勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年04月

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    王毅外相の日本威嚇発言

    習氏の対応に二つの見方

    中国は海洋国家へ楯突く

    半導体後進国が対抗する

    米は同盟国巻き込み防衛

     

    米中首脳会談が4月16日、ワシントンで開催される。米バイデン大統領が、対面で初めて臨む海外首脳会談相手が菅首相である。日米会談は、インド太平洋の平和維持構想でさらに踏込んだ合意に達するか、世界が関心を持っている理由だ。

     

    バイデン大統領は、これまでオンラインによる「クアッド」(日米豪印)の合意で日米協調の大枠ができあがっている。これを基礎にして、3月16日の日米外務・防衛「2+2会議」で台湾や尖閣諸島の防衛で協力する旨を確認している。こうした実績の上に、菅・バイデン首脳会談が行なわれる。

     

    王毅外相の日本威嚇発言

    中国は、この会談の行方に最大の関心を寄せている。日中外相電話協議が4月5日、中国側からの要請で行なわれた。この日は、中国が先祖を弔うため墓に参る大切な清明節の連休最終日に当たっていた。1時間半もの長時間会談になったが、中国の王毅外相は茂木外相を次のように威嚇した。

     

    「複雑な国際情勢に対し、中国と日本は長い間隣国であり、世界第2、3位の経済大国として時代の流れと国際情勢に順応しなければならず、日本は大国の対決に干渉するな」と、極めて無礼な発言をした。これは、中国外交部発表の中にあった文言である。

     


    中国の漢族は、黄河の中原から現在の広大な版図へ拡大するまで、周辺弱小国を統合してきた歴史を持つ。秦の始皇帝以来、連衡を組んで相手を恫喝して震え上がらせてきた。中国は、この悪しき恫喝の歴史を踏み台にして、今や外国まで恫喝するようになった。「田舎大国」という誹りを受ける理由である。欧州でも、すこぶる評判が悪いのだ。日本が、中国の威嚇に屈するはずがない。中国は、日本が対抗姿勢をさらに強めるという逆効果を計算できないのであろう。気の毒な国である。

     

    こういう経緯からも、日米首脳会談の成果に関心が向けられている。一説では、米国が日本へ大量のワクチン供給を約束するだろうという見方もある。米国は、ワクチンの大増産体制を敷いており、いずれ過剰生産に陥る。そこで、日本への供給体制を築き、日米一体化を世界に向けて発信するというのである。

     


    中国は、「ワクチン外交」を展開し新興国の協力を取り付ける戦術に出ている。だが、ワクチン生産能力が限られ、国内のワクチン接種すら大幅に遅延している。
    1回目と2回目の接種間隔を最大8週間に延ばせるとのガイドラインを出しているほどだ。欧米のワクチンでは、メッセンジャーRNA(mRNA)ベースの接種間隔が3~4週間である。中国は、いかにワクチン供給が遅れているかを示している。

     

    中国が、「ワクチン外交」で失敗すれば、国威発揚は空念仏に終わる。習近平氏は、パンデミックの汚名をそそぐべく、「マスク外交」を始めて大失敗した。不良品が多く、各国から返品騒ぎが起こったのである。今度は、名誉回復で「ワクチン外交」に力を入れた。これも供給体制が整わず、価格はロシア製の2倍。かつ、ワクチン医療情報を開示しないことで、疑念を持たれる始末だ。現状では、ワクチン外交も失敗の烙印を押されている。

     


    習氏の対応に二つの見方

    以上のように、習氏にとっては対外政策で深みにはまった感じが強い。日米首脳会談で、日米が一段と結束する体制が出来上がれば、インド太平洋戦略の「コア」が不動という印象を中国に与えるであろう。習氏が、これを冷静に受入れるのか。さらに凶暴化して、尖閣諸島と台湾へ軍事威嚇を強めるのか。現状では、判断不可能である。

     

    二つの相対立する見方がある。

    1)中国国内で、元老から習近平の猪突盲進に危険信号が出ている。いずれ、習氏の行動は沈静化するという合理性を強調する見方である。

     

    2)最近のEU(欧州連合)と中国が、新疆ウイグル族の人権弾圧をめぐり、互いに報復し合っている。EUは怒って、昨年12月末に署名した対中国の総括投資協定について、EU議会が審議棚上げで対抗している。習氏は、経済的な損失でも躊躇なく決断する、どう猛性を強調する見方だ。

     

    上記二つの見方がある。新興国が覇権国へ対抗する際、1)のような合理的判断に基づく行動を期待できない。日本が、米国と太平洋戦争を始めた状況は、現在の中国の置かれた状況と寸分違わないことに注目すべきである。

     

    日本は、満州撤兵をめぐり米国と対立した。米国は、経済制裁として対日輸出禁止(石油・鉄くず)を科した。山本五十六連合艦隊司令長官は当初、「米国から石油を買いながら戦争できるか」と対米戦争を否定していた。だが、陸軍は満州撤兵を拒否して、開戦を急がせた事実がある。

     

    中国へ上記の事情を当てはめれば、日中の置かれている事情は瓜二つである。

    (つづく)

     

    次の記事もご参考に。

    2021-03-22

    メルマガ242号 米国、中国へ「冷戦布告」 バブルの混乱抱える習近平へ「追い打ち」

    2021-03-29

    メルマガ244号 中国、米国打倒の大博打 「ロシア・イラン」取り込み自滅要因つくる

    2021-04-05

    メルマガ246号 中国は大丈夫か、妥協なき米欧の人権弾圧抗議を甘く見ると「自滅危機」

     

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    文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率は、4月2日発表で32%と過去最低に落込んでいる。不支持率は58%だ。韓国世論調査の「定型ルール」の35対55によれば、文氏支持派も離間しており最悪状態に陥っている。

     

    この状態では、文氏も日韓二大問題である旧徴用工と旧慰安婦を解決できる能力を失った。国会は、すぐに次期大統領選挙へ向けて動き出す。特に、与党内では今回の2大市長選敗北責任をめぐって、新人議員81人が党幹部と文大統領の責任追及姿勢を見せ始めている。こうした混乱状況で、日韓問題をとり上げられる時間的ゆとりはないと見るべきだろう。

     


    『日本経済新聞 電子版』(4月11日付)は、「文政権大敗 日韓関係、『低空飛行』のまま終幕か」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙の峯岸博編集委員である。

     

    韓国で革新系与党が大敗した4月7日のソウル、釜山両市長選を受け、近ごろ韓国政府内で日本との改善を探る兆しもみえていた隣国関係に暗雲が垂れこめている。「国民の叱責を厳重に受け止め、より低姿勢で、責任感を持って国政に臨む」とコメントした文在寅大統領の残り任期は、1年余りだ。「より低姿勢で」という言葉に象徴されるように、今後はより民意を意識した政権運営を進めていくのだろう。内政、外交での思い切った決断は難しくなる。

     

    (1)「日本統治下で最大の独立運動記念日だった31日の演説以降、文政権内の雰囲気が日本との対話重視に変わった。韓国外交筋はそう証言する。同盟や日米韓の枠組みを重視するバイデン米政権と軌を一にする。同18日のソウルでの米韓外務・国防担当閣僚協議(2プラス2)でも表敬を受けた米閣僚に、文氏は「韓日関係の復元に向けて努力していく」と約束している。「日米韓連携と同じ文脈で日韓関係を改善しようとする文政権の基調は今後も変わらない」と同筋は強調する」

     

    文氏自身は、日韓問題解決への意思を持っていても、それが実現できる政治的環境でなくなっている。文国会議長(当時)は一昨年12月、旧徴用工問題で「代位弁済方式」での法案を提出したが、文大統領が「見殺し」にしてチャンスを失った。政治家としての識見がなかったのだ。

     

    (2)「日韓関係の改善は簡単なことではない。文政権を支える対日強硬派の面々がうごめいているからだ。学生運動出身グループが中枢を占める革新系与党「共に民主党」議員や革新系の市民団体だ。保守地盤の釜山だけでなく革新系の牙城だったソウルまで野党に大差をつけられたことで同党は危機感を募らせる。「保守系野党『国民の力』に対し『既得権勢力』批判のほか、(日本統治に協力した)『親日派』イメージを強めて攻撃する」(韓国の大手シンクタンク幹部)との見通しが強まっている。大統領選に「親日派」を利用して世論をあおるようなら日韓改善は遠のく」

     

    今回の敗北で与党が、「親日派イメージ」を強めて野党を攻撃するとの見方には賛成し難い。与党内部が分裂気味であるからだ。野党攻撃する前に、与党立て直し論が先決である。

     

    (3)「共に民主党は、2020年4月の総選挙で国会の6割を占める大政党に膨張した。文政権の支持基盤だった市民団体や労働組合も政権交代後は「圧力団体」へと変貌し、文政権の外交・経済政策を「弱腰」と突きあげてきた。22年3月に迫った次期大統領選の候補者に取り沙汰されている人物の顔ぶれをみても、保守系大手紙の東京特派員を経験した知日派の李洛淵(イ・ナギョン)前首相(「共に民主党」前代表)の支持率が急落し、「ポスト文」レースから後退した。首位を走る李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事は過激な発言と行動力によって熱狂的な支持者を抱える。大統領選の行方と絡んで注目される親文在寅派(文派)も独自候補を探っている。文派と李知事に共通するのは「過去の歴史」を重視する対日強硬派という点である」

     

    与党新人議員81人の中には、圧力団体に譲歩し過ぎたという反省論が出ている。この結果、国民に顔を向けた政治の必要性を主張している。これは、文派への牽制球であろう。今後、与党内部で再建論をめぐって論争が始まる可能性も強い。その結果、分裂もあり得る。韓国外交で対日強硬派が、主導権を握る可能性はないだろう。国際情勢の変化が、それを許さなくなるからだ。

     


    (4)「日韓の懸案を解決させる体力を文政権に望めなくなりつつあるなかで、韓国で対日外交を重視する勢力のあいだでは「戦略的忍耐」というキーワードが使われ始めた。韓国を取り込む動きを強める中国をにらみ、日本に不満はあっても日韓関係を冷静にマネジメント(管理)していかなければならないという意味だ」

     

    米中関係が悪化すればするほど、韓国は日本との一体化が求められるはずだ。その意味で、もはや「反日外交」はその根拠を失うだろう。韓国を動かすのは、米中関係の悪化である。


     

     

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    「積弊一掃」と言えば、文大統領が就任以来、保守派を追詰める手段として使ってきた言葉だ。皮肉にも、今回のソウル・釜山の2大市長選によって、与党「共に民主党」が国民から「積弊一掃」を申し渡された。これは、韓国政治史で記録されるべき事態である。与党が分裂して、来年の大統領選は新政界地図で行なわれる可能性も出てきた。

     

    昨年4月の総選挙で与党は、6割の議席を得て絶対多数を占めた。それが、1年後には2大市長選で「N0」を突きつけられた。これは、韓国進歩派が世界的常識である「進歩派」から著しくかけ離れた、既得権益追及集団であったことを自ら暴露した結果である。民主主義の仮面を被っているが、それとはほど遠い醜悪な集団であった。次のコラムは、2大市長選前に執筆されてものだ。

     


    『朝鮮日報』(3月21日付)は、「文在寅政権が『進步的』だと!?」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の姜天錫(カン・チョンソク)論説顧問である。この中に、文政権の出鱈目な部分がはっきりと指摘されている。

     

    (1)「民主国家には、左右と保守と進歩の区別なく互いに共有する基本的価値観がある。三権分立の原則や表現の自由がそれだ。現政権は、味方が犯した犯罪は味方の検事が捜査し、味方の裁判は味方の判事が裁判することを三権分立と呼ぶ。こうした偽の三権分立の中、司法部(日本の省庁に当たる)の責任者(注:最高裁長官)が最近、自分の言ったうそを新たなうそで覆い隠そうとしている」

     

    このコラムは、決して誇張されたものでなく、事実をそのまま指摘している。検察と裁判所には、文政権支持派の「要員」が配置されているのだ。進歩派の犯した事件は、進歩派の検察と裁判所が甘い判断を加えてきたケースは山ほどある。これが、進歩派を名乗る文政権の下で堂々と行なわれていたのだ。過去なら、「革命」が起こっても不思議のないような腐敗ぶりであった。それが、公務員の不動産投機に群がる不正を許した。国民は、この政権の堕落に鉄拳を下したのだ。

     

    『朝鮮日報』(4月4日付)は、「『進歩』対『保守』、韓国の旧体制が崩壊した」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の鄭佑相(チョン・ウサン)政治部部長である。このコラムは、2大市長選前に掲載された。

     

    信じがたいことだろうが、今の共に民主党の方々は民主化闘争時代、「進歩」という言葉に乗り気でなかった。「われわれは進歩ではなく、民主改革・愛国勢力」と言っていた。「進歩」という言葉よりも、民主の方がもっと大衆的、すなわち、票に役立つと見ていた。

     

    (2)「社会主義の別名だった「進歩」は、2004年の民主労働党の議会進出以降、既存の制度圏に登場し、今の「『進歩』対『保守』」構図がつくられた。民主党が「進歩」にただ乗りするや、反対陣営も急いで「保守」の名札を付けた。それから10年以上、「『進歩』対『保守』」構図が続いた」

     

    韓国進歩派は、世界通念の進歩派でない。このことは、私が口を酸っぱくして指摘してきた点でもある。強いて言えば、民族主義集団である。没理論の感情集団である。南北統一と反日にあれだけのエネルギーを使うのは、その証拠である。

     


    (3)「逆説的だが、この時から「進歩」の受難が始まった。北朝鮮の人権を無視して、カーボンニュートラル(炭素中立)を行うと言い、大規模土木工事で自然を破壊する空港を推進する。反核を叫んでいた人々が北朝鮮の核兵器には見えないふりをする。公正を強調した人々が特権を受け継ぎ、平等を叫びながら貧富の格差を広げた。差別を禁止しようと言いながら、同性愛問題が出ると知らないふりをする。議席数を前面に押し出し、議会主義を絶滅させた。進歩にただ乗りした勢力が進歩の甘い汁を吸って、ボロボロにしてしまった」

     

    韓国進歩派が、これまで行なってきた「行状一覧」である。北朝鮮の人権問題について一言半句も発言しないが、旧徴用工や旧慰安婦問題になると俄然、熱を帯びる。議会運営では、絶対多数を拠り所に、野党を圧迫してろくな審議もしないで議案をつくってきた。横暴そのもの。進歩派の看板が泣くようなことを平気でやってきたのだ。まさに、民主主義を破壊した集団である。

     


    韓国与党の新人議員が、団結して党幹部と文大統領を追及しかねない声明文を発表した。新人議員の動きしだいで与党は分裂する。新人議員は、これから何期か議員を務めたいはず。野党より与党に属したいのは議員心理だ。そのきっかけは、来年の大統領選である。候補者選びで、分裂する可能性は大きい。

     

    (4)「与党は4月の補欠選挙と来年の大統領選挙を「『進歩』対『保守』」の構図でやりたがっている。しかしながら、文在寅(ムン・ジェイン)政権のこの4年間はこうした夢を水の泡にした。進歩の側に立った多くの人々が「政権交代」の列車に乗り、野党との関係を悩んでいる。共に民主党に背を向けた進歩と中道と改革的保守が同じ船に乗る連合戦線が構築される可能性もある。現執権層が街で闘っていた時代の「『民主』対『反民主』」戦線が30年後に「『共に民主党』対『反・共に民主党』」として復活することになる」

     

    下線部は、韓国政界が大きな再編成期にあることを示唆している。現在の進歩派vs保守派の対決が、これから進歩派vs非進歩派連合(保守派+中道派)に組み替えられれば、進歩派に勝ち目はない。今回の2大市長選が、それを示している。与党「共に民主党」は、分裂危機を迎えている。議員は誰でも、勝ち馬に乗りたがる習性があるからだ。

     

    次の記事もご参考に。

    韓国、「後遺症」市長選敗北、与党内の新人議員81名、文大統領と党幹部へ「反旗」

    2021-04-11 


    テイカカズラ
       


    文大統領が、最も恐れていた事態が持ち上がっている。2大市長選敗北で、与党新人議員81名が、文大統領と党幹部に反旗を掲げる声明を発表した。全党員174人中の81人である。その影響力では無視できないものがある。声明は、下記の点を批判している。

     

    与党の党憲(規約)によれば、不祥事で辞任したあとの選挙では、民主党は責任を感じて候補者を出さないルールであった。文氏が、党代表時に決めた経緯がある。そもそも、今回の2大市長選は与党出身者がセクハラ事件で引き起したものだ。本来ならば、民主党は立候補を見送るべきであった。それを、形ばかりの党憲改正投票で修正し、立候補を可能にしたのである。

     

    こういう反省のない態度が、国民から強い批判を浴びることになった。新人議員は、このご都合主義にあえて反対しなかったことへの自己反省と同時に、文大統領や党幹部への批判を強めている。

     


    『ハンギョレ新聞』(4月10日付)は、「韓国与党の初当選議員81人が初の集団声明、党の革新要求が噴出」と題する記事を掲載した。

     

    昨年の総選挙以来、党内の懸案に声を出さなかった民主党の初当選議員らはこの日、集会を開き、「党の革新の主体になる」と明らかにした。再選議員49人も12日に会合を開き、党の刷新案について論議することにした。

     

    (1)「共に民主党の初当選議員約50人は、今後の対策について論議した。彼らは、この日午後に「共に民主党初当選議員による共同立場文」を発表し、「共に民主党の党憲と党規に従えば、今回の補欠選挙では共に民主党は候補の公認をすべきではなかった。しかし、私たちは施行もせず国民的な共感もなく党憲と党規の改訂を推進し、候補を出した後には耳をふさいだ」とし、「その意思決定に参加できなかった点を強く反省する」と明らかにした。 そして「初当選議員が共に民主党の革新の主体になる」と誓った

     

    下線部は、重要である。初当選組が与党改革の主体になると宣言した。これは、事実上の文大統領レームダック化宣言であろう。次期大統領選は、党幹部や文氏の意向を離れ、候補者を選ぶことを意味する。

     

    (2)「初当選組が、イ・ナギョン前民主党代表とキム・テニョン前院内代表が主導し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領までもが、「党憲は固定不変ではない」としたソウル市長と釜山市長の補欠選挙の公認の正当性を批判した意味は大きい。声明には含まれなかったが、この日の初当選議員の集会では、共に民主党が傲慢だと思わせた強硬論を主導した人物らが次期指導部の選挙に出馬しないことの要求や、「チョ・グク元法務部長官とチュ・ミエ前法務部長官に対する切り捨て論」、「大統領府と共に民主党の道徳的優越主義を前面に出した“自分の過ちの合理化”などに対する批判」も続いた」

     

    次期党指導部には、党が過去に傲慢と思われた強硬論を主導した人物を選ばないことを要求している。そのほか、民主党は道徳的に優れているとトンチンカンな主張を繰り広げた人物の「追放」も要求する構えだ。こうなると、文大統領もこの追放組に入りかねない勢いである。

     

    (3)「実際に彼らは補欠選挙惨敗を機に噴出したこのような変化への要求が、今後の院内代表と党代表の選挙など次期指導部を構成する過程で、党刷新の糸口となるかが注目される。「共に民衆」(仮称)という名称で今後の活動を続けていき、党指導部の構成にも意見を出すことにした。81人にのぼる初当選議員が、集団の力を土台に指導部の選出過程に影響力を行使するということだ」

     

    81人の初当選議員は、党代表の選挙など次期指導部を構成する過程で、党刷新の糸口となる注目の存在になってきた。全党員174人中の81人は46%になる。半数近い勢力である以上、正当な意見であれば党を代表する意見になりうる。

     

    (4)「これに先立ち、共に民主党の20~30代であるイ・ソヨン議員やチョン・ヨンギ議員ら5人も別途、立場文を発表し、党憲と党規の改訂を経た選挙への参加を防げなかったことについて反省した。彼らは「検察改革は多くの国民が共感する政策だったが、チュ・ミエ前法務部長官とユン・ソクヨル前検察総長の対立に焦点が当てられた(検察改革)推進の過程で、共感を失った」とし、「国民が怒り分裂し、むしろ検察改革の正当性と動力を失ったのではないかと反省する」と述べた」

     

    このパラグラフでは、検察改革が余りにも強引であったことへの反省も出ている。これが、本意であれば、改正に乗出す勇気を持つべきだろう。

     


    (5)「院外の人々は、さらに強く体質改善を要求した。「元祖廬武鉉(ノ・ムヒョン)派」と呼ばれるユ・インテ元国会事務総長は、CBSラジオのインタビューで「これまで共に民主党が行ってきたのは、岩盤支持層の要求を受けいれてきたこと」だとし、「岩盤支持層への傾倒」を最大の敗因だと指摘した。「ザ未来研究所」のキム・ギシク所長もこの日のKBSラジオのインタビューで、与党側が信頼を失った理由として「三無」を挙げた。間違ったことが起きても謝罪と反省がなく▽問責がなく▽責任をとって辞めるという人がいない、ということだ」

     

    民主党は、岩盤支持層の要求を丸ごと受けいれてきたことへの反省が不可欠だという。最低賃金の大幅引上げは、労組の要求。反原発は、市民団体の太陽光発電事業支援のためだった。動機が、極めて不純である。その上、「三無」の無責任集団である。

    1)間違ったことが起きても謝罪と反省がなく

    2)問責がなく

    3)責任をとって辞めるという人がいない

     

    以上の3点が、今回の2大市長選の惨敗を招いた理由である。「共に民主党」は、本当に生まれ変わって、再出発できるのか。議員一人一人の決意に掛かっている。

    次の記事もご参考に。

    韓国、「分岐点」進歩派、2大市長選で積弊一掃対象へ 政界は再編成期「迎える」

    2021-04-11


    ポールオブビューティー
       

    戦時中の日本では、英語を「敵性語」として使用禁止処分にした。今から76年前のことだが、韓国では未だに「反日」をやっている。教育現場から日本語を追及するとの指令を出しているのだ。日本語狩りである。ご苦労なことである。

     

    こういう状況を見ていると、韓国の日本への劣等感は極めて強いことが分かる。ここまでやらなければ、民族の独立性が保てないとは驚きである。どうぞ、ご自由におやりなさい。日本人が笑っていることを記憶しておくべきだろう。

     


    『朝鮮日報』(4月10日付)は、「『校内の日帝残滓を調査せよ』、ソウル市教育庁の指示で騒動に」と題する記事を掲載した。

     

    ソウル市教育庁がこのほど、ソウル地域のすべての小中高校に「校内の日帝残滓(ざんし)を調査し、その結果を提出せよ」と指示していたことが分かり、騒動になっている。市教育庁が日帝残滓(日本が植民地支配していた時代の文化や生活日用品などで、現在も残っているもの)と分類された項目は、親日派の人物が作詞・作曲した校歌、号令台、児童・生徒の生活規定の中の文具、方角や番号表示が入った学校名まで含まれる。

     

    (1)「ソウル市教育庁は2月末、ソウル市内の全学校に「学校内の有形・無形の日帝強占期植民残滓を調査し、その結果を4月30日までに提出せよ」という公文書を送った。旭日旗に似たデザインの校章、日本人校長の写真や銅像、「東西南北」という方角や「第一」などの番号が入った学校名も含まれている」

     

    「東西南北」や、「第一」などの番号が入っている学校名は、「日帝植民地」の名残だという。これを変える方針なのだ。それで、気持ちが晴れるなら結構なことであろう。

     

    問題の本質は、こういう感情論での日本排斥が、韓国の将来に何らの影響も与えないだろうか、という点である。韓国は今後、あらゆる面で日本の協力を仰ぐはずである。もともと、朝鮮近代化に果たした日本の役割を無視しているが、それは歴史への無知を示している。

     


    日本は、中国や欧米の文化を吸収して現在があること。これをなんら恥と思わないのだ。むしろ、その先取性を誇るほどのである。韓国人は、全て自力で成し遂げたという噓の歴史に酔っている。その危険性に気付かないところに日韓対立の原因がある。

     

    (2)「一部の学校では、有名な童謡『島の家の赤ちゃん』を作った作曲家・李興烈(イ・フンリョル)、小説『無情』などを書いた李光洙(イ・グァンス)、ジャーナリスト崔南善(チェ・ナムソン)ら親日派との疑惑が持たれている文筆家・音楽家が作った校歌を使っているが、これを変更せよということだ。また、学校生活規則などで使われる「班長・副班長」「気を付け・礼」などの用語も「親日残滓」とのレッテルを貼って調べるように言っている」

     

    「班長・副班長」「気を付け・礼」も追放対象だという。ならば、日常会話に使われている日本語発祥の言葉を使用禁止にすればよい。韓国ドラマを見ていて気付くのは、日本語が使われていることだ。例えば、先輩・乾杯など明らかに日本語が生きている。特に、抽象的な意味の言葉に日本語が多用されている。

     

    中国でも社会科学用語は、全て日本語由来である。共産主義・社会主義・労働組合・革命などそうだ。マルクス関連用語は、全て日本語の翻訳をそのまま使っている。

     


    (3)「このような調査に関する公文書は、ソウル市議会が今年初め可決した「親日反民族行為清算支援に関する条例」などに基づくものだ。これまで全国教職員労働組合(全教組)や民族問題研究所などの市民団体は市・道の教育庁に「学校内の親日残滓を清算すべきだ」と主張してきたが、条例が作られたため、法的根拠ができたことになる。全教組ソウル支部は2019年、ソウル地域の小中高校113校を名指しして、「親日派が作詞・作曲した校歌を変更する必要がある」と主張した」

     

    朝鮮は、親日派のおかげで近代化が進んだことも事実だ。歴史を冷静に分析する度量がないので、いつまでも反日騒ぎを起こしている。韓国の20~30代の若者は、「進歩派vs保守派」という従来の区分から脱却している。「公正性」が、新たな政治選択の基準になっているのだ。つまり、反日vs親日の区分を超えていると思われる。

     

    (4)「教育界からは、「全体主義と何ら変わらない、行き過ぎた措置」という意見が出ている。韓国私立小中高校法人協議会のイ・ギョンギュン事務総長は、「学校の構成員や同窓会が判断してやることを『官』が変えろというのは『官製民族主義』だ」と語った」

     

    文大統領は、官製民族主義を推進することで反日=反保守派という狙いを込めていた。動機が不純である。今回のソウル・釜山の市長選で、こういう文氏の思惑が一撃を加えられたと言える。先に指摘したように、進歩派vs保守派という区分で捉えることはできなくなっているのだ。

     

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