勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年08月

    テイカカズラ
       

    文政権の「正体」が、次第に明らかになってきた。中朝に気を使って、日米韓三カ国防衛相会談を欠席したからだ。「敵側」に気を使って「味方」を袖にするとは、なんとも説明できない行動である。韓国国内からは任期5年の文政権が、国民の選択を経ることなく、勝手に「中朝陣営」に加わるような行動に批判と不安が高まっている。

     

    『朝鮮日報』(8月31日付)は、「朝・中の顔色をうかがって先延ばししている間に一人ぼっちになった韓国」と題する記事を掲載した。

     

    米国と日本の国防相が29日にグアムで韓国抜きの会談を行った。これは、北朝鮮と中国を意識した韓国政府が会談への参加に消極的な態度を示しことが理由だった。米国は当初、韓国の国防長官を含む3カ国によって北朝鮮問題と中国問題について話し合うことを希望していた。韓国政府は、コロナや国内での日程などを理由に明確な態度を示さず、今月末になって「出席は難しい」との意向を伝えたという。最終的に米国と日本の国防相だけで、北朝鮮の大量破壊兵器など韓半島問題について意見を交換する形となった。

     

    (1)「韓国の不参加については、「対北朝鮮制裁の趣旨に反する」という度重なる警告にもかかわらず、南北交流事業を強行しようとする韓国政府の態度も影響したようだ。外交関係者の間では「韓国がいるべき場所に姿を見せず、やってはならないことをやる事態が相次いでいる」との指摘も出ている」

     

    文政権の外交感覚は、完全に狂っている。「親中朝・反日米」路線にそった外交路線を歩んでいるからだ。自由世界の潮流から完全に外れたコースである。

     

    (2)「ある外交筋は、「韓国にとって安全保障面での最大の脅威は北朝鮮だ。その北朝鮮の大量破壊兵器や弾道ミサイルへの対応策を話し合う場から、肝心の韓国が抜け米国と日本だけで頭を突き合わせた」とした上で「韓米日の三角協力体制が弱体化している」と指摘した。一部からは「米中が激しく対立する状況で、韓国政府が米国の側に立つという形を避けるため、今回の会議に参加しなかったのでは」との見方も出ている。コロナと国内の日程は表面的な理由にすぎないということだ」

     

    下線の見方が正しいであろう。中朝に気を使い日米を袖にしている。これが、「独自外交」と嘯(うそぶ)いているのだろうが逆である。孤立外交の道である。

     

    (3)「米国のエスパー国防長官と日本の河野太郎・防衛大臣はこの日行われた会談で、北朝鮮と中国による域内での挑発行為への対応策について集中的に意見を交換した。両国は「北朝鮮の全ての大量破壊兵器と弾道ミサイルの廃棄に向け、国連安保理による制裁決議を完全に履行することが重要との点で意見が一致した」と説明した。米国防総省によると、エスパー長官は「北朝鮮の大量破壊兵器とその生産手段、運搬手段の完全な除去など、トランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)委員長による2018年の(シンガポール)首脳会談で発表された共同声明について、これを完全に履行する約束を強調した」という」

     

    下線部分は、韓国にとって困るのだ。北朝鮮が核を保持し続けて、将来の南北統一時には統一朝鮮の大きな「資産」になると踏んでいるに違いない。文政権は、南北統一が夢である。その夢実現を打ち壊す会談には出席したくないのだろう。

     


    (4)「会談では、南シナ海情勢と東シナ海情勢についても意見交換が行われた。エスパー長官は「中国による周辺国に対する悪意を持った行動が続いている」「地域を不安定化させる中国の行為に反対する」と発言した。双方は尖閣諸島(中国名、釣魚島)が米国による日本の防衛義務を定めた米日安保条約第5条の適用範囲であることも再確認した」

     

    日米防衛相会談では、日米同盟の絆の深さを再確認して尖閣諸島防衛で同一行動を取る。韓国にとっては、この日米の結束がまぶしいであろう。

     

    (5)「複数の外交関係者からは懸念の声が相次いでいる。米国、英国、フランス、ドイツなど国際社会の多くの国が進めている対北朝鮮政策の流れに韓国が逆行し、完全に孤立する状況を自ら招いたというのだ。実際に韓国統一部(省に相当)は先日、南北物々交換事業を推進しようとしたが、北朝鮮側の業者が安保理の制裁対象だった事実が明らかになり、事実上中止した。これについても米国など国際社会から「対北朝鮮制裁を守らねばならない」との指摘が相次いでいる。それでも統一部の李仁栄(イ・インヨン)長官は28日「個別観光の形で金剛山事業が再開されるチャンスを積極的に開いていきたい」と述べ、北朝鮮と協力する政策を強行する意向を明らかにした」

     

    韓国の北朝鮮政策は、国際社会へ背を向けている。これは、韓国外交が孤立している証拠だ。ここまでして、北朝鮮のご機嫌取りをしようという狙いは、将来の統一を視野に入れた行動だ。

     


    (6)「外交次官を経験したある外交官OBは、「韓国が米日と疎遠になることを中国は望んでいる」「今回の会談に参加しなかったことは、中国にとっては『良い知らせ』だったはずだ」との見方を示した」

     

    韓国外交は、日米と溝をつくり中朝へ接近するという異常な行動である。『朝鮮日報』(8月31日付社説)は、次のように嘆いている。

     

    (7)「この政権は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長による「非核化の意志」といううその幻想をつくり上げたかと思えば、今度は中国と北朝鮮の顔色うかがいが完全に日常化している。保身しか頭にない軍の関係者たちは権力に迎合するばかりだ。韓米日の協力関係から離脱し、中朝の側に向かうことに国民は同意したのか。任期が5年しかない政権が、5100万人の国民をどこに引っ張ろうというのか」

     

    文政権は、恐るべき青写真を描いている。韓国を中朝へ「身売り」したいと策しているのだ。

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    南北統一で人口減補う

    全体主義で危機に対応

    にわかな軍拡論の背景

    日本と戦い復讐果たす

     

    韓国の合計特殊出生率(一人の女性が生む子どもの数)は昨年、「0.92」と世界最低を更新した。今年に入っても減少しており、上半期は「0.88」と下げ止まることなく悪化が続いている。韓国政府は、文政権になってから人口対策会議も開催せず放置したままだ。「出生は個人の選択」と他人事のような認識に変わっている。

     

    19年の合計特殊出生率の四半期別の数値を整理しておく。

    1~3月期   1.02

    4~6月期   0.92

    7~9月期   0.89

    10~12月期 0.85

     

    昨年の上半期(1~6月期)の合計特殊出生率は、0.97である。今年の上半期は、0.88である。約10%の減少だ。ここから推定される今年の合計特殊出生率は、「0.83」程度までの低下が懸念される。この調子で低下すれば、来年は、「0.75」近辺へ落込むだろう。すでに昨年7~9月期に、ソウルの合計特殊出生率は「0.69」にまで低下しているのだ。韓国全体で「0.7」を割り込むのは、時間の問題であろう。ここまで来れば、「韓国絶滅危惧種」論が出ても不思議はない。国家存亡への危険な道を歩んでいるのである。

     

    日本の合計特殊出生率は昨年、「1.36」と4年連続の低下である。国内では、事態を深刻に受け止めているが、韓国にはそういう議論さえ消えている。一国の人口が、横ばいを維持するに必要な合計特殊出生率は、「2.08」である。韓国は、すでにそのほぼ半分の「1」を大きく割り込んだままである。

     

    合計特殊出生率が1を下回ったことは、一世代が過ぎれば出生数が現在の半分以下に減少するという意味だ。約30年後の韓国の合計特殊出生率は、「0.5」を割り込むという話だが、現実はそれをはるかに上回る速度で低下している。ここまで分っていながら、文政権は、「人口問題」へ真剣に取り組まないどころか、悪化を放置している理由があるはず。それが、何かを究明することが必要であろう。

     

    南北統一で人口減補う

    私は文政権が将来、北朝鮮と統一することで、人口問題を解決する腹積もりであると見る。この南北統一を前提にすると、人口は次のような規模(2019年現在)になる。

    南北朝鮮7735万人(韓国5170万人、北朝鮮2566万人)と英・独・仏なみになるのだ。

    ドイツ  8313万人

    フランス 6706万人

    イギリス 6683万人

     

    そこで、文政権はあえて人口問題に触れずにいるのだろう。韓国国内で自然発生的に、人口減少問題をきっかけに、「南北統一論」を高めようという狙いに違いない。

     

    合計特殊出生率は、経済問題と大きく関わっている。失業率が高ければ結婚を見送る。それが、合計特殊出生率を引下げるからだ。文政権は、大幅な最低賃金引き引上げによって失業率を高めるという、完全に誤った政策を行っている。国際機関からの是正勧告を無視しているが、それには前記のような明確な目的(南北統一)が存在するためであろう。

     

    南北統一に当って、韓国進歩派の先兵役は労組と市民団体である。これら本来の非営利・非政治の組織が、完全に政治と密着化しているのが韓国の特色である。文政権は、これら支持母体の支援強化策として、労組には最低賃金の大幅引き引上げ。市民団体には手厚い補助金を給付している。その一環として強引に原発を廃止させ、太陽光発電で多額の補助金を市民団体に与えたのだ。すべて手抜かりなく、南北統一への準備を進めている。

     


    韓国の人口は、今年から自然減に入った。出生数よりも死亡数が多い結果だ。この事態は、これまで想定されていた時期を4年も繰り上がっている。日本の人口減は、2008年に始まった。韓国の人口動態は、日本よりも約25年のタイム・ラグの存在が知られている。この間隔からすれば、韓国の人口減は2033年に始まってもおかしくなかった。それが、今年に繰り上がったのである。韓国の少子高齢化がそれだけ、日本よりも早いスピードであることを示している。事態は、極めて深刻なのだ。

     

    韓国国会では、与党の議席数が6割と絶対多数を占めてから、横暴な議会運営を行っている。これと軌を一にして、文政権も独断的な政権運営を行っている。これに対して、警戒論が高まっている。野党の保守派はもちろん、学会進歩派の長老までが相次いで、「韓国政治の危機」を訴えるようになっている。これは、韓国内部に容易ならざる事態が持ち上がっている結果だ。

     

    このメルマガではこれまで、韓国政治の危険性を指摘してきたが、文政権の北朝鮮接近姿勢が露骨になっている。これと合せ、韓国の政治体制を「全体主義」に変える意図が明確という指摘も出てきた。その見解を精査することにしたい。(つづく)

     

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    パンデミックで世界中へ大変な経済的損失を与えた中国が、窮地に立たされている。中国と外交関係を結んでいるチェコが、「一つの中国論」を無視して、上院議長が89人もの大使節団を率いて台湾へ到着した。中国の反対を無視しての訪問である。中国はメンツを潰された形であり、米国は拍手を送っている。中国外交の綻びを象徴する話題である。

     

    今回は、ヴァーツラフ・ハヴェル元チェコ初代大統領の遺志を継いでの訪台であるハヴェル氏は1968年、プラハの春と呼ばれる改革運動が、ワルシャワ条約機構軍によって潰された後の「正常化」時代に、反体制運動の指導者として活動した。共産党政権打倒のビロード革命後の1989年12月に連邦最後の大統領に選出され、チェコスロバキア解体後の1993年1月に新たに成立したチェコの初代大統領に就任、1998年に再選され、2003年2月の任期満了で退任した。台湾にとっては、得がたいチェコからの賓客である。

     

    『日本経済新聞 電子版』(8月30日付)は、「チェコ代表団が台湾に到着『卑劣な行為』と中国反発」と題する記事を掲載した。

     

    チェコのミロシュ・ビストルチル上院議長ら代表団89人が30日、台湾に到着した。台湾とは国交はないが、公式訪問を通じ、関係強化を図る。中国は、中国大陸と台湾は1つの国に属するという「一つの中国」を主張しており、今回の訪問は主張に反する「卑劣な行為」だとして激しく非難した。

     


    (1)「代表団は、チェコのナンバー2であるビストルチル上院議長のほか、研究者、経済人、メディア関係者らで構成された。台湾の総統府によると、93日に蔡英文(ツァイ・インウェン)総統との会談も予定している。チェコ上院は5月、今回の台湾への訪問支持を圧倒的多数で決めた。代表団は首都プラハ出発を前に「今回の台湾訪問はチェコのヴァーツラフ・ハヴェル元大統領の精神を示すことだ」と強調した」

     

    チェコが苦しい経験を経て、民主主義国になった経緯は、台湾の民主化とも深く関わっている。中国政府が反対しようが非難しようが、チェコ代表団はそんな雑音に屈せずに訪台した。この裏には、米国の支援があることは間違いあるまい。何か、すがすがしい話である。

     

    (2)「2011年に死去したハヴェル元大統領は1989年当時のチェコスロバキア共産政権を非暴力で倒した「ビロード革命」の立役者で、チェコの初代大統領。中国の圧力を受ける台湾の国際社会への復帰を願い、国連加盟の働きかけを行うなど台湾との関係も深かった。ハヴェル氏の遺志を継ぎ、2月にヤロスラフ・クベラ前上院議長が中国の反発を振り切り、訪台予定だったが、直前の1月に急逝した。今回の代表団はいったん中止となった訪台を実現した形となる。台湾の外交部(外務省)は「心から歓迎する」とのコメントを発表した」

     

    今回のチェコ代表団の訪台は、台湾の人々にも大きな勇気と連帯のメッセージを残すだろう。チェコのゼマン大統領やバビシュ首相は、チェコの外交方針に反するなどとして今回の訪問に反対を表明している。ただ、チェコ国内では、旧ソビエトの強い影響下にあった時代にも民主化を求めた不屈の闘志を見せてきた。こうして、チェコに圧力をかける中国への反発も強く、今回の台湾訪問を支持する声も少なくないと報じられている。チェコ訪問団に続いて、「一つの中国論」を無視した訪問団が現れるだろう。

     


    (3)「チェコ代表団の訪台は米国も歓迎している。今月、東欧を歴訪したポンペオ米国務長官は12日、チェコ上院で演説して中国を非難し、チェコ代表団の訪台を強く支持した。アザー米厚生長官も、米国の閣僚として6年ぶりに台湾を訪問したばかりで、中国への反発姿勢を強めている。台湾メディアによると、チェコ代表団の滞在最終日となる94日には、米国の対台湾窓口機関である米国在台湾協会(AIT)も参加し、共同でフォーラムを開く予定もある」

     

    米国も参加して、チェコ・台湾の三者でフォーラムを開催するという。共産主義反対という大きな声を発するのであろう。

     

    (4)「チェコと中国を巡っては、プラハ市が台湾問題を理由に昨年10月、北京市との姉妹都市協定を解消し、台北市と姉妹都市協定を結ぶなど、関係が特に最近悪化している」

     

    プラハ市は、北京市との姉妹都市協定を破棄し、台北市と姉妹都市協定を結んでいる。都市レベルでも、チェコの「脱中国」が進んでいる。中国の「戦狼外交」の弊害によるものであろう。

     

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    文大統領の外交政策は、ことごとく失敗している。「原理主義」が、相手国との妥協を阻んでいるからだろう。日韓外交が、その適例である。徴用工賠償問題も、韓国大法院の判決を金科玉条としており一歩も動かない姿勢である。「司法の見解は尊重すべき」と紋ギリ型発言に終始している。その司法を影で動かしているのが、文大統領である。文氏は、司法を動かす黒幕である。

     

    『中央日報』(8月30日付)は、「韓国には前任大統領の成功事例から学ぶ伝統がない」と題するコラムを掲載した。筆者は、米国のマイケル・グリーン戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長である。

     

    (1)「文在寅(ムン・ジェイン)政権は執権4年目である。しかし、外交的側面から見ると韓国政府は難航中だ。韓米同盟は深刻な危機に直面した。この危機の相当部分はトランプ大統領の稚拙で商業的なアプローチのためだが、青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)もやはり米国の外交戦略から外れる動きを見せ問題を拡大したのも事実だ。韓日関係も最悪の状態だ。中国との関係進展もほとんどない。ロシアは韓米同盟を弱める隙間ばかりうかがう。東南アジアと欧州諸国との関係は悪くないが、外交で最も重要な部分は影響力が大きい国との関係だ」

     

    文政権の外交は、すべて失敗している。対米、対中、対日と悪化したままだ。対日外交では、解決の糸口さえ掴めないままである。原理主義で、妥協を知らない結果である。

     

    (2)「こうした苦境は韓国政府の誤りだけで始まったのではない。文在寅大統領の相手がオバマ、胡錦涛、メドベージェフ、小渕だったら、現在の韓国外交ははるかにスムーズだっただろう。そうだとしても当面の問題を克服する責任は青瓦台にある。文大統領の前任者もやはり在任期間中に難関はあったが解決した」

     

    文外交の失敗は、対米と対日は原理主義で失敗。対中外交は、妥協しすぎて見下されている結果だ。要するに、素人外交と言えよう。

     

    (3)「金大中(キム・デジュン)元大統領は、周辺国と円満な関係を維持した韓国で唯一の大統領だった。これは単純な幸運ではなく戦略的な洞察と断固とした決断力のおかげだった。1998年に日本の閣僚が酔った勢いで「韓国は日本の植民統治に感謝しなければならない」と話して韓日関係に危機をもたらしたが、金元大統領はこの妄言を無視し、予定通りに東京訪問を強行した。金元大統領は韓日両国がともに開いていくビジョンを提示し、これに対し小渕元首相は日本の植民地支配に対する反省と謝罪の意を明らかにした。これと対照的に文在寅大統領は15日に日本との協力を約束しながら、すでに日本側で拒絶した要求条件を受諾すべきとの前提を付けた。これは外交ではない

     

    韓国司法が、行政権(条約締結権)に立ち入って、旧徴用工賠償問題で判決を下すこと自体が、国際法に抵触しているのだ。日本が、こういう「田舎司法」を拒否しているのだから、韓国は独自の解決案を出さなければならない。それを理解できないところに、文外交の限界があるのだ。

     


    (4)「盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領はたびたび米国を批判したが、韓米同盟の実質的な進展に向け努力した。彼は与党の反対を押し切って韓米FTA締結とイラク派兵を推進した。盧元大統領は大統領の決断力ある外交が韓国の影響力を拡大し青瓦台の信頼を高めるという教訓を残した」

     

    文氏の政治の師匠である、盧武鉉元大統領は柔軟であった。日本に対しては、徹底的な「親日狩り」をする異常さを見せていた。文大統領は、この悪い方だけを学んで良いところを学ばない人である。


    (5)「李明博(イ・ミョンバク)元大統領は、韓国外交で2つの大きなことをした。ひとつはオバマ前米大統領を韓米関係の報道官になるようにしたのだ。オバマ政権は発足当時、アジアを日本対中国の対立構図で理解し、幅広い地政学的戦略を構想した。韓国は戦略的考慮対象ではなかった。しかし2009年に李元大統領はオバマ前大統領との初めての会談の際に貿易をはじめとするアジアのさまざまな懸案で米国が必ず遂行しなければならない役割を注文した。当時深い印象を受けたオバマ大統領は、「韓米同盟がアジア安全保障の核心」と話した。米大統領選でバイデン候補は、米国と同盟国の関係を復元するという意向を明らかにした。それが実際に進められる場合、文大統領は李元大統領の外交を参考にすべきだ」

    文氏は、「親中朝・反日米」が基本路線である。韓国は現在、前記4ヶ国外交すべてが行き詰まっている。米国とは、親中朝が障害になって上手くいくとは思えないのだ。

     

    (6)「現代政治の否定的特徴のひとつは、国の指導者が彼らの前任者をけなしたり、無視するということだ。韓国の政治指導者は、あたかも自身が過去の失敗と関係がない、新しい救援者のように行動する傾向がある。現職大統領が、前任大統領の成功事例から学ぶ伝統が韓国にはない。残念だ」

    韓国は、外交で一貫性がない国である。好き勝手なことをしている感じである。対日外交では、反日が自らの人気を高めるという異常な国民性を土台にしている。日本が呆れ果てる理由である。





     

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    韓国の文大統領は、国内で強い批判を浴びている。「公正・平等」を口癖にしてきた文大統領が、現実にやっていることは「不公正・不平等」である。自らを支持する陣営に手厚い「返礼」をし、対立する陣営(保守派)には、手痛いしっぺ返しをしているからだ。今や、保守派はもちろん、進歩派の学者グループからも「全体主義」と非難されている。文在寅大統領は、偏狭な「陣営論理」の虜になっている。

     

    『朝鮮日報』(8月30日付)は、「危うくだまされるところだった」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の朴正薫(パク・チョンフン)論説室長である。

     

    「チョ・グク元法務部長官事件」がなかったら、今ごろはどうなっていただろうか。反則と偽善は覆い隠され、チョ・グク元長官は大統領街道を突っ走っていたかもしれない。もし「チョ・グク事件」がなかったら、文在寅(ムン・ジェイン)大統領がチョ・グク氏の法務部長官任命を強行していなかったら、一体どんなことが起きていたのだろうか。

     

    (1)「今ごろ、彼は国会入りを果たしたか、重責を担って大統領選挙への道をひた走っていたにちがいない。商品性に優れている上、ファンたちも熱狂的に支持していたため、支持率で12位を争うことぐらいは朝飯前だったことだろう。この勢いを背に2年後の大統領選挙に挑んでいたとしたら、そして「チョ・グク大統領」の誕生が現実のものになっていたとしたら、と考えただけでも、大韓民国にとって悪夢以外の何物でもない」

     

    韓国進歩派の看板は、完全に偽りであった。進歩派を名乗るが、実態は味方だけを手厚く遇し、反対派には冷や飯を食わせる極端な政権である。味方の労組と市民団体は、幸せな「3年余」であろう。

     

    (2)「チョ・グク氏の事件は、親文左派の偽善も暴き出した。庶民大衆の味方を自任していた左派知識人たちが、味方の貴族のような特権については口を閉ざした。口さえ開けば「公正と正義」を叫んでいたのに、チョ・グク一家の反則と不公正についてはかたくなに肩を持った。もう一方の側の過ちについては非常に残酷だった彼らが、味方の過ちには目をつぶるのを目の当たりにし、人々は偽善的左派の正体を目撃することになった。「進歩」ではなく、「陣営」の奴隷であることが明らかになった。もし、それがチョ・グク氏でなかったら、分からなかったかもしれない。真実を悟らせてくれた彼に対し、感謝くらいすべきなのかもしれない」

     

    前司法部長官の「チョ・グク」氏は、子どもの不正入学から資産問題まで20を上回る容疑で起訴された。法廷で明かされる証拠や証言は、目を覆うほどの「惨状」である。この本人が、文大統領からもっとも熱い信頼を受けていたのだ。文氏の目は、節穴と批判されている。

     

    (3)「国民の立場からすると、ここ3年間は幻想と錯覚から目覚める過程の連続だった。だまそうとする権力とだまされまいとする国民が、絶えず「真実」を巡りゲームを展開した。キャンドルで民衆の心をつかみ誕生した政権であるだけに、期待は大きかった。無能な左派かもしれないが、純粋さだけは信じることができると思った。少なくとも前政権のような独善と不通、非民主的な国政独走などはない、と信じて疑わなかった。しかし、誤算だった。信頼と期待は次々と裏切られ、今ではぼろ切れのようになってしまった」

     

    こういう政権を支持し、総選挙で6割の議席を与えた国民も同罪と言うべきだ。文大統領の本質が分らないからだ。

     


    (4)「3年前の就任演説で文大統領は「権威主義の清算」を最初に約束した。脱権威を掲げた政府に権力は集中し、大統領は偶像化された。大統領夫妻に対する与党の果てしない称賛は、「ここは北朝鮮か」という声が聞かれるほどだった。文大統領は「分裂と葛藤を終わらせる」と述べた。口では統合を叫んだものの、敵と味方をえり分け、味方にだけ寄り添うやり方は、歴代政権の中で最高潮だった。民主化闘争を勲章のように掲げる政権で、民主主義は傷だらけになってしまった。不通と傲慢(ごうまん)、力で推し進める国政独走は、新独裁論議を巻き起こした」

     

    下線のように、敵味方に分類して敵に圧力を加える。この際のテコが、「反日」であった。さも、公正を装いつつ反対派を弾圧する。もっとも醜い大統領に成り下がったのである。

     

    (5)「弱者の味方と言いながら、弱者を苦しめる政府となった。貧しい人をさらに貧しくし、貧富の格差をむしろ拡大させる政策に走った。法の前の平等を訴えたかと思うと、実際は法治の破壊者だった。大統領の友人を当選させようと大統領府が選挙に介入したという疑いまで持ち上がった。権力機関を政治から独立させると言っては、検察を掌握しようとあらゆる手段を導入した。フェミニズム大統領と言いながら、味方の権力型セクシャルハラスメントには目をつぶった」

     

    このパラグラフは、文政権が行なってきた最大の罪を指摘している。最低賃金の大幅引き上げで、労組は潤った。一方で、零細企業は個人企業の従業員は、失業というムチを当てられることになった。最賃引き上げに応じない企業は、罰せられるからだ。罪を逃れるには、従業員を解雇するしかなかった。

     

    (6)「この全ての逆走行に共通していることは、意図されていたということだ。無能やミスではなく、計算された選挙工学の結果だ。理念を優先し、分裂を助長、自分の味方に良くしてあげた方が選挙に有利だと考える。政権発足の時に掲げていた全ての約束が崩壊した。最初から約束を守るつもりがなかったのかもしれない。私たちが知っていた政権、私たちが考えていた大統領像ではなかった。国民よりも陣営、国益よりも政党の利益を優先させる政権という事実が明らかになった

     

    文氏は、総選挙で与党が勝つために味方だけを優遇した。これは、発展途上国の選挙手法である。「国民よりも陣営、国益よりも政党の利益を優先させる政権」であることを証明した3年余である。

     

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