勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年02月

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    韓国最大野党である「国民の力」の金鍾仁(キム・ジョンイン)非常対策委員長が1日、釜山を訪れて「韓日海底トンネル」公約を打ち出すと、与党「共に民主党」は「親日DNA」だと攻撃を浴びせた。しかし、民主党出身の金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領もかつて韓日海底トンネルの必要性に言及したのだ。とりわけ、金大中氏は熱心であった。

     

    韓国与党の反対論の根拠は、日韓海底トンネルが日本の大陸進出を手助けするというものだ。これは、余りにも時代錯誤な見方である。日本は現在、安全保障上で重視する国家の順位で、韓国を5位へと後退させている事実から見て、朝鮮半島に「興味」を失っている。ちなみに、日本の安全保障上のパートナーは次の順序である。米国、豪州、印度、ASEAN(東南アジア諸国連合)、そして韓国である。

     

    日本は、対中国防衛として「インド太平洋戦略」の構成4ヶ国(日米豪印)で、「クワッド」を結成している。韓国はこれに入っていないのだ。最近の情報では、新たに英国が加わる見込みが出てきたほど。韓国は、中国との関係で正式な参加意思を見せずにいる。こういう国際情勢の変化を見れば、日本が朝鮮半島へ接近するメリットはゼロである。

     


    『朝鮮日報』(2月2日付)は、「金大中・盧武鉉も賛成した韓日海底トンネルを『親日』と攻撃する韓国与党」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「民主党のチェ・インホ首席スポークスマンはこの日、国会で報道陣と対面し「『国民の力』が親日DNAを発動した」「どうか、本当にあしき選挙用DNAを消してしまおう」とし「海底トンネルは韓国よりも日本の方に利益となるのは確実」だとしてこのように発言した」

     

    韓国最大野党「国民の力」の金鍾仁・非常対策委員長は、日韓海底トンネルの経済的メリットを次のように語っている。「日本に比べ大幅に少ない財政負担で生産付加効果54兆5000億ウォン、雇用誘発効果45万人に達する途轍もない経済効果が期待される事業」と説明したのだ。

     

    この算出基礎は不明だが、日韓海底トンネルを建設するとすれば、日本側の距離が圧倒的に長いのだ。これは、日本側の財政的負担の大きいことを示す。日本が、この計画に乗るかどうか全く分からない段階で、韓国与党が「反日」の狼煙を上げたのである。これは、文大統領の「日本接近姿勢」に反し敵意をむき出しにしている。



    (2)「同じく民主党の禹元植(ウ・ウォンシク)議員は、「韓日海底トンネルは日本の大陸進出を許容するだけという世論の反対で議論が中断して久しい」とし「ユーラシアの関門の始点を日本に変えること」だと語った。基大(ヤン・ギデ)議員は「日本に利益をばらまいてやる妄言」「ユーラシア大陸鉄道の出発点を日本に献納する売国的発想」と主張した。キム・ソンジュ民主党全北道党委員長は、「票に焦って日本の有権者の票まで手に入れようというのか」と批判した」

     

    朝鮮半島は、沈み行く地帯になってきた。北朝鮮の専制政治と韓国の出生率の異常低下が示す「亡国シグナル」は、反日騒ぎを起こす局面でなくなっている。そういう冷静な判断力を失い、「バカの一つ覚え」の反日で凝り固まっている。日本から見れば、朝鮮半島に興味を失っているのだ。

     

    (3)「金大中・盧武鉉元大統領は在任中、韓日海底トンネル連結に前向きだった。金・元大統領は、在任中の19999月に日本を訪問した際、「韓日間の海底トンネルができれば北海道から欧州までつながるので、未来の夢と思ってみるべき問題」と語った。盧・元大統領も在任中の2003年2月、韓日首脳会談で「韓日間の海底トンネルを貫通させるべきだという意見が存在してきたが、北朝鮮のせいでうまく理解できずにいるようだ」と語った。「国民の力」では、こうした点を挙げて「民主党の論理通りなら、金・盧元大統領も親日なのか」「民主党は旧時代の政治をやっている」と批判した」

     

    日韓海底トンネル計画の推移を見れば、韓国進歩派の大統領2人が旗振り役であったのだ。こういう経緯を忘れて、「親日」と反対し騒いでいる。日韓の歴史といえば、徴用工と慰安婦の問題だけと見ている進歩派の狭量に驚くばかりである。

     

    次の記事もご参考に。

    2021-02-02

    韓国、「やっぱり日本!」最大野党の保守派、日韓海底トンネル計画をまた持ち出す「意図」

     

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    かつての大英帝国が、EU(欧州連合)を離れてアジアへ接近している。21世紀の世界経済発展の舞台は、アジアであるという読みにもとづく。英国は2月1日、TPP11(環太平洋経済パートナーシップ協定)へ正式に参加を申入れた。全加盟国11ヶ国の承認を得て、年内に正式加盟の見通しだ。英国の加盟が正式決定すれば、TPP11の世界に占めるGDP規模は、現在の13%から16%になる。

     

    日本は、英国加盟に当って一切、条件緩和しないことを原則としている。少しでも条件緩和をすれば、中国が同様の要求をしかねないからだ。TPPは、もともと中国を排除することを目的で結成された。それだけに、中国排除の「原点」を貫く必要がある。この原点維持が、米国を早期にTPPへ復帰させられる条件と見ているからだ。

     

    英国のTPP11加盟は、日米主軸で推進する「インド太平洋戦略」の参加国(クワッド=日米豪印)に加わる可能性を高めている。英海軍の最新空母「クイーン・エリザベス」号はアジアへ派遣される。母港は、日本になる見込みだ。米英の空母が期せずして、日本を母港にアジアの安全保障に寄与するという、従来にない共同防衛体制が整う。

     


    『朝鮮日報』(2月1日付)は、「米、クアッドに韓国ではなく英国を参加させる意向」と題する記事を掲載した。

     

    米ホワイトハウスのサリバン国家安保補佐官が日本、オーストラリア、インドなど4カ国が参加する多者安保協議体「クアッド」について「インド・太平洋政策の土台になるだろう」として「もっと発展させたい」との考えを示した。このような中でクアッドへの参加に消極的な韓国の代わりに昨年、欧州連合(EU)と決別した英国がこれに参加する可能性が浮上している。クアッドが「クインテット(5人組)」に拡大改編した場合、自由・民主陣営における韓国の立場が一層弱まるとの見方も出ている。

     

    (1)「サリバン補佐官は1月29日(現地時間)に米国平和研究所主催で開催された遠隔会議に出席した際、クアッドについて「インド・太平洋地域において実質的な米国の政策を構築していく根本的な基盤だと考えている」と述べた。この会議でオブライエン元安保補佐官は「(中国に対抗して)同盟国と協力できるのはうれしいことだが、とりわけクアッドがそうだ」「おそらくわれわれがNATO(北大西洋条約機構)以降に構築した最も重要な関係になるだろう」と期待を示した。この発言を受けてサリバン補佐官は「私は本当にこのフォーマットとメカニズムを継承し、発展させたいと考えている」と歩調を合わせた」

     

    米国は、インド太平洋戦略を「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」に拡大発展させる方針を立てている。軍事同盟を成立させるのだ。旧ソ連が、欧州で戦争を仕掛けられなかったのは、NATO存在の結果である。アジアでも、中国の侵略を防ぐには「アジア版NATO」が不可欠、と米国は判断している。

     

    (2)「2019年に結成されたクアッドは、米国によるインド・太平洋戦略と中国けん制の最も中心に位置している。単なる外交政策のための会談という次元を超え、昨年12月には合同軍事演習まで実施し、その結束力を誇示した。米国は韓国に対しても名指しで参加を求めるなど圧力を加えてきた。韓国政府は、康京和(カン・ギョンファ)外交部(省に相当)長官が「特定の国(中国)の利益を排除するのは良いアイデアではない」として参加の決定を保留してきた。「トランプの政策否定」に力を入れるバイデン政権だが、クアッドだけは継承・拡大・発展を宣言しただけに、韓国に対する圧力も今後さらに強まると予想されている」

     

    英国が、クアッドに参加する意味は極めて大きい。NATOとクワッドを繋ぐ橋渡し役になるからだ。NATOの主要国は、米国のほかに英独仏である。このうち、英国がクワッドに加われば、独仏もすでにアジアへ自国海軍を派遣する意向を表明しているので、クワッドに加わる可能性がぐっと高まるだろう。こうなれば、NATOと「アジア版NATO」は連携可能になる。中国は、袋のネズミになるのだ。

     


    (3)「
    英国が、クアッドに参加する可能性は昨年以降ずっと話題に上っていた。昨年、EUから離脱した英国は新たな活路を見いだすため「アジアへの回帰」を政策として推進している。米国や日本との海上合同軍事演習を通じて、持続的にインド・太平洋地域への関心を示し、先月には日本との合同軍事訓練に最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を参加させる可能性があるとも報じられた。毎日新聞は、英国のクアッド参加の背景について、「米ホワイトハウスのキャンベル・インド太平洋調整官の構想に基づくもの」と分析している。キャンベル調整官は、これまでメディアへの寄稿などを通じ、クアッド参加国を新たに加えるいわゆる「クアッド・プラス政策」を強調してきた」

     

    英国海軍は、かつて世界の7つの海にユニオンジャックの国旗をはためかせた歴史がある。その英国が、クワッドに参加すれば強力な布陣が形成される。中国海軍も怖じけずくであろう。昔の世界三大海軍(米英日)が、アジアで布陣を引くことは戦争防止上、大きな力を発揮するであろう。

     

    (4)「英国は昨年5月、対中協力に向けたいわゆる「民主主義10カ国(D10)構想」を呼び掛けるなど、共通の価値観に基づく連帯に積極的な関心を示してきた。そのため韓国の外交関係者の間からは、「韓国が除外された状態でのクアッド拡大・改編」に対する懸念の声も出ている。ある外交筋は、「民主主義と反中国を基盤とした再編に韓国だけが疎外される形が演出されるかもしれない」とした上で、「クアッドへの参加を決めるか、あるいは参加しないのであれば米中双方が納得できる原則でも立てて説得すべきだ」と訴えた」

     

    韓国は、クアッドから除外されるのでないかと懸念を持ち始めている。これまでの「反日・親中」路線では、自由主義陣営から脱落するからだ。日本の世界に占める位置を正しく評価すれば、もはや歴史問題で日本へ喧嘩を売ることの虚しさを知るであろう。

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    韓国は進歩派と保守派で、目標がこれだけ違っている。進歩派は南北統一を、保守派は日韓海底トンネル計画を持ち出している。それぞれの性格は異なるが、最終的には韓国経済の発展問題に繋がっている。

     

    海底トンネル計画は2018年、当時の釜山市長(進歩派)が熱心な旗振り役であった。その後、セクハラ事件で辞職したので自然消滅と見られていた。ところが、韓国最大野党「国民の力」代表が、日韓海底トンネル計画に言及し、やる気満々の姿勢を見せている。果たしてこれからどうなるのか。日韓の外交関係いかんが鍵を握っている。

     

    日韓海底トンネル構想の歴史は古い。九州と朝鮮半島を結ぶトンネルを掘る構想の原点は、1930年代の「大東亜縦貫鉄道構想」に始まる。1942年には「東亜交通学会」が設立され、日本本土(内地)から壱岐、対馬を経て釜山へ至る海底トンネルが計画された。上記の大東亜縦貫鉄道と結んで東京―シンガポール間を弾丸列車で結ぶ構想が立てられたのである。むろん、日本の敗戦ですべて終わった。

     

    戦後になると再び、日韓海底トンネル計画が浮上した。当初は、韓国の宗教団体が音頭を取って、日韓海底トンネルムードを高めた。1980年には、大林組が発表したユーラシア・ドライブウェイ構想で脚光を浴びた。技術的に建設可能という結論であった。

     

    金大中大統領が2000年9月、訪日の際に「日韓海底トンネル建設」の構想を日本の森喜朗首相に提唱した。同年10月、韓国ソウルで開催された第3回アジア欧州会合(ASEM)首脳会合で、森喜朗首相が日韓トンネルの共同建設を韓国側に提案した。韓国政府は2002年、調査費を計上して技術的問題点、日韓の工事費負担割合、韓国にとっての交通・物流戦略上の価値などについて分析を進めるまでになった。

     


    韓国の盧武鉉大統領が2003年2月就任式の直後、小泉純一郎首相との首脳会談で、「北朝鮮問題が解決すれば経済界から取り上げられるだろう」との旨を語った。ここで、「北朝鮮問題解決」という条件がつけられ、日韓海底トンネル「フィーバー」は終わった。

     

    以上の日韓双方の動きを見ても分かるように、日韓友好関係が深まらなければ、この世紀のプロジェクトは動かないのである。これまでのような「反日」では、絶対と言って良いほど、議論の俎上にも上がらないテーマである。

     

    『中央日報』(2月1日付)は、「韓国野党幹部『韓日海底トンネルを積極的に検討』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国野党第1党の国民の力の金鍾仁(キム・ジョンイン)非常対策委員長が釜山(プサン)を訪問し、「加徳島(カドクド)新空港の建設を積極的に支持し、加徳島新空港特別法が与野党の合意の下で処理されるよう努力する」と明らかにした。国民の力の指導部が初めて加徳島新空港建設に公式的に賛成したのだ。

    (1)「金委員長は嘉徳新空港の敷地も訪問する予定だ。金委員長は1日午前、国民の力釜山市党で開かれた現場非常対策委員会会議で、「国民の力は加徳島新空港建設を積極的に支持し、加徳島新空港建設特別法が与野党合意の下で処理されるよう努力する」と述べた。続いて「加徳島新空港の建設は莫大な雇用効果と経済的効果をもたらす」とし「グローバル競争力を備えたスマート空港に育成する」と強調した。「国内の技術と民間資本が投入される環境に向けて法的・制度的装置を体系的に後押しする」とも話した」

     

    金鍾仁氏は、保守派と進歩派に所属した希有の人材である。文氏が大統領に当選する際は、「共に民主党」の非常対策委員長を務めて力量を発揮した。政策実現本位で動く人物として知られる。朴槿惠氏が大統領に立候補する際の政策を取りまとめた責任者でもあった。だが、朴氏が公約を実現しないとして、「共に民主党」へ鞍替えした正義派である。その「共に民主党」の実施する政策に不満を持ち、再び古巣の保守派へ帰り、代表に収まっている。

     

    大学の元経済学教授である。理詰めに考えるタイプだけに、つぎのパラグラフ出てくる日韓海底トンネル計画には、経済的に採算が成り立つという見通しがあるのだろう。

     


    (2)「金委員長は、「加徳島と日本の九州をつなぐ韓日海底トンネル建設を積極的に検討する」という計画も明らかにした。金委員長は、「日本に比べてはるかに少ない財政負担で生産付加効果54兆5000億ウォン(約5兆1000億円)、雇用誘発効果45万人にのぼる経済効果が期待される事業」と説明した。続いて、「鉄道と高速道路もつなぎ、南北内陸鉄道を加徳島まで連結し、釜山新港-金海(キムヘ)港高速道路と沙上(ササン)-海雲台(ヘウンデ)高速道路の建設を推進する」と話した」

     

    下線部分は、日本として気になる部分である。韓国側の少ない財政負担で韓国の雇用誘発効果として45万人に上るとしている。これは、日本から企業を誘致する。日本人観光客の増加という効果を計算に入れているのであろう。日本は、ストロール効果で吸い上げられる恐れはないのか。精査が必要である。

     

    現在は、航空機の時代である。海底トンネルは、一昔前の話というイメージも強い。日本側の受ける印象も不明である。韓国が、どれだけ日本へ依存しているかを示す「物語」という感じが強いのだ。

     

     

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    中国の旧正月である春節が間もなく到来する。2月11日(大晦日)土曜から17日木曜までの7連休である。一年に一度、遠くへ離れている家族が顔を合せる、「民族大移動」のシーズンだ。今年は、コロナ禍で当局から足止め要請が出ているので、一年で最大の書き入れ時の消費増加が不発になる。その影響は甚大だ。

     

    『ロイター』(1月29日付)は、「中国の景気回復、低調な春節の移動でひずみ増す恐れ」と題するコラムを掲載した。

     

    中国は間もなく1年で最も人々の移動が活発化する春節(旧正月)の連休を迎えるが、今年も昨年に続いて往来は低調になる。新型コロナウイルスの感染が再び目につき始めた中で、幾つかの省がロックダウンを再導入し、検査と隔離が義務づけられて移動は困難になった。

     


    (1)「これで思い出すのは昨年、感染が最も深刻化した武漢が春節の連休開始前夜に突然封鎖された事態だ。当局の見積もりでは、今年の春節期間の旅行者数はパンデミック前の40%にとどまる。その結果、例年なら1500億ドルに上る消費活動は水を差され、中国の景気回復に内在する不均衡をさらに拡大してしまう

     

    今年の春節は、旅行抑制の呼び掛けで例年の4割水準に止まりそうだ。これによって、通常なら1500億ドルの消費活動が600億ドルに留まりそうである。

     

    (2)「春節の連休は多くの中国人、特に約2億30000万人の出稼ぎ労働者にとって1年でたった一度、故郷に戻って家族や友人と飲食し、派手にお金を使う機会になる場合が多い。だからこそ昨年の国内総生産(GDP)の54%(注:民間消費と政府消費の合計)を占めた消費に及ぼす影響は他の時期とは桁違いだ。例えば2018年を見ると、春節の連休中の映画興行収入は年間の12%を超えていた。同様に貴州茅台酒などの酒類の消費も、平安証券によると年間の最大3割に達する」

     

    通常の春節中では、家族で映画を見たり、貴州茅台酒を奮発する家庭もある。今年は、コロナ予防でそれが不可能になる。消費には痛手だ。

     


    (3)「ただし悪い話ばかりでもないだろう。一部の労働者は新たな規制導入前にさっさと帰省したものの、いつもなら人手不足に悩みがちな工場経営者にとって、旅行制限はプラスに働いてもおかしくない。キャピタル・エコノミクスによると、パンデミック前は連休に伴う混乱が落ち着くまで7週間はかかるのが普通で、工業生産や建設活動はその後の4四半期平均の8分の1強にとどまっていた。こうした経済の下押し圧力は、輸送と観光がもたらす押し上げ圧力よりずっと大きい」

     

    このパラグラフは、世界経済が順調に回っていた頃の話である。今年は、輸出に陰りが出ているのだ。労働者が帰郷しない結果、春節明け後の工場は操業度が上がってプラスとしても、肝心の受注が減っている。詳細は、次に取り挙げたい。

     

    『日本経済新聞 電子版』(1月31日付)は、「中国景況感、1月も低下 非製造業指数33ポイント急落 コロナ再拡大、移動制限が重荷」と題する記事を掲載した。

     

    調査対象は製造業が3000社、非製造業が4000社に上る。新規受注や生産、従業員数など項目ごとに調査する。50を上回れば前月より拡大、下回れば縮小を示す。1月は製造業も非製造業も2カ月連続の低下となった。

     

    (4)「中国国家統計局が1月31日発表した2021年1月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は、前月より0.6ポイント低い51.3だった。非製造業のビジネス活動指数も52.4と3.3ポイント急落した。ともに拡大・縮小の節目となる50を11カ月連続で上回ったが、新型コロナウイルスの局所的な再拡大に対応した移動制限が景況感の重荷となっている」

     

    1月の製造業PMIは、前月比0.6ポイント低下。非製造業ビジネス活動指数も、同3.3ポイント急落している。春節に伴う移動抑制キャンペーンが影響を与えているのであろう。

     


    (5)「製造業PMIを項目別にみると、柱である生産は53.5と、前月より0.7ポイント下がった。新規受注と輸出に限った新規受注もともに50を上回ったが、前月より低下した。企業規模別では、大企業が0.6ポイント、中堅企業が1.3ポイントそれぞれ下落した。零細企業は0.6ポイント上昇したが、49.4にとどまった」

     

    新規受注と輸出に限った新規受注は、ともに50を上回ったが前月を下回っている。零細企業は前月より0.6ポイント上昇したが、49.4に止まっている。末端経済の落込みを反映している。このことから、2月の製造業PMIがさらに悪化することは間違いない。

     

    (6)「国家統計局は、「局所的な新型コロナの感染再拡大が一部企業の生産、購買活動、運輸に影響を及ぼしている」と分析する。非製造業では飲食や宿泊、文化体育娯楽などサービス業の落ち込みが大きかった」

     

    「民族大移動」である春節で人々の往来が抑制されれば、その影響は広範囲に及ぶことは避けられない。これが、今後の個人消費に影を落とすことは不可避だ。2月以降の景気は落込む。

     

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    主要国では、米国大統領が就任後に初電話会談する順番と時期を注目している。バイデン氏はすでに、近隣国や欧州、日本との初電話会談を済ませた。韓国の順番は、なかなか来ないのでヤキモキしている。悪いことに、中国の習近平氏が米韓初電話会談前に割り込んでしまい、米国の感情を逆なでしたのでないか、と噂されている。

     

    文氏は、習氏との電話会談で数々のお世辞を話している。これでは、米国にとって同盟国の韓国に良い感情を持つはずがない。少し、冷却期間を置かれても致し方ないともいえるのだ。

     


    『朝鮮日報』(2月1日付)は、「韓米首脳電話会談、週内に開催か」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領と米国のバイデン大統領による電話会談が、バイデン大統領就任から10日が過ぎた今になっても実現していない。

     

    (1)「青瓦台(韓国大統領府)のある関係者は1月31日、「実務担当者の次元では毎日接触中だ」と伝えた上で、「今週中には韓米首脳による電話会談が実現するよう努力している」と述べた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は26日に中国の習近平・国家主席と先に電話会談を行い、日本の菅義偉首相は28日未明に文大統領よりも先にバイデン大統領と30分間の電話会談を行った」

     

    韓国大統領府は毎日、ホワイトハウスの担当者に連絡を取って、電話初会談の日取りを問い合わせているという。ここまで水面下の接触をしながら実現しないのは、米国に何らかのわだかまりがあるのだろう。あるいは、「焦らし戦法」で韓国から「全面協力」を取り付ける作戦かも知れない。いずれにしても、米国は何かを狙っていると見るべきだ。

     

    (2)「青瓦台は韓米首脳による電話会談について、「時期よりも内容の方が重要」としている。与党勢力のある幹部は、「米日首脳が電話会談を行ったので、われわれも早くやらねばならないというのは決まったルールではない」、「米国側からもう少し準備のための時間が必要と伝えてきた」と説明した。しかし、過去に米国大統領が就任してから韓国の大統領と電話会談を行った時期と比較すると、多少遅れているとの感は否定できない。1月20日に正式に就任したバイデン大統領は、菅首相やロシアのプーチン大統領とすでに電話会談を行った。ただし米中首脳電話会談はまだ実現していない」

     

    初会談について、韓国が「時期よりも内容の方が重要」と嘯(うそぶ)いているが、これは苦し紛れの発言だ。初会談は、外交儀礼である。外交的に重要会談は、対面で行われるものだ。外交儀礼の電話初会談の遅れは、米国にとっての韓国の役割が低下していると見るべきであろう。

     

    (3)「トランプ前大統領の場合は2017年1月20日に就任してから9日後、当時大統領権限代行だった黄教安(ファン・ギョアン)元首相と最初の電話会談を行った。トランプ前大統領の側から要請して実現したもので、およそ30分にわたり韓米同盟の強化と北朝鮮の核問題などに対して共同で対処する方針を改めて確認した。李明博(イ・ミョンバク)元大統領は2009年1月、オバマ元大統領就任から13日後に15分間の電話会談を行い、ブッシュ元大統領は就任から4日後に金大中(キム・デジュン)元大統領と電話会談を行った。いずれも日本と比較すると1日から5日ほど遅かった」

     

    李明博元大統領は、米大統領就任13日後に初電話会談が行われた。これは、過去で最も遅い時期とされている。文大統領は、今週中(1~6日)に行われないと最も遅い記録を更新する「不名誉」を負うことになろう。

     


    (4)「ある政界関係者は、「文大統領が習主席と先に電話会談をしたのは非常に残念だ」として「青瓦台は習主席との会談の意味合いを『新年のあいさつ程度』としているが、米中が対立する状況を考えて判断していれば、バイデン大統領との電話会談はすでに実現していただろう。それを考えると残念だ」とコメントした」

     

    ここまで遅れてくると、米国は意図を持っていると見るべきだろう。米中どちらを選択するのかという、「コーナーぎりぎりの球」を投げ込んでくると見るべきだ。米国は、韓国から言質をとろうと狙っているのかも知れない。

     

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