勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年04月

    ポールオブビューティー
       

    韓国は、日米首脳会談に対して複雑な反応を見せている。

     

    政権支持メディア『ハンギョレ新聞』(4月19日付)は、「米日首脳会談で米国が望む『強力な中国けん制』に賛同した菅義偉首相が、その見返りとしてバイデン米大統領の東京五輪支持と米製薬会社からの新型コロナワクチンの追加供給を得たものとみられる」と見当違いも甚だしい報道がされている。

     

    中国が、海洋進出を急いでいる背景への認識を欠いて、東京五輪支持と米製薬会社からの新型コロナワクチンの追加供給を認めた、とする報道は自殺的ですらある。これが韓国政府の偽らざる見方とすれば、韓国外交は重大な「認知症」を患っているというほかない。一方では、まともな報道もある。それを紹介したい。

     


    『韓国経済新聞』(4月19日付)は、「日米首脳『中国牽制』で足並み…『来月訪米』文大統領、選択肢が狭くなる」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「日米首相が52年ぶりに両国の共同声明に台湾を明記して「対中国包囲網」を強化することにした。両国首脳は北朝鮮の完全な非核化と韓日米3カ国連携の必要性を再確認した。6世代(6G)移動通信の開発に計45億ドル(約4890億円)を投資するなど経済部門でも中国を積極的に牽制することにした。日本が中国を牽制しようとする米国の動きに力を加えると、米中の間で「綱渡り外交」を展開してきた韓国政府は、来月末韓米首脳会談を控えてより大きな苦悩に陥ることになった」

     

    韓国は日米共同声明によって、一ヶ月後の米韓首脳会談に臨む戦略の再検討を迫られているはずだ。これまでの米中「二股外交」が、極めて困難になったという現実を再認識させられているであろう。日米共同声明を「模範解答」とすれば、韓国はどういう答案を書くのか、である。

     


    (2)「ジョー・バイデン米国大統領と菅義偉首相は16日、ホワイトハウスで開かれた日米首脳会談以降「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸(中国と台湾)問題の平和的解決を促す」という内容の共同声明を発表した。両国首脳が共同声明に台湾を明記したのは1969年11月リチャード・ニクソン元米大統領と佐藤栄作元首相の会談以来52年ぶりだ。日中修交(1972年)と米中修交(1979年)以降今まで両国首脳会談で台湾を触れたことはなかった。今回の首脳会談で台湾問題が取り上げられたのは、同盟国との関係を活用して中国を牽制しようとするバイデン大統領の戦略に菅首相が呼応したと分析される。共同声明には香港と新疆ウイグル自治区の人権問題に対する懸念など中国を圧迫する多数の内容が含まれた」

     

    日米が台湾問題に触れたことは、中国による台湾海峡の侵犯が軍事衝突を生みかねない危険性を帯びているからだ。中国の軍事行動をけん制するためには、やむを得ない措置と言えるだろう。日本にとって台湾問題は、対岸の火事でないのだ。台湾が中国の支配下になれば、沖縄の安全保障に重大な懸念をもたらす。

     


    (3)「日本が中国と領土紛争を繰り広げている尖閣諸島(中国名・釣魚島)で米国が共同防御体制を構築するという意志を明らかにした。菅政権が最優先課題として前面に出している北朝鮮の日本人拉致問題を解決することにも米国が協力することにした。両国は北朝鮮の完全な非核化という共同の目標を再確認し、地域の平和と繁栄のために韓日米3カ国の協力が重要だということで一致した。中国政府は「内政干渉」として強く反発した」

     

    日米が、北朝鮮の完全な非核化を共同目標にしたことは、文政権にとって痛手である。韓国は、朝鮮戦争終結案を主張するという「暢気」な対応である。日米が厳しい対応を求めるのと対極の動きなのだ。日米韓三ヶ国で北朝鮮問題に対応するという原則から言えば、韓国は日米共同声明に沿わざるを得まい。重大な路線変更である。

     

    (4)「中国政府は、前日発表した立場文で日米首脳の声明に対して「中国の内政を激しく干渉し、国際関係の基本準則を深刻に違反した」と批判した。台湾や香港、新疆問題は中国の内政という点と日本との領有権紛争地である釣魚島は中国の領土だと再度主張した」

     

    中国は、「内政干渉するな」と主張している。これは、選挙で選ばれていない政権が、好き勝手なことをする権利を保証されることではない。国際的なルールである人権などの厳守が要求されるのだ。中国の主張が間違っている。

     


    (5)「経済部門でも中国を牽制するための様々な合意が行われた。バイデン大統領と菅首相は、「日米競争力・強靱性( コア)パートナーシップ」を発足して半導体と次世代移動通信技術の開発、脱石炭化などを米国と日本が主導していくことにした。このため、両国は次世代移動通信人6G技術にそれぞれ25億ドルと20億ドルの計45億ドルを投資する方針を共同声明の付属文書に盛り込んだ。ファーウェイ(華為技術)とZTEなど中国通信会社が世界5G市場の40%を占める状況を深刻に認識し、6G市場では早目に主導権を握るための戦略と解釈される。バイデン大統領は「信頼できる事業者が5Gの安全性と開放性に寄与すべきだ」と強調した」

     

    日米の共同技術開発は、韓国にとって極めて魅力あるテーマである。韓国経済の先細り状況を考えれば、ここは何としても参加したいテーマのはずである。だが二股外交をやって、この共同技術開発の余禄も得たいという訳にはいかないのだ。韓国にとっては、実に悩ましい選択である。

     


    (6)「日米両国は、多国間連携を通じて次世代の移動通信技術だけでなく、国際標準化部門でも主導権を握るためにともに取り組むことで一致した。半導体のサプライチェーンの再編に協力し、人工知能(AI)および両者コンピュータなどの共同研究も推進する。バイデン大統領は「米日両国の技術は専制主義でなく、民主主義によって共有される方式で管理されるだろう」とし、中国を牽制しようとする意図を隠さなかった」

     

    日米は、技術の国際標準化でも世界をリードする構えである。日米の技術を総合化すれば、難しい問題でなくなる。ここまで協力する米国が、TPP(環太平洋経済連携協定)へ復帰しない理由がなくなる。一日も早いTPP復帰が望まれるのだ。さて、韓国はどうするか。日本と敵対しているデメリットをひしひしと感じるであろう。

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    待ちに待ったワクチン接種のメドがついた。河野担当相は、現在接種対象とされている16歳以上の全員分が9月末までに調達できるとの見通しを示した。これは、米国が4月からワクチン輸出を解禁する結果でもある。日本は、昨年2月から始まったパンデミック・トンネルから、約1年半ぶりに開放される見通しがついたもの。

     

    『ロイター』(4月18日付)は、「ワクチン、9月末までに全員分 ファイザーが追加供給―河野担当相」と題する記事を掲載した。

     

    河野太郎行革担当相は18日、民放のテレビ番組で、新型コロナウイルスワクチンの追加供給で米ファイザー社と実質合意したと述べ、現在接種対象とされている16歳以上の全員分が9月末までに調達できるとの見通しを示した。

     


    (1)「
    訪米した菅義偉首相は現地でファイザー社のブーラ最高経営責任者(CEO)と電話会談を行った。河野担当相は「9月末までに日本が入手できるすべてのワクチンで、今の接種対象者がワクチンの接種を完了できる。そういうペースでワクチンを供給してもらう」と発言。「それに足りる分だけファイザー社にも追加供給をお願いし、首相とCEOの間で実質的に合意がなされた」と説明した。「9月までのスケジュールの調整はこちらで行う」と述べた」

     

    菅首相が、訪米中にファイザー社CEOと電話会談を行い合意したもの。

     

    (2)「追加供給量に関し「回数の詳細は申し上げることができないが、現時点で16歳以上に接種していただくことになっており、16歳以上はカバーできる」と説明した。これまで政府はファイザー社と7200万人が2回接種可能な1億4400万分の供給で合意。6月末までに高齢者は接種可能としていた」

     

    これまでは、6月末までに高齢者に接種可能な1億4400万分の供給が約束されていた。それが、さらに積み増されて9月末までに16歳以上の全員に接種可能なワクチンが供給されることになった。

     


    このように、ファイザー社が輸出量の上乗せに合意した背景には、米国の接種が順調に進んでおり早晩、過剰供給が問題になるところであった。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月18日付)は、「米も『ワクチン外交』参戦へ、中・ロをけん制と題する記事を掲載した。

     

    米国が新型コロナウイルスワクチンの輸出に乗り出す。国内での接種が進み、最大数億回分が余剰になる見通しとなったためだ。海外援助を担う米国際開発局(USAID)の元幹部を輸出の調整役に指名し、まずメキシコなどに供給する。自国民向けの確保を最優先してきた政策を転換し、「ワクチン外交」を展開する中国やロシアをけん制する。

     

    (1)「ブリンケン国務長官は5日、「自らの責務として引き受ける必要がある」と、米国が諸外国の感染抑制に向けて取り組むことを表明。ワクチン供給支援を含む国際コロナ対応・保健安全保障の調整役に、USAID幹部を務めたゲイル・スミス氏を指名した。これに先立ち、バイデン政権は初の輸出事例としてカナダとメキシコに英アストラゼネカのワクチン400万回分を供給すると発表していた。一連の動きは、従来の内向き姿勢からの転換を印象づけた」

     

    米国のワクチン接種は、英国に次いで世界2位の実績を上げている。早晩、米国のワクチン生産が過剰になると見られていたので、早手回しに輸出解禁に出たものと見られる。

     


    (2)「バイデン大統領は、「自国民向け供給が確保されない限り、国外輸出はしない」と公約するなど慎重な姿勢を崩さなかった。ヘルスケア関連調査の英エアフィニティによると、コロナワクチンの国内生産規模で米国は世界最大規模にもかかわらず、3月中旬まで輸出はゼロだった。積極的なワクチン外交を展開する中ロも念頭にあるようだ。中国製を承認・契約した国・地域は70以上に上り、ロシアの「スプートニクV」は約60カ国が承認した。中国が国内生産の5割近くを輸出に振り向けるなど、両国は中南米や中東、アフリカのほか、欧州連合(EU)加盟国でもハンガリーなどに売り込みをかける」

     

    中ロのワクチンは、ワクチン情報が公表されないなど信頼度において劣っていた。そこへ、米国が本格的に情報開示100%のワクチンを輸出して、ワクチン外交でトップに立とうという狙いである。

     

    (3)「米国はカナダなどに続き、今後は中ロが攻勢をかける中南米に供給するとみられる。効果や安全性への信用を強みに、供給先への影響力を高めたい中ロに対抗する。またバイデン政権は2月、新型コロナワクチンを共同購入し途上国などに分配する国際的な枠組み「COVAX(コバックス)」に40億ドル(約4400億円)の拠出を表明している。日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国が連携する「Quad(クアッド)」を通した途上国向けワクチン増産も支援する。ワクチン分野で国際的リーダーシップを強めることで、間接的に中ロをけん制する狙いがあるようだ」

     

    米国は、クアッドによってインドでワクチンを生産し、途上国への供給も目指している。こうして一斉にワクチン輸出を盛上げる体制が整ってきた。日本が、ファイザー社のワクチンで数量未定だが9月までの接種可能量の供給を受けられる背景には、こうした「世界ワクチン事情」がある。

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    韓国は、クアッド加入を明らかにしていない。だが、中国との関係を苦慮して「曖昧戦術」をとっている気配もする。今回の日米首脳会談における日米の濃密な関係を見せつけられると、微妙な気持ちにもなろう。

     

    日本が日米首脳会談の番外編で、菅首相はファイザー社CEOと電話協議し、ワクチンの供給増(量は不明)の約束を交わした。河野担当相は18日、日本人(16歳以上)全員の接種を9月末までに終えるメドがついたと発表した。

     

    韓国では、洪楠基(ホン・ナムギ)首相代行が18日、ワクチン接種について「4月までに300万人、6月までに1200万人」との目標を示した程度である。このワクチンに関する日韓の違いを見ると、米国との親密度がはっきりとワクチン供給量に現れている感じが否めないのだ。

     


    韓国は、日米の親密度を見せつけられて、疎外感を強めているはずだ。米同盟国の中で、日本は「親藩」に格上げされている。つまり、英国や豪州と同じ扱いになっている。一方の韓国は、「外様」へと格下げである。関ヶ原の戦い後、徳川家についた大名と同じ扱いに下がっている。朝鮮戦争では血を流して共に戦った米韓が、すっかり隙間風が吹いているのだ。ワクチン問題で、日韓の差が出ている背景にそれを感じざるを得ない。

     

    『朝鮮日報』(4月12日付)は、「中国をけん制するクアッド入りを拒んだ韓国 民主主義国家の間で自ら孤立」と題する記事を掲載した。米国の大手シンクタンクの一つである戦略国際問題研究所(CSIS)の副所長、ビクター・チャ氏が、次のように記者の質問に答えている。

     

    (1)「(質問)今年2月に米議会上院のメネンデス外交委員長が本紙とのインタビューで「文大統領が中国共産党創立100周年を祝ったことに失望した」と述べた。どう考えるか。

    (答え)中国に対抗するため各国による連合体が組織されている。オーストラリア、日本、米国、英国などは結集を始めた。これに参加しない国の一つがすなわち韓国だ。韓国は同じような考えを持つ民主主義国家の間で自ら孤立を招いていると懸念している」

     

    韓国だけ中国共産党創立100周年を祝っている。民主主義を否定する中国共産党へ祝意を述べる韓国の振舞が目立つのだ。韓国は、民主主義国の中で孤立している。

     


    (2)「(質問)この問題でチャ氏は一つの図を示した。米国、日本、オーストラリア、インドの連合体であるクアッド4カ国と韓国がそれぞれどれだけ連結されているかを示すものだった。この図は何を意味するのか。

    (答え)米国、日本、オーストラリア、インドの間は実線や点線など複数の形で互いにつながっている。相互関係がいかに活発かを示している。ところが韓国は他国とつながった実線が一つもなく点線だけだ。現時点で参加が正式に決まったプロジェクトはなく、基本的に(米中間であいまいな態度を取る)ヘッジング(リスクに対して保険をかけること)をしていることを意味する。他国と比較して韓国が距離を置いていることが分かる。非常に懸念すべき方向に向いているのだ」

     

    韓国は、クアッド4ヶ国の日米豪印と何らの関係もなく、孤立していることが分かる。それだけ、中国との関係を重視している証に見える。異常である。

     


    (3)「(質問)このような懸念は米国にもかなり広がっているのか?

    (答え)バイデン政権の関係者にこの図を見せるたびに、誰もがこれを欲しがる。韓国が離れつつあるとの懸念と一致するからだ。人権問題もこれとつながっている。韓国は香港や新疆ウイグル自治区について特に何も言っていない。そのため韓国が(米国の同盟国の中で)弱点になっていると心配している。バイデン政権はこの弱点を強化したいと考えている。そのためCSISは韓米同盟に向けた提言を行った。トランプ前政権の4年間、そして文在寅政権の4年間に(韓米同盟は)弱体化した。人権問題はその中の一つの要素だ」

     

    韓国は、民主主義国でありながら、クアッドとの関係はゼロである。中国の人権問題でも沈黙している。不気味である。

     

    (4)「(質問)何が最も大きな問題なのか。

    (答え)結局はいつも北朝鮮との関連がある。韓国は中国に対抗する意思が弱い。北朝鮮問題で(中国との協力関係が)害されると考えているからだ。THAAD(高高度防衛ミサイル)報復も非常に強い印象を残した。あのようなことがまた起こらないことを願うということだ。しかし私の見立てではこのような論理は少しおかしい。(中国からの)報復を恐れるのであれば、自分だけでなく(対抗する)グループに参加した方がよい。それは事実だ。クアッドがとても良い例だ。(米国では)専門家の多くが『韓国はクアッドに参加すべきだ』と考えている。誰もが韓国のクアッド参加は必要と考えているのだ。ところが私の理解では、韓国はクアッドへの参加要請を受けたにもかかわらずこれを断った」

     

    下線のように、韓国は中国を怖ければクアッドに入るべきだが入らない。クアッドから孤立して中国を恐れている。まことに不思議な構図になっている。

     

    (5)「(質問)これまで韓国政府は「クアッドに参加している国からの加入要請はない」と主張してきた。「韓国が加入したくても日本が反対する」という見方もある。

    (答え)その点についてはバイデン政権の関係者から直接話を聞いた。韓国がクアッドへの参加を希望するなら何の問題もないということだ。日本を含む全ての参加国も問題提起はしないということだった。クアッドがやるべきことの中で、韓国が同意できないことは何一つない。(東南アジアに)ワクチンを供給することや、安全なサプライチェーンの構築などだ。たとえ日本が反対したとしても、米国がこれを受け入れるようにしただろう」

     

    韓国の悪質なところは、必ず誰かを悪者にして責任を回避することだ。クアッドへ加入しない理由を「日本の反対」のせいにしている。小児病的な退行現象というべきだ。

     

     

     

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    文在寅の思惑が大外れへ

    日韓の置かれた同一条件

    韓国の人権論は日本向け

    中国の日本威嚇は空鉄砲

     

    日米首脳会談が4月16日(現地時間)、ワシントンで開催された。米国は、対外戦略で中国との競争に打勝つことを最大目標に掲げている。インド太平洋戦略「クアッド」(日米豪印)は、そのマジノ線に位置づけられた。日本はその核である。バイデン米大統領が、最初の対面による首脳会談相手に菅首相を選んだのは当然であろう。

     

    米国は、中国の世界覇権への挑戦を絶対に退ける強い意志で臨んでいる。日本が数ある米同盟国の中で、最大のパートナーになっていることは、日韓関係にも微妙な変化を与えている。日韓関係が悪化しても、従来のような米国の仲裁する動きが全く見られないことだ。日韓関係がひび割れした理由は、韓国の国際法違反にある以上、米国は日本へ妥協を求める訳にいかないのである。

     


    米国は、中国に対して国際法遵守を要求している。この立場から、国際法違反の判決を二度も続けて出した韓国に対して、米国が是認できるはずがない。韓国はこういう国際法的な視点がゼロである。日本を悪者にすれば、米国が中に入って仲裁してくれるという甘えが今もつきまとっている。

     

    卑近の例で言えば、日本が福島原発の処理水であるトリチウムをIAEA(国際原子力機関)との話合い(過去4回)をベースに、2年後の海洋放出を決定した。この間、各国外交団に事態の顛末を100回も説明してきた。それにも関わらず、韓国は日本の一方的決定と非難している。米国は、日本の措置に賛成する旨の国務省談話を発表した。

     

    韓国は4月17日、米大統領特使で気候変動問題を担当するケリー氏をソウルに招き、日本の「悪行」を訴え善処を求めたが不首尾だった。ケリー氏は、「日本はIAEAと非常に緊密に協力して解決策を進めてきた。すでに両者の連携が進行中で、非常に明確な規定と期待値がある手続きの中に、米国が飛び入るのは適切でない」と述べた。韓国が、反日目的で米国を引き込む目論見は失敗したのである。

     

    文在寅の思惑が大外れへ

    日米関係の一段の緊密化は、米韓関係の位置をより低いものにさせている。私は、韓国が明確に「クアッド」加入姿勢を示さない限り、「外様大名」の位置に引き下がると指摘してきたが、先のケリー氏の発言はそれを雄弁に物語っている。実は、先の日米首脳会談の成果は、5月下旬に予定されている米韓首脳会談の成り行きに大きな影響を与えると考えられる。韓国は、日米首脳会談の結果をかなり追認させられると見るべきだろう。韓国が、最も関心を持つ北朝鮮問題は、日米首脳会談で決まった北朝鮮政策にそったものにならざるを得まい。

     

    文大統領は、南北問題解決において韓国が運転台に座ると強調してきた。現状は、日米韓三カ国が「共同運転」する形になっている。北朝鮮のミサイルが、日米の安全保障に大きな脅威になってきた以上、もはや韓国の一存で決められる問題でなくなったのである。韓国は、こうした情勢変化を見落としている。南北の話合いがベースとなって、解決策を見つけられるという妄想に浸っているのだ。そういう安易な解決段階は、とうに過ぎている。

     


    ここで、日米首脳会談の概略を見ておきたい。

     

    1)台湾海峡の平和と安定の重要性を強調

    2)日米安保条約5条を尖閣諸島へ適用することを再確認する

    3)半導体などのサプライチェーンで連携

    4)香港や新疆ウイグル自治区の人権状況への深刻な懸念共有

    5)脱炭素へ2030年までに確固たる態度を取る

    6)日本の今夏の五輪開催への努力を支持

     

    上記6項目中、韓国と無関係なのは2)と6)である。他は、すべて韓国も関係している。その意味で、日米首脳会談の共同声明は、5月下旬に予定されている米韓首脳会談の「ひな形」と見るべきだろう。米国は、あえて米韓首脳会談を日米首脳会談よりも1ヶ月以上遅らせ、韓国に決意を迫っていると考えられる。米韓首脳会談の共同声明が、日米首脳会談よりも「低級」であれば、中国に付け入る機会を与えかねないのだ。となれば、米国が韓国へも強い姿勢で迫ることが予測できよう。

     

    日韓の置かれた同一条件

    前記の主要項目について、私のコメントを記しておきたい。

     

    1)台湾海峡の平和と安定の重要性を強調している点は、韓国も無縁でない。日米共同声明で「台湾」が明記されたのは52年ぶりである。米中関係が、米ソ対立の冷戦時代へ逆戻りしているという意味だ。韓国には、そのような認識はゼロである。よりによって、鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官が4月2、3日に中国を訪問し、王毅外相と会談した。その席で、中韓外務・国防「2+2会議」の開催を決めた。出席者のレベルは低くすると言う。

     

    米中対立が深刻化している中で、米同盟国の韓国が中国へ接近するのは何とも不思議な現象である。多分、国際情勢が急変していることへの認識が不足している結果であろう。米韓首脳会談では、この点を米国から糺されるであろう。(つづく)

     

    次の記事もご参考に。

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    メルマガ245号 文在寅「天誅下る」 次期大統領選は野党勝利 政権交代で「被告席」

    2021-04-15

    メルマガ249号 文在寅が国民から「三下り半」 空理・空論では民の暮し立たず「若者反乱」

     

     

    サンシュコ
       

    韓国ニュースに興味を持たれている方であれば、「ネロナムブル」なる言葉は先刻、ご承知と思う。この言葉が、さきごろ米紙『ニューヨークタイムズ』で紹介され一躍、「世界語」になった。ネロナムブルとは、「自分がすればロマンス、他人がすれば不倫」という身勝手さを嘲笑したものである。倫理観の喪失である。そう言えば、韓国の犯罪率は極めて高いのだ。

     

    NYTは、「ネロナムブル(Naeronambul)」という表現を韓国語の発音通りに紹介した。この言葉は、韓国国民が批判する与党の態度を示しているとし、「私()がすればロマンス(マンス)、他人(ナム)がすれば不倫(ブルリュン)」という由来を説明している。NYTは、韓国二大市長選で与党が大敗した理由として、「ネロナムブル」を取り上げている。与党が、自己反省せずに野党など反対意見を批判してきた事実を指しているのだ。

     


    最近の福島原発トリチウム問題でも、韓国政府は「ネロナムブル」ぶりを発揮している。自国の原発ではトリチウムを海洋放出しているのに、福島原発が行なうと発表したら、にわかに反対態度を表明。その理由が振っている。福島原発は爆発事故を起こして漏出しているトリチウムである。韓国は正常運転してきた原発であり、トリチュウムといっても福島とは次元が異なり「きれい」だとしている。

     

    福島原発のトリチウムは、汚水を全て処理した後の「処理水」である。「汚水」ではないのだ。こういう初歩的なミスを冒して堂々と韓国の正当性を主張している。矛楯に気付かないのが韓国社会なのだ。まさに、「ネロナムブル」である。

     

    『朝鮮日報』(2020年12月27日付)は、「外国語にない『ネロナムブル』」と題するコラムを掲載した。

     

    (1)「1980年代後半、ソウルの住宅価格が恐ろしいほど上がった。非難の声が激しくなると、盧泰愚(ノ・テウ)政権は首都圏に住宅200万戸を建設すると発表した。当時のラジオ番組で、電話がつながったリスナーが「亡国的な不動産投機は根絶しなければならない」と声を荒らげた。ところが、司会者が「まとまったお金があったら何がしたいですか?」と聞くと、リスナーから「当然、家に投資しますよ」とあきれた答えが返ってきた」

     

    この話は、韓国人が大なり小なり持っている性向である。「感情8割・理性2割」も突き詰めれば、「ネロナムブル」を象徴している。

     

    (2)「大学教授団体による新聞「教授新聞」が今年の四字熟語に「我是他非」を選んだ。「私は正しく、他の人は間違っている」という意味だ。もともとは「ネロナムブル」を選んだのだが、これに合う四字熟語がなかったため、仕方なく「我是他非」にしたという。我是他非は「ネロナムブル」の本当の意味を表現できていない。そう考えると、「ネロナムブル」にぴったり当てはまる外国語の表現があるか気になった。米国在住の著述家チョ・ファユ氏は「英語では『double standard(二重規範)』という言葉が似ているが、『ネロナムブル』のようなニュアンスはない」と説明した」

     

    「ネロナムブル」にぴったり当てはまる外国語の表現はないという。それだけ、韓国人の身勝手さが世界標準から外れていることを証明している。

     

    (3)「現政権ほど「ネロナムブル」という言葉が多く使われた時期はなかった。チョ国(チョ・グク)前法務部長官は「ネロナムブル」の「ラスボス」として登場した。「チョロナムブル(チョ国+ネロナムブル)」という言葉まで生まれた。あきれたのは、この政権の青瓦台の各執務室には「春風秋霜」という言葉が掲げられていることだ。「他人には春風のように温かく接し、自分には秋の霜のように冷たく厳格にせよ」という意味だ。それなのに、実際の行動は「ネロナムブル」である。それでも恥じ入るどころか、かえって目をむいて腹を立てる。どれだけ独特の精神世界を持っているのか理解できない」

     

    文政権ほど、ネロナムブルを貫いた政権はない。これは、相手を「味方・敵方」という分離して見る結果である。味方の脱法を許し、敵方に対しては積弊一掃という形で追及する。文大統領は、このパターンで政権を運営してきたが、ついに行き詰まった。支持率が30%まで低下し、不支持率は65%に達している背景である。

     

    ここへ、「具合良く」福島原発トリチウム問題が降って湧いた。支持率引上げに、これを利用しようという魂胆である。日本政府は、これまで各国外交団に対して100回の説明会を開いてきた案件だ。情報公開してきたにもかかわらず、韓国政府は「初耳」のような振舞である。国民の手前、取り繕っているのは明白。韓国の原発は、トリチウムを海洋放出しているのに、日本はダメだという。「ネロナムブル」なのだ。

     

     

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