中国産ワクチン候補の受け入れを巡り、ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領とサンパウロ州のジョアン・ドリア知事が対立している。ボルソナロ氏は21日、中国の民間医薬品会社、科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)が開発中のワクチン候補について、連邦政府が購入することはないと明らかにした。シノバックはサンパウロ州とワクチン開発で提携しており、専門家らは、ブラジルでは同社のワクチンが最初に承認される可能性が高いとの見方を示している。
ボルソナロ氏はこれまで、中国政府とドリア氏の双方を厳しく批判している。ドリア氏は元テレビスターの富豪で、2022年の大統領選でボルソナロ氏の対抗馬になるとみられている人物だ。
「ブラジル国民は誰かの実験マウスにはならない」。ボルソナロ大統領は21日、ツイッターにこう投稿した。これに先立つ20日、ボルソナロ政権のアルド・パズエロ保健相は、シノバックのワクチン候補「コロナバック」4600万回分の購入向けた資金を提供する方針を明らかにしていた。そのワクチンは、サンパウロ州知事ドリア氏がすでにブラジル向けにシノバックから確保していたものだ。ボルソナロ氏は保健相の合意を破棄したとし、これに矛盾するいかなる情報も「裏切り」と断じた。以上は、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月23日付)が報じた。
『大紀元』(10月23日付)は、「ブラジル大統領、中国製ワクチン認めず『国民はモルモットではない』」と題する記事を掲載した。
ブラジルのボルソナロ大統領は10月21日、中国製の新型コロナウイルスワクチンの購入しないことを明らかにした。
(1)「同日、ボルソナロ氏は自身のフェイスブックとツイッターで「私の政府にとって、どのワクチンも、公衆に提供するために保健省と国家衛生監督局の科学的認証を受けなければならない」とし、「ブラジル国民は誰のモルモット(実験動物)にもならない」と投稿した。サンパウロ州のジョアン・ドリア知事は20日、州政府は北京拠点のシノバック・バイオテック社(科興控股生物技術、以下「シノバック」)が開発中の新型コロナウイルス向けワクチン「コロナバック」4600万回分を購入することで合意した、と明らかにしたばかり」
ブラジルでワクチン接種が政争の具となっている。中国派のサンパウロ州知事(次期大統領選の有力対抗馬)が、現職大統領と争っている結果だ。サンパウロ州知事は、ワクチンの最終臨床試験を終えていないものを接種しようとして問題になった。
(2)「ドリア氏によると、「コロナバック」の臨床試験は11月中旬に終了する見込みで、ブラジルでは早ければ2021年1月から大規模なワクチン接種計画を開始すると述べていた。今年6月11日、中国のシノバック社とサンパウロ州保健省管轄のブタンタン研究所は、「コロナバック」の第3相臨床試験を実施するための共同開発契約を締結した。この契約に基づき、ワクチンの試験と生産はサンパウロ州で開始される。ブタンタン研究所は19日、後期臨床試験の初期結果として「コロナバック」「安全」との見解を示したが、試験はまだ進行中で、実験がすべて終わるまで、ワクチンの有効性に関するデータは公表しないと付け加えた。トルコとインドネシアでも同様の実験が行われている」
サンパウロのブタンタン研究所は19日、後期臨床試験の初期結果として「コロナバック」について「安全」との見解を示したが、試験はまだ進行中で、実験がすべて終わるまで、ワクチンの有効性に関するデータは公表しないと付け加えた。これでは、ブラジル大統領が、責任をもって接種せよとは言えないだろう。
(3)「サンパウロ州政府は19日、コロナバックの第3相臨床試験で、ボランティア9000人のうち、35%が頭痛、接種部位の腫れなど、軽い副反応があることを明らかにした。ブラジルでは保守派の大統領と州知事の間の緊張がワクチン対応にも延焼している。ボルソナロ大統領は英企業のワクチンの購入を勧めることに対し、ドリア・サンパウロ州知事は連邦政府を飛び越えて、中国製ワクチンの提供を受けると決めた。両氏は中国ウイルス対策をめぐり激しい対立が表面化している」
ボランティア9000人のうち、35%が頭痛、接種部位の腫れなどの副作用が出ているという。これで「安全」とは随分と甘い判定である。ブラジル大統領が、最終臨床試験後の接種方針を固執するのは当然であろう。ただ、米ジョンズ・ホプキンス大学のデータによると、ブラジルのウイルス感染者数は累計で530万人に達し、米国とインドに次いで世界で3番目に多い。累計死者数は15万5000人で、米国に次いで2番目だ。これだけの被害が出ていれば、「頭痛、接種部位の腫れ」などの副作用は、我慢すべきというのだろうか。