勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年02月

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    儒教思想に深く染まっている韓国は、日本を見る目は儒教のメガネを掛けたままだ。儒教では先進国意識であり、日本は野蛮国扱いである。その日本にこともあろうに併合された。末代までの恥辱であり、絶対に日本を許せない。これが、韓国人の共通の思いと見て間違いなさそうだ。

     

    現在から見れば、儒教思想そのものが科学発展を阻止し、経済停滞を招いた最大の要因である。その韓国が、現在のGDP世界規模で10位にまで上昇できたのは、日韓併合による近代化推進であったはず。その肝心の点が、韓国人の頭から抜け落ちて、「末代までの恥辱」という妄念だけが牢固として居座っている。日韓関係の行き違いの原因は、すべてここにある。

     


    『韓国経済新聞』(1月30日付)は、「韓日実用的外交が機会を創出」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙のハン・ギョンファン総括エディターである。

     

    新型コロナで国家間の往来がふさがり、韓日関係が最悪となっている今、日本ではむしろ第4次韓流が静かに進行中という。『愛の不時着』『梨泰院クラス』など韓国ドラマが人気を呼んでいる。ネットフリックスは韓国コンテンツを公開し、地上波放送や週刊誌も韓流特集プログラムを繰り返している。

     

    NHKはBTS所属事務所を取材して放送し、韓国ドラマで人気が高まった韓国料理の特集も地上波で見ることができる。週刊朝日、AERA、週刊文春エンタ! などは最近、イ・ビョンホンのインタビュー、韓流ドラマ紹介、NiziUの表紙写真、JYP特集などを掲載した。一時はヘイトスピーチや嫌韓勢力が強まり、韓流が好きでもそれを表せなかったが、最近はそのような雰囲気でもないようだ。

    (1)「韓国でも文在寅(ムン・ジェイン)大統領の18日の新年記者会見をきっかけに変化の雰囲気が見え始めている。文大統領は慰安婦問題に関連し「韓国政府は(2015年の)その合意が公式的な両国間の合意だったという事実を認める」と述べた。外交部の立場の再確認ではあるが、これを大統領が自ら明らかにしたということに意味がある。また文大統領は「努力する過程で慰安婦問題の判決がまた出て、少し困惑している」とし、韓日関係がさらに難しくなることを心配した」

     

    最近の文大統領は、南北対話再開の足がかりを得るべく、日韓関係改善に努力しているというイメージである。旧慰安婦判決は韓国政府が解決すると言明したが、旧徴用工判決は未解決である。この問題も、韓国政府の責任で解決すべきである。

     

    (2)「遅くなったが、ようやく正しい方向をつかんだ。外交は銃声なき戦争だ。両国はその間、露骨な「戦闘」をしてきた。特に韓国側は一部で竹槍歌や土着倭寇論、不買運動まで動員して反日感情闘争を扇動した。戦いをやめさせるべき政府と外交当局者はむしろ後方から火力支援もした。その代償は何か。外交・安保の不安定や経済的な不利益など国益との交換ではなかったのか。実用的な実利を追求すべき外交が安っぽい政治的道具に転落してしまう惨事が生じた」

     

    韓国は、反日を国内政治に利用してきた。昨年4月の総選挙で与党は、「韓日戦」とまで煽り立ててきたのだ。それが今、窮地に立たされて困っているのである。これほど、漫画チックな話はない。率直に言えば、与党は大いに反省してしかるべきである。

     

    (3)「我々はよく、韓日関係を独仏関係と比較したりする。フランスの立場で見ると、隣国のドイツは不倶戴天の敵に違いない。その両国は偉大な2人の政治指導者の実用的外交路線のおかげで、現在は和解と繁栄を共有、享受している。1963年1月22日、仏パリのエリゼ宮でシャルル・ドゴール仏大統領とコンラート・アデナウアー西ドイツ首相は両国友好条約に署名した後、強く抱擁した」

     

    1960年代、フランスは共産国ソ連はもちろん、自由陣営の大西洋勢力である米国と英国を牽制すべく、ドイツとの関係の再確立が求められた。ドイツとしては言うまでもない。西ドイツが国際社会で信頼と名誉と地位を取り戻すためにはフランスの協力が必要だった。こういう事情があったにせよ、独仏関係が破綻しなかったのは、フランスが韓国のように、過去に遡らず未来志向であった結果だ。

     


    (4)「韓日請求権協定はエリゼ条約の2年後の1965年に締結された。韓国と日本、フランスとドイツの関係は似ているようで異なる。ドイツ・フランスが未来志向的、実用的、ウィンウィン関係なら、韓国・日本は過去志向的、感情的、対決的関係だった。未来は若い世代のものだ。現在の政治家の一部は小さな利益を得るために日本という「機会の地」を投げ捨てた。米国が嫌だと、中国が傲慢だと、反米、反中感情を前に出してこれらの国との貿易を断つことができるだろうか」

     

    韓国が、歴史問題を蒸し返して日本に謝罪を求める。日本も、最初はこれに応じていたが、重なる蒸返しに堪忍袋の緒が切れたのだ。日本が、謝罪しない、賠償に応じないと言い始めた心境を考えたことがあるだろうか。独仏関係では、こういうことはないのだ。

     


    (5)「もちろん痛恨の過去は一時も忘れてはならないだろう。日本が今後どのように出てくるかは結局、我々しだいではなかろうか。ドゴールとアデナウアーが実用的外交でフランスとドイツの未来の世代に譲った黄金期を、韓日両国の政治指導者は深く考えてみるべきだろう」

     

    日韓関係の将来は、韓国の決めることだ。日本は安全保障上の韓国の役割を5位にまで下げている。韓国は、当てにならない相手という意味でもある。ちなみに現在の序列1位は米国で変わらず。以下、次の順序である。

     

    豪州・印度・ASEAN(東南アジア諸国連合)、そして韓国である。日本にとって地政学的重要性は、ここまで落ちている。韓国が、反日で騒いでも日本に困ることはない。「ハイ、そうですか」程度なのだ。

     

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    昨年8月、チェコは「一つの中国」を無視して台湾へ大型使節団を送った。台湾への人権支援という名目である。これに怒った中国の王毅外相は、ヤクザ口調で「この代償は必ず払わせる」と恫喝して逆に、独仏外相からたしなめられるというドタバタを演じた。

     

    中国の代償要求で、チェコから購入予定のピアノを取り消したが、今度はチェコが大きな代償を中国に払わせる結果となった。「小国」チェコを侮辱した「大国」中国が、とんだしっぺ返しを食った形だ。中国の影響力が低下している何よりの証拠と言える。

     

    『大紀元』(1月31日付)は、「チェコ、原発建設計画で中国企業の入札を認めず」と題する記事を掲載した。

     

    チェコ政府と政党はこのほど、チェコ国営電力(CEZ)が進めているドコバニ原子力発電所の拡大計画について、国家安全保障上の懸念があるとして、中国企業の入札を認めない方針で合意した。

     


    (1)「ロイター通信によると、ドコバニ原子力発電所で出力が最大120万キロワットの加圧水型原子炉(PWR)のユニットを新たに増設する計画に関して、チェコ政府と野党の党首らは27日、国家安保上の懸念から、中国企業を入札から除外することで意見を一致させた。駐チェコ中国大使館は28日の声明で「抗議する」とし、チェコ政府に「市場経済および公平な競争原則を順守するように」と意見表明した」

     

    中国は、これまでもチェコへ政治的圧力を加えてきた。元国会議長が、台湾訪問計画を立てたところ、「一つの中国」を理由にして猛烈な反対を行い、これを潰した経緯がある。チェコは、ソ連支配下にあっただけに「共産党嫌い」が徹底している。それだけに、中国の圧力には本能的な忌避気分が働いている。

     

    中国は、チェコの台湾訪問への報復として高級ピアノ11台の購入契約を破棄した。このピアノは、チェコの富豪が肩代わり購入したので実損はゼロ。中国が、報復すると啖呵を切ってもこの程度の話であったのだ。このピアノ11台に比べれば、原発への入札禁止は大きな「逆報復」になる。中国が、大国ぶっていることへの痛烈な仕返しと言えよう。

     


    (2)「同国親中派のミロシュ・ゼマン大統領の主導で、中国エネルギー大手、中国華信能源(CEFC)は過去数年、チェコの通信業や銀行業などに進出した。ロイター通信によると、CEFCの簡明会長が2018年、中国当局に経済犯罪の容疑で拘束されて以降、同社のチェコで進められていた多くの投資計画がストップした」

     

    チェコのゼマン大統領は、親中国である。この大統領の縁で、中国の通信業や銀行がチェコへ進出したが今や、この縁も薄くなっている。この裏には、中国がチェコでスパイ活動をしてきたことが公になり影響しているのであろう。

     

    チェコメディアは昨年7月、同国にある中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)子会社の社員が定期的に顧客の個人情報を収集し、駐チェコ中国大使館に提供していると報道した。米政府は今まで、ファーウェイは中国の情報機関で、中国当局のために諜報活動を行っていると警告してきた矢先に、公になったものだ。以下の記事は、『大紀元』(2020年7月25日付)から引用した。

     


    チェコ放送『ラジオジャーナル』(2020年7月22日付)によると、チェコのファーウェイ子会社の社員は、政府関係者やビジネスマンを含む取引関係にある顧客の個人情報を密かに収集しているという。情報はファーウェイ本部の内部システムに転送された後、駐チェコ中国大使館に提供されている。

     

    ファーウェイは、事実関係を否定した。しかし、同子会社で数年勤務した元幹部らは、チェコ放送『ラジオジャーナル』に対して証言を行った。一人の幹部は、「商業情報のほか、個人顧客の趣味、財務状況などプライバシーに関する情報もターゲットとなっている」と話した。こうして、ファーウェイがスパイ活動を行っていたことを否定できない結果となった。今回の原発入札禁止は、安全保障上からも当然の結果と言えよう。

     

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    二大リスクに直面の中国

    安保では南シナ海と尖閣

    米の深慮遠謀で守り完璧

    中国の生産人口減少一途

     

    中国は、米国トランプ政権による「米国第一主義」の間隙を縫って、世界外交の主導権を握れるチャンスを掴めないどころか、大きな失敗に陥った。新型コロナのパンデミックをもたらし、世界経済を大混乱させたからである。それだけでない。香港への国家安全法導入で民主化弾圧、新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒の100万人拘束、南シナ海での島嶼占領による人工島建設、軍事力で台湾をねじ伏せようとする強硬策など、数え上げたらきりがない「いざこざ」を生んでいる。

     

    香港への国家安全法導入は、中英で結ばれた「一国二制度」を破棄するもので、条約や協定という国際間で遵守されるべき国際法に違反した。これが、中国への信頼感を根底から奪うことになった。また、中印国境における中国軍のインド軍急襲で、約20名を殺害する軍事紛争を引き起した。これに反発したインド政府は、経済面での対中国関係を見直し制裁に踏み切っている。これを契機に、インドは日米主導の「インド太平洋戦略」(日米豪印=クワッド4ヶ国)の関係強化に乗出した。

     


    二大リスクに直面の中国

    中国は、自ら種を蒔いている紛争によって、外交的な危機感と孤独感を深めている。その証拠に、習近平国家主席が中国はさまざまなリスクや課題を予見すべきとした上で、「ブラックスワン」や「灰色のサイ」のような事象に備える必要があるとの考えを示したのだ。新華社が1月29日に伝えた。

     

    「ブラックスワン」とは、予見が困難で起こる確率は低いものの、発生した場合には甚大な影響をもたらす事象を指す。「灰色のサイ」は、高い確率で深刻な問題を引き起こすと考えられるにもかかわらず、軽視されがちなリスクを意味する。習氏は、こうした「ブラックスワン」と「灰色のサイ」に備える必要性を訴えたのだ。

     

    「ブラックスワン」と「灰色のサイ」は、具体的な中身が不明である。これは、安全保障と経済の二面を意味するはずだ。安全保障では、米国バイデン政権が、同盟国を団結させて対抗する兆候を明らかにしてきた。

     

    米国の国務長官認証聴聞会で「イラン」には73回、「中国」には66回も言及。国防長官認証聴聞会でも「中国」には74回、「イラン」には10回言及したという。これは、総合的な外交と防衛の戦略で、圧倒的に中国に焦点を合せていることを明らかにしている。米同盟国は先進国を網羅しており、とうてい中国の及ぶところでない。それだけに、一旦緩急あらば、中国は包囲される潜在的リスクを抱えている。習近平氏は、このリスクに気付かず「火遊び」を重ねてきた。今やこの積み重ねによって、大きな危険性を身に纏ったのである。

     

    安全保障リスクだけが、中国の運命を脅かしているのではない。経済面でも大きな課題を抱えている。昨年の中国経済が、主要国で唯一のプラス成長(2.3%)を実現したことで、2020年代後半に米中GDPが逆転するという予測が出始めている。これは、成長の中身を問わない外形(成長率の高さ)を単純に未来へ延長した「無責任」予測という色彩が濃いのだ。人口動態の急速悪化というアキレス腱を無視して、経済のマラソンレースの順位を予想するような無謀なものである。この点は、これまでの日本経済分析で得た私の知見をフルに発揮して、米中GDP逆転はあり得ないと言うほかない。この問題は、後半で取り挙げたい。

     

    安保では南シナ海と尖閣

    中国は現在、自分の犯してきた「無謀」の影に怯えているという側面が強い。南シナ海と尖閣諸島を巡る問題である。

     

    中国の指導部は、日本の海上保安庁に相当する組織である海警局の役割を強化する。2月1日から実施される。海警局警備船が武装化して、公海上で他国船舶を「臨検」したり、航海を妨害する権限を持つことは、極めて危険な動きである。中国軍と連携し、平時から軍と共同訓練をできるようにするという。戦時では軍の指揮下に入り一体的に運用するというのだ。周辺国にとって大きな脅威となる。

     

    米国務省はアジア各国と緊密な連絡を取っている。ブリンケン国務長官は1月27日、フィリピンのロクシン外相と電話会談し、国際法で認められていない南シナ海での中国の権益主張を拒否する米政府の考えを伝達し、中国に対抗する姿勢を示した。国務省によると、ブリンケン氏は、南シナ海での中国の海洋進出を念頭に、フィリピンの軍や船舶、航空機が攻撃された場合、米比相互防衛条約の適用対象になることも確認した。中国の圧力に直面する東南アジア諸国との協力も約束した。(つづく)

       

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