勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2020年10月

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    ドイツ外相が、世界秩序へ挑戦する中国に対して欧米は、正しい付き合い方をしなければならないと発言した。来年は、メルケル首相辞任が予定されているので、「ポスト・メルケル」を見すえて積極的外交政策を展開する前兆であろう。

     

    ドイツ政府は92日、インド太平洋地域は「外交政策の優先事項」と位置づけ、地域との関係強化を正式に表明した。地政学的な権力構造の変化が、ドイツに直接影響を及ぼすことなどを理由にあげている。「ドイツ・ヨーロッパ・アジア:21世紀を共に形作る」と題された政策ガイドラインは9月2日に閣議決定された。ドイツが、「インド太平洋地域の国際秩序の形成に積極的に貢献する」ことを目的とするもの。

     

    へイコ・マース外相が先の記者発表で、「インド太平洋地域がドイツの外交政策の優先事項である。インド太平洋という重要な地域との関係を強化し、多国間主義、気候変動の緩和、人権、ルールに基づく自由貿易、コネクティビティ、デジタル交易、特に安全保障政策の分野で協力を拡大する」としている。また外相は、インド太平洋は「国際秩序の形が決まる場所であり、強者の法に基づくのではなく、ルールと国際協力に基づくものだ」とした。

     

    ドイツが、このようにインド太平洋問題に積極的に関わる姿勢を見せたことは、中国にとって不気味であろう。EUが、一丸となって中国へ対抗する姿勢をみせているからだ。次の記事は、NATO(北大西洋条約機構)は、自主的に防衛費を増やし中国へ対抗すべきと示唆している。これで、米国の負担を軽減させ、欧米が真のパートナーになるべきという。注目すべき内容である。

     

    『大紀元』(10月28日付)は、「米欧関係の将来、中国との付き合い方にかかっているー独外相」と題する記事を掲載した。

     

    ドイツのハイコ・マース外相は11月3日の米大統領選を控え、米大統領選でどちらの候補が勝っても、対中問題において、米EU間の大西洋横断パートナーシップは維持しなければならないと述べた。また、将来の米欧関係は、中国との正しい付き合い方にもかかっていると主張した。

     

    (1)「マース氏は10月25日、独紙『ディ・ヴェルト日曜版』に寄稿した。同氏は中国問題について、米欧関係の将来は中国問題にどう対処するかにかかっており、米欧間の相違を解消して、力を合わせて対応すべきだとした。マース氏は、ドイツ政府が新大西洋アジェンダの新たな5つの提案を、米大統領選後にワシントンに提示すると述べた」

     

    トランプ氏はこれまで、NATOは防衛費を対GDP比2%以上に引上げるように勧告してきたが、ドイツが積極的にこれに応じる姿勢のようだ。これまで米独関係は悪化していたが、「ポスト・メルケル」では米独が緊密化する場面ができるのだろうか。

     


    (2)「マース氏は、「欧州主権」を訴え、欧州は独立性を維持する必要があると述べた。「必要に応じて独立して危機に対応する」ことを欧州は主眼とするべきだが、これは大西洋パートナーシップの後退を意味するものではないと強調した。安全保障上の利益を独自に守る努力をする欧州だけが、米国にとって魅力的なパートナーだとした。マース氏は、欧州各国は米国の国際問題への関与を減らすことに備えなければならず、米国のこの姿勢は大統領選の結果によって変わることはないとした」

     

    NATOは、いつまでも米国の負担で存在するのは限界があるという認識である。米国に過重な負担を強いることなくNATOが、「必要に応じて独立して危機に対応する」心構えを主張している。これまでの米国による「おんぶにだっこ」を是正すべきという主張だ。それが、中国に対する正しい戦略をもたらすという意味でもあろう。

     

    (3)「欧州は、欧州における共同防衛能力の構築に引き続き注力すべきだとした。今こそ大西洋横断パートナーシップ関係が再開される時だ。北京とモスクワ、テヘランと平壌は、私たちの対立を利用している」とマース氏は語った。さらに、米欧が中国に対処する積極的な方法として、人権や公正な貿易、強制的な技術移転や国有企業(補助金問題)への対応など、新しい基準を設定することを提案した

     

    米欧が、中国に対して次のような基準を設けた提案をすべきとしている。

    人権

    公正な貿易

    強制的な技術移転

    国有企業への補助金問題

     

    米欧は、これらの基準を設けて中国へ共同の要求を出すべきとしている。これまでは、米国が一国で中国と交渉してきたが、今後は米欧が一体になって対応すべきというのだ。中国にとっては、逃げ場がなくなる。

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    中国は、GDP統計ですら改ざんする国である。中でも出生データは誤魔化しのし放題である。合計特殊出生率(一人の女性が生涯に生む子どもの数)は、国際統計でも噓の数字を掲載している。2018年は臆面もなく「1.69」と記載した。中国は、出生データを誤魔化している。中国の国力が、外部からのぞき見されるためである。自らの弱点を隠しているのだが、無駄なことである。2019年の正しいデータは、末尾に記載した。

     

    中国が人口データを水増ししているとの主張を裏付けるため、次の出生と入学のデータの相違を挙げたい。例えば2000年の新生児は統計局によると1771万人だったが、2014年の中学入学者(14歳)はわずか1426万人だった。14年間で345万人が「死亡」したことになる。2000年の乳児死亡率3%前後である。約43万人に過ぎない。となると、約300万の差は説明できないのだ。結局、最初から生まれていなかったことになる。

     


    『大紀元』(10月28日付)は、「中国の高齢者人口、5年内に3億人突破」と題する記事を掲載した。

     

    中国民政部(省)養老サービス司の李邦華副司長は10月23日の記者会見で、2021~25年までの5年間、中国の60歳以上の高齢者の人口は3億人を超えると明らかにした。同氏は中国の高齢化が急速に進んでおり、当局の「養老サービスが一段と厳しい局面に直面する」と示した。

     

    (1)「中国の民間シンクタンク、恒大研究院は今月、出産調査報告書、「中国生育報告2020」を発表した。同報告書は、2021~25年にかけて、中国の人口は「マイナス」になると予測した。また、2022年に、総人口に占める65歳以上の国民の割合は15%以上となり、33年には同割合が20%以上に達し、中国は超高齢化社会に突入すると指摘した」

     

    民間シンクタンク恒大研究院の報告書によれば、2021~25年にかけて、中国人口は減少過程に入る。これまでの人口推計では、2028年の14億4200万人をピークに減少に転じる見通しであった。これ以降、中国の「苦難の時代」に直面すると予想されていた。それが、最新の人口推計では、かなり繰り上がる見通しが強まっている。2022年には、総人口に占める65歳以上の国民の割合は15%となり、中国が「高齢社会」(14%以上)に入るのだ。「高齢化社会」は65歳以上が7%以上である。「高齢社会」の中国が、世界覇権を狙うというのだ。80歳のお年寄りが、エベレストに登頂するようなもの。不可能である。

     

    (2)「同報告はさらに、「日米韓などの各国では、総人口に占める高齢者の割合が12.6%に達した時、1人当たりの国内総生産(GDP)がすでに2万4000ドル(約251万円)を上回った。これに対して、中国の1人当たりのGDPは1万ドル(約105万円)程度にとどまっている。これは、中国社会は、豊かになる前に老いるという深刻な状況に陥っていることを反映している」との見解を示した」

     

    総人口に占める高齢者の割合が12.6%に達した時、日米韓1人当たりの名目GDPは、2万4000ドル(約251万円)を上回った。中国の1人当たりの名目GDPは、約1万ドル(約105万円)に過ぎない。この差は大きい。習氏は、この現実に目もくれずに「中華の世界」を夢見ている。不可能なのだ。

     


    (3)「中国問題専門家の薛馳氏は、以前の大紀元とのインタビューで、中国当局が今まで厳しく実施してきた「計画生育(出産)政策」が、人口構造のアンバランスを招いた最大の原因だとした。また、当局が伝統文化を破壊したため、家族間で高齢者を扶養する伝統的な考え方がなくなり、「政府が高齢者介護サービスの課題を解決しなければならなくなった」。しかし、「中国当局は年金制度や社会福祉への財政投入が非常に少ないのが現状」と同氏は批判した」

     

    中国は1979~2014年までの一人っ子政策に馴れきってしまった、一人の子どもにたっぷりと教育費をかける生活が定着しており、「二人以上の子ども」を持つ気持ちは消え失せている。こどもが減れば「高齢化」の進行を早める。2017年の65歳以上の高齢者は1億5847万人となり、人口の11%に達した。2022年には「高齢社会」へ移行する。中国社会にこれを受入れる準備がないのだ。最大の悲劇はここにある。

     

    (4)「近年、中国では少子高齢化が進んだため、生産年齢人口や人口ボーナス(総人口に占める働く世代の割合が増え続けて、経済成長が後押しされること)が激減した。中国当局は出生率の上昇を促そうと、2016年「二人っ子政策」の実施を決定した。しかし、一般市民の多くは、住宅ローン、医療費、教育費などの負担が大きく、「産めても養えない」との不安を抱いている。このため、同政策の効果は限定的だ。2019年、中国本土の合計特殊出生率はわずか1.048%だった。1949年以来の過去最低を記録した

     

    2019年の合計特殊出生率は、わずか「1.048」である。初めて秘密のベールが剥がされたのだ。国際統計では、前述の通り「1.69」(2018年)である。中国当局は、大嘘の数字を発表している。これほど噓にまみれた国家も珍しい。

     

     

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    韓国では物事がうまく行かない場合、必ず誰かに責任を擦り付けるクセがある。今回のWTO(世界貿易機関)事務局長選の決戦投票で、韓国候補の産業通商資源部の兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長は、敗色濃厚になってきた。その原因は、日本が反対運動をしたからだと非難の矛先を向けている。

     

    WTO事務局長選を大きく左右したのは、EU(欧州連合)27ヶ国が結束して、ナイジェリア元財務相のオコンジョイウェアラ氏を支持することで合意したからだ。この大票田が、アフリカ候補支持で決まった以上、大勢に影響を与えたのだ。日本を逆恨みすることはない。

     

    『朝鮮日報』(10月28日付)は、「文大統領が兪明希氏にテコ入れしていたのに

    U27カ国はナイジェリア人候補支持」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領はこれまで約90カ国と電話首脳会談をしたり親書を送ったりして「兪明希支持」を訴えるなど、総力戦を繰り広げてきた。康京和(カン・ギョンファ)外交部長官も外交チャンネルを通じて支持を訴えた。しかし、選挙終盤に日本が韓国に対する「ネガティブ・キャンペーン(落選運動)」に乗り出し、形勢が不利になってきている。外交関係者の間では「政府が韓日関係を管理さえしていれば、このような状況にはならなかっただろう」という声が上がっている。

     

    (1)「外信や複数の消息筋によると、EU加盟27カ国の大使たちは同日、ベルギーのブリュッセルで支持候補を決定するための会議を2回開いた。1回目の会議では一部の東欧・バルト地域加盟国が兪明希氏支持の意向を明らかにした。しかし、これらの国々は2回目の会議で大勢に従ってオコンジョイウェアラ氏を支持することにしたという。EUはWTO事務局長を選出する際、団結のため伝統的に支持候補を統一している」

     

    EUの結束力を高めるには、統一行動をすることが肝心である。WTO事務局長選でも同じこと。過去の欧州とアフリカの植民地関係から言えば、アフリカ人候補を支持するのは当然であろう。

     

    (2)「EUではどんな事案でも、二大加盟国であるドイツとフランスの意見が一致した場合、これを覆すのは難しい。ある消息筋によると、今回のWTO事務局長選出に関して、ドイツ、フランス、イタリア、スペインなど影響力が強い国々は早くからオコンジョイウェアラ氏を支持してきたという。現在までの情勢を総合すると、WTO会員国164カ国のうち、半数の82カ国を上回る96カ国前後がオコンジョイウェアラ氏を支持するものと思われる」

     

    大票田のEU27ヶ国がアフリカ候補を支持すれば、選挙の大勢に大きな影響が出るのは当然である。

     


    (3)「韓国政府は、「第2の潘基文(パン・ギムン=前国連事務総長)の奇跡」を生むとして、WTO事務局長選挙に外交資源を総動員してきた。初の韓国人WTO事務局長輩出により国の格を高め、国際通商外交力を一層強化する契機にしようという構想だった。文大統領は27日、カナダのジャスティン・トルドー首相との電話会談を含めて合計14回、電話首脳会談を行い、73カ国に親書を送った。一部では「今回の選挙に動員した外交力を北朝鮮の非核化や韓米防衛費分担金交渉、韓日徴用問題解決に使っていたら、かなりの成果を挙げられていただろう」と指摘する声が上がっているほどだ」

     

    韓国にとって、WTO事務局長ポストを射止めれば、世界における韓国の地位が上がるという思惑が働いていていた。それは、文大統領のレガシーにもなる。それだけに、文氏は必死の思いで首脳電話会談14回、73カ国に親書を送ったのだ。

     

    (4)「選挙序盤に劣勢だった兪明希氏は、青瓦台の全面的な支援に支えられ、最終的に決選にまで進出した。ところが、WTOで影響力の強い日本が最近になって「兪明希反対運動」を展開、雰囲気が変わったと伝えられている。オコンジョイウェアラ氏は親中性向を持っており、日本も好ましくは思っていないと言われている。それでも日本が兪明希氏に背を向けたのは、韓日関係と無関係ではないとみられている。韓国人がWTO事務局長を務めれば、輸出規制など韓国との貿易紛争で不利になるとの懸念が日本政府内に広がっているということだ」

     

    日本の反対で、韓国は大魚を逸したとみているが、それは間違いだろう。何と言ってもEUが、アフリカ人候補支持で結束したことが大きな力だ。韓国大統領府では当初、日本が反対したら堂々と戦うと宣言していたのである。今さら、日本の反対が原因で、WTO事務局長選で敗れたというのもおかしな話だ。

     

    (5)「日本のこのような立場は、今回のEUの支持候補決定にも一部影響を及ぼしたとの分析がある。外交消息筋は「政府は、欧州の一部の国とアフリカの特殊な関係は『常数』と見て、東欧諸国を集中的に攻略してきた。しかし、中国に続き日本までオコンジョイウェアラ氏を支持しているため、東欧側も全員一致が難しい候補(兪明希氏)にこれ以上こだわれなくなってきた」と語った。このため、「兪明希氏が落選した場合、しばらく小康状態だった政府の対日強硬路線が復活するだろう」との見通しも出ている」

     

    中国が、兪明希氏を支持しなかった点では日本と同じである。その中国には文句を言えず、日本だけに、再び強硬路線をとるという。どうぞ、ご自由にと言うほかない。

    テイカカズラ
       

    中国政府は、2035年までにガソリン車を廃止する意向を固めた。EV(電気自動車)とHV(ハイブリッド車)のみが認められる。EVとHVは、トヨタ自動車が中国メーカーに基本特許を無料公開しているので、日系車が有利な地歩を築ける見通しが強まっている。

     

    『日本経済新聞 電子版』(10月27日付)は、「中国、2035年全て環境車に、通常のガソリン車は全廃」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国政府は2035年をめどに新車販売のすべてを環境対応車にする方向で検討する。50%は、電気自動車(EV)を柱とする新エネルギー車とし、残りの50%を占めるガソリン車はすべてハイブリッド車(HV)にする。トヨタ自動車などHVを得意とする日本メーカーに追い風となりそうだ。中国の自動車専門家組織「中国自動車エンジニア学会」が「省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ2.0」を27日発表した。工業情報化省の指導を受けて作成しており、中国の自動車政策はこのロードマップに基づいて実施される見通しだ」

     

    世界一の大気汚染国が、2050年を目標にガソリン車を廃止して、EVやHVなどに転換する方針を決めた。EVの普及は、蓄電池の性能がすべてを決める。EVの航続距離が、ガソリン車に及ばなければ、HVがその橋渡し役になるはずだ。トヨタ自動車の構想通りの動きである。

     


    (2)「『EV』を中心とする新エネ車の比率を高める。19年の新車販売に占める比率は5%だったが、ロードマップでは25年に20%前後、30年に40%前後、35年に50%超まで高める。新エネ車の95%以上はEVとする。残りのガソリン車などは、すべて省エネ車のHVに切り替える。HVの比率を25年にガソリン車などの50%、30年に75%、35年に100」%に高め、HVではない従来型のガソリン車などは製造・販売を停止する方針だ」

     

    トヨタは、HVの基本特許を無料公開している。今回の中国政府の動きで、ガソリン車しか技術のない企業は、一斉にトヨタの下に馳せ参じることになろう。トヨタ・ブームが来る。

     

    (3)「習近平国家主席は9月、60年までに二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする目標を表明した。排出量世界1位の中国が脱炭素社会に移行するにはEVなどの爆発的普及が不可欠とみて、通常のガソリン車を全廃する大胆な方針転換を図る。自動車の「脱ガソリン」は欧州が先行する。英国がガソリン車などの新規販売を35年に禁止すると表明し、フランスも40年までに同様の規制を設ける方針。9月には米カリフォルニア州が35年までにガソリン車の販売禁止の方針を表明した。日本でHVやEVなどが販売台数に占める割合は19年に39.%。政府は30年に50~70%にする目標だが、中国や欧州などに比べ見劣りする」

     

    中国は、2060年までに「二酸化炭素ゼロ」社会を目指すと発表した。菅首相は、2050年までに「二酸化炭素ゼロ」宣言を出しており、HVやEVもそれに合せた戦略が練られるであろう。

     


    (4)「新車販売台数で世界最大の中国市場が、世界の自動車大手の戦略に影響を与えるのは確実だ。トヨタは9月の北京国際自動車ショーで、中国でHVの累計販売台数が100万台を超えたと発表した。ホンダを含めHVに強い日系メーカーに有利との見方は多い。中国国有の重慶長安汽車と北京汽車集団は25年までのガソリン車などの製造・販売停止を発表している」

     

    中国国有の自動車企業は、背水の陣で臨まなければ生き延びられない環境だ。すでに脱落し始めた国有自動車企業が出てきた。

     

    中国遼寧省政府の管理下にある国営自動車メーカー、華晨汽車集団(以下は華晨汽車)は、10月23日に償還を迎えた社債をデフォルト(債務不履行)したことが明らかになった。中国メディア『財新網』などによると、同省瀋陽市に本拠地を置く華晨汽車は、2017年10月に発行した社債をデフォルトした。同社は元本の10億元(約156億円)に加えて、元利金5300万元(約8億円)の支払いが滞っている。以上は、『大紀元』(10月27日付)が報じた。

     


    (5)「米中対立の先鋭化や国際物流の停滞にも備える。35年には部品などを海外に依存しない中国独自のサプライチェーンを構築する。販売だけでなく技術でも世界をリードする「自動車強国」への転換をめざす。燃料電池車(FCV)に力を入れる方針も盛り込んだ。25年に保有台数10万台、35年には100万台にする。当面はバスなどでの利用拡大をめざす」

     

    米中対立の長期化に伴い、米中デカップリングが進行するので、中国製EVが輸出される機会は減るはずだ。中国最善の道は、米中対立から共存する政治体制への変革であろう。今時、「中華再興」などという夢を掲げても、世界が受入れないのだ。夢遊病者のごとき振る舞いに映るだけである。

     

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    中国は、合理的な経済計算が不可能であるようだ。アフリカ諸国へ天然資源を担保にして、過剰貸付をしてきたが、パンデミックの嵐でアフリカ諸国は返済不可能になっている。このままだとデフォルトの津波は、貸付先の中国国有企業に及ぶことが必至の情勢である。

     

    中国は、「一帯一路」の夢に託して世界を自陣の中に引入れて、世界覇権への第一歩にするつもりだった。それが、皮肉にも中国発症の新型コロナウイルスによって破綻させられかねない事態を招いている。まさに、合理的な経済計算ができない悲劇が、中国を襲っている状況である。合理的な経済計算とは、マックスヴェーバーの名言である。市場ルールに基づく資本主義経済の決定過程を指す言葉だ。腰だめ的な統制経済の中国には、理解不可能なプロセスである。

     

    『フィナンシャル・タイムズ』(10月26日付)は、「アフリカ諸国の対中債務『最貧国の大きな負担に』」と題する記事を掲載した。

     

    新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)で、2国間融資における中国の一貫しない融資計画、そして世界的な債務猶予への同調を渋る中国政府の姿勢があらわになっている。ザンビアがアフリカで10年ぶりのソブリンデフォルト(国の債務不履行)に向かいつつあり、他の債務国も返済の圧力が強まっている。

     

    (1)「中国は過去20年間で、2国間での公的融資においてアフリカに対する最大の貸し手になった。アフリカ諸国政府と国有企業への貸付額の総額は1500億ドル(約16兆円)近くに上る。天然資源などのコモディティー(商品)を確保しつつ、経済圏構想「一帯一路」の発展につなげるのが狙いだ。世界銀行によると、世界の最貧国が主要20カ国・地域(G20)から受けた2国間融資に占める中国のシェアは、2015年の45%から19年には63%に上昇した。サハラ砂漠以南の多くのアフリカ諸国では、2国間融資に占める中国のシェアはもっと大きい

     

    下線部は、中国が見境なく最貧国へ貸し出した実態が明らかにされている。G20が、最貧国へ融資した金額の中に占める中国シェアは、19年には63%にもなっている。サハラ砂漠以南の多くのアフリカ諸国では、中国シェアがさらに高くなるという。

     

    意地悪な見方をすれば、最貧国の焦げ付き債権発生で最大の被害国になるのは中国である。G20メンバーが、中国と最貧国の債権債務関係だから、「ご自由に」と突き放してもさほど困ることにはならないのだ。もっとも、中国に次いでフランスと日本も、2位と3位の融資国になっているが、中国に比べれば「長期低利融資」である。中国は商業銀行ベースであるから、「中期高利融資」であろう。

     


    (2)「中国の政府・金融機関はアフリカ大陸のほぼすべての国に融資しており、今世紀に入り、50億ドル以上借りた国が8カ国ある。だが、世界最大の経済国・地域で構成されるG20の「債務支払い猶予イニシアチブ(DSSI)」への中国の関与は、動きが遅い。「非常にいらだたしい」。世界銀行のマルパス総裁は今月、「中国の最大級の債権者の一部がまだ参加しておらず、最貧国にとって大きな負担となっている。(中国の)契約を見ると、多くの場合、金利が高く、透明性も欠いている」と語った」

     

    中国は、G20のDSSIに参加しながら、中国最大級の債権者が債務支払い猶予プログラムに参加しないというチグハグさを見せている。中国の個別金融機関にとって、債務支払い猶予が全面的に適用される事態になれば、資金繰り上で大きな齟齬を来たす恐れがあるからだろう。つまり、中国側金融機関にそれを受入れる経済的なゆとりがないことを「告白」しているに等しいのだ。

     

    DSSIは、G20諸国と各国政策銀行が世界最貧国73カ国に貸し付けた2国間融資について、期限を迎える返済を一時的に猶予し、4年かけて返済できるようにする制度だ。今月、DSSIの対象期間が21年6月まで延長され、返済期間が6年間に拡大された。中国企業は、この返済期間の6年延長で資金繰りが困難になるのだろう。中国金融機関は、過剰貸出でしかも返済期間がさらに先へ延ばされれば、資金繰り事情は一層の逼迫化に見舞われるはず。最貧国と中国双方で、困る度合いがそう変らないことを示唆している。

     

    (3)「本紙『フィナンシャル・タイムズ』が確認したG20の内部資料によると、中国は今のところ、DSSIの最大の貢献国になっている。債務国44カ国に対してG20諸国が返済を猶予した約53億ドルの債務のうち、中国は今年期限を迎える債務について少なくとも19億ドル分の返済を猶予した。中国に続いて貢献が大きいのは、約8億1000万ドルのフランス、約5億4000万ドルの日本だ」

     

    (4)「中国がどれだけ関与するかは不透明だ。世界銀行によると、中国は今年、G20の加盟国で最大の返済を受ける予定になっており、DSSI対象国から約134億ドル返済されるはずだった。一方、フランスと日本はそれぞれ、約11億ドルの返済を受けることになっていた

     

    中国は今年、DSSI対象国から約134億ドル返済されるはずである。一方、フランスと日本はそれぞれ、約11億ドルの返済を受ける予定であった。中国にとって、この資金が返済繰り延べとなれば、中国全体のドル資金繰りが苦しくなることを意味する。現在の中国には、10億ドル、100億ドルという資金が極めて重要な意味を保つようになっている。外貨準備高維持で汲汲としているのだ。「中国マネー」といわれていた頃と事情は激変している。「米ドル」が貴重な存在なのだ。

     

    それゆえ中国は、無闇やたらと融資返済を先送りされては、自分の首を締める結果になる。だが、融資返済の先送りを渋って、最貧国がデフォルトになれば、元も子もなくなる。中国国営企業が、深い傷を受けるのだ。借手の最貧国と貸手の中国が、ともに進退に窮するという皮肉な場面に遭遇している。この事実こそ、中国の置かれている苦境を余すところなく示している。

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