勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年08月

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    米国政府は、新型コロナウイルスのワクチンで新興医薬品企業モデルナと供給契約を結んだ。コロナ・パンデミックは燃えさかっている一方、ワクチン価格が明らかになるなど、防疫体制も進んでいる。

     

    米国のワクチン価格は、1人2回接種で30.50ドル(約3200円)と決定。大衆価格とは言えないまでも、最初に登場するワクチン価格であることを考えれば、今後の量産化によってしだいに引下げられるであろう。それを期待したいものだ。

     

    『ロイター』(8月11日付)は、米、コロナワクチン供給でモデルナと合意、15億ドルで1億回分」と題する記事を掲載した。

     

    米政府は、バイオ医薬大手の米モデルナが開発中の新型コロナウイルスワクチンについて、約15億ドルで1億回分の供給を受けることで同社と合意した。ホワイトハウスとモデルナが11日に発表した。

     

    (1)「米政府は、国内で年末までにコロナワクチン提供を目指す「ワープ・スピード作戦」の下、過去数週間に複数企業のワクチン候補について数億回分の供給で合意している。モデルナのワクチン価格は、2回投与方式で1人当たり約30.50ドルの計算となる。モデルナのワクチン候補は後期段階の臨床試験(治験)に入っており、同社は9月にも完了するとの見通しを示している」

     

    モデルナの最終臨床試験はすでに7月から入っており、9月にも完了するとの見通しという。トランプ大統領は、このワクチンで劣勢な大統領選挙を一気に挽回させる意気込みであろう。「G7」開催を11月の大統領選挙後に延ばしたのは、自らの当選に自信を持っている証拠。その切り札が、コロナワクチンである。

     


    (2)「英アストラゼネカは米政府から研究・開発資金の支援を事前に受ける代わりに比較的低い価格を提示しているが、その他製薬会社と米政府の合意はいずれも、2回投与方式で1人当たり20~42ドル(約2100~4410円)の価格設定となっている」

     

    米政府は、英アストラゼネカやその他の製薬会社との合意で、1人当たり約2100~4410円となる。開発メーカーによって価格が異なる。これでは、国民に不公平を生むので、政府が調整して「同一価格」にするのであろう。

     

    (3)「米政府はこのほか、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、アストラゼネカのワクチン候補に加え、米ファイザーと独ビオンテック、仏サノフィと英グラクソ・スミスクラインがそれぞれ共同開発するワクチンについても、供給を受けることで合意している。規制当局の承認を得られれば、米国内向けに5億回分以上を確保することになる。一部の合意では、米国に追加購入のオプションも与えている」

     

    米国政府は、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、米ファイザーと独ビオンテック、仏サノフィと英グラクソ・スミスクラインともワクチン購入の契約を結んでいる。この「独占的な契約」が、貧困国へのワクチン配分が遅れるという懸念も指摘されている。難しい判断だ。

     

    ワクチン開発でこれまで話題に上がらなかったロシアが、接種を開始したというニュースを発表した。

     

    『中央日報』(8月12日付)は、「ロシア、コロナワクチン世界で初めて登録、プーチン氏『私の娘も打った』」と題する記事を掲載した。

     

    ロシアで新型コロナウイルス(新型肺炎)ワクチンが公式に登録されたとウラジーミル・プーチン大統領が11日(現地時間)、発表した。コロナワクチンが正式に登録されたのは世界で初めてだ。

    (4)「CNNなど外信によると、プーチン大統領はこの日遠隔内閣会議を主宰しながら「今朝、ロシアが世界で初めて新型コロナワクチンを登録した」としながら「このワクチンは効き目があり持続的に免疫を形成する」と明らかにした。プーチン氏が言及したワクチンは、ロシア保健省傘下の「国立ガマレヤ疫学・微生物学研究所」が国防省の中央科学研究所とともに開発したワクチンだ。ガマレヤ研究所はロシアのソブリン・ウェルス・ファンドである「直接投資基金(RDIF)」の投資を受けてワクチンの開発を進めてきた。ロシアはワクチンの名称を、旧ソ連時代に世界で初めて宇宙に打ち上げられた人工衛星の名前にちなんで「スプートニクV」と名付けた」

     

    ロシアのワクチン開発が、接種段階とは驚きである。初の人工衛星「スプートニク」並みのニュースである。


    (5)「プーチン氏はワクチンが必要な手順を踏んで承認されたと強調したが、このワクチンは治験第III相試験をまだ終えていない状態であることから懸念の声もあがっている。ワクチン開発競争で勝つために安定性と効能が十分に検証されていないワクチンを承認したのではないかという指摘だ。ロシア研究陣はワクチン第I相試験と第II相試験に対する結果データも科学紙に発表しなかった」

    (6)「ワクチンは通常、3段階の臨床試験(治験)を通じて安定性と効果を検証する。特に最後の第III相試験は数千~数万人を対象に、商用化が可能かどうかを評価する最も重要な段階だ。だが、ガマレア研究所のワクチンは先月中旬にモスクワのセチェノフ医大とプルデンコ軍事病院でそれぞれ38人ずつの志願者を対象にした第I相試験を完了した。その後、研究所側は8月初めまでに第II相試験を終えると明らかにしたが、詳しい内容は公開しなかった。日程から判断すると、ロシア当局が第III相段階を経ずにすぐにワクチンを登録したとみられる」

     

    中国のワクチンも、最終治験が済んでいない状態だ。人民解放軍で実施するとしている。実際の患者がいなければ、治験は不可能である。幸か不幸か、欧米では多くの新型コロナウイルス患者がいるので、最終治験が行ないやすい環境にある。

     


    (7)「世界保健機関(WHO)は11日、ロシアが開発したコロナワクチンに対して事前資格審査手続きを議論中だと明らかにした。WHO審査を通過しても、ロシアによって作られたワクチンが世界各国で使われる可能性は高くない。ワクチンを使うためには該当国家の承認を得なければならないが、第III相試験を正式に終えていないワクチンが米国食品医薬局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)などの検査を通過するのは難しいためだ。ロシア当局は、「中南米および中東、アジア諸国がロシアのコロナワクチンに大きな関心を示している」としながら「すでに20カ国を超える国々から10億回分をはるかに超える量の供給要請があった」と明らかにした」

    ロシアは、最終治験が終わらない段階であるので、広く世界が採用できる状況にない。WHOとしては、このロシア製ワクチンの扱いをどうするのか。頭の痛い問題が出てきた。




     

     

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    韓国を襲った大雨で山崩れが頻発した。いずれも太陽光発電基地をつくるために山間部の切り崩しをした結果と判明した。原子力発電所を強引に休止させて、代替エネルギーで太陽光発電基地を造成した結果だ。

     

    韓国の地形は、平野部が少なく山間部に覆われている。太陽光発電には向かない地形にもかかわらず、文政権が「脱原発」を旗印に太陽光発電に切換えた結果である。

     

    2018年7月時点で、次のような事実が判明していた。

     

    韓国山林庁は、「太陽光発電施設現況」資料で、「今年7月に山地太陽光発電施設の実態点検をした結果、調査対象80カ所のうち63カ所で1種類以上の森林破壊危険要素が見つかった」と明らかにした。太陽光発電設備4カ所中3カ所の割合で森林破壊の懸念が提起されたのである。この調査で明らかになった危険要素は286件だった。このうち、土砂崩れの発生の原因になったり、土砂崩れ被害を大きくしたりする可能性のある要素の「土砂流失と堆積(たいせき)」「土地浸食・洗掘現象(川の水で山のふもとや川底が削られること)」「土地基盤・斜面の不安定」が124件で43.4%を占めた。以上は『朝鮮日報』(2018年10月16日付)が伝えた。

     

    2018年7月で、調査対象80カ所のうち63カ所で1種類以上の森林破壊危険要素が見つかっていた。このうち、土砂崩れの発生の原因になったり、土砂崩れ被害を大きくしたりする可能性は、124件で43.4%もあったのだ。

     

    このように、太陽光発電基地がもたらす土砂崩れの危険性が高かったわけで、文政権の責任は免れない。

     


    『朝鮮日報』(8月11日付)は、「韓国山間部の太陽光発電所、70%は文政権発足後に建設、住民ら『山崩れは政府の責任』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「韓国の山地に立った太陽光発電所1万2721カ所のうち約70%が文在寅(ムン・ジェイン)政権下で建てられた。山の木を切り、土壌を削り取り、人工の施設を建てれば、大規模な土壌補完工事をしない場合、山崩れの危険が増すのは常識だ。17年から昨年までの3年間、山地での太陽光発電施設を設置するため、全国の林野で232万7495本の樹木が切られた」

     

    環境保全という名目で始めた太陽光発電が、皮肉にも自然破壊をもたらしている。山間地の多い韓国には向かないのだ。

     

    (3)「山地の太陽光発電施設は文在寅政権の「脱原発」政策以降急増した。文在寅政権発足前の16年で529ヘクタールだった山地での太陽光発電設備接地面積は17年に1435ヘクタール、18年に2443ヘクタールに増えた。全国各地で山地の太陽光発電施設による山崩れが報告されているが、産業通商資源部は「太陽光発電施設が山崩れの原因ではない」と主張している。同部は逆に「今年の山崩れ発生件数1174件に占める太陽光発電施設の被害件数(12件)の割合は1%だ」と指摘した。それも、山地の太陽光発電施設が山崩れを起こしたのではなく、山崩れで施設が「被害」を受けたと表現した」

     

    8月10日午前、太陽光発電施設が崩壊した忠清北道堤川市大郎洞の集落では、17年に出力800キロワット規模の太陽光発電施設が設置された。発電施設が設置された当時から山崩れのリスクなどを理由として、周辺住民が強く反対していた。太陽光発電所から20メートルの距離の自宅に住むキム・ソクジュさんは、「大雨が降ると緩んだ地盤はさらに弱くなり、結局崩壊することになる。安全を後回しにして分別なく許可を出した政府がすべての事態に責任を負うべきだ」と話しているという。

     

    政府は、早くも責任を回避している。政府が、強引に押し付け太陽光発電に伴う山崩れについて「われ関せず」では、無責任の一語である。太陽光発電設備接地面積は、下記のように倍々ゲームで増加に転じている。

     

    2016年で529ヘクタール (文政権発足前)

    2017年に1435ヘクタール(文政権発足後)

    2018年に2443ヘクタール(   同  )

     

    これだけ急増ぶりを見せている以上、山間部の山崩れリスクが高まっているはずだ。

     


    (4)「文在寅政権は2年前、山地での太陽光発電施設が山崩れの原因だと自ら認め、対策を発表した。山林庁は18年4月、「太陽光発電所の建設のために敷地に生えていた樹齢数十年の木を伐採し、山崩れ、土砂流出などの被害も懸念されるのが実情だ」との認識を示した。政府は同年11月、山林資源法施行令を改正し、太陽光発電施設の平均傾斜度の許可基準をそれまでの25度から15度以下へと強化した」

     

    文政権は、2年前に政府の責任を認めている。それが、最近になると責任回避である。信用できない文政権に成り下がった。

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    米中対立が抜き差しならぬ局面に向かうとともに、中国から部分移転計画の企業が増えていることが分った。米国企業だけでなく、北アジア企業、中国企業も「中国脱走」計画という仰天すべき調査結果が出たのだ。米国市場の魅力が、中国市場よりも勝っている証拠であろう。習近平氏は、こういう現実を知らないで「強気一辺倒」では、取り返しのつかない事態に陥るであろう。中国の敗北だ。

     

    『大紀元』(8月11日付)は、「中国撤退に強い意欲、76%の米企業が移転の意向ースイス銀行が調査」と題する記事を掲載した。

     

    中国、北アジア、米国での起業家アンケート調査では、調査対象企業の60%、85%、76%が、生産能力の一部を中国から移転したか、または移転する予定があると回答している。

     

    (1)「スイス銀行(UBS)の最近の調査によると、輸出志向型企業はその生産能力の一部を中国から移転する強い意欲を示している。多くのサプライチェーンの移転は、中国製造業への投資をさらに制限することになる。UBSのリサーチ部門、UBSエビデンス・ラボの起業家アンケート調査によると、中国では60%、北アジアでは85%、米国では76%の回答者が、生産能力の一部を中国から移転したか、または移転する予定があると回答している。現在、外資系企業は生産能力の一部を中国から移転することに意欲的になっており、この2年間でその傾向が強まっている」

     

    中国企業は60%、北アジア企業は85%、米国企業は76%の回答者が、生産能力の一部を中国から移転したか、または移転する予定があるという。ここで驚くのは、中国企業も中国を脱出することだ。輸出企業にとっては、中国に止まるリスクが大きくなってきたのであろう。

     


    (2)「スイスのUBSグループの汪濤アジア経済研究主幹兼チーフ中国エコノミストは、「外資系企業がサプライチェーンを中国以外に移転することや、中国本土への投資の遅れは、中国製造業への投資に2%の影響を与える可能性がある」と分析している。同氏はさらに「サプライチェーンの移転は他の関連業界にも波及するので、経済全体への影響がさらに大きくなる可能性がある」との考えを示した。それ以外にも、長期的に見た科学技術分野での米中分断が最も懸念される。中国側が先端技術を獲得できず、情報交換ができなければ、今後数年でこの分野の生産性や潜在的な経済成長が低下する可能性がある」

     

    下線部分の指摘は重要である。中国側が先端技術を獲得できず、情報交換ができなければ、今後数年でこの分野の生産性や潜在的な経済成長が低下する可能性がある点だ。先進企業が、中国を去れば諸々の損害を受ける。技術情報の杜絶は、決定的な出遅れ要因になる。これが、経済成長率を低下させるのだ。

     

    (3)「今年から、国際社会は科学技術の分野での「脱・中国化」が加速している。たとえば、ファーウェイは9月以降、チップを購入できなくなり、iPhoneの製造工場は中国から撤退し始め、サムスンも製造ラインを中国から移している。さらに米国はWeChatTikTokを禁じ、インドでも、WeChatTikTok、百度、ウェイボーなど100以上の中国製アプリを禁止した」

     

    米国が、本格的な米中デカップリングに動き出している。米国から切り離された中国企業は弱いものだ。米国から技術をスパイしてくる中国である。「泥棒国家」が、米国の出入りを禁じられれば、自らできることは限られる。習近平氏には、こういう本質的弱点を抱えていることが理解できなかったのだ。

     


    (4)「「中国人民銀行の易綱総裁は89日、中国経済は世界の景気回復を「リードしている」、第2四半期では世界で唯一プラス成長を遂げた主要経済国だと前向きな発言を連発した。しかし、米紙『ボイス・オブ・アメリカ』は4日、専門家の分析を引用し、「多くの専門家が中国の第2四半期の経済データに疑問を持っている」と指摘した。さらに「疫病流行が続く中、中国では都市や地区が封鎖され、さらに洪水災害は27の省に影響を与えている。このような大規模かつ深刻な災害環境の中で、中国経済がどのようにして持続的な回復に必要な勢いを得ることができるのか、想像しにくい」と述べた」

     

    専門家は、4~6月期の中国GDPが+3.2%成長になったことに疑問の眼差しを向けているという。不動産だけが支えた経済であるからだ。相変わらずの「住宅バブル」が、押し上げた「怪しげな経済」である点に変わりない。

     

    あじさいのたまご
       

    中国国家主席にとって、もう一つの頭痛の種が増えた。世界一の水力発電所を擁する三峡ダムに「決壊説」がつきまとっていることである。ダム建設中、北京大学の水利工学の権威者が、江沢民国家主席に対して、3度も建設中止を嘆願する文書を提出した、曰く付きのダムであることだ。全人代でも三峡ダム建設を巡って賛否が対立し、反対派の演説のマイク電源を切るまでして着工した経緯がある。環境保護派が、猛烈な反対運動が行なった点で当時、「中国の良心」ともいわれた。

     

    この三峡ダムに決壊説が消えないのは、建設当初からの反対運動が尾を引いている面もある。だが、「決壊しない」と言い切れない弱味を抱えていることも事実なのだ。

     

    『大紀元』(8月11日付)は、「三峡ダムの潜在的危機が中国共産党に打撃―米VOA」と題する記事を掲載した。

     

    中国では6月から、南部を中心に大規模な洪水に見舞われている。国内外の一部の専門家は、中南部に流れる長江に位置する巨大水力発電ダム、三峡ダムの洪水抑制能力について疑問視し、長江上流での記録的な豪雨でダムの決壊の可能性を指摘した。米国の専門家は、三峡ダムが安全上に大きな問題が起きれば、統治の合法性を主張する中国共産党政権にとって、致命的な打撃を与えるとの見方を示した。米『ボイス・オフ・アメリカ』(VOA)が8月11日報じた。

     


    (1)「中国当局は長年、三峡ダムが「万年に1度」、「千年に1度」の大洪水を防げると宣伝してきた。国営新華社通信は200361日に発表した評論記事では、三峡ダムが「万年に1度の洪水を抑制できる」と強調した。しかし今年に入ってから、中南部地域で数カ月深刻な水害に見舞われた後、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は、三峡ダムの「(長江)中下流地域での豪雨に対応する洪水災害抑制能力が限られている」との見方を示し始めた。中国紙『経済日報』を含む一部の国内メディアは、三峡プロジェクトは長江流域での洪水防止システムの一部にすぎず、「万能ではない」と主張した」

     

    中国メディアが、しだいに三峡ダムの堅固性について、自信が持てなくなってきた様子が分る。

     

    (2)「三峡ダムの総貯水量は393億立法メートルで、洪水調節総容量が221.5億立方メートル。しかし、ダム上流の通年の入水量は4500億立方メートル。洪水調節総容量は、上流入水量の5%にも満たない。今年6月29日以降、三峡ダムは複数回、水門を開き放水を行った。米スタンフォード大学フーヴァー戦争・革命・平和研究所(以下はフーヴァー研究所)のマイケル・オースリン研究員は、VOAに対して、三峡ダムだけでは深刻な洪水を抑制できないと指摘した。豪雨が続き、長江上流地域にある古い小型ダムが故障すれば、「壊滅的な」事態が起きる

     

    三峡ダムの洪水調節総容量は、上流入水量の5%にも満たないことが判明した。三峡ダムだけでは深刻な洪水を抑制できないわけで、長江上流地域にある古い小型ダムが決壊すれば、「壊滅的な」事態が起るという。そのリスクが、大きくなっているようだ。

     


    (3)「長江流域の洪水問題を研究する米アラバマ大学のデイビット・シャンクマン地理学教授は同様に、三峡ダムは「今年のような大洪水に対応できない」とした。シャンクマン教授は、「三峡ダムの洪水抑制総能力は、ダム下流と長江中流地域の洪水抑制総能力のわずかな一部だ。一部の洪水を貯水できるが、今深刻な状況では役に立たない」と話した」

     

    このパラグラフの結論は、(2)と同じである。

     

    (4)「マイケル・オーリンス氏は、水害や三峡ダムに関して、中国当局の透明性が欠けているとの認識を示した。「中国当局が、三峡ダムのリスク、同ダム上流に位置する小型ダムのリスク、住民の避難措置、食糧や電力の保障について情報開示ができるか、透明性を持つことができるかが最大な問題だ」。三峡ダムの洪水抑制能力への疑問が強まるにつれ、同ダムの潜在的な危険についての懸念も拡大した。新華社通信は718日、同ダムに「変位、漏出、変形」が見られたと異例に報じた。報道は具体的な数値を示さなかったが、国内外では三峡ダムの決壊に関する危機感が一段と強まった」

     

    中国政府は、「ウソ情報」ばかり流さず、具体的なリスク情報を示すべきである。その方が、「万一」の事態においてリスク軽減に役立つからだ。

     

    (5)「人民日報傘下の「中国経済週刊」は、中国工程院の王浩・院士らの話を引用して、内外の疑念を払しょくしようとした。王院士は「洪水防止能力は、水に浸かれば浸かるほど、100年内にかえってますます頑丈になる」と話した。中国水力発電工程学会の張博庭・副事務局長は「仮に、原子爆弾が直接ダムに命中したとしても、せいぜい大きな穴を開けるくらいだ」と述べた」

     

    下線部は、完全なウソ情報である。

     


    (6)「米国の専門家は、王院士らの見方を否定した。カリフォルニア州にパシフィック・インスティテュート」の所長で水文気候学の専門家であるピーター・グリック氏は、「ダムは、時間の推移につれて頑丈になることがない。ダムが建設完了の時にその構造が決まった」と強調した。また、同氏は三峡ダムが原子力爆弾に攻撃されるのが「出まかせだ」と批判した。グリック氏は、「大型ダムによる環境への破壊を認識したため」、一部の国の政府が大型ダムの撤去工事を進めていると反論した」

     

    ダムは、時間の推移につれて頑丈になることがない。ダム建設時に、その構造によって「寿命」が決まるという。中国の「非良心的」専門家は、中国指導部の顔色を見て、ウソ情報を流すから気を付けねばならない。世界では最近、大型ダムが環境破壊に大きな影響を与えていることから撤去されているという。三峡ダムは、前世紀の遺物に成り下がってきた。

     

    (7)「オーリンス氏は、今年の大洪水は「文化大革命以来、中国共産党が直面した最大の課題だ」と指摘した。党と政府は、『三峡ダムが安全だ』と国民に強調しているが、治水が失敗し、ダムの安全性に問題が起きれば、党の統治の合法性に最も致命的な打撃を与える。これにより発生する経済損失や農業生産問題などで、中国で抗議活動や反体制デモが起きるからだ。三峡ダム問題は共産党政権が最も懸念している『ブラックスワン(めったに起こらないが、壊滅的被害をもたらす事象)』であろう」。

     

    このパラグラフは、極めて重要である。三峡ダムの崩壊が起これば、中国共産党に致命的な打撃を与えるという。新華社通信はこのほど、8月中旬にも三峡ダム地域では少なくとも2回の大雨に見舞われると伝えた。長江流域における中国当局の治水能力が依然に問われているのだ。

     

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    韓国の康外交部長官は、「3泊1日」という強行日程で突然のドイツ訪問になったが、成果を得られなかった。「G7拡大案」は、参加7ヵ国にそれぞれの思惑もあり、メンバーを増やすことは困難であることを確認する形となった。韓国と並んで拡大メンバーに名前の上がった豪州は、G7に参加したいとも意思表示していない。韓国だけが、ドタバタ騒ぎを演じたことになる。日本と肩を並べることが夢であるためだ。

     

    『中央日報』(8月11日付)は、「G7拡大に反対した独外相、『韓国、今年G7会議の参加は歓迎』」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツのハイコ・マース外相が主要7カ国(G7)拡大問題をめぐり「今回のG7首脳会談に韓国が参加することをとても歓迎する」として「韓国は国際的に重要な国」と10日(現地時間)、明らかにした。

    (1)「この日、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官がドイツ・ベルリンを訪問してマース外相と「第2回韓独外相戦略対話」を行ってから記者会見を行った。マース外相の発言は一見韓国のG7首脳会議への出席を歓迎するような言及だったが、G7の正式メンバーへの合流を意味するのかは定かでなかった。ただし、康長官は同じ質問に「韓国が米国側から(G7に)招待されたことを歓迎し、積極的に賛成する」としつつも「これを越えてG7拡大問題はマース外相がおっしゃった通り、国際社会の枠組みの中で議論を経て進展を遂げるべき状況だと考えている」と答えた」

     

    下線部分の発言は、韓国がG7拡大メンバーになることを諦めた印象を与えている。G7の参加国が、メンバー国の増減を決める権利を持つからだ。韓国が、強引に割り込める話でないことに気付いたのであろう。

     


    (2)「韓国外交部がその後配布した報道資料にも、マース外相は「今秋、G7首脳会議が開催される場合、韓国が参加することを歓迎する」と発言したと記されていた。外交部や康長官の説明によると、ドイツが韓国を含むG7の永久的な拡大を賛成したとみることは難しかった。マース外相がロシアのG7会議への参加に対しては「クリーム半島の併合とウクライナ東部紛争を先に解決しなければならない」として明らかに反対の意向を明らかにしたのも「G7体制拡大を望まない」というドイツのかつての立場と軌を一にした」

     

    ドイツは、わざわざアジアからパンデミック下にもかかわらずやってきた遠来の客人に、素っ気ない対応も出来ないが、やんわりと韓国へ「断わり」を入れたに違いない。さすがの韓国もそれ以上、強引な振る舞いを控えたに違いない。韓国は、これで「G7拡大」の夢を諦めるだろう。


    (3)「両国の外相記者会見では駐独米軍縮小に関連した質問もあった。康長官は「韓国とドイツにおいて米国は安保政策にとても重要な軸であり、駐独米軍の縮小問題を(韓国も)注意深くみている」として「在韓米軍の縮小問題は全く議論されたことがない」と答えた。マース外相は「駐独米軍はドイツを含む欧州の安保のためのもので、多くの米軍は欧州にそのまま駐留することになるだろう」と話した」

     

    韓国にとって、もう一つの関心事は在韓米軍縮小問題である。在独米軍が駐留部隊を削減したので、「次は韓国か」と警戒しているもの。NATO(北大西洋条約機構)と韓国では状況は異なるが、米独関係が上手くいかなかったことが在独米軍削減に繋がった。この点では、米韓関係も同じである。いつでも、在韓米軍を削減して在日米軍を増強するという戦略転換があっても不思議のない状況だ。韓国は、米国との関係調整に慎重であるべきだ。



    (4)「韓国とドイツは2017年7月、文在寅大統領のドイツ訪問の際、両国外相戦略対話を発足させた。2018年7月マース外相がソウルを訪ね、康長官が2年ぶりにベルリンを訪問した」

     

    韓国は、ドイツと「外相戦略対話」を行なっている。隣国の日本とは角突き合いの関係で、欧州での「仲間作り」である。日韓には、外交・防衛「2+2」会談もないという素っ気ない関係だ。日韓は、互いに敬遠し合っている関係であるが、韓国自身でもこれが不自然という考えが出てきた。

     

    文政権支持メディアの『ハンギョレ新聞』は、日本が敵地先制攻撃も可能という議論が多数を占めてきた現状から、日韓の外交・防衛「2+2」会談を持つべきだと主張し始めている。日本の敵地先制攻撃論を批判するのでなく、半ば認めたような前提で、日韓の「2+2」会談推進役となっている。日本が、北朝鮮ミサイル基地を先制攻撃する場合、韓国に「先ず一報」をという趣旨だ。だが、この機密情報が北朝鮮に漏れたら一大事である。日韓には、そこまでの信頼感がないのだ。

     

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