勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年08月

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    中国は、一帯一路計画を餌にして発展途上国へ、過大な建設プロジェクト押し付けてきた。その挙げ句、支払いに窮すれば担保を取り上げるという「高利貸し商法」をやっている。EU加盟国のエストニアにもこの手を使おうとしたが「未遂」に終わった。さすがは、エストニアである。人口130万人とはいえ、EU加盟国である。国際情報に疎い訳がない。中国の前歴を調べ上げ、「怪しい」と睨んで、世界一の海底トンネル計画を中止したのだ。

     

    それにしても、中国はエストニアまで手を伸している理由は何か。

     

    2010年以降の北極域は、他の地域の平均と比べて2倍以上のペースで気温が上昇し、特に夏場の海氷域面積は縮小している。この結果、航路利用や資源開発の動きは逆に活発化した。特に目立つのは中国である。中国は18年、「北極近傍国家」を打ち出し、巨大経済圏構想「一帯一路」の一環として「氷のシルクロード」建設を掲げたのである。こうしてエストニアへ急接近することになった。

     

    中国の狙いはEU加盟国であるエストニアを介して欧州市場へのスムーズなアクセスを得ることとされている。また輸出入手続きを効率化できるデジタル技術の活用も視野に入れているという。中国が掲げる「一帯一路」はアジアと欧州、アフリカを陸路と海路で結び、そこに巨大経済圏を生み出そうという野心的な構想だが、エストニアは欧州へのゲートウェイとして中国にとって必要不可欠な存在になっている。

     


    普通ならば、こういう大事なエストニアに対して、慎重な対応をするはず。中国は、逆にエストニアを「カモ」にして大儲けを企み、それが露見して失敗したもの。この失った信頼を取り戻すのは難しいだろう。

     

    『大紀元』(8月4日付)は、「中国資本支援の『世界最長の海底トンネル建設計画』断念へーエストニア」と題する記事を掲載した。

     

    エストニア政府はこのほど、中国資本の支援を受けた、フィンランドの首都ヘルシンキとエストニアの首都タリンを結ぶ「世界最長の海底トンネル建設計画」を却下する見通しだ。

     

    (1)「エストニアのアーブ行政大臣はメディアに対して、「160億ユーロ(約1兆9961億円)もかかる巨額な建設費用の出所が不明瞭な上に、経済的、環境的、安全上の懸念が解消されていない。利用者数および貨物量の予測などについても不安が残っている」と理由を述べた。「話し合いを重ねてきたが、われわれの懸念解消には至らなかった。あらゆる点で国益に反する同プロジェクトを中止するよう政府に助言する」と付け加えた」

     

    約2兆円もする巨大プロジェクトである。採算計画では念には念を入れて計算するもの。その計算根拠が曖昧でエストニアから不審の念を持たれたのだ。発展途上国並みに扱って失敗したのであろう。

     

    (2)「2018年に行われたトンネル実現のための可能性調査によると、「2050年までに年間1250万人の乗客と400万トンの貨物が輸送可能だ」という。プロジェクトの建設費用が高いため、費用便益比はわずか0.45だった。エストニア政府は昨年8月から、同計画を疑問視していた。同国のタービ・アズ経済インフラ大臣はメディアに対して、「開発企業はいまだに利用者数をどのように算出したのかを説明できていない」と不信感をあらわにした」

     

    海底トンネルの費用便益比は、わずか0.45だった。費用1に対して、便益が0.45である。これは、中国式のインフラ投資の算式かも知れない。エストニアが、首を縦に振るはずがない。「中国の開発企業はいまだに利用者数をどのように算出したのかを説明できない」という、考えられない杜撰さであった。費用便益比は、1以上でなければ「事業」として成り立たないのだ。

     

    (3)「このプロジェクトは中国資本や中国企業からの支援を受けている。フィンランド・エストニア・ベイエリア開発会社は昨年、中国のタッチストーン・キャピタルから150億ユーロ(約1兆8714億円)の建設資金を調達した。また、中国鉄道国際グループ、その親会社である中国鉄道、中国交通建設からも支援を受けている。アーブ行政大臣は、「エストニアとフィンランドの公的機関が支援する別のトンネルプロジェクトに賛成している。 国境を越えたトンネルの設置は、両国の共同事業とその共通の意志があってこそ可能になる」と述べた」

     

    約1兆9961億円もかかる巨額な建設費用に対して、中国企業から約1兆8714億円の建設資金を調達した。ほとんど、中国丸抱えである。パキスタンでも、この方式で中国企業が受注した。その後、パキスタン側が工事費を再計算して、利息の二重計算や見積額にデタラメさが発覚して大問題になっている。多分、エストニアでもこれと同じインチキ計算がされていたに違いない。エストニアは、目ざとくそれを「発見」して、計画を白紙にして難を免れたのだ。

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    米国は、中国の海洋進出に備えて防衛線の再配置を進めている。これまで、朝鮮半島が軍事紛争の発火点と見てきたが、北朝鮮経済の疲弊からそのリスクが低下していると分析。南シナ海や東シナ海が、今後の防衛線になるとの結論に達した。これを踏まえて、在韓米軍の縮小を行なうという見方が強くなっている。

     

    『中央日報』(8月4日付)は、「在韓米軍の縮小、目を背けても迫る(中央日報)と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のナム・ジョンホ論説委員である。

     

    7月末、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)に在韓米軍縮小関連の記事が掲載され、議論を呼んだ。3月に米国防総省が在韓米軍縮小案をホワイトハウスに報告したという内容だった。すると韓国国防部側は「(この問題が)韓米間で議論されたことはない」と強調した。縮小の可能性はないというニュアンスだ。果たしてそうだろうか。この問題が韓米間の十分な議論を経て決定される事案なら正しいかもしれない。しかし歴史はそうではない。

    (1)「米国が韓半島(朝鮮半島)から米軍を抜いた(縮小)のはニクソン、カーター、ブッシュ政権当時の3度だ。ところがすべて韓国との議論なく一方的に決定した。決定の過程で韓国は影も見えない。したがって韓米間で話が出ていないからといって軍撤収はないという考えは妄想にすぎない。米政府が軍撤収を控えていつも韓国軍の戦力強化に努力した点も注目される。3人の大統領ともに米軍撤収による韓半島の安保空白が心配になったようだ。7月28日に宇宙ロケットに対する固体燃料使用制限を米国が解除したのが尋常でないと感じられるのもこのためだ。米軍追加縮小のための整地作業かもしれない」

     

    過去3回、在韓米軍は縮小されてきた。その際の共通現象は、韓国軍の戦力強化に努力したことである。今回は、米国が7月28日に宇宙ロケットに対する固体燃料使用制限を解除した。この措置を「尋常でない」と感じなければならないのだ。

     


    (2)「それだけではない。在韓米軍縮小の兆候はあちこちに表れている。7月29日に公式発表された在独米軍の3分の1縮小、そして同月21日に公開されたエスパー国防長官の発言も在韓米軍の縮小を予告する。エスパー長官はあるセミナーで「韓国から軍隊を撤収しろという命令を出したことはない」と述べたが、これを韓国メディアは縮小説を否認する発言と解釈している。しかしこれも誤解だ。当時、エスパー長官は「米軍の縮小や撤収を考慮しているのか」という質問に対し、撤収だけを否認した。縮小の可能性は残しておいたのだ。さらにエスパー長官は「米軍の最適化のためにすべての地域司令部の調整を検討中」と話した。脈絡上、完全に撤収することはないが、再配備という名で在韓米軍の一部を他の地域に送るという意味と考えることができる

     

    在韓米軍の縮小は、在ドイツ米軍の縮小と合せて米軍の再配置論と絡んであり得ることだ。韓国は、南シナ海問題について中国に遠慮して発言せずにいる。こういう韓国に対して、米軍がどのような印象を持っているか明らかだ。韓国の中国寄りを苦々しく見ているはずだ。

    (3)「これに関連して特に関心を引くのは、7月17日に発表された米陸軍戦略大学傘下の戦、略問題研究所(SSI)の報告書だ。このリポートを読むと、縮小は時間の問題という確信を与える。軍事専門家および現役将校の15人が2年間かけて共同作成したというこの報告書の核心は2つある。まず米国と中国の「超競争」がよりいっそう激しくなるのに対し、北朝鮮の脅威は弱まるというものだ。すなわち、今は米国の軍事力が上回るが、すぐに技術格差が消えて中国が追いつくということだ」

     

    中国軍の脅威が高まるが、北朝鮮脅威は減少する。米国は、こういう判断で在韓米軍を縮小して、海洋防衛に配置するというのだ。

     


    (4)「一方、北朝鮮の場合、深刻な経済難のため通常兵器の軍事力はしだいに弱まると、この報告書は予測する。このため北東アジアに集中している米軍をグアムなど南シナ海沖に配備するのが当然だというのが、この報告書の結論だ」

     

    北朝鮮の脅威は低下するので、在韓米軍をグアムなど南シナ海沖に配備するという戦略変更である。

    (5)「このように在韓米軍の縮小があす発表されてもおかしくない状況にもかかわらず、当局は傍観している。実際、李仁栄(イ・インヨン)統一部長官は人事聴聞会でこのように述べた。「在韓米軍の縮小や撤収に関して政府はいかなる立場も持っていない」と。必死に防ごうとした過去の政権とは完全に違う状況だ」

     

    韓国政府は、在韓米軍縮小の穴を埋める努力をしないどころか、反日で憂き身をやつしている。在韓米軍縮小の動きを傍観しているのだ。韓国外交部の金仁チョル(キム・インチョル)報道官は8月4日の定例会見で、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)に関して「日程にとらわれずにいつでも終了できる」との立場を示した。GSOMIAはますます必要になるにもかかわらず、「日本憎し」で正常な判断力を失っている。どこか狂っているのだ。


    (6)「もちろん在韓米国の縮小だけでなく完全撤収もいつかは終えなければいけない。とはいえ、国益のためにいつ、どのように推進するのがよいかは別の問題だ。明確なのは、我々の生命がかかる事案であり、在韓米軍の撤収は北朝鮮の全面的非核化と交換をするほどのカードとして活用しなければならないという点だ。そうではなくトランプ大統領の再選用サプライズショー程度として使用されるなら、これは取り返しがつかない国家的浪費だ。政府は今後の対北朝鮮交渉のためにもどうにかしてこうした惨事は防ぐ必要がある」

     

    在韓米軍縮小が不可避となれば、日本と争っている場面であるまい。そういう地政学的な配慮の全くできない国家である。



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    中国は、世界中で自国の政治的影響力拡大に努めている。日本もその対象国である。だが、日本人の「中国嫌い」は世界でも並外れて強い。中国の対日浸透は、容易でないという報告が出た。米国有力シンクタンクCSIS(国際戦略研究所)の分析である。

     

    『大紀元』(8月4日付)は、「中国による対日工作、NPOや創価学会がパイプ役=米シンクタンク報告」と題する記事を掲載した。

     

    米国の有力シンクタンク・国際戦略研究所(CSIS)は721日、中国共産党による対日工作についての報告「China’s Influence in Japan」をまとめた。報告に当たって、関係者の取材から、共産党に対する融和姿勢を構築するため、NPO法人や宗教法人がそのパイプ役を担っていると指摘した。報告作成者はデビン・スチュワート氏で、CSISの元非常勤顧問。同氏による報告作成のために行った関係者への取材によると、中国は日中関係の融和的な関係構築のために、政治家や大手企業幹部、退役将校などを招いた日中フォーラムを利用していると明かした。具体的には、「東京・北京フォーラム」の名前が挙がった。

     

    (1)「2005年に設立された「東京・北京フォーラム」は、非政府組織「言論NPO」と、中国国営の出版最大手「中国国際出版集団」が主催している。フォーラムは、東京と北京で交互に開催され、ビジネス、政治、学術、メディアの各界から数百人の影響力のある参加者が参加する。最近のフォーラムは、2019年10月に北京で開催された。「アジアと世界の平和、発展を維持するための日中責任」というテーマに焦点が当てられた」

     

    2018年のフォーラムも同様なテーマにより東京で開催され、双方の政府あいさつは日本側が西村康稔(当時・内閣官房副長官)、中国側は程永華(当時・駐日本特命全権大使)だった。登壇者のなかには福田康夫・元内閣総理大臣で「東京・北京フォーラム」最高顧問、基調講演には、徐麟・中国共産党中央宣伝部副部長兼国務院新聞弁公室主任を迎えている。

     

    日中友好促進という儀礼的なレベルのフォーラムである。ただ、尖閣諸島を巡る日中対立が先鋭化する事態になると、こういうフォーラムの運営は困難になろう。その時、初めて真価が問われるはずだ。

     


    (2)「防衛研究所の増田雅之・地域研究部中国研究室主任研究官は、こうした日中フォーラムの影響は限定的だと指摘する。「日本の対中援助(ODA)の終了、日本社会における中国の好感度の低さ、外務省権力の縮小、首相官邸の権力の上昇を考えると、中国はずっと日本に影響を与えるための代替手段を模索してきた。しかし、特にロシアや中国の政府高官との接触には強い規制がある」と増田氏は言う。「中国は人民解放軍(PLA)が主催するシンポジウムの招待で、日本の退役将校との関係を深めようとしている。しかし、日本では民間人が政策の大半を握っているため、そうはいかない」。このため「中国が日本で影響力ある作戦を成功させるのは難しい」と結論づけた」

     

    日本のマスコミでも、「中国賞賛」ニュースを流すことは難しい。読者が、一斉に拒否反応を示すからだ。新中国当時、日本人は日中戦争への反省も手伝い「親中派」が圧倒的であった。その中国が、平和路線から外れ武闘派に転じて以来、「親中派」は僅かな存在になっている。

     

    (3)「国際台湾研究所のラッセル・シャオ執行長は2019年、米シンクタンク・ジェームスタウン財団の調査報告「日本での中国共産党の影響力作戦の予備調査」を発表。中国が日本で影響力を行使するために使用しているいくつかの中国共産党中央委員会の統一戦線工作部(統戦部)の手段について詳述している。シャオ氏は報告の中で、日本に影響を与えるために、孔子学院、日中友好協会、貿易協会、日本文化交流など、様々な統戦部の関係機関を列挙している。しかし、CSISの報告では、こうした在日中国組織の活動は「成功」していないとの見方を紹介している」

     

    法政大学の福田まどか氏は、CSISインタビューで次のように答えた。「日中友好協会は、日本人の中国文化に対する親近感を求めているが、対中感情の悪さから、日本人は協会の活動に参加しようとしない。また、協会の活動手法は日本の文化に合っていない」と指摘している。

     

    日本人は古代中国に興味を持つが、現代中国には拒否反応を示している。日本人の価値基準と外れすぎており、中国が世界の「攪乱国」というイメージであるからだ。

     


    (4)「日本は、中国に対して世界で最もネガティブな考えを持つ国として際立っている。2019年ピュー・リサーチの世論調査によると、日本人の中国に対する否定的な見方は、調査対象となった34カ国の中で最も高く、85%の否定的な見方を示した。法政大学の菱田正晴氏は、次のように分析する。「1989年の天安門弾圧、中国が社会主義の原則を守らなかったという日本左翼への裏切り、中国での日本人研究者の逮捕などに嫌悪感が強い」と話した。また、ネガティブな報道を求める国民の声に呼応して、ニュースも否定的な側面を報道するようになったと指摘した」

     

    日本人の中国観は、調査対象となった34カ国の中で、85%も否定的な見方を示している。むろん、世界一である。日本人の中国嫌いと韓国嫌いは、誰から強制されたものでもない。自然発生的である。中国の傲慢さが嫌いという人は多いのだ。これは、中国文化自体が持つ本質的欠陥である。世界の普遍的価値観から完全に外れた、「田舎文化」であるからだろう。この異端文化が、世界覇権を握ることは不可能である。心から賛同する国が、存在しないからだ。

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    4日午前0時を以て、韓国は旧徴用工賠償で差し押さえている担保の現金化が可能になった。これは、日韓関係が破滅的な道に立ち至ることを意味する。韓国文政権は、それを覚悟して国内政治に利用する意図である。日本が報復すれば、韓国が報復するという「報復の連鎖」によって、徹底的に国内の「親日=保守派」を叩く戦術を用意しているだろう。

     

    それは、国際情勢に照らし合せれば愚策である。文政権は、日韓の対立を中国の庇護下で日本と戦う計画を練っている。米国は、日本の味方をするので、思い切って中国の傘に入るというのだ。

     

    この中国依存は、米中の厳しい対立で反古になった。米国が、韓国に対して「米国に着け」と要請を強めているのだ。韓国が、この要請を断って中国側へ付くことは安全保障面で不可能である。よって、韓国は「米国陣営」で落ち着かざるをえない。

     

    米国陣営は、日米が主軸である。韓国はこの下位に付かざるをえない。となれば、日本と意味のない争いを続ける根拠が薄れるであろう。国際情勢急変の中で、韓国が「反日」を続けられるメリットがなくなるのだ。

     


    『東亜日報』(8月3日付)は、「
    現実となる日本徴用企業資産の現金化、「報復悪循環」の破局を防ぐべきだ」と題する記事を掲載した。

     

    韓国最高裁の判決による日本企業の差し押さえ資産の現金化が、明日(4日0時)から可能となる。2018年10月30日、日本製鉄(新日鉄株金)が強制徴用被害者に1億ウォンずつを賠償するよう判決を下してから2年ぶりのことだ。損害賠償のための日本製鉄財産の差押命令の公示送達期限が切れて、いつでも売却手続きが開始できるようになったのだ。

    (1)「資産の現金化措置は、これまで韓日関係の時限爆弾と呼ばれてきた。日本政府は、すでに2次報復措置を警告している。韓国人へのビザ発給条件の強化、駐韓日本大使の召還などが議論されており、韓国産輸入品への追加関税と送金規制のカードも検討しているという」

     

    一説では、日本が100もある報復案を持っているという。そのいくつかが、現実化するのだろう。

    (2)「強制徴用判決は、この2年間、韓日葛藤の震源となっている。日本政府が昨年7月、3品目の輸出規制と「ホワイトリスト(輸出優遇国)」除外という1次報復に出ると、韓国も国際貿易機関(WTO)に提訴、韓日軍事情報保護協定(GSOMIA)の延長中止などの対抗措置に乗り出し、「報復の悪循環」に陥っている。これから資産売却が実行されれば、対立と葛藤はさらに悪化する可能性が高い」

     

    日本の報復と韓国の再報復が繰返されるだろう。日本は、日韓基本条約で解決ずみの姿勢である。韓国大法院による、日韓基本条約に踏込んだ判決自体が国際法違反である。文政権は、こういう事実を噛みしめることだ。



    (3)「もちろん公示送達期限が切れたからといって、すぐに資産現金化措置は実行されないだろうという見通しが出ている。しかし、問題は、資産現金化はいつかはなされるしかないのに、韓日両国政府は、事実上、問題解決を無視したまま時間だけを費やしているということだ。韓国の2022年の春の大統領選挙、日本の安倍晋三首相政権の支持率下落などの政治日程と状況を考慮すれば、両国政権の韓日関係の放置行動は続く可能性が高いとみられる」

     

    日韓両政府は、現状から一歩も引かない姿勢だ。このままでは、「報復の連鎖」となろう。その被害は、多く韓国側受けるであろう。文政権は、コロナ禍で沈む韓国経済が、日本の報復でさらに傷を深くする。折からの、「文政権離れ」の中で大きな負担になろう。

     

    (4)「強制徴用判決をめぐる韓日の認識は、そのギャップが非常に大きく、合意点を見つけるのが難しいのが現状だ。両国政治指導者が韓日葛藤を国内政治に利用するという指摘も少なくない。東京新聞は、最近の社説で、「今、政府レベルの打開策は遙遠に見える」とし、日本製鉄などの日本企業と韓国人被害者が和解を模索してほしいと提案した」

     

    安易な妥協は、禍根を残すだけである。ここまで溝を深めた以上、「報復の連鎖」によって、韓国国民は文政権の日本叩きの意図を知る良い機会である。「日韓冷戦」によって、韓国は日本の存在について正確な認識を持つことになろう。



     

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    韓国が日本叩きのためにWTOへ提訴した。半導体輸出手続き規制強化が、WTO(世界貿易機関)ルールに違反するというもの。これについて、米国が日本へ援軍を送っていることが分かった。日本の輸出手続き規制は、安全保障上の問題であり、WTOルールに違反していないという立場を明らかにしたのだ。

     

    『中央日報』(8月3日付)は、「米国、日本の韓国輸出規制は安保措置、WTO審理対象でない?」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「世界貿易機関(WTO)のホームページに3日に掲載された会議録の要約によると、7月29日(現地時間)にスイス・ジュネーブWTO本部で開かれたWTO紛争解決機関(DSB)定例会議で、米国側は「日本だけが自国の本質的な安全保障に必要な措置を判断することができる」と明らかにした。この発言は、韓国政府が日本の輸出制限措置を世界貿易機関(WTO)に提訴したことについて「日本の安保措置はWTOの審理対象にならない」という趣旨と解釈される」

     

    韓国は、日本の行なった輸出手続き規制がWTO違反とした。米国が、これを否定するという対象的な動きである。もともと、安全保障に基づく輸出規制は、WTOは特例として認めている。よって、韓国提訴は敗訴するというのだ。韓国としては、ショックであろう。



    (2)「韓国の今回の提訴について、(米国は)「70年間避けてきた安保関連事案不介入(の立場)を困難に導き、WTOに深刻な危険を招く」とし「WTOの誤ったロシア-ウクライナ紛争判決のため一部のWTO加盟国が国家安保措置に異議を提起している」と主張した。これに先立ちWTOはロシアが国家安全保障を名分にウクライナの貨物の経由を防いだ措置に対する紛争解決手続きで、安全保障を理由に貿易規制をする場合は合理的な理由が必要だとし、すべての貿易規制を安保措置と見なせないと判決した。一方、韓国政府は米国の今回の発言が日本という特定国を支持するためでなく、国家安保措置をWTOが審理できないという米国の従来の立場を明らかにしたにすぎないという立場だという」

     

    WTOは、「安全保障を理由に貿易規制をする場合は、合理的な理由が必要である」とした。米国は、これについても異議を申し立てている。要するに、安全保障上の理由をいちいち指摘することが正しい判断でないというもの。日本は、韓国への輸出手続き規制を強化したが、輸出自体を減らしていないのだ。日本の立場が有利であることは疑いないだろう。

     

    次の記事は昨年、韓国が日本をWTOに提訴した際に行なわれた日韓の応酬に関するもの。今年も、同じ主旨が繰返されるだろう。ただ、米国が反対の意向を示していることや、韓国に実損がなかった点が、韓国を不利な状態に追い込むであろう。

     


    『ロイター』(2019年7月25日付)は、「対韓輸出規制は安保上の措置、WTOでの議論不適切=日本政府」と題する記事を掲載した。

     

    日本政府の代表は24日に開かれた世界貿易機関(WTO)の一般理事会で、対韓輸出規制は安全保障に基づいており、WTOで取り上げられるのは適切ではないと述べた。これに先立ち韓国側は、輸出手続きの優遇措置を適用する「ホワイト国」から韓国を除外する日本政府の方針に反論。日韓の数十年におよぶ経済・安全保障関係を損なうほか、自由貿易に反すると主張した。

     

    (3)「日本政府は、対韓輸出管理の見直しで、武器に転用可能な特定品目を韓国に輸出する場合、国内業者は許可を得ることが義務付けられるとした。伊原純一・駐ジュネーブ国際機関政府代表部大使は、「措置は安全保障のための輸出管理制度に基づくもので、WTOで取り上げられるのは適切でない」と述べた」

     

    今回も日本は、韓国の提訴が不当であることを主張する。安全保障問題が、一段と厳しくなっている折から、日本の主張が認められるであろう。

     


    (4)「韓国は国際社会を動員して日本の動きをけん制しようとしたが、WTO関係筋によると、いずれの国も介入する姿勢を示さなかった。伊原氏は、日本は多くの国同様、定期的に輸出管理を見直していると主張。韓国が制度改善に取り組むという信頼に基づき2004年にホワイト国に指定したが、過去3年間は日本側が要求したにもかかわらず制度改善について全く協議が設けられなかったと説明。「さらに、韓国向け輸出で不適切な事案があった。こうした要因で、韓国に適用されていた簡素化措置を通常の手続きに戻した」とした。

     

    下線のように、韓国の提訴が身勝手であることを世界が認識していることを示唆している。この国から、WTO事務局長候補が立候補していることは不利に働くであろう。韓国は、こういう冷静な判断もできないほど、感情的になっている。

     

    (5)「WTOが定める最恵国待遇の下、広範な通商協定がない限り加盟国はどの国も同等に扱う必要がある。伊原氏は、ホワイト国指定の有無は各国の裁量に委ねられていると主張。「韓国は日本の措置が自由貿易制度に反すると言うが、自由貿易とは武器に転用可能なモノや技術を管理・条件なしに取り引きするものではない」と反論した。日本が世界的なサプライチェーンを混乱させるとの韓国の主張については、日本の輸出管理見直しは安全保障に基づいているため、WTO規制は適用外であり、混乱を招く主張だと韓国をけん制した」

     

    韓国は、日本が世界的なサプライチェーンを混乱させると主張したが、なんら混乱が起こっていないのだ。韓国の提訴は、実態が伴わないものだけに不利であろう。

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