勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年05月

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    韓国政府は、今回の米韓首脳会談が大成功だったと大宣伝している。国内の文大統領の支持率低下に歯止めを掛けようという狙いであることは明らか。その広報ぶりが凄いのだ。

     

    文大統領が帰国した24日午後、鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官がKBS(韓国放送公社)のメインニュースに出演したのを皮切りに、25日午前にはイ・ホスン政策室長がラジオ番組に出演し、会談の成果をアピールした。26日に文大統領が与野党5党代表を招待し、自ら会談の成果を説明した。

     

    韓国はこれだけPRをしているものの、米国に約束したことはウソか誠か、必ず問われる局面がくる。それは、台湾有事である。その際、韓国は米国側について支援するのかどうか。今から、その動向が注目される。

     


    『中央日報』(5月27日付)は、「米中対決『台湾海峡』に踏み込んだ 韓国政府、どっちつかずでは外交惨事に」と題する記事を掲載した。

     

    先月2日、鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官は、中国の王毅外交部長との会談のために、中国福建省厦門に行った。台湾をめぐり、米中の激しい神経戦が繰り広げられる中、米国を刺激しかねない行動だという懸念が出ていた。

    (1)「それからわずか1カ月余り経った21日(現地時間)、韓米首脳会談の共同声明には台湾海峡と南シナ海問題を記載し、台湾問題に関して米国の方に歩み寄る姿勢を示した。韓国政府は過去にも「両岸関係の発展を支持する」という原則的立場は何度も示したが、「台湾」に関するメッセージを出したことはほとんどない。これより前に、2014年に朴槿恵(パク・クネ)政府当時、韓中首脳会談の共同声明に「台湾は中国の領土という中国の立場に十分な理解と尊重を示す」とし、中国政府の「1つの中国」の原則を再確認した程度がすべてだ」

     

    韓国外交部長官は4月2日、中国福建省で中国外相と会談した。それから約50日後の米韓首脳会談で、韓国は米国寄りの姿勢を見せたのだ。中国にしてみれば、裏切られたという感じを持ったとしても不思議はない。それだけに、今回の米国寄り姿勢がいつ、中国寄りにならないかと疑念が持たれるのだ。韓国は、日本のように旗幟鮮明でない国である。

     

    (2)「韓米首脳会談の「台湾海峡」をめぐり余震が続いている。米国が会談終盤まで共同声明に必ず入れるように主張したのに対し、中国は共同声明について「火遊び」で「内政干渉」だと敏感に反応している。このような台湾海峡問題に文在寅(ムン・ジェイン)政府が踏み込んだだけに、今後どっちつかずの態度を見せた場合、外交的惨事につながりかねないという提言が出ている」

    韓国は、いずれ本音を試される時がくる。それは、台湾有事である。米韓同盟を結ぶ韓国としては、逃げ隠れできない事態だ。どうするか。そのときの政権が保守派であれば、有言実行だろうが、進歩派政権であれば様子が変わる。洞が峠で様子見という、最悪事態に陥るだろう。

     

    (3)「米国は、台湾海域を独占してはならず、誰もが自由に航行することができなければならないと主張している。これにより、自国の艦艇を台湾海峡に送り、海域を通過する「航行の自由」作戦を展開し、昨年だけで12度、バイデン政権が発足したことしに入ってからも、5回行われた。トランプ政権時代から月1回の割合で増えたことになる」

     

    バイデン政権の台湾防衛姿勢は、トランプ政権時よりもさらに明確になっている。月1回の割合で、「航行の自由」作戦を展開しているのだ。



    (4)「外交界では、バイデン政権になって中国の台湾侵攻の可能性が比重を置いて検討されているという話が出ている。中国の台湾侵攻説は最近始まったことではないが、米シンクタンクなどで、実際に米国が中国の侵攻から台湾を守りきることができるか検討する「ウォーゲーム」なども持続的に行われている。ことし3月、米インド太平洋司令官の聴聞会でも、中国が予想よりも早く台湾を侵攻する能力を備え、6年以内に実際に行動に出る可能性が提起された」

    バイデン政権では、中国の台湾侵攻時期が早まっているとの見方が増えている。その背景は明らかでないが、習近平氏の焦りであろう。侵攻時期を先へずらすほど、中国の経済力が低下するのを恐れているに違いない。ただ、米国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官を務めるカート・キャンベル氏によれば、習氏が経済について無関心という説もある。となると、政治的に焦って台湾侵攻を早める公算が一層強まる。米軍部には、「5年後の侵攻説」が強い。



    (5)「台湾海峡をめぐる緊張が米中ともに国内の政治的目的に応じたジェスチャーで終わるという見方もある。また、台湾が世界最大の半導体ファウンドリー(受託生産)メーカーのTSMCを保有しているだけに、どちらも容易に台湾を刺激することができないという分析だ。エコノミストは1日付の記事で、「TSMCは米中の双方にとって必要不可欠な存在」とし、中国が台湾に侵攻した場合、世界の半導体市場に及ぼす影響を指摘した」

     

    この場合は、習氏が早期の引退を覚悟するときだけだ。習氏が、台湾解放を政治的レガシーにしないと決断すれば、台湾海峡は波静かであろう。

     


    (6)「牙山(アサン)政策研究所のジェームズ・キム専任研究委員は、「米国が韓日に対する対中拡張抑止力提供を強化するなど同盟中心の安全保障協力に集中する中、韓国がここから離脱する動きを見せてはならない」とし、「今回の韓米首脳会談の共同声明が長く具体的だったのは、それだけ米国としては韓国の次期政府などでも一貫性のある姿勢を見せることを望むと言うサイン」と分析した」

    韓国が、軍事面で日米同盟の路線と異なる「親中国」から抜け出せないとすれば、それは自殺行為となる。韓国は、日米からいつも監視される立場に置かれるだろう。

     

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    韓国、「老練」バイデン外交の掌中にはまったコリア、約束違えば「厳罰受ける」

     

    ムシトリナデシコ
       

    日韓でまた紛争の火種が生じた。韓国政府が、東京五輪のホームページに竹島が描かれていることに抗議して削除を求めている問題である。日本政府がこれを拒否したことから、韓国の前首相が「東京五輪不参加も」と発言した。騒ぎは、大きくなりそうである。

     

    事態の推移はこうである。

     

    『中央日報』(5月26日付)は、「日本、東京オリンピックの日本地図から『独島表示』削除を再度拒否」と題する記事を掲載した。

     

    日本が東京オリンピック(五輪)のホームページに独島(ドクト、日本名・竹島)を日本の領土のように表示した地図を修正できないという立場を韓国政府に再度明らかにした。



    (1)「5月25日、外交筋によると、外交部は独島を日本の領土のように表示した東京五輪の地図を直ちに是正することを前日駐韓日本大使館に求めた。しかし、日本政府は要求を受け入れられないという既存の立場を繰り返した。駐韓日本大使館高位関係者は「竹島に対する日本政府の立場に変わりがない」として「地図の是正要求は受け入れられない」とした。外交部当局者は「独島は歴史的・地理的・国際法的に明白なわが固有の領土として、日本側が東京五輪のホームページ上に独島を日本の領土のように表示したのは決して受け入れられない」と明らかにした。同時に、「韓国政府は2021年東京五輪の開催を控えて関連状況を注目しながら、文化体育観光部、大韓体育会など関連機関との協議を通じて積極的に対応していく予定」と説明した」

     


    竹島が、日本領土であることは米国も認めている問題である。韓国の李承晩大統領が、戦後の混乱時を利用して日本海で「李承晩ライン」を引き、韓国領海と宣言したのがことの始まりである。このラインの中に竹島があったので以後、竹島は韓国領内に組入れられたのが真実である。

     

    隠岐の島へ旅行すれば分かるが、竹島は戦前から日本領として地元漁民の好漁場であった。ここでの漁は、皇室に献上されるのが習わしとして続けられていたという。韓国が、自らの劣等感を吹き飛ばす材料に「韓国領」として取り上げてきたものだ。

     

    (2)「日本はこれに先立って、東京五輪のホームページ内で聖火リレーのコースを紹介する全国地図で島根県の上段の独島の位置に該当する所に小さな点をつけて独島がまるで日本の領土のように表示した。これを受け、韓国政府は2019年7月、日本側に抗議して削除を求めたが、日本側は不可だという立場を維持してきた。その後、東京オリンピック組織委員会が地図のデザインを変えて肉眼で見ると独島が見えなくなったが、画像を拡大すれば依然としてその位置に小さな点がある

     

    日本側の措置は下線のように、韓国との間で穏便にことを運ぼうとする一種の妥協をしたが、韓国はそれすら拒否した。ならば、日本はこれ以上の妥協を拒否するのは当然である。韓国が、図に乗ってきたと言うほかない。

     


    『中央日報』(5月27日付)は、「韓国前首相、『日本、地図から独島を削除しなければ東京オリンピックへの不参加も考慮』」と題する記事を掲載した。

     

    丁世均(チョン・セギュン)前首相は26日、日本政府が東京オリンピック(五輪)のホームページに独島(ドクト、日本名・竹島)を日本の領土のように表示したことに対して「五輪の地図に表記した独島を削除せよ」とし、「日本が最後まで拒否すれば、『五輪不参加』などの手段を総動員すべきだ」と述べた。

     

    (3)「丁前首相はこの日、フェイスブックに「日本政府は五輪の地図に表記した独島を削除せよ。独島は不可逆的な大韓民国の領土」と書いた。また、「独島はわが領土だ。ただのわが領土でなく、40年間の痛恨の歴史がはっきりと刻まれている歴史の土地だ。独島は日本の韓半島(朝鮮半島)侵奪の過程で一番初めて併呑されたわが領土だ」という故盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の過去の演説内容を紹介した」

     

    丁前首相は、次期大統領選に立候補する意向である。それだけに「東京五輪不参加」をこれから声高に訴えるであろう。韓国が政治問題化させても、日本はこれ以上の妥協をできないはずだ。最悪の場合、韓国が「東京五輪不参加」を決めることになろう。それがもたらす不利益は、全て韓国が負うことになる。

     


    (4)「外交部は前日、駐韓日本大使館に東京五輪の地図を直ちに是正することを再度求めた。しかし、日本政府は、要求を受け入れられないというかつての立場を繰り返した。外交部当局者は、「独島は歴史的・地理的・国際法的に明白なわが固有の領土として、日本側が東京五輪のホームページ上に独島を日本の領土のように表示したのは決して受け入れられない」と明らかにした。同時に、「政府は2021年東京五輪の開催を控えて関連状況を注目しながら、文化体育観光部、大韓体育会など関連機関と協議を通じて積極的に対応していく」とした」

     

    領土問題は妥協できない以上、韓国が東京五輪参加の決定権を握っている。ご自由に決めていただくほかないだろう。

    ムシトリナデシコ
       


    韓国は、5月21日を境に「脱中国」で米国寄りの姿勢になったが、本心かどうかに関心が集まっている。ワクチン欲しさに「一芝居」打ったのでないかという疑惑がつきまとっている。

     

    文大統領が26日、青瓦台(大統領府)で開いた与野党5党の代表との会合で、「(先週の)韓米首脳会談の結果を巡り、中国と意思疎通している」と述べたのである。青瓦台の朴ギョン美(パク・ギョンミ)報道官が会見で伝えたもの。これは、疑惑を呼ぶ話である。なぜ、中国へ一々「報告」するのか、という疑問が消えないのだ。

     


    『大紀元』(5月26日付)は、「
    韓国、米寄りの政策に切り替わるか 米韓共同声明に台湾問題、FOIPを明記」と題する記事を掲載した。

     

    21日に開かれた米韓首脳会談は、バイデン米大統領就任後、2人目となる面会式の外国首脳との会談となった。各国マスコミでは米中覇権争いが加熱している中、任期末に入った文在寅政権の対外政策は、従来の親中路線から脱却し、米寄りに切り替わる契機になるとの見方がある。

     

    (1)「対中政策については、台湾問題に触れ、米国が進める中国企業排除の無線通信ネットワーク構築協力が盛り込まれた。対北朝鮮政策では、既存合意の実施で一致した。今回の米韓共同声明では2018年に締結した「板門店・シンガポール合意」のもと、朝鮮半島の非核化と平和定着を推進していくと明記している」

     

    北朝鮮問題については、米国が韓国の要望をかなり聞き入れる形になった。ただ、最終的には国連安保理の決議による北朝鮮の核放棄である。したがって、韓国の主張する「朝鮮半島非核化」と、日本の主張する「北朝鮮非核化」も表現上の違いに過ぎない。

     


    (2)「米側にとって、両合意はトランプ政権が成立させたものだ。バイデン米大統領は「シンガポール合意が北朝鮮に有利になっている」と否定的な見解を示してきた。トランプ政権は当時、熾烈さを増す米中競争のなか、韓国を米側に引き寄せるために、北朝鮮の非核化および関係改善のなかで、親北である文政権の要求を受け入れたとの解釈がある。バイデン大統領は首脳会談後の記者会見で、シンガポール会談で米国側の実務協議代表団を率いた元国務次官補代行のソン・キム氏を対北朝鮮政策特別大使に任命したと発表した。このため、文在寅政権はキム米大使を通じて、米側の姿勢を反映した対北朝鮮政策に積極的になるとみられている」

     

    バイデン政権は、北朝鮮問題ではトランプ政権の路線を引継ぐことになった。これは、韓国を「脱中国」で米国側へ引き寄せる材料に使ったと見られている。北朝鮮の非核化目標は変わっていないので、韓国へ譲歩しても害はないという判断である。

     

    (3)「今回の米韓共同声明は初めて「台湾海峡における平和と安定維持の重要性」を明記し、包容的かつ自由で開かれたインド太平洋地域(FOIP)の維持について記した。台湾問題は「一つの中国」原則を主張する、中国共産党の最も敏感な事案だ。今年4月の日米首脳会談における共同声明でも、香港と新疆ウイグル自治区の人権弾圧や、台湾への圧力などを明示的に取り上げた。中国は「内政干渉」と強く反発した」

     

    韓国が、「台湾」と「クアッドの必要性」の認識を共有すると明記したことは今後、逃げも隠れもできない証拠となろう。韓国は、これに反した行動を取るわけにいかなくなった。それにも関わらず、文大統領は「韓米首脳会談の結果を巡り、中国と意思疎通している」と発言している。米国の信頼を欠く発言である。

     


    (4)「インド太平洋地域に関する記述も、海洋覇権を狙う中国を牽制するものとみられる。さらに、米韓は技術分野での協力強化も約束し、5G6Gなど無線通信ネットワーク構造開発協力、オープン・ラン技術、半導体およびEV電池分野でも協力することで合意した。特にオープン・ランは、華為技術による中国5Gが世界市場で優位に立つなか、米国が確率したい技術と考えられている」

     

    このパラグラフは、重要である。韓国が、中国へ擦り寄って技術を教えるような背信行為は不可能になった。ただ、韓国は100%信頼できぬ相手だけに、日米は監視する必要があろう。

     

    (5)「米ヘリテージ財団のブルース・クリングナー先任研究員は今回を機に、米韓が共同価値を目標にし、合意に至った議題が多かった点を肯定的に評価した。いっぽう、対北朝鮮政策と地域安保問題では政策的な意見の食い違いを指摘。「文大統領は中国に対する立場で、菅義偉首相が日米首脳会談で設定した高い基準には及ばなかった」と述べた。米ランド研究所のブルース・ベネット先任研究員は、中国をめぐる諸問題が米韓共同声明に記されたことについて、「韓国は確かに中国から遠ざかり、米国側に傾いている」と分析した」

     

    韓国が、本心で中国と離別する気持ちになったのかどうか。少し、様子を見る必要があろう。その「リトマス試験紙」は、中国の戦狼外交官の発言である。日本を非難して韓国に甘ければ、中韓は地下で繋がっていると見るほかない。

     

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    米国へ先端部門投資の韓国

    中国のAI「張り子の虎」

    御用学者が政府見通し翻弄

    難問山積で解法ない習近平

     

    中国は、4月の日米首脳会談と5月の米韓首脳会談の動きをじっと観察してきたであろう。日韓が、米国とどのような合意に達するかを見極めたかったからだ。その結果は、最悪の事態になったと見られる。日本は、反中姿勢を明確にした。韓国は日本ほどでないが、「米国寄り」を明らかにしたのである。

     

    日韓ともに米国と同盟を結んでいる限り、米国の利益に反する結論も出るはずがなかった。米中対立の激化が、日韓の姿勢にそれぞれ現れたと見るべきであろう。こうして、米国の思惑通りに日米韓三ヶ国が、串刺しになって中国と対峙する形になったのでる。中国にとっては今後、大きな外交的負担になるであろう。

     

    それだけでない。日米韓三ヶ国が、サプライチェーンを形成することになって、中国に大きな痛手になろう。戦略物資である半導体・バッテリー・レアアース・医薬品などの分野で協調体制を確立するからだ。特に、半導体は中国にとって喉から手が出るほど欲しい技術である。それが、日米韓三ヶ国でそれぞれの「得意技」を持ち寄ってさらに高みを目指すのだ。

     


    米国へ先端部門投資の韓国

    半導体について言えば、米国の技術、日本の素材、韓国の生産という三者が組み合って、世界最強の半導体グループが出来上がる。これは、中国にとって垂涎の的であるはずである。中国が米国へ向かって、世界覇権の奪還などと言ったことの副作用である。「キジも鳴かずば打たれない」の諺通りの展開だ。習近平氏が、功を焦って言った言葉は、中国の命運を決めるほどの事態を招いている。全ての責任は習氏にある。

     

    韓国は、米韓首脳会談で次のような米国での設備投資計画を表明した。

     

    1)サムスン電子が半導体で170億ドル

    2)現代自動車がEV生産や研究開発に74億ドル

    3)SKグループがフォードと合弁で車載用電池の生産に着手

    4)LGグループがGMと合弁で車載用電池工場を2カ所建設

    これらの合計が400億ドルに達するという。これによって、米国の半導体とバッテリー部門の投資増加で米国が潤う計算である。

     


    バイデン米大統領は、米韓合同記者会見の席上で、前記4社の名前を読み上げた後、それぞれの代表に起立を求めて拍手し、謝意を表わした。米国にとっては、400億ドルもの設備投資が行なわれ、新規雇用を生み出すほかに、サプライチェーン確保という戦略的意味を持っている。「一石何鳥」もの利益を得たのだ。米国が、半導体技術生みの親という特典であろう。

     

    米国は、中国の技術基盤が脆弱である点を徹底的に突く姿勢である。中国の生産が成り立っているのは、他国の技術を窃取したりしている違法性によるものだ。この弱点を突けば、中国産業は大きく傾く運命にある。米国が、戦前の日本に対してABCDラインで経済封鎖したように、「敵の弱点」を突くことで天才である。海洋国家特有の発想法と言える。中国は、これに気づかすに「お山の大将」を決め込んできた。この発想法の違いが、米中の間に大きな差をもたらすはずである。中国の衰亡だ。その現象は、人口動態面でも始まっている。

     

    中国のAI「張り子の虎」

    中国は、AI(人工知能)開発に総力を挙げている。新分野だけに、米中の開発ではどのような状況か。極めて興味深い結果が出てきた。韓国科学技術院(KAIST)革新戦略政策研究センターの分析では、次のような内容である。

     


    1)世界AI特許の92%(14万7000件余り)が、2010~2019年に登録されて最近AI技術は急速に進歩している。

     

    2)中国が9万1236件で最も多くの特許を保有し、米国(2万4708件)・日本(6754件)がこれに続いている。

     

    3)特許被引用水準と海外出捐の有無、特許有効期間などを基準として特許影響力指数を算出した。各国のAI特許のうち、影響力が上位10%の特許の比率を選び出し、これを基準として各国のAIの質的水準を評価する。

     

    4)米国保有AI発明特許が、上位10%の中で43%を占めて圧倒的な影響力を持つ。

     

    5)中国保有AI発明特許が、上位10%の中で5%しか占めず質の低さを露呈した。中国保有特許のうち96%が自国特許という内向きが原因である。

     


    前記5項目の内容を要約すると、中国のAI特許件数は、飛び抜けて多く世界一だが、質的な内容は極めて劣位にあることだ。中国では、特許を申請すると補助金が支給される。この補助金欲しさの特許申請が明白である。現に、国内特許が96%という高比率であり、世界市場での有効性を競えないのだ。特許内容に自信がない証拠である。

     

    AIについてさえこういう状況である。他の技術分野についても大方の予想がつく。補助金目当ての研究や設備投資が山をなしているのだ。中国では、市場競争に耐えられる技術の開発は絶望的である。だから、他国で実績の出ている技術を窃取するほかない。この「独り立ち」できない技術脆弱国が、中国の偽らざる姿である。

    (つづく)

     

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    習近平氏は、国内の政敵をことごとく追放して無敵の状態である。だが、海外では逆風が吹きまくっている。米国にバイデン政権が登場以来、西側諸国は対中の同盟意識を取り戻してきたからだ。中国が、米欧対立の隙間を突いて暗躍できる余地がなくなった。

     

    アジアでは、クアッド(日米豪印)四ヶ国が結束して中国に対応する姿勢を明白にしている。韓国までがクアッドの準会員になって、半導体・バッテリー部門でサプライチェーンの一角を担う姿勢を明確にした。こう見ると、中国はロシアとイラン・北朝鮮を除けば、親しい国がないという絶望的な事態を迎えることになりそうだ。

     


    『日本経済新聞 電子版』(5月26日付)は、「中国を遠巻き環視する米欧、『新常態』に動けぬ習近平氏」と題する記事を掲載した。筆者は、同紙の
    中沢克二編集委員である。

     

    欧州議会が欧州連合(EU)と中国の投資協定の批准に向けた審議の停止を決めた。中国が受けた衝撃は大きい。共産党創設100年という習近平(シー・ジンピン)時代になって最も重要なイベント(71日)まで1カ月余りしかないからである。「米国に続いてEUともうまくいかない。(周りが全て敵になる)四面楚歌(そか)をどうにかしないと100周年の喜びも半減する」。共産党関係者からこんな声が出るほど中国からみた国際情勢は厳しい。

     

    (1)「対米関係に悩む中国は2020年末、EUと投資協定の締結で大筋合意した際、「経済面の利益以上に大きな戦略的な意味を持つ国際政治上の大勝利だ」と大々的に宣伝した。ギクシャクしていた米国とEUの関係を利用し、米欧間に横たわる大西洋に楔(くさび)を打ち込む計略は成功したかに見えた。ところが投資協定の批准には欧州議会の同意が必要で、早期の発効は難しくなった。7年もの交渉の末にようやくこぎ着けた戦略的な大勝利が一転、暗礁に乗り上げた」

     

    中国は、ドイツとフランスとの関係を上手く維持できれば、EUとの関係が円滑にいくと見ていた節がある。それゆえ、「小国」を侮辱する発言が見られた。こういう外交上のミスによって、「反中国」の勢いを増している。

     


    (2)「中国は直前まで最後の努力をした。首相の李克強(リー・クォーチャン)が、イタリア首相のドラギと電話で協議し、EUとの投資協定の早期調印・発効を促した。イタリアは10月末に開く20カ国・地域(G20)首脳会議の主催国で、中国主導の広域経済圏構想「一帯一路」にも主要国(G7)で唯一、正式に参画する「親中」の国でもある。中国はイタリアG20までには欧州議会での審議が進むとみていた」

     

    中国・EUの包括投資協定は、昨年末にドイツのメルケル首相がEU議長国の権限を生かして署名に持込んだ曰く付きの協定である。EU内の「小国」は、中国の横暴に反発しており、中国企業のEU進出に否定的姿勢を強めている。新疆ウイグル自治区の人権弾圧が、格好の「反中」で結束させている。中国は、こういうEUの底流の流れを無視して今、苦杯をなめている。

     


    (3)「追い打ちをかけたのが、バルト3国の一つであるリトアニアの動きだ。リトアニア外相のランズベルギスはこのほど、中国と中・東欧諸国の協力の枠組みである「17プラス1」からの離脱を明らかにした。
    「17プラス1」は中国がバルカン半島や中・東欧地域の国々に影響力を行使するのに重要な枠組みで、「一帯一路」と補完関係にある。2月にオンラインで開いた「17プラス1」首脳会議で中国は、李克強に代えて初めて習近平が自ら出席するなど、この会議を一段と重視していた。「17プラス1」の構成国の一部はEUに加盟する。このため経済力に勝る中国が「17プラス1」を利用してEU内の動きに介入する狙いがある、という見方も出ていた。ところが、この枠組み自体に綻びが出てしまった」

     

    リトアニアは、チェコに続く「反中」である。チェコ上院議長が昨年8月、台湾を訪問した際、中国は口汚くチェコを罵った。これが、皮肉にもEUでの「反中派」を増やす結果になった。リトアニアは今年、台湾に通商代表事務所を開設する方針を明らかにした。経済イノベーション省の報道官はロイターに、台湾事務所開設はアジアでの経済外交強化が狙いと述べたもの。『ロイター』(3月3日付)が報じた。

     


    (4)「リトアニアは人口300万人弱の小国だが、EUと中国の応酬で意外に大きな役割を果たしている。3月、中国はEUの対中制裁に報復するため、リトアニアの議会議員を含むEU側10人と組織を対象に、中国本土や香港への立ち入り禁止といった制裁を発動した。これが裏目に出る。投資協定の批准に向けた審議を凍結する欧州議会の決定は、中国によるリトアニアの議員も対象にした対EU報復措置が解除されない限り覆らない。リトアニアは先に台湾へ貿易代表所を置く方針を打ち出し、議会が中国によるウイグル族の弾圧を「ジェノサイド」と認定する決議を可決した。」

     

    人口300万人のリトアニアが、14億人の中国へ堂々と立ち向かっている。正論を掲げて対抗する姿勢は、韓国に学ばせたいほどである。

     


    (5)「米バイデン政権と対峙する中国の習近平が、安全保障上もロシア大統領のプーチンに接近するなら、中国を通じてリトアニアの動きがロシアに筒抜けになりかねない。サイバー空間での目に見えない攻防が激しい今、情報戦への対処は国の命運を左右する。危うさを察知したリトアニアは本能的に中国の影響下から脱しようと動き始めた。そんな解釈が可能だ。この動きはエストニアやラトビア、そして他の「17プラス1」の構成国にもなんらかの影響を与えるかもしれない」

     

    中国は、米国との対抗上、ロシアへ接近している。このロシア(旧ソ連)は、かつてリトアニア・エストニアなどを冷戦下に占領して人権弾圧した張本人である。こうして、中国の裏にはロシアがいるという警戒感を強め、「反中」意識を強めている、と指摘している。

     

    こう見ると、中国はロシアとワンセットでEUから敬遠される要因を持っている。中国が、米国と対決すれば自動的にEUとも疎遠になるという構図が描けるのだ。

     

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