勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年05月

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    中国は当初、ワクチン外交で世界を席巻しそうな勢いであったが、完全に米国の巻き返しにあっている。総合科学力で米国の足元にも及ばない以上、当然の結果であろう。

     

    中国製ワクチンは、治験結果が発表されないという致命的な欠陥を持っている。これでは、中国国内では強引に接種できても、他国での接種となれば尻込みされてもやむを得ない。

     

    『日本経済新聞』(4月30日付)は、「モデルナ、生産3倍超へ ワクチン需要増に対応 来年30億回分」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「米バイオ製薬モデルナは4月29日、開発する新型コロナウイルスのワクチンについて2022年の生産量が最大30億回分になる見通しを発表した。21年の生産量の3倍超にまで膨らむ見通しだ。世界的な需要増に対応し、設備投資を加速する。21年の生産見通しも従来の7億~10億回分から8億~10億回分に修正した」

     

    モデルナのワクチンは、mRNAでコロナのタンパク質を合成するので、開発と量産に時間がかからないほか、変異株にも対応可能な「理想型ワクチン」とされている。中国は、不活化ワクチンである。ウイルスを培養して病原性をなくして投与する。ウイルス培養に時間がかかるのが難点である。

     

    こうして、米中のワクチン製造方法には新型(米国)と旧型(中国)という大きな違いがある。中国が、必死になってモデルナのワクチン製造法をスパイしようとした理由は、新型を手に入れたかったのである。中国には、思いもよらない革新的製造法である。

     

    (2)「ステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)は「変異ウイルスが急速に拡大するなか、22~23年にかけて追加接種を含めた新型コロナワクチンの著しい需要は続くだろう」と述べた。モデルナは、変異ウイルスに対応する追加接種ワクチンの開発を進めている」

     

    モデルナは、変異ウイルに対応するワクチン開発に着手している。

     


    (3)「生産委託先なども対象に設備投資をして、米国や欧州の生産拠点を増強する。これにより、スイスの製薬大手ロンザの工場での原薬製造が2倍になるほか、スペインの委託先工場の充填や仕上げなどのペースが2倍以上になる。モデルナの米工場での原薬製造も50%拡大する。仏製薬大手サノフィも生産支援を発表しており、最大2億回分供給することで合意した。あわせてセ氏2~8度の冷蔵庫での保管期間が従来の30日間から3カ月間まで延ばせる可能性があると公表した。ワクチンが扱いやすくなれば、より小規模の接種会場などでの使用が広がる」

     

    モデルナは、世界各地でワクチン増産体制に入っている。下線のように、「セ氏2~8度の冷蔵庫での保管期間が従来の30日間から3カ月間延長」という改善策が施される。

     


    (4)「モデルナ製ワクチンは、日本での承認が近く見込まれる。河野太郎規制改革相は4月29日、「5月の終わりの方にモデルナが承認される。あるいはアストラゼネカが承認される」と述べた。都道府県が開設する大規模な接種会場では、モデルナ製ワクチンが接種される見通しも示している。米国で同ワクチンは、すでに1億回以上接種されている」

     

    日本でも治験をしているが、治験者数が160人程度という。モデルナは、アジア人1600人の治験を経ており立証済みだ。それにも関わらず、日本があえて治験する意味があるのか厳しく批判されている。この期間で2ヶ月も無駄になったという。日本が独自治験をしなければ、今頃は感染状況がかなり変わっていたと思われる。日本の形式主義の失敗である。

     


    日本は形式主義で失敗しているが、中国はその形式を無視して失敗している。

     

    『大紀元』(4月30日付)は、「中国ワクチン外交の衰退、米国は引き続き武漢研究所流出説を調査」と題する記事を掲載した。

     

    中国のワクチン外交が世界各地で広範囲にわたり衰えを見せていると複数の報道機関が伝えている。2021年4月6日に『ASEANポスト』に掲載された記事では、「多額の資金を注ぎ込んだ中国のワクチン開発・供与政策には大きな期待が寄せられていたにも関わらず、少なくとも東南アジア地域では予測されたほどの成果は上がっていない」と報じられた。

     

    (5)「中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)製ワクチンと中国医薬集団(シノファーム)傘下の中国生物技術(CNBG)社製のワクチンの有効性が明確に実証されておらず、後期治験データがほとんど発表されていないことに衰退の要因があると考えられる。最近の調査によると、中国製の新型コロナウイルス感染症ワクチンは、欧米製ワクチンに比べて有効性が低いことが証明されている。例えばロイター通信の報道によると、2回目の接種から2週間を経た被治験者を対象に調査を実施したブラジルの研究所は、科興控股生物技術製ワクチンの有効性は50.7%であったと発表している。ファイザー社とビオンテック社が共同開発したワクチンやモデルナ製ワクチンなどの欧米製ワクチンでは90%を超える有効性が示されている」

     

    中国製ワクチンの有効性は50%台。欧米製ワクチンは90%台という圧倒的な差が付いている以上、中国製ワクチンを欲しがる国は少ないはず。この差は、総合的科学力の差である。

     


    (6)「これとは対照的に、国際的なワクチン同盟を通じて2021年末までに20億投与分のワクチンを世界90ヵ国超の低中所得国に配布するという米国主導のイニシアチブが勢いを増している。米官製メディア「シェアアメリカ」によると、4月中旬までに3800万投与を超えるワクチンが同盟を通じて数十か国に配布されている」

     

    米国主導のワクチン供与が始まっている。まだ3800万投与と少ないが、これから本格化する。バイデン米大統領は4月28日、就任後初めての施政方針演説で、「第二次世界大戦時、米国が(全世界の)民主主義の武器庫だったように、ほかの国々のためワクチン武器庫になる」と述べた。本格的なワクチン外交への宣言である。

     

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    米国の1~3月期の実質GDP成長率は、前期比年率換算で6.4%増となった。昨年10~12月期が、前期比年率換算4.3%増であったから加速している。中国の1~3月期の実質GDP成長率は、年率換算2.42%である。大きく差が付いてきた。

     

    米国GDPは、中国のように住宅建設と輸出が牽引したものではなかった。旺盛な個人消費がリードした。経済成長の中身が全く異なるのだ。米国は、GDPから純輸出と在庫を除いた最終需要が10.6%増に加速した。中国経済が逆立しても適わない「実力」を示したのだ。

     

    米経済の最大部分を占める個人消費は10.7%増と、1960年代以降で2番目に大きな伸びとなった。実質GDPは、年率換算19兆1000億ドルとなり、パンデミック前のピークである19兆3000億ドル弱を間もなく上回る可能性を示唆した。米国経済の底力を発揮したのである。『ブルームバーグ』(4月30日付)が伝えた。

     

    この背景には、ワクチン接種の加速や雇用の拡大、連邦政府による複数回にわたる救済で家計の支出が増大。行動制限が大幅に撤廃され、消費者需要の裾野が広がり、旅行やレジャーなど長らく低迷していたサービスへの支出が増えたことが上げられている。

     

    バイデン米大統領は、4月28日(現地時間)に初の施政方針演説を行なった。大統領就任100日目である。これまでは、コロナ対策で忙殺されてきたが、ようやく「バイデン政治」の骨格を米国民に提示した。その内容は、分裂した米国民を一つにする民政重視がはっきりと示された。

     

    40年前、当時のレーガン米大統領とボルカー連邦準備制度理事会(FRB)議長は、同国経済の徹底的な再構築を主導した。経済の力の中心は政府から市場、労働者から資本家に移り、平等ではなく効率性、需要ではなく供給の促進に重点が置かれた。今回は、レーガノミックスを逆転させる発想法で、米国社会の底辺で苦しむ人たちに光りを与えるものになった。

     

    具体的には、次のような内容である。

     

    米国が、新型コロナウイルス禍からの回復を図るに当たり、バイデン大統領は経済における財政支出と税制の役割に再び重点を置くというものである。3月に成立した経済対策に続き、計4兆ドル(約435兆円)余りに上るインフラ計画と社会保障拡充計画を提案した。その財源は、法人税増税や富裕層の所得税およびキャピタルゲイン税の税率引き上げによる税収を一部あてるというものだ。

     


    FRBのパウエル議長は、すでに2023年まで事実上のゼロ金利政策と債券購入を続けることを明言している。これによって、バイデン政権の拡張路線を支援する。経済に占める労働者の取り分を増やし、黒人など取り残されてきた層にも雇用改善の果実が広く行き渡ることを目指す政策を後押しする戦略である。まさに、レーガノミクスとボルカー路線の大転換をはかろうというものだ。

     

    こうしたパラダイム転換は、米国民世論にどう受け取られているか。

     

    『ロイター』(4月30日付)は、「バイデン氏経済政策に過半賛成 トリクルダウン批判も支持=世論調査」と題する記事を掲載した。

     

    4月29日発表の最新のロイター/イプソス世論調査で、富裕層増税や最低賃金引き上げを含めたバイデン大統領による富の再分配提案について、米国民の過半数が支持していることが分かった。

     

    (1)「28日のバイデン氏の議会での施政方針演説が示した経済政策を支持するとの回答は73%に達した。一方で、レーガン大統領が約40年前に提唱した、企業や富裕層に減税などを実施すれば、富める者が富んで貧しい者にも自然に富がこぼれ落ち、経済全体が良くなるとする「トリクルダウン効果」については、共和党支持者の間でも意見が割れた。バイデン氏は施政方針演説で、経済のトリクルダウンは米国でこれまで一度もうまくいっていないと批判した。今回の調査は演説後に実施された」

     

    「トリクルダウン効果」は、米国の格差拡大をもたらした大きな要因である。「富める者はますます富、貧しき者はますます貧しなる」という皮肉な結果を招いた。中国もこの方式によって、米国以上の格差拡大に陥っている。

     

    米国の世論分裂は、所得分配の不平等性がもたらした面も大きい。バイデン政権は、ここにメスを入れる政策を施政方針演説で発表した。

     


    世論調査では、このバイデン氏の政策に同意するとした回答が全体で51%。共和党員の中では10人中4人、民主党員では10人中7人の割合だった。不同意は全体では26%で、共和党員では10人に3人、民主党員では10人に2人だった。

     

    バイデン氏の提案内容別の支持率は次の通りである。

     

    1)雇用主に従業員向けの12週間の有給の家族休暇と医療休暇を義務づける提案=69%

    2)短期大学コミュニティーカレッジの最初の2年間を無条件で無償化=65%

    3)富裕層への増税=65%

    4)富裕税逃れを阻止する内国歳入庁(IRS)の監査や執行の強化=64%

    5)連邦最低賃金の15ドルへの引き上げ=63%

     

    (2)「党派別では、このいずれも民主党員は支持が少なくとも10人に8人だったが、共和党員ではどれも10人に5人未満だった。このほか、バイデン氏が就任以来、これまで打ち出してきた提案の規模や範囲について、回答者全体の約6割が「歴史的」と評価。女性初の副大統領になったハリス氏と、女性初の下院議長になったペロシ氏が、演説するバイデン氏の後ろに陣取る光景を「歴史的」と評価した回答は74%に達した。今回の調査対象は米国の成人1000人で、うち共和党員が290人、民主党員が360人」

     

    前記の世論調査で、民主党員の8割、共和党員の5割が賛成していることに注目すべきだ。共和党員の約半分がバイデン氏の政策に賛成したことで、米議会で共和党もむげに反対に回れないことは確かだ。これら法案の成立に反対すれば、2年後の中間選挙で、共和党が不利になることは避けられまい。

     

     

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    米韓首脳会談は、5月21日の開催と正式決定した。韓国が、議題に挙げると予想されるテーマは、南北交流再開とワクチン入手問題と見られる。米国は、北朝鮮の核開発拒絶という原則の再確認を韓国へ求めるであろう。もう一つ、インド太平洋戦略対話の「クアッド」の参加問題である。こうして、米韓両国は首脳会談のテーマ自体が、大きく食い違っている。

     

    韓国は、国際情勢が急変していることの認識に欠けている。中国が、膨大な軍備を背景にして近隣諸国へ軍事的圧迫を強めている中で、中国に付き従うことが「平和への道」という敗北主義に陥っている。その延長で、北朝鮮へもひたすら「低姿勢」を貫いている。文政権は、いったい何を考えているのか。米国が、韓国を拒絶する姿勢を見せても不思議でないほど、米韓は同床異夢の状態である。

     


    北朝鮮が3月、1年ぶりに弾道ミサイル発射を再開するなど挑発の動きを見せた。米軍事情報当局のトップが北朝鮮の核実験の可能性について警告している。米国防情報局(DIA)のスコット・ベリエ長官は4月29日(現地時間)に開かれた米上院軍事委員会の公聴会に先立ち、「全世界の脅威評価」と題した書面報告でこのような見方を示した。

     

    この日、ベリエ長官と共に公聴会に出席したアブリル・ヘインズ国家情報長官(DNI)は、「北朝鮮は具体的な非核化措置を少しでも取ったのか」という質問に対し、「そうではない」と答えた。これに先立ちヘインツ局長は、公聴会の書面答弁で「我々は、金正恩(キム・ジョンウン)委員長が核兵器を外国勢力の干渉に対する究極的な抑止力とみて、時間の経過とともに核保有国として認定と尊重を受けることを望んでいると評価している」と指摘した。

     

    以上は、『中央日報』(4月30日付)が報じた。北朝鮮は、核保有国として認められることが最終目的で、核放棄しないというのが、米情報当局の判断である。バイデン政権が、この見解を採用するのは当然で、韓国の見解と180度異なる。

     


    『中央日報』(4月30日付)は、「バイデン『原則主義リーダーシップ』に文外交はいばらの道の予感」と題する記事を掲載した。

     

    米国のジョー・バイデン大統領が「原則主義グローバルリーダーシップ」を宣言した。バイデン大統領が示した原則の根幹は「米国の利益」と「同盟」だ。米国の利益に合致する方向に動き、これを実現するための方法論として同盟国との協力強化を選ぶという意味だ。バイデン大統領は就任100日を翌日に控えた28日(現地時間)、上・下両院合同会議演説を通じて「米国が再び動いていると報告することができるようになった。米国はいま危険を可能性に、危機を機会に、制約を強靭さに変えようとしているところだ」と述べた。

    (1)「米国の利益を最優先に置くという原則は、特に対中戦略を説明するときに特に際立っていた。バイデン大統領は「習近平中国国家主席に『米国は競争を歓迎するが葛藤は望まない』という点を伝えた」とし「米国の利益を守っていく点も明確にした」と付け加えた。あわせて「中国を含めたすべての国家が世界経済で『同一のルール』に従わなければならない」と述べた。これは言い替えれば中国が米国との競争で制度・規則に従わない場合には葛藤につながることもあるという警告とも取れる。ルールの無い路上のケンカではなく、中国を米国が主導するリングに上げてその中で戦うという意味だ」

     

    下線部は、普遍的な価値観である民主主義・人権・自由の擁護のために米国が中国と戦うと宣言したものだ。この基本ルールは、国連の思想でもあるはずである。韓国が、ここから逸れて中朝へ接近することは、米同盟国からの「脱退」と見られても致し方ないであろう。

     


    (3)「バイデン大統領が、「インド太平洋地域に強力な軍事力の配置を維持すると習主席に話した」とし「これは紛争を行うためのものではなく、紛争を防止するための目的」と強調したのは、圧倒的パワーを誇示して中国の軍事崛起を制圧するという対中抑止戦略とみることができる。米国は2021年国防予算に中国の軍事・経済強国化をけん制する目的の「太平洋抑止構想」項目を新設して22億ドル(約2400億円)を配分した。この予算はインド太平洋地域で米軍資産を増やして領域内の同盟関係を増進するために使われる」

     

    米外交の中心舞台は、インド太平洋に置かれることになった。米軍が、アフガニスタンから撤退する理由は、米軍がこれからアジアへ集中配備する結果である。二正面作戦でなく、インド太平洋戦略へ全精力を投入することを鮮明にした。バイデン大統領は、9月11日までに撤退を完了させると表明している。中国との関係が、緊迫化していることを示すものだ。



    (7)「バイデン政府が中国との全面戦争を宣言し、その中心に「同盟協力」を置いたことは韓国の外交的悩みを深くする。特に安保協議体である日米豪印戦略対話(クアッド)をインド太平洋戦略の核心軸として活用するという米国の計画は、それそのものが韓国にとって負担だ。これは結局、韓国政府の選択を強要する結果につながることになるためだ」

     

    米軍が、アフガニスタンから撤退してまでインド太平洋防衛に全力を挙げる中で、韓国がクアッドへの全面的参加を保留すれば、それだけで米韓同盟の位置づけは低下して当然であろう。韓国は、米国が主敵とする中国へ「誼を通じたい」と、二股を掛けることに違和感を感じないとすれば、正常感覚でなくなっている。韓国が、自由主義陣営から疎外されたとしてもやむを得ないであろう。米中の関係は、このように急速に悪化している。





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    韓国文政権は、二股外交にご執心だ。世界の潮流は、それを許さない方向へ動いている。米国は、インド太平洋戦略対話の「クアッド」(日米豪印)で結束を固めて、中国へ対抗姿勢を強めているのだ。クアッドでは、分科会を設けて半導体・バッテリー・レアアース・医薬品の4種目について共同歩調をとる。韓国は、クアッドへの正式参加を明言せず時間稼ぎをしている。この「曖昧戦術」は、サムスンの業績に響くという指摘が出てきた。米国の支援を受けられなくなる恐れがあるのだ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(4月30日付)は、「サムスン、先端半導体で苦戦 TSMCとの差が拡大」と題する記事を掲載した。

     

    韓国サムスン電子が先端半導体でライバルの台湾積体電路製造(TSMC)に差を広げられている。スマートフォンの頭脳となるCPU(中央演算処理装置)などの最先端品の量産で苦戦し、受託生産でのシェアも落としている。最先端品での劣勢は、半導体メモリーやスマホといった他の基幹製品の競争力低下につながりかねない。

     


    (1)「サムスン半導体部門トップの金奇南(キム・ギナム)副会長は3月の株主総会、「先端工程の競争力は遜色ない。大型顧客を確保して格差を縮めていく」と語った。TSMCとの技術格差を問われ、こう強調した。一方、4月29日に発表した2021年1~3月期の半導体部門の売上高は前年同期比8%増の19兆0100億ウォン(約1兆8700億円)だったものの、営業利益は16%減の3兆3700億ウォンだった。減益は1年ぶりだ」

     

    サムスンは、世界的な好況に沸くはずの半導体部門が、2021年1~3月期営業利益で16%減に落込んだ。

     

    (2)「証券会社によると、最大の要因はCPUや通信用半導体の受託生産を手掛ける非メモリー事業の赤字だ。米テキサス州の工場が寒波に伴う停電で2月中旬から稼働停止になった。4~6月期中の正常化を見込むが、停止が長引くことで米クアルコムなど顧客の離反を招くリスクもある。懸念材料は工場停止だけではない。韓国内の最先端品ラインの立ち上げの苦戦もある。複数のサプライヤーによると、回路線幅で最先端の5ナノ(ナノは10億分の1)メートルの歩留まり(良品率)向上が遅延。5ナノの量産開始でTSMCに数カ月遅れ、その後も技術格差は広がっているというのだ」

     

    減益の理由は、受託生産を手掛ける非メモリー事業(システム半導体=先端半導体)の赤字という。回路線幅で最先端の5ナノメートルの歩留まり(良品率)向上が遅延した結果だ。半導体は、歩留まり率が損益に大きく響く。

     


    (3)「半導体の回路は細いほど処理性能が高く、消費電力の抑制にもつながる。電子機器の小型化にも役立つ。量産出遅れの背景には半導体製造装置の「買い負け」がありそうだ。サムスンは同ラインで「EUV(極端紫外線)露光」と呼ぶ新技術を導入。同装置はオランダの製造装置メーカー、ASMLが世界で独占供給しており、5ナノ以下の半導体量産には不可欠だ。ASMLによると出荷実績は計100台ほどで、そのうちTSMCが7割超を確保したとみられる。いち早く装置を確保したTSMCほどには生産技術を蓄積できていないのが現状だ」

     

    サムスンは、新技術「EUV露光」生産の立ち上がりで、生産ノウハウを確立できず、歩留まり率が低いままなのだろう。時間を掛けないと、歩留まり率向上は難しい。中国の半導体企業は、歩留まり率が「万年低飛行」で、オシャカの山をつくっている。

     


    (4)「受託生産事業への投資規模も今後は影響しそうだ。TSMCは4月、半導体不足への対応として、23年までの3年間で1000億ドル(約11兆円)を設備投資に振り向ける計画を明らかにした。サムスンは21年、4兆円規模の投資を予定するものの、DRAMなど半導体メモリー向けが過半を占め、受託専業のTSMCと比べれば投資規模は見劣りする」

     

    TSMCは、米国との関係が密接である。技術的にも申し分なく、設備投資へ積極的に立ち向かい、米国が最も期待しているメーカーである。

     

    (5)「実際に最大手のTSMCの寡占は急速に進む。台湾の調査会社トレンドフォースによると、21年1~3月のTSMCの受託生産の世界シェアは56%と前年同期比2ポイント上昇。2年前からは8ポイントも伸びており、2位のサムスンが同期間でシェアを1ポイント下げたのとは対照的だ」

     

    TSMCの半導体受託生産の世界シェアは56%と過半を占めている。サムスンは、2位ながらシェアを落としている。この両社は、対照的な動きだ。

     

    (6)「政治的な要因も無視できない。米中対立を背景に、対中国で結束する米国と台湾に比べて、韓国政府の立ち位置は米中のはざまで揺れ動く。二股外交を続けることで半導体サプライチェーンから韓国企業が孤立する危険性もある。こうした先端半導体での競争力低下が、サムスンの総合力を脅かす可能性がある。受託生産を手掛ける非メモリー分野の半導体売上高は全体の7%にすぎないものの、CPUやイメージセンサーは自社スマホに搭載されて性能を下支えする。スマホで競合するアップルはTSMCにCPU生産を全量委託しており、TSMCとの技術格差はスマホ性能でのアップルとの格差に発展する」

     

    米国は、防衛面からも台湾への肩入れを急いでいる。TSMCは、台湾を代表する半導体企業である。それだけに、サムスンよりも優遇策を受けられやすい環境にある。逆に、韓国の二股外交がサムスンへ負の影響を与えやすいことも事実だ。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という喩えもあるから注意すべきだろう。

     

    非メモリーのシステム半導体の採算性は極めて高い。メモリー半導体と比較にならないのだ。サムスンの自社スマホへ搭載されるだけに、TSMCから品質面で遅れを取れば、サムスン・スマホの品質に響く。重大問題である。

     

     

     

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