勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年10月

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    米国が、ファーウェイへ科したソフトウエアと半導体の輸出禁止は、中国で時ならぬ「半導体投資ブーム」を引き起している。これまで、米国技術の窃取で築いてきた半導体産業だけに、受けた衝撃の大きさは喩えようもないという。

     

    中国政府は、大慌てで補助金を増やして半導体産業への新規投資を誘っているが、基盤技術不足が災いして成果を上げられず、早くも倒産企業が出ているという。

     

    『大紀元』(10月2日付)は、「中国『大躍進政策』で半導体会社が急増、過熱化との見方」と題する記事を掲載した。

     

    米政府が中国ハイテク企業などへの半導体禁輸措置を強化する中、中国当局は半導体産業への投資を促し、大規模な補助金の給付を含む「大躍進政策」を打ち出した結果、昨年から新たに半導体メーカー約2万社が設立された。専門家は、中国半導体産業の「過熱化」に警鐘を鳴らしている。

     

    (1)「香港英字紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』(SCMP)は9月28日、中国国内では今年18月期に、9335社の企業が新たに半導体産業に参入したと報道した。昨年同期と比べて、120%増えたという。また、昨年1年間で約1万社の半導体企業が新たに設立された。現在、中国本土では、ほぼすべての省と大都市の政府は半導体産業を地元の主要産業と位置付けている」

     

    1年間で、半導体産業への新規参入が120%増とは異常である。補助金目当ての技術的な「根無し企業」である。「第二の自動車ブーブ」の到来と同じである。

     


    (2)「SCMPによると、米政府が中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)などに対して、米国の技術に関する半導体やソフトウエアなどの輸出を禁止して以降、各地で半導体産業の投資ブームが起きている。当局は、半導体産業を発展させるため、補助金・税制優遇措置のほかに、企業の株式上場や資金調達などにも「ゴーサインを出している」という」

     

    下線部分の支援策に目が眩んだ企業である。脱落は当然である。

     

    (3)「中国国家発展改革委員会、工業情報化部(省)など4つの政府機関は9月22日、共同声明を発表し、5G(次世代移動通信システム)や半導体などの中核的技術分野を含む戦略重点産業への投資を強化すると示した。広東省の深セン市半導体業協会事務局長、常軍鋒氏はSCMPに対して、半導体産業の投資ブームは、今や不動産投資を上回ったと話した。SCMPによると、一部の専門家は、半導体産業の行き過ぎた投資ブームは、1950年代の「大躍進政策」のように失敗に終わると懸念している。新参入した企業の多くは半導体チップの研究と生産の経験がないからだという。専門家は、中国当局の極端な振興政策は、資本と労力を浪費して効率を無視していると批判した」

     

    半導体産業への投資ブームは、不動産投資ブーム以上という。こういう加熱ぶりは、いずれ冷めるはず。その時の反動が恐ろしい。新規参入した企業は、半導体研究と無縁の企業が多く、「一旗組」である。

     


    (4)「中国国内では、一部の新半導体メーカーが、すでに経営難に追い込まれているという。中国紙「中国経営報」9月19日付によるとと、2017年11月に創立された武漢弘芯半導体製造有限公司は、資金調達難に陥り、倒産寸前の状況だという。設立当時、総投資額1280億元(約1兆9905億円)で大きく注目された。また、陝西省、江蘇省などの各地でも半導体メーカー5社が、倒産または操業停止となった。この6社はすべて2015年以降に設立された」

     

    2017年11月に創立の武漢弘芯半導体製造有限公司は、資金調達難に陥りって倒産寸前という。満足な半導体製品が生産できなければ、倒産は当然のことだ。そういう企業が、6社も上がっている。

     

    (5)「台湾シンクタンク、台湾智庫の董立文諮問委員は大紀元に対して、中国当局が半導体産業を強化し、欧米に頼らず、国内供給体制の確立を目指していることについて、「非常に難しい」との見方を示した。「中国当局は今まで、時間をかけて半導体産業の人材を育成するのではなく、各国から技術を窃盗し、技術者を引き抜くことに多くの時間を費やしてきた」と董氏は指摘した」

     

    半導体産業が、促成栽培で発展するはずがない。時間の経過が研究蓄積を生むもの。これまでの米国技術窃取が、そういう蓄積動機を奪ってきた。

     

    (6)「米中は現在、貿易戦だけでなく、ハイテク分野でも激しく対立している。米政府が現在、中国最大の半導体ファウンドリである中芯国際集成電路製造(SMIC)に制裁措置を課すことを検討している。「中国側も、米中ハイテク戦争がしばらく続くと認識しているため、急いで国内の半導体産業を発展させようとしている」と指摘する」

     

    半導体産業の急速な発展はあり得ない。中国は、安易に考えすぎている。

     

    (7)「董氏はまた、半導体チップ、ウエハーなどは、数学、物理、化学などの多くの科学基礎教育に関わり、技術革新の環境も必須であるとした。同氏は、中国当局が科学教育を重視してこなかった上、外国からの技術窃盗も難しくなった今、国内半導体調達で自立を目指すのは「不可能だ」とした。「特に今、半導体製造技術がどんどん新しくなり、半導体の微細化も速く進んでいる。米政府が中国のSMICを制裁すれば、中国企業は海外の最先端技術に追いつかなくなるだろう。軍事上でも、米中間の緊張感が高まっている。半導体などの技術力低下で、中国軍はすぐに設備の老朽化問題に直面し、航空業や他のハイテク産業も大きな打撃を受けるだろう」。董氏は、米中対立の長期化で、中国が「一夜のうちに文化大革命の当時(の混乱状況)に再び戻る可能性がある」との見方を示した」

     

    このパラグラフが、中国での半導体産業育成はいかに困難であるかを指摘している。「一夜漬け」で、米国との覇権争いを乗り切れるはずがない。じっくりと、苦難を舐め付くし無益な米国との競争を諦めることだ。

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    韓国文大統領は、先に菅首相就任に当り祝賀文を送ってきた。美辞麗句を並べ、日韓がいかに親しく、価値観が同じであるかを強調して見せたのである。普段、疎遠であるからこそ出てくる言葉だ。

     

    この文氏が目下、行われているWTO事務局長選で韓国出身候補支援のため、ドイツのメルケル首相まで電話、運動していることが分った。隣国の日本へは支援要請できず、遠いドイツへ電話をかける。この「矛楯」に対して、感ずるところはなかっただろうか。

     

    『中央日報』(10月2日付)は、「文大統領『WTO事務局長に兪明希氏を支持してほしい』…メルケル首相『適任者だと思う』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が10月1日、ドイツのアンゲラ・メルケル首相に世界貿易機関(WTO)事務局長に挑戦した産業通商資源部の兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長に対する支持を要請した。文大統領はこの日午後6時から20分間、メルケル首相と首脳電話会談を行った。



    (1)「まず文大統領は、「ドイツ統一30周年(10月3日)を心よりお祝い申し上げる」とし「韓半島(朝鮮半島)の平和と統一を希望するわれわれ国民にも多くのインスピレーションを与える意味のある日」と述べた。これに対してメルケル首相は「ドイツ統一30周年に意義深い感慨を持っている、韓国が統一に対して抱いている夢をよく知っている」とし「盛大にドイツ統一30周年行事を執り行いたかったが、コロナのためにそのようにできず残念」と明らかにした」

     

    文氏は、ドイツ統一30周年祝いを伝える目的でメルケル氏に電話をした。文氏の頭には南北朝鮮統一があったはず。東西ドイツの統一は、南北統一よりも幸運であった。北朝鮮のような「狂気」が、東ドイツに存在しなかったからだ。話せば分る相手であった。文氏は、北朝鮮の「狂気」を「正常」と見なしているところが危機である。

    (2)「文大統領がドイツの新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)の対応を称賛しながら「これまで首相のリーダーシップ下に、ドイツが新型コロナの対応において模範となってきたことに敬意を表す」と述べると、メルケル首相は「新型コロナの拡大を防いできた韓国の対処方式に大きな関心がある」と応じた」

     

    ここは、お互いにエールの交換である。



    (3)「続いて文大統領は、メルケル首相にWTO事務局長選に出馬した兪氏の支持を求めた。文大統領は「今日の電話会談を提案したのは、9月末に書簡で申し上げたとおり、WTO事務局長選に出馬した韓国の兪明希氏に対する関心と支持を要請差し上げるため」と明らかにした。文大統領はこれに先立ち、先月24日、ドイツに支持要請書簡を送っていた」

     

    文氏は、すでにメルケル首相へ自国出身のWTO事務局長候補へ支援要請文書を送っていたことが分った。その上さらに、電話でも支援要請したのだ。必死になっている。WTO事務局長選では、アフリカ出身である二人の女性候補が有力。いずれも、政治活動を経験しており、組織を動かす能力が優れていると評価されている。韓国候補が、この有力候補を上回って当選の栄誉を勝ち取るのは、難しいというのが下馬評だ。

    (4)「あわせて、「韓国は自由貿易秩序の中で成長してきて、多国間貿易体制の守護と発展がWTOを中心として進んでいくべきだという確固たる信念を持っている」とし「兪氏はこのような信念を実現できるビジョンと力を備えていて、WTOを発展させて信頼を回復させることができる最適任者と考える」と付け加えた」

     

    韓国が、WTOを利用して自国利益を図っていることは確かだ。福島県産海産物について放射線物質があるという「風評」だけで、韓国は輸入禁止措置を続けている。非科学的動機である。こういう冗長的国家出身のWTO事務局長が出現したら、日本は大変な損失を被るのだ。



    (5)「メルケル首相は「韓国の兪明希候補が能力と専門性を備えた適任者だと思う」と答えた」

     

    メルケル氏の答えには、「ぜひ推薦しましょう」という言葉がないのだ。「適任者」という第三者的な答えに止まっている。WTO事務局長候補は、WTO改革に絡むので、日欧米の3極が事前に意思統一していると見るべきだろう。

    共同通信の報道によると、日本政府はWTO事務局長候補のうちナイジェリアとケニアの出身者に絞り込む方向で調整中だと、複数の日本政府関係者が明らかにした。日本の外務省の幹部は兪明希本部長について「公平・中立性が担保されるのかについて不安がある」という意見を述べたと、共同通信は伝えている。

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    英経済紙『フィナンシャル・タイムズ』が、日本経済批判記事を書いたことに便乗して、韓国メディアが、「日本経済衰退論」を流している。アベノミクスは失敗したというのだ。根拠は、消費者物価(CPI)上昇率2%上昇を達成できなかったこと。安倍首相在任中、ドル換算ベースでGDPが縮小したことなどを上げている。

     

    世界的にインフレ状況は消えており、CPIは安定傾向を示している。FRB(米連邦準備制度理事会)議長は、CPI上昇率が2%になるまで現在の金融緩和を継続すると発言しているほど。日本だけの問題でないのだ。超長期のドル・円の購買力平価を計算すると、1ドル=100円が均衡線である。円が、100円を上回れば円安水準。100円を下回れば円高水準である。現状でみた購買力平価は、「ドル高円安」相場である。

     

    この為替相場が、日本のGDPを縮小させたもので、実態の日本経済は縮小過程にあった訳でない。現実に、労働需給は逼迫し、高度経済成長期と匹敵する状況であった。縮小経済において、完全失業率が下がるはずがない。要するに、韓国メディアは日本経済の実態を見ずに、「日本憎し」という感情論に基づく日本経済批判である。

     

    『中央日報』(10月1日付)は、「アベノミクスに似ていく世界経済の流れ」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のキム・ドンホ論説委員である。

     

    (1)「アベノミクスと呼ばれるこの実験は、2012年12月から2020年9月まで、ほぼ8年にわたって行われた。長期実験だっただけに、成果の客観化も十分可能だ。また、実験には、3本の矢と呼ばれる3つの独立変数が投入され、評価が比較的容易だ。▼拡張的財政▼十分な金融緩和▼成長戦略の3つだ。日本はこのように、財政と金融という2つの矢を活用し、市中に通貨を供給した。これにより、自国通貨の(対外)価値(注:為替相場)を大きく下げることに成功し、日本は輸出競争力を大きく回復させた」

     

    ドル・円の購買力平価は、長期にわたって1ドル=100円である。日本は、長いこと超円高状態にあった。輸出が不振で国内経済は停滞した。安倍政権になって異次元金融緩和に踏切って、円相場を100円以上の水準に戻して、国内経済が息を吹き返した。

     

    日本でこの政策が可能だったのは、経常黒字を続けていたという「貯蓄過剰」体質が安泰であったという事実だ。世界最高の対外純資産国として、異次元金融緩和に耐えられる体質であった。「腐っても鯛」である。

     

    (2)「第3の矢は成長戦略だ。法人税を大幅に下げることから出発し、企業の投資活性化のための規制緩和にも乗り出した。さらに女性の社会進出を活性化させ、少子高齢化に伴う人的資源不足の解消にも全力を傾けた。これにより、日本はかなりの活力を回復しているように見えた。求人倍率が1.6~1.7に及ぶほどの企業の活力が蘇ると、大卒者は卒業前に職場を選んで就職することができた。「失われた20年」が本格化した2000年代の日本の青年たちが就職できずフリーター(非正規バイト)として転々としていた時と全く異なった」

     

    円相場が、円安になったことで日本経済は息を吹き返した。国内の生産活動が復活したのだ。過去の1ドル=80円という超円高は、国内企業を海外流出させて産業空洞化をもたらした。ただ、このことが国際収支上では、所得収支を黒字化させ経常黒字に貢献した。超円高が、その後の長期円安を可能にさせたと言える。

     

    (3)「経済全体でみると、日本は過去8年間、むしろ後退した。米国は言うまでもなく、中国との格差もさらに広がった。国内総生産(GDP)の規模は米国が2012年16兆1970億ドルから2019年21兆4390億ドルに30%成長し、中国は同期間8兆5700億ドルから14兆1400億ドルと70%近く増加した。その間、日本のGDPは6兆2030億ドルから5兆1540億ドルと、むしろ約20%減少した。バブル経済の絶頂期だった1980年代に一時米国を見下ろした日本経済はアベノミクスにもかかわらず、矮小症にかかったかのように萎縮しているということだ」

     

    1ドル=80円台が、100円以上になれば円安である。ドル換算のGDPが、円安にスライドして縮小するのは当然である。なぜ、この簡単なことが分らないのか。頭を冷やして考えれば、納得できるはずだ。アベノミクスを批判する材料として、このGDP規模を持出しても無意味である。

     


    (4)「ここからアベノミクスの決定的教訓を得ることができる。巨大な人口を基盤に、高速成長に乗った中国との格差は仕方がないとしよう。問題はむしろ、経済規模が縮小したという事実だ。表面的には日本円の価値を落として輸出が増え、日本の主要企業の活力も回復して雇用が増えた。特に先進国の中で就職率が最も低かった女性の社会進出が大幅に増えたのは経済の体質の肯定的変化と評価するに値する成果だった。日本円のレートが2012年末に1ドル=80円から105円水準に下落(レート上昇)したことは、日本企業としては翼を得たも同然だった」

     

    このパラグラフは、完全は自己撞着に陥っている。円安が、GDP規模を縮小させたという正解の入り口に立ちながら、GDP縮小を批判しているからだ。80円が105円になれば31%の円安だ。これを乗り越えてドル換算のGDPが、増加基調を辿るのは韓国経済ですら不可能であろう。

     

    (5)「日本は冷酷な国際競争の中で存在感を示すことができなかった。ヨーゼフ・シュンペーターが強調した破壊革新が出なかったためだ。第3の矢だった成長戦略に根本的な問題があったためだ。表面的には、法人税を下げて無公害の未来産業としつつ観光規制を緩和し、外国人観光客の誘致を拡大したが、世界的転換期のたびに出てくる技術革新の流れに乗ることができなかった。英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、「成長戦略の実現のためには果敢な構造改革が必要だったが、安倍首相はむしろ企業の雇用の安定を維持させ、そこに敗着があったようだ」と指摘した」

     

    FTは時々、おかしなことを書いている。その点で、米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月16日付)は、「日本の新首相、期待される経済改革」と題する社説を掲載した。正確に日本経済を分析している。

     

    (6)「安倍氏は、労働法規、コーポレート・ガバナンス(企業統治)改革、移民規制の緩和などの面で成果を上げている。彼はまた、国内の競争力強化を目指して、環太平洋経済連携協定(TPP)など質の高い貿易協定の交渉に取り組んだ。安倍氏の内閣官房長官として長く仕えた菅氏は、この政策課題の立案と実行において主導的役割を果たした」

     

    コーポレート・ガバナンス(企業統治)改革は、立派なイノベーションである。これは、日本の株式市場へ世界のマネーを引き寄せるからだ。FTは、こういう地道な日本経済検証をしないで日本批判記事を書いている。それを鵜呑みにする『中央日報』も認識不足である。

     

    (7)「菅氏は現在、非効率な地方銀行の改革に重きを置くなどといったアイデアを持っている。日本の地銀は数が多過ぎる上、利益が少な過ぎる。安倍氏の爆発的な金融緩和措置は(地銀の)助けにならなかった。菅氏は長年、統合によって地銀が中小企業に融資する能力が上がると信じてきた。同氏はまた、中小企業間の統合や合併に対する政策上の障害を取り除きたいと考えており、それが生産性向上を後押しする可能性があるとみているようだ」

     

    菅首相は、異次元金融緩和で経営が苦しくなった地方金融機関の再編に動き出している。これもイノベーションなのだ。イノベーションは、技術面だけでなく制度改革も含む広範囲な概念である。シュンペーターは、そういう解釈である。


     




     

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    中国の傍若無人な振る舞いが、南シナ海で始まっている。演習を理由にして他国商船の迂回を命じたり、他国のEEZ(排他的経済水域)内で資源窃取を始めているとの見方が出ている。巨大海軍力を使って、他国EEZへ盗掘行為をするとは、落ちぶれたものだ。

     

    『大紀元』(10月1日付)は、「中国の南シナ海の軍事化、海運に影響 商船は迂回ルート、EEZ資源搾取の懸念も」と題する記事を掲載した。

     

    中国は南シナ海で軍事化を進めている。これは、地域の商業海運にも大きな影響を及ぼしている。米メディア『ラジオ・フリー・アジア』(RFA)が船舶追跡データを分析した結果、各国の商業船は、南シナ海の北部のパラセル(西沙)諸島、南部のスプラトリー(南沙)諸島周辺を通過する場合、中国の人工埋め立て地を避けていることがわかった。RFAが9月29日に報じた。

     

    (1)「中国はこの3カ月間、米国との緊張が高まる中、南シナ海のパラセル諸島で2度の軍事演習を実施した。いずれの場合も、演習期間中は海上交通を部分的に遮断し、2回目の演習では対艦弾道ミサイルを海上に発射した。9月下旬、さらに同諸島で2つの演習を行うと発表した。これで、この地域で行われる軍事演習が4つに上る。専門家によると、中国の海南省から3万3000平方キロメートル以上離れた海域で実施された訓練は、7月上旬と8月下旬のわずか数日間だけだったにもかかわらず、海上交通の混乱を招いた」

     

    最近の中国は、南シナ海で同時に4カ所において軍事演習を始めて、周辺国を威嚇している。この目的が、他国EEZ内での資源盗掘を行うためあらかじめ威圧するという狙いもあるようだ。習近平氏は経済運営姿勢で、内需を重視し貿易を補助的位置に据えている。この貿易の穴を、南シナ海での盗掘で賄うとすれば、中国は本格的な「資源泥棒国家」になる。知的財産でも泥棒国家だが、不名誉なことこの上ない話である。

     


    (2)「船舶を追跡するオンラインサービス「MarineTraffic」が収集したデータによると、2016~17年の間に石油や貨物を積んだほとんどの船舶が、中国が主権を主張するパラセル諸島を迂回していた。そのため、この地域の南東部や北西部への交通量が増加していたが、パラセルを通るより直接的なルートの方が燃料コストを削減できた。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのエネルギー研究所が開発した海運の可視化ツール「Shipmap」は、2012年のパラセル諸島を通過するコンテナ輸送の様子を示している。中国の軍事拠点化が明るみになる以前は、各国の船舶は、リンカーン島とウッディー島の間を通り、パラセル諸島を自由に航行していた」

     

    南シナ海が、開かれた公海でなく中国の裏庭に囲い込まれれば、世界が受ける損害は大きくなる

     

    (3)「世界の貿易の3分の1近くが南シナ海を通過し、約5兆ドル相当の商品を輸送している。これらの商品を運ぶ貨物船を扱う港の上位10港のうち、9港がアジアにある。中国は、南シナ海のほぼすべてを囲う九段線は「歴史的権利」に基づいて自国領域と主張している。しかし、国際海洋法では裏付けられていない。中国は他のアジアの6つの政府(ベトナム、フィリピン、台湾、ブルネイ、マレーシア、インドネシア)と対立している」

     

    中国は、南シナ海で6つの政府と対立している。不法占拠が理由である。九段戦という根拠のない理屈付で他国の島嶼を占領した。当初、これと強く止めなかった米国オバマ政権の責任も重大だ。

     

    (4)「政治的リスクに関する助言コンサルティング会社PRISMのパートナー、ヨハン・ゴット氏は、南シナ海の迂回による商業的影響は比較的小さいと述べた。ゴッド氏は、中国の強制行動の大きな脅威は、近隣諸国の排他的経済水域(EEZ)での資源採取だと指摘する。各国は沿岸から200カイリ以内のEEZで魚や石油などの資源を利用できる。しかし、中国の主張する南シナ海の九段線は、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、インドネシアなどのEEZに影響を及ぼす

     

    中国は、九段戦を理由に5ヶ国のEEZに影響を及ぼし、盗掘を始める危険性を秘めている。中国は海底資源に対して貪欲である。尖閣諸島も周辺に豊富な資源があることが分かって

    以来、中国領を主張し始めた経緯がある。

     

    (5)「インド太平洋安全保障問題担当の米国防総省高官デービッド・ヘルビー氏は、RFAの取材に対して、中国の拡張主義で、他国のEEZの資源開発が制限されていることを強調した。ヘルビー氏は、9月16日にワシントンD.C.のシンクタンク、グローバル台湾研究所が開催したイベントで、「中国の海上民兵や海警局公船、場合によっては人民解放軍海軍を他国のEEZに送り込み、漁業活動や、エネルギー探査や開発を妨害している」と述べた

     

    以上、もろもろの事情を考えれば、中国がEEZ内での海底資源盗掘に着手している公算は強まる。呆れるほかない行為だが、見栄も外聞もないという追い込まれた姿が浮かぶだけである。米中対立の長期化は、中国を一層不利な状態へ追い込むであろう。

    ムシトリナデシコ
       

    旧徴用工賠償問題は、日韓の喉に刺さった骨である。韓国大法院が、「日韓基本条約」を骨抜きにする判決を出したことで両国は泥沼状態に入り込んでいる。各国とも、司法は条約に不介入を原則としている。韓国は、その原則を破った判決を出したことで、事態が紛糾したもの。

     

    韓国は、菅政権に代わったことで「日韓復縁」を期待していたが、菅首相の「二度と騙されないぞ」という強い意志で歩み寄りは難しいことが次第に判明してきた。菅氏が官房長官時代、舞台裏で取りまとめに奔走した日韓慰安婦合意が、文政権によって破棄されて、韓国へ「トラウマ」になっている。韓国は、こういう裏切り行為をすっかり忘れているのだ。

     

    文大統領の任期は、2022年5月まで。来年3月以降は、次期大統領選準備で国政は停滞する。そうなれば、これから正味5ヶ月しかないのだ。この間に、法案準備ができるのか。前国会議長の文氏が提案した案を廃案にしたことが悔やまれるであろう。

     


    『中央日報』(10月1日付)は、日本「韓国は企業資産現金化しないと確約を…それまで菅首相の訪韓あり得ない」と題する記事を掲載した。

     

    日本外務省幹部が先月30日、日帝強制動員賠償訴訟について、被告である日本企業の資産を売却しないという韓国の確約がなければ菅義偉首相の韓国訪問はあり得ないと語ったと、共同通信が同日午後遅く報じた。同幹部は記者団に「韓国の裁判所が差し押さえた日本企業の資産について現金化しないという韓国政府の確約がなければ、菅首相は韓国が開催しようとしている日中韓首脳会談に出席しない」と伝えた。

     

    (1)「共同通信によると、同幹部は記者団に「(日本企業の資産が)いつ現金化されてもおかしくない状況の中、首相の訪韓はあり得ない」と述べた。韓国政府はことしの議長国を務め、年内にソウルでの韓・中・日首脳会談の開催を進めている。共同通信は、日本外務省幹部のこのような発言は「日帝強制動員賠償訴訟問題で韓国政府の譲歩を引き出す狙いがあるとみられる」と分析した」

     

    韓国には、前国会議長が超党派で提案した案がある。大統領府が、乗り気でなく廃案にしてしまった。菅政権へラブレターまがいの手紙を送ってまで解決を急ぐ姿勢を見ると、文政権の政治的勘の鈍さが目立つのだ。

     

    (2)「菅首相は先月24日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領との電話会談で「非常に厳しい状況にある両国関係をこのまま放置してはならない」と述べた。ここで言及された日本企業の資産売却とは、新日鉄住金に関するものだ。2018年10月、李春植(イ・チュンシク)さん(96)をはじめとする新日鉄住金強制動員被害者が大法院(最高裁)の再上告審で確定判決を受けた。新日鉄住金は李さんをはじめとする原告団に1人当たり1億ウォン(約900万円)の賠償をしなければならないという判決だ。しかし、新日鉄住金が判決を履行せず、韓国の裁判所が強制執行の手続きに入った」

     

    韓国は、日韓基本条約で解決済みという原点を忘れている。

     

    (3)「被害者代理人団は、2018年12月に大邱(テグ)地裁浦項(ポハン)支部に「株式差押命令の申請」を出した。翌年1月に浦項支部は「日本製鉄が所有する株式会社PNRの株式8万1075株(額面金額5000ウォン基準、4億5375万5000ウォン)」に対して株式差押命令を決定した。PNRはポスコと日本製鉄が、合同で慶尚北道(キョンサンブクド)浦項に立てた会社だ。合同で訴訟を起こした故・呂運澤(ヨ・ウンテク)さんをはじめとする原告4人のうち3人はこの世を去った。現在、原告側の唯一の生存者が李春植(イ・チュンシク)さんだ」

    文政権は、徴用工賠償問題を反日材料に利用する積もりであっただろう。日韓関係を悪くすることで進歩派政権を永続させようという企みをしてきたからだ。今年の5月総選挙まで、「韓日決戦」という言葉を使った政権である。にわかに真の友好国関係になろうという意思はあるはずがないのだ。

     

    (4)「李春植さんはことし6月に中央日報とのインタビューで「両政府が清算してくれることを願う」とし「これで裁判訴訟に勝訴したから、(お金を)払えばきれいに終わる」と述べた。日本側は自国企業の資産の強制売却を阻止しようとする立場を固守してきた。菅首相は官房長官時代に開かれた記者会見で、差し押さえされた日本企業の資産が強制売却された場合について「現金化(日本企業の資産の強制売却)に至ることになれば、深刻な状況を招くので避けなければならない」と述べた」

     

    韓国は、自国で起こした判決である。日本を巻き込まずに解決案を作るべきなのだ。文政権は、三権分立を理由にして解決を逃げているが、それはあまりにも無責任と言うべきであろう。

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