勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年08月

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    文政権の下で韓国社会は、メチャクチャになっている。市民団体は本来、非営利組織で政治的には中立を求められている。これが、NPO組織の原点だ。韓国市民団体は、営利事業を行い、文政権支持という逸脱した組織に変形している。本質は、文在寅「親衛隊」である。

     

    その曰く付きの市民団体が、新設予定の公共医大の新入生選抜試験にタッチすると発表されて、韓国社会は沸騰している。中立を装った市民団体が、関係している子弟を公共医大へ入学させる魂胆と見破られているのだ。文政権も異常だが、市民団体の限度を弁えない利益追求姿勢も厳しく糾弾されるべきだろう。

     

    『朝鮮日報』(8月26日付)は、「市民団体が医大の新入生候補を推薦するだなんて」と題する記事を掲載した。

     

    韓国政府・与党が新たに設立を目指す公共保健医療大学の新入生選抜に、市民団体が関与することを保健福祉部(省に相当)が明らかにした。公共医大は2018年に廃校になった西南大学医学部の定員(49人)を活用し、全羅北道南原に設立される。学生は学費などが全額無料だが、卒業後は10年間、公共医療保険施設での勤務が義務づけられる。

     


    (1)「問題は、公共医大の新入生推薦の権限が市道知事に与えられるという事実だ。17の市道知事のうち、野党所属は3地域しかなく、残りは全て与党所属だが、ソウル市と釜山市の市長はセクハラ事件で自殺あるいは辞任し、蔚山市長は不正選挙疑惑が持ち上がっている。このような市や道の知事たちを信頼して公共医大の新入生推薦権を与えられるだろうか。批判が相次いだことを受け、保健福祉部は8月24日「市道知事による任意の推薦ではなく、専門家や市民団体の関係者などが参加する推薦委員会で2から3倍数を推薦する予定」と説明した。しかしこの説明が世論を一層刺激した」

     

    医大の入試で、新入生推薦の権限が市道知事に与えられるという当初案も間違っている。17の市道知事のうち、野党所属は3地域しかなく、残りは全て与党所属だ。ここから推測できるのは、与党有利な新入生選抜である。文政権は、あくまでも与党の利益を狙った政策決定だ。この案に対する批判が強まるや、「専門家や市民団体の関係者などが参加する推薦委員会」をつくると発表して、一層の批判を浴びている。悪名高き市民団体が加わっているのだ。なぜ、正規の学力試験を採用しないのか。文政権は、あくまでも与党利益を狙っているのだろう。

     

    (2)「昨年来、チョ・グク事態、尹美香(ユン・ミヒャン)事態を通じて市民団体なるものがいかに偽善で不正の塊であることが明らかになった。チョ・グク元長官夫妻は子息のためにインターン修了証や表彰状を偽造し、論文の第一著者にするなど奇想天外な入試犯則の手口を総動員した。正義記憶連帯の尹美香・理事長は慰安婦女性たちに支払われるべき寄付金、後援金、国庫補助金を横領した疑いがあり、その娘は慰安婦女性たちの弔慰金で立ち上げられた奨学金を受けとった疑惑が指摘されている。しかもこの人物は今国会議員だ。公共医大に入学するには、このような人間たちの前で面接を受け、彼らの推薦を受けねばならないということだ」

     

    チョ・グク事件、尹美香(ユン・ミヒャン)事件を通じて、「韓国市民団体がいかに偽善で不正の塊であることが明らかになった」と指摘している。その通りである。人々の善意を悪用して、私的利益を図るという「大悪党」であることが分った。それを利用してきたのが、文政権である。韓国社会では、「道徳的」という言葉が頻繁に飛び出す。実態は、ただの形容詞に過ぎない。「道徳」にふさわしい行動を伴っていないからだ。空疎な言葉になってしまった。

     


    (3)「現政権は、市民団体と一体といっても過言ではない。チョ・グク氏をはじめとして青瓦台(韓国大統領府)、政府、政府機関などに進出した参与連帯出身者だけで60人を上回る。地方にも市道知事に寄生する御用市民団体があまりにも多い。市道知事と御用市民団体が推薦権を持つようになれば、公共医大は運動圏特権層のための入試制度になるだろう。医師は生命を取り扱うのに、公共医大だけは実力が優先されなくとも良いのか。試験制度ではなくあえて推薦と面接を通じて新入生を選抜するのは一体どのような理由があるのか」

     

    文政権は、医師の職業を何と理解しているのか。与党の既得権益拡大のチャンス程度に見ていないのだろう。人命を預かる崇高な職業である。それが、政治がらみの思惑で医大新入生を選抜するとは、堕落の極限と言うべきだ。

     

    この連中が、「反日運動」をもっともらしい理屈をつけてやっている。そう思うと、日本が真面目に対応するのは馬鹿馬鹿しくなるほどだ。韓国進歩派は、底なしの私的利益追求集団に見えるのである。

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    本音か駆け引き分らないが、中国の官製メディア『環球時報』は、米大統領選で民主党候補バイデン氏を支持すると表明した。トランプ大統領よりも「米中関係が円滑に動く」という理由である。ただ、米国は超党派で、中国に厳しい態度で臨んでいるだけに「オバマ時代の米国」を再現することはない。その意味では、バイデン氏もトランプ氏も大差はあるまい。

     

    『大紀元』(8月25日付)は、「中国国営メディア、バイデン氏の大統領就任を支持『トランプ氏より円滑』」と題する記事を掲載した。

     

    中国国営メディアは米大統領選に出馬するジョー・バイデン氏への支持を表明しており、バイデン氏が当選すれば、ドナルド・トランプ大統領よりも米中関係を「より円滑に」 対処できるだろうと表現した。

     

    (1)「中国共産党機関紙『人民日報』姉妹紙の『環球時報』は819日、中国のアナリストの話として、バイデン氏でもトランプ氏でも、米国は中国に対して強硬な姿勢を維持するだろうと報じた。「しかし、戦術的には米国のアプローチの方が予測可能であり、バイデン氏はトランプ氏よりもはるかに扱いやすい。これは多くの国が共有する見解だ」と付け加えた。この記事は、バイデン氏が民主党の大統領候補指名を正式に受諾した民主党全国大会の最中に掲載された」

     

    下線の通り、トランプ氏の予測不可能な言動に悩まされているのが理由である。その点、バイデン氏は副大統領時代に中国と接触があるから交渉しやすい面はあろう。

     


    (2)「バイデン氏は同日、民主党の大統領候補指名を受諾する演説で、自身が大統領に当選したら、中国への医療サプライチェーンの依存はしないと述べた。中国に関する言及はこれだけにとどまっているが、トランプ氏が新型コロナウイルスの流行対策に失敗して、国内の分断を招いたとの批判を展開した」

     

    バイデン氏は、中国に付いてのまとまった見解は述べていない。

     

    (3)「中国北京にある外交学院国際関係研究所の李海東教授は、「バイデン氏の方が明らかに扱いやすい」と環球時報に語った。「中国に関しては、バイデン前副大統領はオバマ政権時に副大統領を務め、中国指導部との交渉経験も豊富だ。バイデン氏が勝利すれば、より効果的な交流が促進されると期待している」と李氏は付け加えた」

     

    中国が、バイデン氏の当選を期待していることは明らかだ。米国でも「人柄のバイデン」と人気を得ている。

     

    (4)「米ホワイトハウス大統領補佐官(通商担当)で中国経済問題に詳しいピーター・ナバロ氏は、野党・民主党全国大会でウイルスの世界的蔓延を引き起こした中国政府の責任について言及しなかったことを批判した。ナバロ氏は民主党大会について、記者団に対し「中国共産党が米国に対して致命的なウイルスをもたらし、16万人以上の米国人を殺害し、4000万人を失業させて経済に壊滅的な打撃を与え、財政・金融面で何兆ドルもの損害を与えたことについて、一言も言及しなかった」と述べた。「つまり、米民主党と中国共産党は共通の大義名分を掲げてトランプ政権を打ち負かそうとしている、ということだ。米民主党の戦略は、中国共産党によって引き起こされた世界的なパンデミックを、トランプ政権の責任にするというものだ」と述べた」

     

    下線の部分は大統領選戦に入れば、トランプ陣営が早速利用するであろう。「中国とバイデン陣営が共謀して、トランプに対抗している」という道筋である。トランプ陣営は、その点で抜け目ない。

     


    (5)「
    米国の情報機関は今月、中国共産党政権はバイデン氏の当選を望んでいるとの分析を明らかにした。国家防諜・安全保障センターのウィリアム・エバニーナ所長は87日に発表した声明の中で、「中国は、トランプ大統領が再選されないことを望んでいる」と書いた。ナンシー・ペロシ下院議長とロバート・オブライエン大統領補佐官 (国家安全保障担当) も最近、中国共産党政権は「トランプ氏の敗北を望んでいるだろう」 との見方を述べた」

     

    米国の情報機関は、中国共産党政権はバイデン氏の当選を望んでいるとの分析を明らかにしている。ロシアは、トランプ氏支持という分析である。国益という点で、それぞれ異なっているのだ。

     

    (6)「トランプ政権はここ数カ月、香港や新疆ウイグル自治区における人権侵害問題や、中国発のアプリやハイテク技術による安全保障リスク、南シナ海での軍事攻撃など、対中強硬策を強めている。いっぽう、中国の国営メディアは、米国との関係が悪化するなかで、米国に対する批判を強めている。最近、中国国営メディアは戦争を推奨するような報道をしたり、中央政府がテレビ局に戦争映画の放映を指示したりしていて、反米の民族主義感情をあおっている」

     

    米中対立は、中国の民族主義を煽っている。習近平氏が民族主義者であるから、当然の動きであろう。ただ、中国政府は発言に細心の注意を払っている。米国のさらなる反発を招かないようにしているからだ。これを見ても分る通り、米中対立は米国が主導権を握っている。

     

     

     

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    文政権による韓国政治壟断への批判は、日に日に強まっている。「86世代」(1960年代生まれ、80年代に大学生活を送った学生運動経験者)が、韓国の政治・司法などを占めているからだ。これらエリート層が、文大統領「親衛隊」になって、国民からの批判を封じているというのだ。

     

    チョ・グク前法務部長官を一方的に擁護していた「チョ・グク白書」こと『検察改革とろうそく市民』に真っ向から反発する書籍『一度も経験したことのない国』が8月24日、出版された。「チョ・グク白書」と対照的だという意味で、発売前から「チョ・グク黒書」と呼ばれていた。

     

    この書籍の執筆には、陳重権(チン・ジュングォン)元東洋大教授、市民団体「参与連帯」出身のキム・ギョンユル会計士、「民主社会のための弁護士会(民弁)」出身のクォン・ギョンエ弁護士、ソ・ミン檀国大医学部教授、カン・ヤングTBS科学専門記者の5人が参加している。「チョ・グク事態」をきっかけに「文在寅(ムン・ジェイン)政権批判者」に転身したこの5人は「586世代(現在50代で80年代に大学に通った60年代生まれの世代)の政治エリート」に対して、「新たな既得権層として社会に根を下ろした新積弊」と強く批判した。

     

    「586世代」とは、「86世代」のことである。韓国の高度経済成長の恩恵を一番受けながら、保守派を蛇蝎のように嫌う「バランス感覚」の狂った人々が多い。「86世代」は、進歩派の前衛部隊である。「新たな既得権層として社会に根を下ろした新積弊」と、前記の著者は切り捨てているが、その通りの振る舞いである。進歩派政権が下野すれば、最初に「審判の法廷」に立たされてもおかしくない行為を行っている層である。厚かましい人々だ。

     

    『朝鮮日報』(8月25日付)は、「『586世代は新積弊』『チョ・グク黒書』出版」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「執権層の主流として登場した586世代に対し、陳重権氏は「物理的な基盤がかつての保守と変わらない彼らが、新たな既得権層として社会に根を下ろした。その結果、国民は新積弊と旧積弊、二つのうち一つを選ぶよう強要されるに至った」、会計士のキム氏は「586世代と呼ばれる新保守が産業化勢力の座をつかみ取ったようなものだ」と述べた。陳氏は「進歩的市民団体がやっていることは、かつては右翼の官辺団体がやっていたこと」とも主張した」

     

    下線部分は、双手を挙げて賛成したい。

    1)586世代と呼ばれる新保守が産業化勢力の座をつかみ取ったようなもの。

    2)進歩的市民団体がやっていることは、かつては右翼の官辺団体がやっていたこと。

     

    上記2点の指摘は、かねてから私も感じてきた部分である。進歩派は、保守派を「積弊」と叫んでいるが、彼らはまさに「新積弊」である。既得権益を求める臭覚は鋭く、市民団体は、文政権の手厚い補助金を貪っている吸血鬼である。これが、反原発運動を行い、太陽光発電で多額の補助金で潤っているのだ。

     

    (2)「著者たちは、親文陣営による「ファンダム政治(ファンダム=熱心なファンの集まり)」も批判した。ソ・ミン教授は「ファンダムが大統領を守ろうと行動に出る瞬間、そのファンダムはナチス時代のゲシュタポのように、政権に対する建設的な批判までも封鎖する親衛隊に転落する危険がある。今、いわゆる『文ファン』と呼ばれる文在寅大統領のファンダムの姿がまさにそうだ」と述べた。ソ教授は「さらにやっかいなのは、いわゆる『文ファン』というファンダムは、比較的静かに太極旗(韓国国旗)を振るだけだったパクサモ(朴槿恵〈パク・クンヘ〉前大統領のファンクラブ)よりずっと騒々しく厚かましい存在だという点」とも述べた」

     

    韓国進歩派(86世代)は、韓国朱子学の忠実な継承者のような振る舞いだ。自分だけが正しく、他はすべて間違っているという誤解・錯覚を振りまいて歩くからだ。この「86世代」が、「反日運動」をリードしている。執拗な反日行動で、反論する気持ちも萎えるほどの独断的言動が多い。

     


    (3)「ソ教授は、「現在の執権層は司法府の掌握まで狙っているようだ」として、「このままではチョ・グク前長官も無罪になるのではないか。その場合、チョ・グク氏が次期大統領選挙に出馬する可能性もあるだろう」と述べた」

     

    盧武鉉政権で文在寅氏の部下だった人々が、現政権の青瓦台民情首席秘書室だけでなく、裁判所・検察・警察・国税庁の要職に就いている。野党は、「これでは権力型不正に対してきちんとした監視ができない」と嘆くほど。チョ・グク前法務長官が、無罪になって次期大統領選挙に出馬するという話もありうる。文大統領は、このように身辺を守るべく、重要ポストに「文チルドレン」を配置している。文氏は、進歩派のお面を被っているが、保守派顔負けの策士であることは間違いない。

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    米国政府は、中国の領土拡張政策に強い警戒姿勢を強めている。中国は、共産主義を世界に浸透させ、世界の政治ルールを専制主義に変える意図を持っているからだ。その先兵が、中国人民解放軍(PLA)である。米国防長官は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』への寄稿で、このようにPLAへ厳重警戒姿勢を強調した。

     

    かつてのソ連が、第二次世界大戦後に共産主義を世界に広めるべく、いたるところを占領した。現在の中国が、それを再び行うというものだ。ソ連は、この行き過ぎた行動が経済を疲弊させ、国家破綻に追い込まれた。

     

    中国は、このソ連の二の舞いを演じることなく、所期の狙いを達成可能だろうか。実は、ソ連と同じ経済的矛楯を抱えているのだ。人口の急速高齢化に伴い、人口は2100年約48%も減って7億3200万人となり、財政破綻に直面するはずだ。中国は現在、それを自覚することなく進んでいるものの、第二のソ連に陥るであろう。これは私の見解だが、当面するPLAの危険性を見ておきたい。

     


    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月25日付)は、」中国人民軍に防御を固めよ」と題する寄稿を掲載した。筆者は、マーク・エスパー米国防長官である。

     

    中国人民解放軍(PLA)は81日、創設93周年を祝った。共産党総書記でもある習近平国家主席は式典のスピーチの中で、いつものようにPLAを世界クラスの軍隊に変貌させる必要性を訴えた。共産党の戦略を、遠い海外まで浸透させるための力を確保することが狙いだ。彼の発言は、自由で開かれた国際秩序と中国政府が主導する専制システムとが世界的に対立する新時代に、われわれが入ったことをはっきりと認識させる。

     

    (1)「PLAは、米国の軍隊とは異なり、国家に奉仕する軍隊でなく、まして憲法に奉仕する軍隊ではない。PLAは、中国共産党という政治組織に属し、この組織に奉仕するものだ。PLAの能力向上は、共産党の国内政策、中国政府が望む一方的な国際システム、しばしば米国やその同盟諸国の利益を損なう経済・外交政策目標などを追求するための軍事能力を高める。従って、自由で開かれた秩序の繁栄と安全を求めるすべての国々は、PLAからの参入、訓練、技術に関する要請の意味合いを慎重に精査しなければならない」

     

    PLAは、国家の軍隊ではない。政党(中国共産党)所属の軍隊である。共産主義を浸透させ守る軍隊である。それだけに、本質的に侵略性を備えている「軍隊」だ。PLAには、政治将校が入っており、共産主義拡大の先兵となっている。単なる領土奪取という目的だけでなく、「共産主義浸透」という大義名分を持っているから「質」が悪いのだ。

     


    (2)「20世紀に米国と西側諸国がソ連軍について研究し、対応してきたのと全く同様に、世界はPLA近代化の動きについて研究し、対応準備を整えなければならない。PLAは、2035年までに装備の近代化を完了し、2049年までに世界クラスの軍隊になるという目標を公然と表明している。PLAの総合的近代化計画には、通常型ミサイルの強大な戦力確保のほか、サイバー戦争、宇宙戦争、電子戦争のための一連の先進装備も含まれている。また、ウイグル人を中心とした自国民への組織的抑圧を継続し、独裁的統制を強化するための人工知能(AI)の活用も含む」

     

    PLAが、2035年までに装備の近代化を完了し、2049年までに世界クラスの軍隊になるという目標は、産業高度化政策の「中国製造2025」に合わせたものであろう。中国は現在、米中対立激化に伴い前記の「中国製造2025」を取り下げた形になっている。米国の締め付けが激しく、ファーウェイへのソフトウエアや技術の全面輸出禁止によって、達成が困難になっているからだ。

     

    だが、2049年に覇権国米国と対抗する軍事力を持とうとする野望を引き下げたわけでない。PLAによる周辺国への侵略行為は、依然として続いているからだ。高度4000メートルのヒマラヤ山中で、インド軍を急襲して20名のインド兵を殺害した。今年6月15日の夜だ。PLAの凶暴性に変わりない。

     


    (3)「PLAの思想教育、近代化、統制強化を強調する共産党の姿勢は、中国の指導者らが、軍隊を目的達成の中心的手段に位置付けていることを示している。こうした目的の中で特に目立っているのは、国際秩序の再構築だ。共産党が目指す新秩序は、国際的に受け入れられているルールを破壊し、専制主義を広げ、党による他国の行動の操作、他国の主権の制限を可能にするための条件を整えるものだ

     

    下線部のように、中国は一国共産主義に止まらず、国際共産主義へと発展・浸透させる野望を持っている。中国の国力(経済力)をその目的に費消するために、軍拡は不可欠となる。国際共産主義によって、中国の安全保障体制を維持しようという戦略なのだ。よって、中国共産党は不断に軍備拡大の使命を持つので、財政的に行き詰まる運命だ。旧ソ連と変わらない矛楯を抱えているのだ。

     

    (4)「こうした中国の行動を受けて米国防総省は、総合的な対応策の策定を急ぎ、国家防衛戦略(NDS)の実施を加速させている。NDSは、中国を主な対象とした大国間の競争に備えて、米軍の対応能力強化と近代化を進めるための指針となる。

    1に、中国との長期的な競争状態の中では、陸、海、空、宇宙、サイバースペースなどすべての領域で、競争し、相手を阻止し、勝利できる軍事力をわれわれが持つことが求められる。

    第2に、われわれの同盟国およびパートナーとのネットワークを拡大し、強化することも、この取り組みにおいて不可欠だ。それは敵対勢力が持ち得ないほど非対称的なアドバンテージを提供する。

    3に、有能で同じ考えを持ったパートナーと幅広いネットワークを作ることが、中国共産党からの悪影響を回避するためのわれわれの戦略の中核となるため、国防総省は世界中でわれわれのパートナーの能力を構築し続ける」

     

    PLAは単独で世界支配を目指す。米国は、多くの国々とパートナー(同盟国)となって、共同でPLAと対抗する。どちらが、より効率的な軍事戦略であるか、言うまでもあるまい。PLAは、米国の同盟国が強力になればなるほど、中国の国力を消耗して力尽きる宿命に陥る。それは、旧ソ連の運命と同じであろう。国際共産主義は、他国を支配しようという魔物である。

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    文大統領は、学生時代に軍事政権打倒で火焔瓶闘争した猛者である。その文氏が、軍事政権並みの発言をして韓国世論を驚かせている。新型コロナウイルス第二波を抑え込むために、韓国憲法が保障する「基本権」を制限すると発言したのだ。「K防疫モデル」と自画自賛したコロナ対策は、今や完全に破綻した。中国並みの強硬策を発動すると言い出したのである。

     

    確かに、韓国はちょっと油断している間にコロナが蔓延している。81日から17日の間、新型コロナウイルス実効再生産数は2.83。1人の感染者が最大3人にウイルスをうつしたことを意味するもの。日本は、7月から8月における実効再生産数は1を割っていた。日本中が政府を責め立てていたにもかかわらず、実態はこの程度であった。それに比べて韓国は、まさに「猖獗(しょうけつ)を極める」状況だ。

     

    『中央日報』(8月25日付)は、「文大統領『防疫にオールイン』基本権制限持ち出した」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は24日、「いかなる宗教的自由も、集会の自由も、表現の自由も、国民にそのような途轍もない被害をもたらしてまで主張することはできないだろう」と話した。文大統領はこの日の青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)首席秘書官・補佐官会議で、「政府は国民の安全と公共の安寧を守るための手段として公権力の厳正さを明確に立てたい」としてこのように話した。新型コロナウイルス防疫のためには憲法上の基本権が制限される可能性があることに言及したものだ」

    下線部のように、新型コロナウイルス防疫のため、憲法で保障されている基本権(基本的人権)を制限する可能性に言及した。そこまで、韓国がコロナ感染症に追い込まれている証拠だ。感染症第一波の際に自画自賛した「K防疫モデル」が、国民を油断させたのである。国民を責める前に、政府の自惚れをまず国民に謝罪すべきであろう。

     

    日本政府が、こんな発言をしたら大変な騒ぎになったであろう。改めて、日本国民の協力が非常事態宣言まがいの発言をさせずに済んだ、というべきだろう。

     


    (2)「文大統領は、「国民の生命と安全を害する違法行為を座視しない」「悪意的で組織的な防疫妨害とフェイクニュース流布は共同体を害する反社会的犯罪」「行政命令を拒否して防疫に協力しなかったり、無断で離脱したりするなど個人の逸脱行為もまた容認できない」とし、こうした行動が国民に負わせた「途轍もない被害」の事例を列挙した。「多くの国民の生命と健康を害し、日常を止まらせ、経済と雇用にも大きな打撃を与えた」「一息つくかと思われた旅行と公演などのサービス業に致命打となり、さらに集中豪雨被害の復旧すら厳しくさせた」ということだ」

     

    韓国の民主主義は、この程度という見本みたいな話が羅列されている。問題は、韓国の防疫体制が、科学的データに基づかずに政府の介入によって左右されていた結果、引き起された感染者急増と言える。

     

    先の総選挙の与党大勝は、「K防疫モデル」成功で国民を酔わせてしまったのである。これが、国民にコロナ感染の恐ろしさを芯から自覚させず、浮ついた行動を誘発させたと見られる。今回の感染者急増は、煎じ詰めれば文政権が引き起したものと言える。


    (3)「文大統領が宗教や集会の自由だけでなく表現の自由にまで言及し、特定のニュースを取り上げずに「フェイクニュース流布は共同体を害する犯罪」と断定したことは議論を呼びそうだ。未来統合党の重鎮議員は中央日報に「あたかも新型コロナ再拡散の責任を宗教・集会・表現の自由へ押しつけている」と批判した」

     

    韓国政府特有の責任回避発言である。悪いのは、宗教やメディアのフェイクニュースと責任を押し付けているのだ。



    (4)「この日文大統領は現在の状況を「コロナ流行初期の新天地教会の状況よりはるかに厳しい非常状況」と規定し、「ソウルと首都圏が感染拡大の中心地となり、全国どこも安全地帯になれずにいる」とした。続けて「現段階で防ぐことができなければ社会的距離確保(ソーシャルディスタンス)は3段階に格上げされるほかない。3段階格上げは決して簡単に話せる選択ではない。日常が停止し、雇用が崩れ、実に莫大な経済打撃に耐えなければならない。医療体系まで崩壊しかねない」と話した」

    下線の段階になれば、ロックダウン(都市封鎖)になろう。韓国経済はキリモミ状態で落込む。韓国銀行(中央銀行)は、今年の実質GDP成長率を下方修正する見込みだ。従来のマイナス0.2%を、マイナス1%前後に下方修正すると伝えられている。新型コロナウイルス感染症が、全国的に再拡大し民間消費の冷え込むと予想されるからだ。

    (5)「公共医大定員拡大などの問題で政府と対立している医療界に向けても文大統領は「新型コロナ感染拡大阻止に国家的能力を集めなければならない状況で国民の生命を担保にする集団行動は決して支持を受けることはできない。国民の生命権を保護するためにも、休診や休業などの違法な集団的実力行使に対し断固として対応するほかない」と話した」

     

    医師のストライキも見過ごさないと警告している。軍事政権並みの強硬姿勢だ。これが、「人権派弁護士・文在寅」の本当の姿であろう。



    (6)「新型コロナ防疫に向けた基本権制限の可能性にまで言及し、「防疫挑戦勢力」と指摘した文在寅大統領の24日の発言をめぐり学者の間では懸念が提起された。高麗(コリョ)大学法学専門大学院のチャン・ヨンス教授は「基本権とこれを制限する公共福利の価値の間には常に議論の余地があった。そのために憲法で基本権を制限できる条件を恣意的な判断ではなく法律で制限したもの」と話した。チャン教授は続けて「今後関連した違憲訴訟が提起される懸念も排除することはできない」と付け加えた」

    訴訟社会の韓国である。基本権制限まで言い出した文大統領に対して、違憲訴訟が起こる可能性を指摘している。それほど重大な大統領発言である。

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