勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年05月

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    中国海軍は5月2日、空母「山東」の部隊が南シナ海で訓練を実施したと発表した。海軍報道官は、「国家の主権を守る能力を向上させる」と強調した。ここまでは威厳ある姿だが、舞台裏で「山東」が、故障して海上で立ち往生していたのだ。そういう、中国の未熟な空母を笑いものにするニュースが登場した。

     

    空母は、駆逐艦など機動部隊と一体化して作戦任務に当る。だが、戦場で縦横無尽に戦えるまでには、約10年の歳月が必要と指摘されている。中国は、これにお構いなく空母が増えた増えた、と騒いでいる。実戦能力には、依然として疑問符がついたままだ。

     

    『大紀元』(5月2日付)は、「海上で動かぬ空母『山東』が嘲笑の的に 中国報道官、『引きこもりのオタクではない』と火消し」と題する記事を掲載した。

     

    南シナ海などで挑発行為を繰り返している中国軍の空母は今、国際社会の注目の的になっている。このほど、空母「山東」が母港から出発した直後に動かなくなった様子が衛星で捉えられ、ネットユーザーらは「漂流する張り子の虎」とその実力を揶揄した。こうした批判を受け、中国国防省の報道官は、中国の空母は「家に引きこもっているオタクではない。空母の長距離航行は常態化する」と火消しを図った。

     

    (1)「軍事情報を発信するツイッターアカウント「新・二七部隊軍事雑談」は4月29日、「今日のリアルタイム衛星写真では、空母「山東」は(中国海南省)三亜市外海の東部に位置している。遠くまで航行していない。昨日の位置とほぼ変わっていない」と投稿し、衛星写真を付け加えた。同アカウントの前日の投稿によると、「山東」は同日、三亜の海軍基地から出航し、南シナ海を通りバシー海峡に向かっていっている」

     

    中国空母は、衆人環視の状況に置かれている。空母「山東」は、中国が最初から建艦したものだ。空母「遼寧」は、中古空母をスクラップにするという名目で買い付けた代物である。これまで、中国海軍は空母を建艦した経験がなく手探り状態である。空母エンジンは、自国製であろう。まともな自動車エンジンもつくれない中国である。空母エンジンとなれば、もっと難しいであろう。

     


    (2)「ネット上では、1日中海上でそのまま動かない空母の様子を皮肉る書き込みが集まった。ある中国人ネットユーザーはツイッターで、「米軍は『また新しいおもちゃが現れた』と思っただろう」「各国の海軍がまた様子見に行くんじゃない?」「このように24時間(各国に)監視されていては、どうやって台湾を侵攻するのか」などと嘲笑した」

     

    中国は、普段から自慢しているので、こういう事故が発生すれば、ここぞとばかり批判されるのであろう。空母は、原子力でなければ燃料補給で短期間に母港へ戻らざるを得ない。台湾攻略で空母が出撃しても、すぐに母港へ戻らざるを得ず効率的でないと指摘されている。

     

    (3)「中国空母「遼寧」も4月12日、海南省三亜港から東290キロの外海で1日以上動かなかった。「エンジンが故障したかもしれない」などの憶測が飛び交っていた。このため、米海軍と台湾国軍、海上自衛隊は「遼寧」の様子を確かめるために、相次いで艦船を派遣した。中国国防省の呉謙報道官は29日の定例記者会見で、突然「中国の空母は『引きこもりのオタク』ではない」と発言した。中国の空母は「張子の虎」であるとの世論を意識したものとみられる」

     

    空母「遼寧」も、1日以上も外海で動かなかったという。原因は、エンジン故障説である。米海軍と台湾国軍、海上自衛隊が、「見物」に集まってきたという。何と、恥辱的な話でないか。中国海軍のプライドはズタズタであろう。

     

    (4)「大紀元の軍事コラムニスト、沈舟氏は4月30日の寄稿で、米空母と比べて、中国空母の出動回数は少ないし、航行期間も短いと指摘した。それによると、2020年4月、空母「遼寧」は母港の青島港を出航してフィリピン海に到着したあと、往路についた。往復期間は20日だった。今年4月、「遼寧」が再び出航し、沖縄本土と宮古島間や台湾周辺の海域、海南島付近に停泊し、現在、青島港に戻っているとみられる。今回の出動も1カ月。「出航は年に1回、航行期間は1カ月未満では、引きこもりと言っても過言ではない」と沈氏は述べた」

     

    中国の空母や潜水艦は、母港を余り出ないことで「有名」であった。これは、他国海軍に詳細を把握されるのを嫌っているという説もあったが、最近は見せびらかせている。中国潜水艦は、海中で騒音を出すので簡単に潜伏位置を発見されているという。これでは、潜水艦の意味がないのだ。

     

    (5)「空母「山東」の出動期間は「遼寧」と比べて、さらに短い。19年2月、「山東」が中国の2隻目として海南省で就役した。しかし、その直後、「山東」は中国北部にある大連造船所に戻った。「山東」の製造自体が未完成だったのか、または大きな故障が起きたかと推測が広まっていた。20年9月「山東」は大連港を出て、11月には渤海と黄海で海上軍事演習に参加し、12月に海南省に帰港した。長距離の航行はなかった。「1年間のうち、6カ月間任務を遂行し、残りの6カ月間は休養を取るという米軍の空母と比べて、中国空母の実力が大幅に後れていることがわかる」と沈氏は指摘した」

     

    中国海軍は、こんな未熟児状態で米海軍と戦えるはずがない。となれば、米国覇権へ挑戦すると騒いでいるのは、中国国内を引締める目的であろう。だが、米国は本気で防衛する体制を固めている。中国はどう対応するのか。謎の多い動きである。

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    中国では、ネット企業大手13社に圧力をかけて発展の芽を潰している。一方の米国は、外国籍の若者を引き寄せて、自由に起業させてその果実を受け取っている。この違いが、米中の将来を大きく左右することは間違いない。

     

    『朝鮮日報』(5月2日付)は、「若い人材が去る国」と題する記事コラムを掲載した。筆者は、同紙の孫振碩(ソン・ジンソク)パリ特派員である。

     

    パリで長年の付き合いがあるフランス人実業家に、家に招待された。彼の家で食事をしていた時、「米国・英国・ドイツはワクチン開発に成功し、フランスは失敗した」という話が出た。彼は「知っている? (米国の製薬会社)モデルナも、(英国の製薬会社)アストラゼネカも、CEO(最高経営責任者)はフランス人だよ」と言った。そのように言ってでもプライドを保ちたかったようだ。

     


    (1)「その時、記者は南アフリカのことを思い出した。米国の電気自動車メーカー「テスラ」の創業者イーロン・マスクCEOに片思いする南アフリカと、フランスの境遇は同じだと感じたからだ。マスクCEOは南アフリカで生まれ、高校卒業まで過ごしたが、逃げるように祖国を離れ、事業を起こしたのは米国だった。彼が生み出した莫大な付加価値は、主に米国が享受している。マスクCEOは南アフリカの人々が得意顔になるような「故国向けのリップサービス」もほとんど言わない」

     

    米国は、世界から若者を集める魅力に満ちている。自由が、個人の才能を100%花咲かせる土壌になっている。それは、学問とビジネスの全てについて言えることだ。この点が、中国と完全に異なる。監視カメラと公安が四六時中、見張っている国では、世界の若者が敬遠して寄りつかなくなる。

     

    (2)「南アフリカよりははるかに進んでいる国だが、フランスでも人材流出は危険水域に達している。英国のロンドンとその近郊にはフランス人が少なくとも約25万人暮らしているが、学歴・所得水準が高い人が多い。ロンドンの高級住宅地サウス・ケンジントンに「シャルル・ド・ゴール」というフランス学校があるほどだ。ナポレオン家の家長、ジャン=クリストフ・ナポレオン・ボナパルト氏も「ロンドンのフランス人」だ。パリでずっと育ったが、ハーバード大学で経営学修士号(MBA)を取った後、ロンドンの投資ファンド会社に就職したまま帰らない」

     

    ロンドンとその近郊に、フランス人が少なくとも約25万人暮らしているという。英国の自由な雰囲気を満喫しているのだろう。英国がEUを離れた理由の一つは、欧州に発展性がないと見限ったことだが、何か分かる感じがする。英国は、アジアで日本と組もうとしている。

     

    (3)「若い人材たちにとって、フランスは息がつまりそうな所だ。仕事の処理は遅いのに、規制は山ほどある。公務員が多すぎるという理由が大きい。社会主義の伝統の影響で、資本が花開くのを嫌がる人も結構多い。ワクチン開発を成功させた製薬会社CEOの2人は、このような障壁を避けて海外に出て行った代表的なケースだ」

     

    フランスの農村を旅行すると、「偉大な農業国家」という感じがする。パリの華やかさは、決してフランスの開放性を象徴していないのだろう。

     

    (4)「モデルナのステファン・バンセルCEOが24歳の時に国を出て以降、今年49歳になるまでの間に故国フランスにいたのは4年間だけだ。彼は5兆ウォン(約4900億円)台のモデルナ株を持つ大富豪になった。フランスでは夢見ることも難しい規模の成功だ。アストラゼネカのパスカル・ソリオCEOも同じだ。1986年、ニュージーランドを皮切りにオーストラリア、日本、米国の製薬業界で成長を続ける間、フランスから離れていた。ソリオCEOはオーストラリアが暮らしやすいと感じ、オーストラリア国籍を取得した」

     

    今や、生まれた国の国籍にしがみつかず、己の才能を開花させる国を選ぶ時代になっている。民族主義が廃れようとしているのだ。

     


    (5)「最近はフランスの上流階級の親たちも子どもを英米に行かせようとしている。特に10代をパリで過ごしたトニー・ブリンケン米国務長官が卒業したバイリンガル教育学校に子どもを進学させようと激しい競争を繰り広げている。英語とフランス語を並行させて授業をする学校を経て、英米圏の名門大学に通わせ、英語が堪能な人物にしたいと考えているのだ」

     

    英米圏の大学に通い英語が堪能になることが、世界への登竜門になっているようだ。つまり、米英の持つ自由さが最大の発展基盤となっていることを示唆している。

     

    (6)「各国の能力のある若者にとって国境という敷居は低くなりつつある。韓国の若者たちも、外国で徐々に多くのチャンスをつかんでいる。フランスや南アフリカのように人材が流出した後、指をくわえるような境遇にならないように注意する必要がある。韓国に閉じ込められるのを嫌がり、国を離れた人材が海外で成功する時、「あの人は韓国人」だと後になって騒ぐのはむなしいことだ」

     

    韓国では、海外移住者が増えている。文在寅政権発足後、2017年6月から2020年12月までに、2510人が海外移住を理由に出国した。朴槿恵(パク・クネ)政権時代である2013~16年の海外移住者は、1267人だったのに比べ98.1%も増加した計算だ。集計期間は現政権が6カ月短いが海外移住申告者数はほぼ2倍に増えたのである。

     

    海外移住先では、米国は992人(朴政権)から1680人(文政権)に69.4%、カナダは同様に、71人から260人に266%増えた。米国の魅力が大きい。『中央日報』(4月25日付)が報じた。

     

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    バイデン米大統領は4月28日、初の施政方針演説で、「米国の反対側に賭けることは良い賭けでは決してない」と主張した。韓国への警告と読むべきだろう。韓国が、インド太平洋戦略対話の「クアッド」(日米豪印)への参加を曖昧にしていることへの痛烈な批判だ。

     

    クアッドの一員であるインドのモディ首相は4月26日、医療物資の支援についてバイデン米大統領と電話会談を行った。その直後、モディ首相はツイッターに投稿し、米に感謝の意を表した。この謝意表明に中国メディアが猛反発している。中国が、インドへ3万台以上の酸素濃縮器を送ったにも関わらず、モディ氏は今まで『ありがとう』と言ったことがない」というのだ。『大紀元』(5月1日付)が報じた。

     


    インドによる米国への対応は、クアッド一員という仲間意識の表れであろう。翻って、米韓同盟を結ぶ韓国が、クアッドに加わらないとすれば、米国にとってはインドの方が「仲間」と言える。韓国は、親近感という肝心部分でインドよりも低く扱われるだろう。

     

    『東亞日報』(5月1日付)は、「3週間後に韓米首脳が初対面、同盟『声を一つに』化学的結合を果たさなければ」と題する記事を掲載した。

     

    文在寅(ムン・ジェイン)大統領とバイデン米大統領が21日にワシントンで首脳会談を開くと、両国が30日、同時に発表した。バイデン氏の就任から121日が経って実施される初の韓米対面首脳会談だ。大統領府は、両首脳が対北朝鮮政策の協力と経済・通商の実質的協力、気候変動や新型コロナウイルスといったグローバルな課題を深く議論すると明らかにした。ホワイトハウスも、「文大統領の訪問は両国の堅固な同盟と広く深いきずなを示す」と明らかにした。

     

    (1)「韓米首脳の会談日が決まったことで、今後具体的な日程と議題、特に両国が導き出す合意内容をめぐって両国の本格的な実務協議が行われるだろう。だが、韓米が調整しなければならない課題は容易ではない。両首脳が考える最優先議題から異なる。文大統領は、米国が北朝鮮との対話を通じて平和プロセスを再稼働することを、バイデン氏は韓国が日本と共に米国の側に立って中国を牽制する一軸としての役割を果たすことを望んでいる

     

    米韓首脳の思惑が、最初から異なっている。米国は、韓国に対して「クアッド」の一員になることを要請する。韓国は、米朝の直接会談を要請したい、と伝えられている。いずれも、平行線になろう。韓国は、この行き違いのまま会談を終わらせる積もりとすれば、大きな失敗になる。世界のリーダーである米国と違う道を選択すれば、中国は韓国を絶好の餌食にできるチャンスと見るに違いない。

     

    中国は秦の始皇帝以来、「合従連衡」策を取ってきた。合従(同盟)を崩して連衡(一対一)へ持込み、相手を飲み込んできたのだ。この危険な外交術が現在、韓国に向けて始まっている。



    (2)「韓米はすでに北朝鮮に対する「完全に調整された」戦略づくりを約束したが、最近の両首脳の発言からは、細部では異なるように読み取れる。文大統領は米国に対して、トランプ政権時代の対北朝鮮政策を継続することを求めている。一方、バイデン氏は北朝鮮に外交の扉を開けながらも、「断固たる抑止」を強調している。近く米国の新しい対北朝鮮政策が発表されれば、これまでの政策共調の水準が露呈するだろうが、首脳会談では声が一つになるよう緊密に調整しなければならない」

     

    韓国は、同盟国の利益とは別に、「韓国」固有の国益を追及できる権利があるしている。つまり同盟の持つ「一心同体」という立場を否定している。二股外交が、米韓同盟の利益に反していないと考えているのだ。これは、「安保は米韓、経済は韓中」とする二頭立てを主張する背景である。しかし、米国は安保も経済も一緒であるとの認識である。安保は、経済利益を包含するとしているのだ。

     


    クアッドは、安保と経済を一体として捉えている。だから、半導体・バッテリー・レアアース・医薬品の生産をクアッド4ヶ国が共同で行なうとしている。韓国は、このうち経済面だけは参加するが、共同防衛はお断りという虫の良さである。

    (3)「米国は経済・技術・安全保障など全方向での中国包囲網に韓国が参加することを望んでいる。米国・日本・オーストラリア・インド4ヵ国の枠組み「クアッド」の拡大版である「クアッド・プラス」への参加が議題に上がる可能性がある。韓国は中国の反発を意識して参加を躊躇しているが、米国が主導する半導体などの安定供給網(サプライチェーン)の構築への協力を前向きに検討する考えだ。敏感な安全保障問題ではなく多国的協力分野には参加し、韓国に緊急なワクチン協力といった支援を取り付ける実用的外交を展開しなければならない」

    韓国の言分は、安保という共同の汗はかかないが、経済の利益だけは欲しいとしている。それゆえ、ワクチンの優先的な供給を要請しているのだ。いかにも韓国的な「我が儘」を表わしている。日韓関係悪化を作り出した背景と同じである。相手国に要求だけ出して、義務を負わないのだ。



    (4)「両首脳が初めての対面会談で友好な関係を築くことも重要な課題だ。バイデン氏は、これまで文大統領が対してきたトランプ前大統領とは全く異なる。外国首脳を呼んでワンマンショーをした前任者とは違って、相手を配慮して傾聴する外交を見せるだろう。だからといって一方的な譲歩を受け入れる米大統領はいない。バイデン氏は28日、初の議会演説で、「米国の反対側に賭けをすることは良い賭けでは決してない」と主張した

     

    下線部分は、重い示唆である。米国は、韓国防衛のために朝鮮戦争で血を流した同盟国である。今度は、米国がともに同じ陣営に加わって欲しいと要請している。強い同盟が、中国の開戦意欲を削げるからである。韓国はいつまで、そういう同盟結束を拒否できるだろうか。中国経済に異変が起これば、自然に米国へ擦り寄るだろう。そのときでは遅いのだ。

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    米アップルが今年1~3月期の世界スマートフォン市場で売上高の半分近くをさらった。サムスン電子はアップルよりも1700万台多くスマートフォンを販売したが、売上高はアップルの40%前後にとどまった。

     

    この謎解きは、アップルの主戦場である米国で革命的変化が起こっている結果と見るほかない。価格の安い機種よりも多機能・高価格帯のスマホ需要が盛り上がっていることは間違いない。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月26日付)は、「近づく米好景気、過去の例は参考にならず」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米国は、かつてのように製造業が主導する国ではない。1950年代にGDPの約40%だったサービス業が、現在は約60%を占めている。また、コロナ禍の影響の多くは独特なものだった。旅行やレストランといったサービス業への支出に大きな打撃を与えた一方で、製造業への影響は軽微だったことがその例だ。例えば、コロナ禍がきっかけとなった在宅勤務革命は、企業の効率性を高め、生産性を向上させ、潜在GDPを引き上げ、経済を過熱させることなく長期的に速いペースでの経済成長を可能にするかもしれない」

     


    現在の米国GDPの60%は、サービス業が生み出している。こういう経済構造においては、コロナ禍による在宅勤務が生産性を引き上げて、潜在的GDPを押し上げる可能性を持っている。まさに、コロナ禍が米国経済を蘇生させるという期待を抱かせている。

     

    ミシガン大学消費指数でも、先行きの購買意欲は急ピッチで回復に転じている。このように米国市民が先行きに大きな希望を持ち始めたとすれば、高級スマホ(アイホーン)を買い求めて生活を楽しむ雰囲気が強まって来たと見られる。

     

    (2)「2021年の経済の様相は十分驚異的なものになる可能性がある。それは想定外のものだからではなく、現在予想されるスピードで過去に経済が成長したのがかなり前の話だからだ。1983年の好景気の頃、現在労働年齢の米国人の多くは、生まれていたとしてもまだ子どもだった。彼らにとっては、これから何らかの新たな状況が待ち構えている」

     

    パンデミックでうちひしがれたが、米国経済は他の先進国に見られない動意を示している。今後の経済は、想像を超えるスピードで展開する可能性を秘めているようだ。とすれば、高価格帯のスマホが売れても何ら不思議はない。

     


    『朝鮮日報』(5月1日付)は、「1700万台多く売ったのに サムスン、アップル売上高の半分にも満たず」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「市場調査会社カウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチが4月30日に明らかにしたところによると、今年1~3月期の世界スマートフォン市場の売上高は1130億ドル(約12兆3460億円)で、史上初めて1000億ドル(約11兆円)を突破した。このうち、アップルの売上高は42%に達した。2位のサムスン電子の売上高は、アップルの半分にも満たない17.5%だった。次いでOPPO(オッポ、8.25%)、vivo(ビボ、8%)、小米科技(シャオミ、7.6%)などの中国企業が3~5位を占めた」

     

    今年1~3月期の世界スマートフォン市場で、アップルの売上高は42%に達した。2位のサムスン電子の売上高は、アップルの半分にも満たない17.5%だった。アップルの勝利宣言が出ても不思議はない。

     

    (2)「出荷台数基準では、サムスン電子がアップルを大幅に上回った。サムスン電子は「ギャラクシーS21シリーズ」発売効果により市場占有率21.7%を記録、昨年10~12月期にアップルに譲った1位の座を奪還した。16.8%のアップルは2位に後退した。今年1~3月期にサムスン電子は7700万台、アップルは6000万台のスマートフォンを販売したものと推定される」

     

    出荷台数基準の市場占有率では、サムスンが21.7%を占めてトップ。アップルは、16.8%で2位に後退した。アップルが、高価格帯機種が多いことを示している。米国経済の強い回復力を見込んでいた結果であろう。

     

    (3)「アップルよりもサムスンの方が、スマートフォンを多く販売したのに、売上高で半分にもならないのは、両社の対照的なスマートフォン戦略のためだ。アップルの「iPhone12」基本モデルは前作よりも100ドル(約1万1000円)前後高くなった。特に、iPhoneシリーズの最上位モデルである「iPhone12ProMax」は米国・欧州市場での需要が続き、売上高アップをリードした」

     

    アップルは、「iPhone12」基本モデルで前作よりも100ドル前後高い価格設定をして成功した。

     


    (4)「サムスン電子は「ギャラクシーS21」基本モデルを前作より約25万ウォン(約2万4000円)安い99万9900ウォン(約9万7600円)で発売した。「ギャラクシーS」シリーズの価格が100万ウォン(約9万7700円)以下に策定されたのは、「ギャラクシーS9」以来3年ぶりだ。これと同時に、中低価格ブランドである「ギャラクシーA」シリーズの販売拡大にも力を入れた」

     

    サムスンは、「ギャラクシーS21」基本モデルで前作より約25万ウォン安く発売した。世界経済が、不況から抜けきれないという前提で臨んだのである。販売戦略の失敗だ。


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    中国当局は、アリババ系列のフィンテック企業、アント・グループへの取り締まりをきっかけに、ネット企業全般へと取り締まりの網を広げている。フィンテック企業は、法律の盲点を突いて急成長してきたが、銀行経営にも大きな影響を与えるまでになっている。

     

    消費者の膨大なデータを握っており、これを金融ビジネスへつなげて高利益を上げてきた。実は、この過程で習近平氏の政敵が多数、フィンテック企業の株主に名を連ねて、利益を得ていることが発覚した。当局は、迂闊にもアント・グループの株式公開まで気付かずにいたのである。これに慌てて、他のフィンテックでも同様のことが行なわれていると疑い、今回のネット企業13社への圧力となったのであろう。習政権は、自らの政治権力維持のために、ここまで神経過敏になっている。

     

    『大紀元』(5月1日付)は、「中国、ネット金融13社を一斉指導、専門家『中国の金融革新の時代は終わった』」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「中国人民銀行(中央銀行)など金融規制当局は4月29日、インターネット金融業者13社を呼び出し、行政指導を行った。金融規制の順守を求めたと中国国営新華社通信が報じた。金融規制当局は市場で影響力を増す巨大IT企業に対する締め付けを一段と強めた。報道によると、指導に当たった金融規制当局は中国人民銀行、銀行保険監督管理委員会、証券監督管理委員会、国家外貨管理局となっている」

     

    呼び出し指導を受けたのは、微信支付(ウィーチャットペイ)を手掛けるインターネットサービス大手の騰訊控股(テンセント・ホールディングス)や動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)、百度(バイドゥ)、ネット通販の京東集団(JDドットコム)、出前アプリの美団(メイトゥアン)、平安保険、配車アプリの滴滴出行(ディディ)などの金融会社13社だ。いずれも、中国を代表するフィンテック企業である。

     

    (2)「13社は、いずれも業界で強い影響力をもつ大手ハイテク企業である。4月29日付の官製メディア「国是直通車」が、今回の13社に対する指導は中国共産党によるオンラインプラットフォーム企業に対する是正の「第一歩」だと報じた。さらに「アリババ傘下のアント・グループと同様、規制当局は今回の指導を通じて、業界全体に警告を与えようとしている」と分析した」

     

    フィンテック企業が急成長したのは、中国の金融構造の前近代性が背景にある。銀行は、庶民を相手に貸出しをせず締め出してきた。フィンテック企業は、その穴を埋めて利便性を提供してきたのだ。フィンテック企業が存在したから、中国の小売業も発展できたという功績を忘れて取り締まり対象にしている。必ず、中国経済へブーメランとなってはね返るであろう。

     


    (3)「アリババ集団は4月10日、独占禁止法違反で過去最大となる3000億円の罰金処分を受けた。アリババ傘下のアント・グループも、フィンテック企業から金融持ち株会社への再編を指示された。当局はその後、テンセント、バイトダンス、百度、JDドットコム、美団など34社のプラットフォーム企業に対し、期限までに是正するよう求めていた」

     

    34社のプラットフォーム企業は、独占禁止法に違反して暴利を貪ったというのが理由である。この暴利を習近平氏の政敵が目を付け株主になって「寄生」しているのでないか、と疑い始めているに違いない。

     

    (4)「ロイターは4月29日、情報筋の話を引用して、中国の独占禁止当局である国家市場監督管理総局(SAMR)は、テンセントに少なくとも100億元(約154000万ドル)の罰金支払いを命じる可能性があると報じた。ネット業界の独占行為を取り締まる一環だとしている。また、独占禁止当局は4月26日、フードデリバリー大手の「美団」のビジネス慣行が独禁法に違反した可能性があるとして、調査を開始した。同社は取引先に対して同社の競合企業とは取引しないよう「二者択一」を求めていた。罰金額が、昨年の売上高の4%という「アリババ基準」が適用された場合、美団の罰金額は46億元(約7745700万円)に及ぶ可能性がある

     

    中国では、ネット企業が相次いでアイデア競争を繰り広げてきた。それが、どれだけ消費者の生活利便を促進したか分からない。それが突然、独禁法違反を理由に網を掛けられた。中国経済が、曲がり角にある象徴的な一件だろう。

     


    (5)「ブルームバーグは、中国共産党政府は現在、アリババやテンセント、美団といった大手企業が市民生活のあらゆる場面で影響力を強めていることや、各社がオンラインショッピング、チャット、配車などのサービスを提供することで蓄積された膨大なデータに懸念を抱いていると報じた」

     

    政府が、膨大な個人データを取り込みたいと狙っているのでないか、と見られている。これは、デジタル人民元普及に必要だと見ている結果と言われている。デジタル人民元を普及させるには、民間のITネットが邪魔という判断をしている節が見られる。

     

    コーネル大学の教授であるエスワル・ プラサド氏は4月29日、米『ニューヨーク・タイムズ』紙への寄稿で、中国政府がジャック・マー氏と同氏が所有するアント・グループに打撃を加えた目的は、マー氏が持つ強い経済的・政治的パワーを制限することだと指摘した。米覇権に挑戦すると豪語する習近平氏が、マー氏を恐れるとは余りにもチグハグな感じがするのだ。

     

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