の要請する駐留費を支払わなければ、在韓米軍の規模を縮小するとしている。理屈に合った話である。韓国軍は、米軍縮小分を肩代わりしなければ、北朝鮮との軍事バランスを維持できなくなる。北朝鮮は、核を保有しているから、韓国の潜在的な軍事リスクはそれだけ増している計算だ。韓国は、こういう潜在的危機を米軍駐留でカバーしていることに気が付くべきだろう。韓国に、その配慮が足りないのだ。

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    韓国社会の無情さをこれほど表わした事例はないだろう。敗色濃厚の朝鮮戦争が逆転、勝利に向かわせた一つの重要なきっかけは、ペグ将軍が自ら最前線で北朝鮮軍と戦ったことだ。逝去に当り、韓国政府は花輪一つを送っただけで黙殺した。米国ホワイトハウスは、丁重な哀悼の辞を発表するという、米韓が全く逆の対応をしたのである。それだけでない。国家報勲処がペグ将軍に対し埋葬翌日、親日行為者とホームページに掲載する無慈悲な行為まで行なった。

     

    韓国政府が、朝鮮戦争の英雄に対して「死者に鞭打つ」形の対応したのは理由がある。ペグ将軍が戦時中、旧日本軍将校であったという理由である。2009年、盧武鉉(ノ・でムヒョン)政権は、日本との外交的対立が原因で「反日狩り」を行い、ペグ将軍に「親日行為者」とレッテルを貼った。ペグ将軍が日本軍将校であったから、日本軍の戦法で北朝鮮軍に勝利できたという側面もある。こういう因果関係を理解できない「感情100%」の韓国社会の姿が、現れている。

     

    軍人は、国家を守る使命で戦うものである。「名誉」こそ、最大のインセンティブである。その名誉が、こうして汚された状況を見れば、韓国軍兵士は有事の際、身命を賭して戦うだろうか。兵士を心のないロボット扱いしていることは、韓国軍の精神的脆弱性をもたらす点で、取り返しのつかない愚行をしたと言うほかない。

     


    『朝鮮日報』(7月18日付)は、「ペク・ソンヨプ将軍埋葬の翌日に国家報勲処が『親日行為者』のレッテル」と題する記事を掲載した。

     

    国家報勲処が、今月15日に国立大田顕忠院に埋葬された625戦争の英雄、故ペク・ソンヨプ予備役陸軍大将を「親日反民族行為者」とホームページに明示した。韓国政府が「陸軍葬」でペク将軍を葬ってからわずか1日で、親日派のレッテルを張ったのだ。与党の一部では第20代国会のころから、自分たちが決めたいわゆる「親日将官」らについて墓を掘り返したり親日の行いを記録したりすべきだとして、法改正を主張してきた。与党側の一部の人物は、ペク将軍の顕忠院埋葬にも反対した。報勲諸団体は「表向きペク将軍を礼遇するふりをしつつ、裏ではペク将軍の墓暴きを模索し、不意打ちをかけた」と反発した。

     

    (1)「大田顕忠院(注・国立墓地)は、ペク将軍の安葬式が執り行われた翌日の16日、ペク将軍の顕忠院埋葬者情報の備考欄に「大統領所属親日反民族行為者真相究明委員会で親日反民族行為者と決定(2009年)」という情報を載せた。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代に作られた親日反民族行為真相究明委員会は、ペク将軍を親日行為者に含めた。顕忠院の埋葬者情報は、ホームページで名前を入力しさえすれば誰でも検索できる。事実上、韓国政府が乗り出して、ペク将軍に対して公に親日行為者のレッテル張りをしたわけだ」

     

    韓国軍内外からは「韓国政府が、6・25戦争(注・朝鮮戦争)の英雄であるペク将軍が世を去るなり冒涜している」という声が上がったという。報勲処は、「2018年国会などでさまざまな指摘があり、関係機関の協議を経て、ペク将軍を親日反民族行為者と掲載することとした」と説明した。政府は、ソウルの国立墓地(顕忠院)への埋葬を許さず、大田国立墓地(顕忠院)へ埋葬させたのである。

     

    (2)「報勲処が公式ホームページでペク・ソンヨプ将軍を親日派と記したのは、昨年3月に国防部(省に相当)・報勲処が、いわゆる「親日将官」らの埋葬現況に関する情報を入れると決定したことに伴うもの。韓国政府の関係者は「2018年末から、親日の行いがある将官らを記録に残すべきだとか、さらには墓を掘り返すべきだという趣旨の主張が与党側で行われてきた。韓国政府でも、これに呼応すべきだと圧迫してきた」とし、「ここで国防部と報勲処が協議プロセスを経て、報勲処では前任の皮宇鎮(ピ・ウジン)処長がこのような決定を下したらしい」と語った」

     

    報勲処のこのような措置は、これまで外部に知らされていなかったが、ペク将軍を巡る今回の論争をきっかけとして公になった。韓国政府の関係者は「報勲処内部でも静かに物事を処理し、こうした事実を知っていたのは一部だけらしい」と語っている。つまり、恣意的に行なわれたのである。

     

    (3)「こうした国防部・報勲処の措置は、関連法が整備されていない中で恣意的に行われたもので、今後論争になる見込みだ。野党関係者は「国会で関連の議論が依然として進んでおり、意見が割れている事案で法改正もなされていないのに、国防部・報勲処が根拠もなく『ペク将軍は親日反民族行為者』と公式ホームページに明示してレッテルを張った」とし、「関連法もなしに、政府の部処(省庁に相当)が恣意的に措置を取ったもの」と批判した」

     

    韓国政府の冷淡な行為は、関連法が整備されていない中で行なわれた。国防部(国防省)は、ペグ将軍を「陸軍葬」として送った翌日、「親日反民族行為者」とレッテルを貼っている。朝鮮宮廷ドラマの裏切り場面を見ている思いだ。朝鮮民族は、こういう仕打ちを平気で行えるとすれば、恐怖を感じるのである。

     

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    中国の4~6月期の実質GDP成長率は、前年同期比3.2%増である。事前予測の同1.1%増を大幅に上回る「好成績」であった。習政権にとっては鼻高々であろう。それでも、1~6月期は、同マイナス1.6%である。

     

    詳細は後で見るとして先ず、指摘すべき点は、不動産開発投資が1~6月期で、同1.9%も増えた点である。パンデミックという騒ぎの中で、不動産開発投資がプラスに転じている点に異常さを感じなければならない。空き家が現在、6500万戸も存在している。値上り期待の住宅投機である。この膨大な投機住宅が、転売できなければどうなるか。考えて見ただけで身の毛のよだつ話である。中国社会特有の「投機性向」が今後、破綻しないはずがない。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(7月16日付)は、「中国経済、プラス成長復帰に潜む危うさ」と題する記事を掲載した。

     

    中国が16日に発表した年4~6月のGDPの実質成長率は前年同期比で実質3.%だった。文化大革命が終わった1970年代半ば以降で初めてマイナス成長に落ち込んでいた13月期から力強く回復した。16月期では依然として1.%減のマイナス成長だが、中国内陸部の武漢市で始まった新型コロナウイルスの感染拡大に今も苦しむ多くの経済大国にとっては、羨望の対象となる好記録だ。

     

    (1)「中国経済が堅調に回復したのは、中国政府が2008年の金融危機当時と同様、経済の再始動を促すために大規模な信用供給に動いたが、金融当局は不良債権が再び急増し、規制の緩いシャドーバンキング(影の銀行)が膨張する恐れがあると警鐘を鳴らしている。08年の金融危機後、中国では債務がかつてないほど急速に積み上がった。新型コロナの感染拡大以降は膨張スピードにいっそう拍車がかかって過去最高に達している」

     

    中国の4~6月期の実質GDPがプラス成長に転じたのは、大規模な金融緩和措置によるものだ。その影で、債務残高が急速に積み上がり、金融危機の芽を膨らませる結果となった。旧態依然とした景気回復策である。さもなければ、プラス成長は不可能なのだ。

     

    (2)「消費主導の経済に転換し、投資に依存する経済成長モデルから脱却しなければならないと中国政府が唱え始めて久しいが、個人消費のGDPに占める比率は今も40%未満と著しく低く、アフリカのガボンやアルジェリアなどと同水準に留まる。英国、米国などの他の先進国では、個人消費がGDPの65~70%前後を占める。新型コロナの感染拡大は中国の小売・サービス業を直撃し、消費が冷え込んだ。スーパーや百貨店、電子商取引(EC)などの売上高を合計した小売売上高は、1~6月期に前年同期比で 11.%減少した

     

    中国政府は、消費について誤魔化しの発表をしている。民間消費と政府消費を合計して、「消費」と称している。事情のよく分からないメディアは、この手に乗せられて「中国の個人消費は60%」という記事を書いている。これは間違い。民間消費は40%弱である。先進国に比べて、一段も二段も低いのだ。その代わり、固定投資が多くなっている。この固定投資リード型の中国経済が、個人消費リード型に転換するのは、10年以上の歳月が必要である。その間、GDP成長率はかなりの減速となる。

     


    (3)「これを受けて中国政府は、金融危機の時と同じように、借り入れ頼みの投資で成長を支えようとしている。インフラ投資と不動産開発投資が投資拡大をけん引する点も金融危機時と同じで、硬直化した国有企業が支配するセクターが中心的役割を果たしている。中国の専門家は昨年、建設ブームに沸いた10年を経て、不動産市場では少なくとも6500万戸以上が空室になっていると試算していた。にもかかわらず、不動産開発投資は16月期に前年同期比で1.%増えた。一方で、固定資産投資全体では3.%減となっている」

     

    中国の経済運営方針は、従来同様の固定投資リード型になっている。経済主導の切り替えは、GDP成長率を減速させるので軽々に行えないのだ。経済減速に耐えられないためである。不動産市場では、少なくとも6500万戸以上が空室と試算される。それにもかかわらず、不動産開発投資が16月期に前年同期比で1.%も増えている。「住宅バブル」の残り火に、「夢よもう一度」と賭けているのだ。哀れである。

     

    (4)「中国が16日に発表したGDPデータを少し掘り下げてみれば、国有企業の投資が16月期に2.%増えているのに対して、民間企業の投資が7.%減っていることがわかる。この重要なデータは、ほとんどの海外投資家に配布された英語のプレスリリースからは都合よく排除されている。ただ、習氏が先ごろ承認した3カ年計画では、民間企業や外資企業を後回しにして国有企業を優遇する内容が盛り込まれており、その政策には合致している。中国の約13万社に上る国有企業には 非効率や無駄、汚職がはびこる。しかし、国家が危機に見舞われる今、中国を一党支配する共産党にとって、国有企業は雇用と社会的安定を支える基盤として不可欠な存在になっている

     

    「国進民退」を絵に描くように、国有企業の投資が増え、民間企業の投資が減少している。中国共産党の立脚点は国有企業にある。ここが生き残らなければ、共産党政権も揺らぐのである。「国進民退」の促進である。

     


    (5)「中国指導部は明らかに、国が主導する借り入れ頼みで投資する、旧来の手法を復活させることを決めた。一部のエコノミストは10年前、中国経済は一定のスピードで走り続けなければ倒れて壊れてしまう自転車のようだと評した。今日、中国経済という自転車は債務という重荷を抱え、酔っ払いがこいでいるように見える。そのかたわらでは、戦略的な競争相手である米国などが倒そうとする機会を虎視眈々と狙っている

     

    中国経済は、過剰債務を背負ってフラフラになりながら自転車を漕いでいる姿に映るというのだ。米国が、中国経済の息の根を止めるチャンスを狙っている。中国はこれに気付かず、軍事力をかざして大言壮語している。末期的状況なのだ。

     

     

     

     

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    文大統領の口を通すと、すべてが「虹色」になる。韓国メディアによれば、これは「希望的拷問」と呼ばれている。実現しそうもないことを、さも実現するように発言するからだ。

     

    文大統領は第21代国会開院に当って、経済に関する希望に満ちたメッセージばかりが目立つ演説をした。「経済でも韓国は他国より相対的に善戦した。世界経済のマイナス成長の中、経済協力開発機構(OECD)のうち韓国の経済成長率が最も良好というのが、OECDと国際通貨基金(IMF)など国際機関の終始一貫した見方」と述べたのだ。

     

    これには、『中央日報』(7月17日付)が早速、反論している。

     

    (1)「6月10日、OECDは今年の韓国のGDP成長率をマイナス1.2%と予測した。新型コロナウイルス感染拡大の衝撃が一度で終わり、年末には落ち着くという仮定に基づくもの。韓国は、マイナス成長であるが、37加盟国のうち最も良いのは事実だ。しかしここには盲点がある。OECD加盟国の大半が、経済規模が大きいため長期間にわたり低成長が続いている北米・欧州の先進国という事実だ。経済危機に脆弱であり、それだけに反騰する力も強い新興開発途上国とは違う。韓国は、先進国クラブのOECDに入ったが、経済構造は依然として開発途上国に近い。経済規模が大きく成長速度が遅い先進国と単純比較するのは難しい」



    文大統領は、言い訳が得意である。今年のGDP成長率が、マイナス1.2%(IMF予測)でも、OECD加盟国の中ではトップの成績と胸を張っている。だが、OECDは先進国クラブである。韓国経済の実態は先進国でなく、開発途上国に近いものだ。先進国が、総じて深いマイナス成長に沈む中で、開発途上国の韓国のマイナス幅が少ないと自慢できるのか。そういう指摘である。

    不都合な部分を見ない。これが、文氏のやり方である。要するに、反省することのない大統領である。一人になったとき、内心忸怩たる心境にならないとすれば、韓国の将来は暗澹たるものであろう。

     

    『韓国経済新聞』(7月17日付)は、「青年より高齢者の雇用が多い国・韓国」と題する記事を掲載した。

     

    (2)「文在寅政権の発足後、高齢者(60歳以上)の雇用が100万件以上増えた一方、青年の雇用は20万件近く減少したことが分かった。今年4~6月期には高齢者雇用率と青年雇用率の差が過去最大となった。青年層の雇用を促進する経済活性化政策が不足する一方、財政投入で短期の高齢者雇用ばかり増やしたためと解釈される」

     

    文大統領が就任したのは2017年5月である。それ以降、高齢者(65歳以上)の雇用が100万件以上増えたが、青年(39歳まで)が20万件近く減少している。文大統領は、こういう雇用構造の悪化を無視して、トータルで雇用は増えていると嘯いているのだ。

    統計庁の雇用動向を分析した結果、今年4~6月期の高齢者の就業者数は509万4000人だった。文在寅政権の発足前の2016年(384万8000人)に比べ124万6000人(32.3%)増加した。60歳以上の就業者数が四半期基準で500万人を超えたのは初めてだ。

    同じ期間、青年の雇用は減少した。2016年に390万8000人だった青年の就業者は今年4~6月期は372万4000人と、18万4000人(4.7%)減少した。今年に入ってからは雇用率が逆転した。4~6月期の青年雇用率は41.7%と、前年同期比で1.5ポイント下落した。一方、高齢者雇用率は42.9%と、0.3ポイント上昇した。



    (3)「高齢者の雇用が増えて青年の雇用が減る理由は、基本的には人口構造の急変のためだ。この期間、高齢者の人口は212万5000人増加したが、青年の人口は43万2000人減少した。しかし雇用率まで逆転した点には注目する必要があるというのが専門家の指摘だ。政府が高齢者を対象にした短期公共雇用を増やし、定年延長を推進するなど、政策要因の影響でこうした現象が克明になったということだ。景気沈滞が数年間続いたうえ、今年の新型コロナ感染拡大で青年層の新規採用が急減し、青年の就職が難しくなったことも影響を及ぼしたという分析だ」

     

    高齢者の雇用が増えたのは、政府が高齢者を対象にした短期公共雇用を増やしたことが大きな要因である。国家予算で短期雇用=アルバイトを増やしているのだ。これは、最低賃金の大幅引上げに伴う解雇者増をカムフラージュすべく、財政支出で高齢者の短期雇用を増やしている結果だ。青年の雇用減は、製造業やサービス業で起こっている。最低賃金の大幅引き上げがもたらしたものである。

     

    政府の政策ミスが失業者を増やすという信じがたい政権である。文政権が、言葉巧みに南北統一への夢を語り、分断国家の悲劇を訴える情緒作戦で、経済失政をカバーしているに過ぎないのだ。

     

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