勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年08月

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    中国は、香港への「国家安全法」を導入して中国化を完了した。次は、台湾への武力統一という見方が指摘され始めた。習近平国家主席の任期が2022年であり、3期目を目指すには「台湾攻略」が業績とされるのでないか、というものだ。

     

    米台は、そういう中国側の政治情勢を睨みつつ、中国に付け入る隙を与えないように、関係密接化を急いでいる。米台のFTA(自由貿易協定)締結への動き。それと、台湾によるF16戦闘機の大量購入と整備拠点を開設することが決まった。これで、台湾空軍の戦力向上をはかり、中台間の空軍バランスの均衡化を実現する可能性が高まった。

     

    『日本経済新聞 電子版』(8月28日付)は、「台湾、米からの牛豚肉輸入を全面解禁、FTAにらむ」と題する記事を掲載した。

     

    台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は28日夕、台北市内で会見し、米国との自由貿易協定(FTA)締結に向け、最大の障壁とされる米国産牛肉と豚肉の輸入を全面的に解禁すると発表した。解禁は2021年1月1日付。米台で今後、FTA交渉が始まる可能性が出てきた。

     


    (1)「蔡総統は、米とのFTA交渉を2期目の最優先課題の一つに挙げている。会見では「長年の懸案に決着を付ける。台米関係は今、この数十年間で最も良い状態にある」としたうえで、「歴史的なターニングポイントであり、このチャンスを我々は必ずつかまなければならない」と語った。牛肉については従来、BSE(牛海綿状脳症)を理由に生後30カ月以下の牛肉に限定し、米国産の輸入を認めていた。こうした制限を今後、撤廃する」

     

    米台のFTAで最大の障害は、牛豚肉の輸入制限問題であった。台湾が先ず、この障害を取り除く決定をしたのでFTA実現の可能性が強まってきた。

     

    (2)「豚肉については従来、成長促進剤のラクトパミンの使用を根拠に輸入を厳しく制限してきた。米国は科学的根拠に基づいていないと反発し、認識に隔たりがあったが、この点でも台湾が譲歩する。今後はラクトパミンの残留基準を設け、輸入を大幅に認める。台湾が世界貿易機関(WTO)に加盟した02年以降、米台は何度も関税撤廃などで協議を続けたが、ぎくしゃくした。07年にはBSEを巡る米国産牛肉の輸入で関係が悪化し、その後、協議は長く中断した。さらに馬英九前政権時代の09年にも、米国産牛肉輸入の大幅な解禁をほぼ決め、米国側と協議がまとまりかけたが、国内で与野党から猛反発を受け頓挫した」

     

    台湾がWTOに加盟した02年以降、米台は何度も関税撤廃などで協議を続けたが、ぎくしゃくして結論に達しなかった。今回、FTAがまとまれば18年ぶりの交渉妥結となる。

     


    (3)「蔡総統は、米国との交渉入りにはまだ道のりがあるとしながらも、「豚肉と牛肉問題で一歩を踏み出せれば、それは重要なスタートとなる」と期待を寄せた。ただ、FTA交渉が始まれば、中国大陸と台湾は一つの国に属するという「一つの中国」を唱える中国の反発は必至だ」

     

    米台間のFTA交渉は、「一つの中国」論を巡る米中の対立に発展しかねない問題を抱えている。原則論で言えば、台湾は中国の一部とされている。その台湾と米国が協定を結べないという理屈になる。ただ、これまで米台は、いくつかの協定を結んできた実績がある。それゆえ、それを根拠に中国の抗議に対応するのであろう。

     

    中国の抗議には、軍事的な威嚇を含んでいる。台湾は、これについても米国製のF16戦闘機の大量購入と整備拠点開設で威嚇をはね返す。

     


    『日本経済新聞 電子版』(8月28日付)は、「『強固な防衛力が必要』台湾・蔡総統、軍事産業育成へ」と題する記事を掲載した。

     

    台湾の蔡英文総統は28日、域内初となるF16戦闘機の整備センターの設立式典に出席し「地域の平和と安定を守るには、こびへつらうような弱腰ではなく、強固な防衛力が必要だ」と述べた。軍事産業の育成を通じ、軍事力を一段と強化する必要性を強調した。

     

    (4)「南シナ海などを巡り米中対立が深まるなか、台湾の危機感が強まっている。同センターは今後、台湾の軍事関連企業が米国と協力して軍事産業の育成を急ぐ、中心的な役割を果たす拠点になるという。米国がこのほど、F16戦闘機の新型66機を台湾へ売却することを正式決定したのを受け、台湾は域内初のF16整備センターの開設準備を進めてきた」

     

    米台は、南シナ海の抱える潜在的な軍事危機にも対応できるように、台湾でのF16整備センターの開設準備を行なってきた。

     

    (5)「台湾軍は現在、F16戦闘機を約140機保有する。これに加え、今後、米国から購入するF16の新型66機には総額2472億台湾ドル(約8900億円)が費やされ、2026年までに全機が納入される予定。空軍の力が大幅に高まるとされる。一方、200機以上のF16を抱えることになり、従来の整備体制では限界もあった。例えば、保守対象の部品を、F16の製造元の米ロッキード・マーチンに何度も輸送する必要などがあった。今後、同センターが台湾で軌道に乗れば、その必要は無くなり、蔡総統は「(台湾のF16)戦闘機のメンテナンス時間が大幅に短縮する。国防最前線において、空軍の戦闘優位性が確保できるようになる」と期待を寄せた」

     

    台湾は、F16が200機以上の保有になる26年までに、地元でメンテナンスを行う体制を整える。これによって、空軍の機動力が増すことになる。

     


    (6)「蔡総統は5月にスタートした2期目の演説で、公約に「6大核心戦略産業」の育成を掲げた。そのうちの一つが軍事産業だ。トランプ米政権は中国の脅威にさらされる台湾への武器売却を増やしているが、台湾は自前による軍事産業の育成を通じた軍事力の強化の必要性も感じている」

     

    台湾は、軍事産業の育成も行い軍事力の強化を急ぐ。対岸では、習近平国家主席が、自らの政治的欲望達成のために、台湾解放を謳っている。米台は、その備えを強化せざるを得ないのだ。

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    韓国は、中国から見ると無定見の国家に見えるようだ。米中対立の中で、中国が定めた「友軍国家」候補は、韓国・シンガポール・ドイツと言われる。中国の外交政策を総括する楊潔チ政治局員が先週末に訪韓した。その目的は、韓国を米韓同盟から引き離す下工作であった、と指摘されている。韓国が、これにまんまと乗せられるかどうか。目が離せなくなってきた。

     

    『ハンギョレ新聞』(8月26日付)は、「文在寅政府は「親中」なのか」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のパク・ミンヒ論説委員である。

     

    「現政府はあまりにも“中国寄り”ではありませんか?」。このような話をよく聞く。ネット上でも「親中政府」と非難する書き込みを数多くみられる。文在寅(ムン・ジェイン)政権を“親中”だと攻撃する保守・極右勢力の執拗な攻勢が“嫌中ムード”の広がりと重なって、深刻な誤解を作り出した。

     

    (1)「文在寅政府の外交政策は、過度に“親米”的と言える。トランプ政権を説得して朝米交渉を進展させることに相当な外交力を注いだからだ。大統領府は2018年、中国を除いた「南北米終戦宣言」を推進すると発表し、中国が激しく反発したこともあった。2019年2月28日、ハノイでの朝米首脳会談でトランプ大統領が自らの政治的利害関係のため、合意を拒否してから、韓国は“トランプに頼り切る”政策を打ち切り、自ら核問題の解決策を打ち出さなければならなかったが、それからも米国を説得することに時間を費やしてきた

     

    下線部は、完全に認識を間違えている。米朝が、朝鮮戦争を法的に解決できる当事者である。韓国は立場上、米国陣営に属していることをしっかりと頭に入れて置くべきだ。韓国が、法的に朝鮮戦争の当事者でない以上、米国を出し抜いた中朝との交渉は不可能である。北朝鮮もそれを指摘しているのである。

     


    (2)「米中「新冷戦」の影響が韓国外交にも主要な課題となった今、韓国政府は中国に対する冷徹な理解と戦略の不足を反省しなければならない。THAAD(高高度防衛ミサイル)をめぐる軋轢を「3つのノー(THAADを追加配備しない、米日ミサイル防衛(MD)に加わらない、韓米日の協力を軍事同盟に発展させない)」原則を言及することで取り繕って以来、問題をまともに解決するための対中外交は稼動していない。大統領府内に対中国戦略を担う戦略家がいないことを、文在寅政府に助言する専門家たちでさえ深刻な問題だと指摘する。「外交部で米中新冷戦に備えるための政策報告書を作成したが、大統領府では誰も気に留めなかった」、「大統領府安保室は米国派、外交部は北米局が主導している。中国関連政策には誰も取り組もうとしない」。多くの専門家がこう話している」

     

    韓国政府は中国に対して、THAAD(高高度防衛ミサイル)をめぐる軋轢で「3つのノー」を約束した。これこそ、国家固有の自衛権を縛る行為で、文政権が中国寄りと指摘される最大の理由である。一種の「売国的行為」と批判されても抗弁できないほど、非常識な内容である。

     

    (3)「先週末、中国の外交トップ楊潔チ氏がシンガポールを経由して訪韓し、釜山(プサン)でソ・フン国家安保室長と6時間にわたって会談した。楊政治局員はなぜこの時期に韓国を訪れたのか。米中の対立が激化する中、最近、中国内部では米国の攻勢に対する対応方向をめぐり、強硬派と穏健派の論争があったが、冷静に状況を管理する方向で意見がまとまった。トランプ政権のわなにはまり、中国に対する国際的反感を高めるよりは、落ち着いて友軍を確保し、“持久戦”で勝利を勝ち取る戦略だ。中国が激しい内部論議の末に戦略を整えてから、初めて取った行動が楊潔チ政治局員の韓国、シンガポール訪問だった。今週は王毅国務委員兼外相がドイツなど欧州5カ国を歴訪する」

     

    中国の戦略が、建設的かどうか見定める眼力が必要だ。中国は、最終的に世界覇権を握ろうとしている。現状は、米国の力が強く不利であるから「一部退却」という戦術であろう。そこで、韓国、シンガポール・ドイツを「友軍」に仕立てて小休止し、陣営を整え米国へ戦いを挑む決意を固めている。

     

    中国は、共産主義で世界支配する野望を抱いている。韓国は、その中国に「塩を送る」というのだろうか。韓国は、朝鮮戦争で共産主義により甚大な被害を受けている。その韓国が、中国共産党の支え棒になるとは、道義的にも許されるはずがない。文政権には、そういう見識をしっかりと持つべきなのだ。

     


    (4)「北東アジアの韓国、東南アジアのシンガポール、欧州のドイツは、米国と緊密な関係を結んでいる主要国の中で、中国が合従連衡の主な対象に選んだ国である。ドイツは欧州で中国を経済的に最もよく活用する国として知られている。シンガポールは、リー・クアンユ―元首相からリー・シェンロン現首相まで、世界で中国を最も深く理解し、米中間で巧みな外交を行うことで有名だ」

     

    米中対立が今後、一段と激しくなる中で、韓国は中国の「友軍」になるメリットはあるのか。米国は中国包囲網を強めていく。韓国が、米韓同盟を破棄して中国陣営へ馳せ参じることは「自殺行為」である。米国市場から切り離されるのだ。米国の与野党が抱く中国への怒りは、韓国の二股外交を認めるはずがない。そういう国際情勢の変化について認識を改めるべきだ。

     

    (5)「北朝鮮核問題の解決と朝鮮半島平和プロセスにおいて、中国とどのような協力をしていくかも明確に判断しなければならない。香港国家安全維持法などに対する確固たる立場も必要だ。中国が発し始めた“友好のシグナル”を活用しつつ、敵味方を分けようとする米中の圧力に巻き込まれないよう、朝鮮半島の平和と繁栄を進展させる戦略を政府がどれだけ深く考え、練っているのかが気になる

     

    これほど甘い認識で、米中対立を乗り切れるはずがない。下線部分は、完全に韓国中心主義の幻想である。米ソ対立の激しさを思い起こせば、米中対立が韓国の二股外交を許すとは思えない。世界覇権競争とは、そういう厳しい戦いである。

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    韓国は、中国と同じですぐに有頂天になる。春の新型コロナウイルスでは、上手く収束できたと思いきや、今や大きな第二波に飲み込まれている。春先の勝ち誇った「K防疫モデル」が、すでに破綻しており、世界が韓国を見る目が冷淡になってきた。相次いで、韓国人の入国を制限するようになっている。

     

    焦点は、10人以上の集会禁止や登校授業全面中止などの措置が実施される「社会的距離確保第3段階」への引き上げを実施するかどうかだ。大統領府は、経済的な影響に対する懸念から決定を下せずにいる状況だ。

     

    『朝鮮日報』(8月28日付)は、「韓国の新型コロナ新規感染者441人、崩壊したK防疫」と題する記事を掲載した。

     

    8月26日に全国で441人の新型コロナウイルス感染者が確認され(27日0時基準)、今年3月の大流行以来の400人超えとなった。防疫当局は10人以上の集会禁止や登校授業全面中止などの措置が実施される「社会的距離確保第3段階」への引き上げを検討していると明らかにしたが、青瓦台は経済的な影響に対する懸念から決定を下せずにいる状況だ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は先日、「防疫と経済は必ず同時に捕まえなければならない2匹のウサギ」と発言した。

     


    (1)「防疫当局は最悪の事態に備えて第3段階への引き上げ検討に入った。中央事故収拾本部の尹泰皓(ユン・テホ)防疫総括班長は同日、「第3段階に準じる措置で行くのか、完全な第3段階ですぐに行くのか、あらゆる可能性について協議している」と語った。第3段階にすぐに引き上げする案と、いわゆる「第2.5段階」と言われる中間段階を経る方法の両方を検討しているものと思われる」

     

    防疫当局は、「第3段階」か「第2.5段階」かの選択幅を残しているが、いずれしても対策強化を目指している。医療崩壊も目前である以上、もはや逡巡はゆるされない。大統領府は、経済失速を恐れて決断できずにいるのだ。

     

    (2)「教会に端を発するクラスター(集団感染)などにより一日の感染者数が100人を超えた13日から26日までの2週間で確認された感染者数は3936人に達する。これは一日平均281人で、「2週間の平均が100人以上」という第3段階の要件の半分を満たすものだ。これに並ぶ要件である「週2回のダブリング(前日比で2倍以上の増加)」は発生していないが、専門家らは先制的な第3段階引き上げが必要だと指摘している。

     

    すでに、感染者数で「2週間の平均が100人以上」という条件を上回っている。後は、「週2回のダブリング(前日比で2倍以上の増加)」だが、これも時間の問題である。早めの決断が必要だ。「K防疫モデル」の精神を忘れてはならない。

     


    (3)「民間企業や一部の地方自治団体は自己防衛策として、現在施行されている第2段階を超える防疫措置の強化に入った。サムスン電子・LG電子などは同日、在宅勤務拡大を発表した。教会でのクラスターが広がっている光州広域市は同日から「第3段階に準じる社会的距離確保」に入った」。

     

    企業や自治体の一部では、すでに「第3段階に準じる社会的距離確保」体制に入っている。韓国政府の決断が遅れている結果、海外の韓国を見る目は冷淡になってきた。

     

    『朝鮮日報』(8月28日付)は、「『Kー防疫』の善戦が一転、感染者急増で冷淡になった世界」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルスの感染再拡大により、韓国発の旅行者に対する検疫と隔離を強化する国が増えている。わが政府が自慢してきた「K-防疫」に対して門を閉ざし始めたのだ。外交部(省に相当)などが27日に明らかにしたところによると、かなりの数の国・地域が韓国発の入国者に対する検疫を強化している。26日現在で韓国国内の1日当たりの新型コロナ新規感染者が400人を超えたことに伴う措置とみられる。

     

    (4)「台湾の保健当局は27日、ビジネス目的の短期入国者に限って自己隔離期間を短縮できる「新型コロナウイルス中低リスク国」リストから韓国を除外したと発表した。これに伴い、韓国からの入国者の隔離期間は従来の7日から14日へと長くなった。台湾中央伝染病管理センター(CECC)は「韓国は新規感染者が急速に増加しており、韓国政府も感染拡大の勢いがピークに達したとは考えていないため、再拡大のリスクがあると判断した」と説明した」

     

    台湾が、韓国からの入国者の隔離期間は従来の7日から14日へと長くした。「新型コロナウイルス中低リスク国」リストから韓国を除外した結果だ。

     

     

    (5)「シンガポールも同日、韓国からの入国者に対し、自己隔離の場所をこれまでの自宅・居住地ではなく政府の指定する隔離施設とするよう措置を強化すると発表した。この措置は29日から始まる。中国政府は前日、仁川-重慶間のチャーター便運航を2日前になって急きょ保留した。中国国内の韓人会では「チャーター便の運航は当分困難だろう」という話が出ているという」

     

    シンガポールは、韓国からの入国者に対し、自己隔離の場所を政府の指定する隔離施設とすると発表。中国は、チャーター便を中止した。

     

    (6)「わが政府はこれまで、新型コロナウイルスに対する迅速な対応をベースに、いわゆる「K-防疫」の優秀性を強調してきた。他国に先駆けて「企業人ファストトラック制度」を導入するなど、経済への打撃を最小化するための取り組みを強化した。しかし、今回の事態をきっかけにK-防疫が水泡に帰すのではないかとの危機感が高まっている。外交関係者の間では「シャンパンを開けるのが早すぎたのではないか」との声も聞こえている

     

    文政権は、コロナ問題を政治的に扱い過ぎた。国内で政治的得点にすべく、「K防疫モデル」などと自慢して、総選挙に利用した。今、その咎めが出ているのだ。

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    韓国社会は混乱の極にある。首都圏が、新型コロナウイルス第二波に飲み込まれたからだ。「K防疫モデル」はあっさり崩壊した。市民の自主的な防疫姿勢が、意外に脆弱であった。コロナ・マジノ線は、突破されたのである。

     

    韓国では、高齢者の感染が増えるとともに、重症化が懸念されてきた。その重症患者の病床数が、首都圏であと19床という最悪事態だ。ただ、医師と看護師が動員可能な重症患者病床数は、何と7床だけ。これが、現実の韓国首都圏の医療実態である。

     

    ひと頃韓国では、東京都庁がコロナ感染者集計でファックスを使っていると嘲笑し、勝ち誇った態度を見せていた。その韓国が、重症者病床数の確認を間違えて、過剰報告していたというのだ。

     

    『ハンギョレ新聞』(8月27日付)は、「重症患者病床『過剰集計』首都圏には残り19床のみ」と題する記事を掲載した。

     

    防疫当局が集計した首都圏地域の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者用の病床数が、実際に使用できるものより多く集計されていたことが、26日に明らかになった。前日に防疫当局は、首都圏に残る重症患者用病床を56床と発表していたが、現場での点検の結果、実際に残っている病床は19床だった。COVID-19の拡散傾向が続けば、病床不足が直ちに入院待機などとして現実のものとなるとみられる。

     


    (1)「この日、中央事故収拾本部(中収本)が明らかにした「重症患者治療病床」の数は、ソウルの場合、前日の50床からこの日は11床へと、1日で39床も減った。首都圏全体では56床から19床へと37床減った。これについて中収本のユン・テホ防疫総括班長は「一部の使用可能な病床と実際に報告された病床の間の差を、現場点検を通じて確認した」とし「一部の病院が、実際に使用可能な病床より多く報告していたケースがあった」と述べた。入院中の重症患者が増えて病床数が減ったのではなく、そもそも集計が間違っていたというのだ」

     

    病床数の確認は、医療現場ではイロハのイであろう。それが過剰報告とは、絶対に許されるミスではない。医療崩壊という最悪事態を招くのだ。日本のファックスを笑っていられるものではない。

     

    (2)「24日現在で直ちに重症患者が入院できる首都圏の病床は7床だとして、すでに重症患者医学会が中収本の集計(56床)に疑問を提起していた。同学会の説明によると、医師や看護師の人数も考慮して、直ちに入院が可能な病床のみを集計する同学会とは異なり、中収本の数字は病院が集計システムに入力する単なる数字のみを集計するため、現実からかけ離れているという。この指摘が政府の現場点検によって事実として確認されたわけだ)

     

    24日現在で、直ちに重症患者が入院できる首都圏の病床は7床という重症患者医学会がまとめた数字がある。これは、実際に稼働体制をとれる現実的な数字だ。となれば、19床すら非現実的な数字になる。医療崩壊が現実問題になってきた。

     

    (3)「COVID-19重症患者の病床不足は現実となっている。現在、江原道、光州市(クァンジュシ)、忠清南道、全羅北道では、直ちに入院が可能な重症患者用の病床は0床だ。前日に集団感染が発生した江原道原州市(ウォンジュシ)では、必要時に病床のないケースも発生した。ユン班長は「首都圏にある上級総合病院を通じ、今月末までに36床を追加し、病状が好転した患者は全員を中等症・軽症病床に移すことで、重症患者の病床を直ちに確保する。9月中旬までにさらに40床を確保する」と述べた」

     

    直ちに入院が可能な重症患者用の病床は、江原道、光州市、忠清南道、全羅北道で0床という。よく、ここまでの危機的状況を放置していたものだ。韓国全体が、ネジが抜けたような状態にある。

     

    (4)「しかし、このような対応のみで、増加する患者に対処できるかどうかは疑問だ。重篤患者は前日の38人に続き、この日は43人となって5人増えるなど、急激な増加を示している。専門家で構成される新型感染症中央臨床委員会は、最近の傾向のように1日で300人の新規感染者が発生した場合、来月3日までに重症患者は最大で130人発生すると予想している。国立中央医療院中央感染症病院のパン・ジファン運営センター長は「防疫に比べて重症患者治療の力量を向上させるのに投じられた政府の資金は不十分。せめてこれからは重症患者治療の力量を高めるべき」と述べた」

     

    1日で300人の新規感染者が発生した場合、9月3日までに重症患者は最大で130人発生すると予測されている。130人も重症患者が増えたら、完全に病床不足は明らかである。政府の資金不足が指摘されている。

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    中国は、我に利あらずと見れば柔軟姿勢に転ずる。相手が米国となると、逃げ足は早い。「革命戦争」の戦略そのもの。犠牲を最小にするという戦術だ。米中貿易戦争の初期は、習近平氏は鼻っ柱が強く、「最後まで米国と戦う」と息巻いていた。

     

    それが、今はどうだろう。米国と対立は望まない。米国上場の中国企業の監査については、米中共同で行おうと提案するほど柔軟になってきた。米政権高官はトランプ大統領に対し、米国で上場する中国企業が2022年1月までに米会計監査基準を満たさない場合、上場を廃止するよう提言した。米国の強硬姿勢に、中国が屈したと言えるのだ。

     

    『ロイター』(8月4日付)は、「中国、米国との対立激化望まずー崔天凱・駐米大使」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国の崔天凱・駐米大使は4日、米中の領事館閉鎖の応酬を受け、両国間の緊張がこれ以上高まることを望んでいないと表明した。同大使は、米中は対立するのではなく、協力すべきだと指摘。「新たな冷戦は誰の利益にもならないだろう。非常に多くの新しい課題に直面しているときに歴史を繰り返す必要はない」と述べた。その上で、米国が7月に閉鎖したテキサス州ヒューストンの中国総領事館がスパイ行為を行っていたとする同国の主張を否定した。米中関係は今年に入り、新型コロナウイルスや中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)、南シナ海の領有権主張、香港の統制強化などを巡り急速に悪化している」

     

    米ユーラシア・グループ社長 イアン・ブレマー氏は、米中対立の緩和は、習近平の譲歩しかないと指摘している。

     

    「パンデミックを契機に中国と英国など多くの欧州諸国、オーストラリア、インドとの関係が悪くなり、米中関係は悪化している。対中強硬姿勢のさらなる強化の必要性は民主、共和両党が合意できる数少ない点となっており、米国側からの関係修復は見込めない。見込めるとすれば中国側となる」(『日本経済新聞』8月20日付)

     

    ブレマー氏が、中国の一方的な強硬策の招いた混乱を収拾するには、中国の譲歩しかないと指摘している。これは、その通りだ。中国の崔天凱・駐米大使は、「新たな冷戦は誰の利益にもならないだろう。非常に多くの新しい課題に直面しているときに歴史を繰り返す必要はない」と他人事のように言っている。米国は、こういう発言を嫌う。中国の「改心」を要求しているのだ。

     

    (2)「中国国営メディアは7月、米国による総領事館閉鎖の動きが11月の米大統領選を控えた政治的な策略だと非難している。同大使は、中国が南シナ海で威嚇戦略を行っているとの米国の主張を一蹴し、南シナ海での米軍事活動の拡大は衝突リスクを高めていると批判した。中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)子会社の動画投稿サービス「TikTok(ティックトック)」については、同社が中国政府に情報を提供している証拠はまったくないと主張した。一方、米中が署名した貿易協議の第1段階合意については「両国の経済担当チームが様々なレベルで接触を続けており、進展している」と説明した」

     

    このパラグラフは、中国の弁解オンパレードである。米国や同盟国は、絶対に受入れないだろう。米国が、中国を「圧迫」するのは当然のことだ。

     


    『ロイター』(8月27日付)は、「米上場の中国企業監査、中国が譲歩案提示=ブルームバーグ」と題する記事を掲載した。

     

    (3)「ブルームバーグ・ニュースによると、米国に上場する中国企業の監査を巡って米中が対立している問題で、中国側が譲歩の姿勢を示している。中国側は、米規制当局による中国国有企業の監査を提案。ただ、国家安全保障上の理由で、一部の情報を編集する必要性も主張しているという。中国証券監督管理委員会の方星海副主席がブルームバーグに明らかにした。委員会は米公開会社会計監督委員会(PCAOB)に今月、新たな提案書を送付し、米国が中国国有企業を任意に選び出し、共同で監査を試行することを提案した。同委員会はテレビ会議や電話会議も提案したが、米国側からまだ反応はないという」

     

    米国が、下線のような中国提案を受入れるだろうか。米議会は、中国企業に米国の貯蓄を利用させないという強硬論である。米国の貯蓄を利用する中国企業が、米国の国益を害する行動は許さない、という理屈付けなのだ。こういう米国側の主張によれば、妥協の余地はないように見える。

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