勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年06月

    a0960_008417_m
       

    韓国の反日不買運動は、2019年7月1日から始まった。あれから間もなく満2年になる。文政権は、「NO JAPAN」の幟を立てて反日不買運動を展開した。これにより、最大の影響を受けたのは耐久・非耐久の消費財関連であった。

     

    韓国は、輸入先の多角化目標を掲げて、素材・部品分野の日本への依存度を下げる努力をした。一部の素材・装備(装置や設備)の国産化に成功するなどの成果も出ているが、中核素材・部品の場合、依然として日本の影響力が大きいことに変わりない。日本を排除せずに供給網の安定化に向け、競争力を備える努力が必要だとの指摘が出ているという。この平凡な結論が出るのに2年もかかったのだ。

     


    『聯合ニュース』(6月27日付)は、「韓国の対日貿易赤字が再び拡大 対日輸入増加・不買運動下火で」と題する記事を掲載した。

     

    日本が対韓輸出規制を強化した2019年7月以降、急減していた韓国の対日貿易赤字が再び拡大している。韓国の輸出の好調に伴って日本からの素材・部品輸入が増加する一方で、輸出規制強化に反発して始まった日本製品の不買運動が下火になったことが影響した。

    (1)「韓国貿易協会と関税庁が27日までに発表した資料によると、今年1~5月の韓国の対日貿易赤字は前年同期比35%増の100億ドル(約1兆1100億円)だった。同期間の対日輸出額(同6.6%増の117億ドル)を輸入額(同17.8%増の217億ドル)が大きく上回った。このペースが続くと、今年の年間の対日貿易赤字は不買運動が始まる前の水準に戻る見通しだ。04年以降、年間200億~300億ドルだった韓国の対日貿易赤字額は19年に過去最低の192億ドルとなったが、昨年は209億ドルに増えた」

     

    今年1~5月で、韓国の対日貿易赤字は約100億ドルになった。前年同期比35%増である。この調子だと、今年の対日貿易赤字は約240億ドルに膨れ上がる。04年以降、年間200億~300億ドルだった赤字ゾーンへ逆戻りする。19年に過去最低の192億ドル、昨年は209億ドルとなった。今年は240億ドル予想である。

     

    (2)「これは半導体を中心とした韓国の輸出好調に伴い、日本から電子・機械部品などの素材・部品輸入が増えたことが大きい。今年1~5月の日本からの中間財輸入額は14.8%増の137億ドルで、日本からの輸入額全体の半分以上を占めた。韓国産業研究院のムン・ジョンチョル研究委員は、「日本の輸出規制以降、韓国も素材・部品の調達先を多角化してきたが、先端技術が必要な部品は依然として日本に依存している」と指摘する。韓国政府は素材・部品・装備(装置や設備)産業の育成に力を入れるが、その効果が出るには10年以上かかるとの見方を示した」

     

    韓国の輸出好調に伴い、日本から電子・機械部品などの素材・部品輸入が増えている。これが、韓国の対日貿易赤字を増やしている理由である。韓国も輸出が増えているのだからやむを得ないことだ。韓国の加工型貿易構造のもたらした当然の結果である。韓国政府は、韓国の国産化は10年以上掛かると「負け惜しみ」を言っているが、日本もその間に技術進歩している。韓国に追いつかれる懸念は少ない。

     


    (3)「日本の輸出規制強化を受けて、韓国では日本製品の不買運動が広がった。特に標的となった日本車は韓国での市場シェアが18年の17.8%から急激に縮小し、今年は6.3%まで低下した。日産自動車は20年に韓国から撤退した。日本製ビールの輸入額は19年に前年比49.2%減、昨年は同85.7%減と激減した。ファーストリテイリングの「ユニクロ」は世界で2番目に大きい旗艦店だったソウルの明洞中央店をはじめ、今年上半期に18店舗が閉店した」

     

    韓国はTPP(環太平洋経済連携協定)への加入意思を固めたが、実際は準備ができるまでに数年かかる見通しという。韓国がTPPへ加入すれば、不買運動は無意味になる。反日で騒ぐのもあと数年の間かも知れない。

     

    (4)「このところ不買運動は、下火になっているもようだ。韓国輸入自動車協会によると、同期間の日本車販売台数は7702台で、同5.4%増加。5月の販売台数は2035台で前年同月比21.7%増加した。日本製ビールも今年1~5月の輸入額は300万ドルで、同21.2%増加した。産業研究院のムン研究委員は「日本製品への拒否感が薄れ、消費財の輸入も元通りに回復するだろう」と予想した上で、「不買運動のようなイベント的な対策よりも、韓国経済の体質を転換する根本的な対策を進めることが重要だ」と提言した」

     

    自動車やビールは過去2年間で大きく落込んだが、その傷も薄れてゆくと指摘している。下線部分は、言うは易く行なうは難しである。韓国経済の規模で、中間素材から一貫生産することは不可能である。国際分業の原点を忘れた議論をしている。

    a0001_000268_m
       

    「Xファイル」の存在臭わす

    作り話を蒔いた与党代表の罪

    ユン氏と対立した元法務長官

    「86世代」は引退の時期へ

     

    韓国は、とても近代化した社会とは言いがたい。噂が、大手を振って歩く社会であるからだ。この最も醜い姿が、来年3月の大統領選を前にしてすでに始まっている。与野党の正式な候補者は、それぞれの党大会(9~11月)で決定される。この前哨戦が、アングラ情報を使って始まっているのだ。陰湿である。ブレーキが利かない社会である。

     

    与党「共に民主党」からは、2人の首相経験者や現職知事、それに前法務部長官らが名乗り上げている。最大野党「国民の力」は、有力候補者がいないとされている。そこで、前検察総長の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏を担ぎ出す動きが強まっている。

     


    与党は、ユン氏が「国民の力」から立候補すれば、これまでの文政権とユン氏の衝突経緯もあって、「最強の対立候補」へ踊り出ることが確実だ。それだけに、ユン氏が正式に立候補しない前から、人身攻撃を始める醜い姿をさらしている。これも宗族社会の名残を見せている結果であろう。対立する宗族の悪口を言いふらす構図なのだ。反日騒動も、この延長でありやりきれなさを感じる。

     

    朝鮮は開国するまで完全な「未開地域」であった。開国は、1876年2月の日朝修好条規によって世界と繋がった。それまでは、中国の属国的扱いであり、まさに「隠者の王国」であった。外国との交渉を極端に嫌う閉鎖主義を取り、その扉を開けたのが日本である。その憎悪が、いまも日本に向けられていると考えられる。

     


    「Xファイル」の存在臭わす

    こういう閉鎖社会では、根拠のない悪い噂が、相手を倒す手段として有力武器になる。この状況は、今も続いていると見てよいだろう。与党は、今年4月の二大市長選(ソウル・釜山)で、この「紙爆弾」を大量に使ったが、効果はゼロで大敗した。与党は、これに懲りず大統領選でも悪い噂話を広めようとしている。察するに相当、形勢が不利な証拠と言える。

     

    ユン氏に関する悪い噂は、「Xファイル」と呼ばれている。ことの発端は、与党「共に民主党」の宋永吉(ソン・ヨンギル)代表が5月25日、「前検察総長の尹錫悦に関する多くの事件に関するファイルを一つずつ準備している」と述べたことで始まった。その後政界には、ユン氏とユン氏の家族に関する出処不明の文書、およびチラシ(情報紙)が出回った。

     

    オンラインで広がっている出処不明の「尹錫悦Xファイル」の一つは、与党支持者のユーチューブ代表の製作と確認された。Xファイルの一つの出処が確認されたのは初めてだ。『中央日報』(6月27日付)が報じた。

    ユーチューブチャンネル「開かれた共感TV」は23日午後、「ファイルは1年間に取材した内容を根拠に作成した」とし、「政治的な陰湿な攻撃を目的に作ったのではない」と主張した。共感TVの関係者は「特定人に非公開をお願いして伝えたことがある。1、2人ずつ共有し、記者らの団体チャットルームで共有されたようだ」と話した。6枚の文書は目次があり、全体の分量は約300ページにのぼる。ユン氏の成長過程、妻と妻の母をめぐる各種疑惑が整理されている、という。



    作り話を蒔いた与党代表の罪

    「Xファイル」の存在を臭わせた火元の「共に民主党」宋代表は、インタビューで「Xファイルを作ったのか」という質問に対し、「いや、Xファイルはない」と答えている。明らかに、作り話をしてユン氏の大統領選出馬の妨害を意図したのであろう。


    警察は、ユン氏の妻の母チェ氏の詐欺疑惑などに対する再捜査において、「嫌疑なし」との判断を明らかにした。この件は、農地法違反とされたものだが、その疑いが晴れた。しかも二度も捜査されるという念入りなものだった。文大統領の場合は、明らかに農地法違反を犯している。大統領退任後の住居新築に当たり農地取得後に、宅地へ名目変更したからだ。こちらは、何らの捜査も行なわれていないのだ。

     

    要するに、「Xファイル」なるものは、うそ偽りの話をデッチ上げたものである。だが、執拗な動きがなお続いている。

     

    ユン氏の夫人キム・コンヒ氏と夫人の母チェ氏に関する噂は、すでにインターネットで広まっている状況だ。特に与党支持者のインターネットユーザーは、ユーチューブやオンラインコミュニティーなどで無差別的な疑惑提起をしている。キム氏とチェ氏をめぐる疑惑を提起する一部の映像では、情報解説者らが「正確な事実は分からない。事実を解明するには告訴すべき」という主張をしているほど。証拠もないままに、ウソ情報をまき散らしていることになる。

     

    ユン氏側は、5~10人規模でネガティブ対応チームの構成を準備しているという。ユン氏に対する韓国法務部の懲戒訴訟と妻の母に関連した訴訟の代理人ソン・ギョンシク弁護士が主軸になるとみられる。さらに、複数の検察特捜部出身の弁護士が合流する予定という。黒い噂には、徹底的に立ち向かう姿勢を見せている。(つづく)

     

     

    a0001_002230_m
       


    日本の対GDP防衛費は、桁外れに低いことが明らかになった。各国の2019年度の国防費を比べると、日本はGDP比で0.%である。米国は3.05%、ロシアは2.75%、韓国は2.44%、中国は1.25%(公表値のみ)になる。中国の海外進出が盛んな現在、余りにも心許ない状況である。

     

    この結果、防衛予算の対GDP比は世界125位であり、G7の最下位だ。日本の少なさが際立つのだ。米軍におんぶに抱っこを続け、必要な投資を怠ってきたと指摘されるほどである。だが、日本が防衛費を増やせば、必ず「イチャモン」をつけるのは韓国である。すでに韓国進歩派は、日本を「極右国家」とレッテルを貼っているだけに、ここぞとばかり騒ぎ立てるであろう。

     

    『日本経済新聞』(6月27日付)は、「中期防の前倒し改定、自民が公約に衆院選にらみ検討 中国抑止へ防衛費増」と題する記事を掲載した。

     

    自民党は秋までにある衆院選の公約で、5年ごとの中期防衛力整備計画(中期防)の改定を明記する検討に入った。軍事力を強化する中国を抑止するため防衛装備品などの購入に充てる防衛費を増やす狙いがある。中期防の前提になる国家安全保障戦略や防衛大綱の見直しも視野に入れる。

     

    (1)「中期防は5年ごとの防衛費の見積もりや必要な装備品の数量を定める。おおむね10年間の防衛力の目標水準を示す防衛大綱の裏付けとなる経費を示す内容になる。今の計画は2018年末につくり、19~23年度の防衛費を27兆4700億円程度と定めた。通常なら次の改定は23年末になるが、策定から3年後に国際情勢などを踏まえ再検討できると定める。21年は現行の中期防の3年目にあたり、自民党内で「防衛費を増やすため前倒しすべきだ」との声が広がる。菅義偉首相は4月にバイデン米大統領と会談し、共同声明で「日本の防衛力強化の決意」を確認した。中国が「核心的利益」と位置づける台湾に武力侵攻するのではないかと日米は警戒する」

     


    米国は、NATO(北大西洋条約機構)加盟国に対して、防衛費の対GDP比を2%へ引き上げるように要望している。実現したのは10ヶ国程度であるが、防衛費拡充の方向にあることは間違いない。こういう国際的な流れの中で、日本もこれに沿った動きが求められる。

     

    (2)「日米共同声明では52年ぶりに「台湾海峡の平和と安定」に触れている。台湾は沖縄県・尖閣諸島と170キロしか離れていない。台湾有事は尖閣防衛の問題に発展する恐れがある。防衛力をどう強化するか。自民党は組織的な戦闘を長期間にわたって続ける「継戦能力」を重視する。台湾有事が起こった際、米軍の主力が本土から駆けつけるのにおよそ3週間かかる。それまで最前線で戦う在日米軍などへの後方支援は自衛隊が主に担う想定だ。大量の弾薬や燃料、装備品の部品の備蓄が必要になる。新領域の技術開発も念頭にある。岸信夫防衛相は6月17日、欧州議会のオンラインでの公開審議で「宇宙やサイバーなどの技術に投資したい」と語った」

     

    下線部のように、日本では台湾有事と尖閣諸島防衛が一体化したものとして捉えられている。中国が、米軍の分散を図らせて手薄化させる狙いだ。自衛隊は、米軍の後方支援を担うので大量の弾薬や燃料、装備品の部品の備蓄が求められる。防衛費が嵩むのは当然である。

     


    (3)「日本経済新聞社の1月の世論調査において、日米関係で期待する政策を複数回答で聞いたところ「中国や北朝鮮への抑止強化」が54%でトップだった。日本が、台湾海峡の安定に関わる賛否を聞いた4月の質問では、「賛成」が74%に達した。国内世論は、防衛力強化への認識がたかまっている」

     

    日経の世論調査では、台湾有事への関心の高いことが分かった。74%の人が「台湾海峡の安定に関わる」ことに賛成している。つまり、自衛隊が後方支援することを容認している。

     

    『日本経済新聞 電子版』(6月21日付)は、「防衛費、まさかの日韓逆転 米国に甘え投資怠る」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のコメンテーター秋田浩之氏である。

     

    4月の訪米から、主要7カ国(G7)首脳会議まで、菅義偉首相は怒とうの外交日程を終えた。「自由で開かれたインド太平洋」構想を実現するため、ひとまず欧米と一緒に中国に向き合っていく足がかりができた。

     

    (4)「そこで、大いに気がかりなことがある。日本は同構想の提唱国だが、本気で実行する体制を整えているだろうか。残念ながら、そうは思えない。最大の問題は、安全保障の取り組みに欠かせない予算が極めて乏しいことだ。日本の防衛予算は5兆円強で、国内総生産(GDP)の約1%にすぎない。2013~21年度に増え続けたが、伸びはわずかだ。その間、中国の国防費は日本の約4倍になり、経済だけでなく、軍事の影響力もすさまじい。北朝鮮は核ミサイルを持ち、ロシアによるアジア方面の軍拡も続く」

     


    日本の防衛費は、インド太平洋戦略の中核国としてはみすぼらしいのが実情である。有事の際は、とてもその任に堪えられまい。増額して体制固めが必要である。

     

    (5)「北東アジアの厳しい情勢を受け、日本よりもずっと真剣に防衛に予算を注ぐ国がある。韓国だ。2017年に発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権は18~20年度、前年度比7.0~8.%の勢いで、国防予算を急増させている。米集計によると、韓国の国防費はGDP比で2.%となり、米国を除くすべてのG7を超えた。国防中期計画(21~25年)では、総額約301兆ウォン(約29兆円)を予算に注ぐという。21年度の伸び率をもとに試算すると、為替レートが動かないと仮定すれば、23年度ごろには実額でも日本は韓国に逆転されてしまう」

     

    韓国は、韓国軍の統帥権を在韓米軍が保持しているので、早急にこれを取り戻したいという気持ちが極めて強い。文大統領の公約に入っているほどだ。ただ、米軍は世界各地で統帥権を全て握っている以上、韓国だけ渡すことはあり得ない。ましてや、韓国進歩派は「親中朝」であるだけに、統帥権の移譲は危険である。38度線で有事が起これば、韓国軍は戦闘しないで和平交渉に応じることもあり得る。それほど信頼できない軍隊になってきた。

     

     

     

    a0960_008567_m
       

    韓国銀行(中央銀行)は6月22日、過去最大にまで膨らんだ韓国の家計債務と不動産価格の高騰により、韓国の金融状況が2008年の世界的な金融危機以降で最も不安な状態にまで悪化したと指摘した。

     

    韓銀が金利引き上げを意図している理由は、資産価格の上昇とそれを背景にした個人向け融資の増大である。もう少し説明すれば、個人が債務を増やして不動産や株式の投資を行なっていることから、資産価格が下落すれば債務返済が不可能になって「金融不均衡」が起るという危険性である。

     

    今後の利上げは、10月に0.25%、来年1~2月に0.25%、つごう0.5%引き上げが想定される。現在の政策金利は0.5%であるから、1%へ引き上げられるもの。金融正常化の一環であるこういう予想が出てきたが、株価は弱気材料を吹き飛ばして、史上最高値を付けた。

     


    『中央日報』(6月26日付)は、「
    韓国株価の上昇続く、初めて3300超」と題する記事を掲載した。

     

    3302.84。過去初めて3300を突破した25日のKOSPI(韓国総合株価指数)の終値だ。KOSPIの上昇が続いている。年初(1月7日)に3000時代を開いて以降、3100、3200を順に突破し、ついに3300を超えた。6カ月間に300ポイント(10%)上昇したということだ。この日の取引時間中には3316.08まで上昇した。前日の取引時間中の最高値は3292.27だった。

    (1)「3300の扉を開いたのは外国人と機関投資家だ。この日、外国人(3494億ウォン)と機関(5897億ウォン)の買いが株価上昇を牽引した。一方、これまで株価を支えてきた個人は8190億ウォン(約804億円)の売り越しとなったるのは。この日、機関投資家と外国人の資金がSKハイニックスをはじめ、LG化学、サムスン電子など大型情報技術(IT)業種に集まった影響だ。最近急激に値上がりしたカカオ(-1.59%)とネイバー(-2.26%)は2日連続で下落した」

     


    3月初めの2900台から一気の急上昇である。相場を牽引しているのは外国人投資家と機関投資家という。個人は利益確定で売りに出ている。すでに、来年2月頃までに政策金利は現行0.5%が1%に引き上げられる公算が強まっている。相場は、目先の動きは活発でも中長期的には警戒段階に入っている。いつ、崩れるかという秒読み段階であろう。

     

    (2)「現在のKOSPIの上昇動力は米国だ。24日(現地時間)、バイデン米国大統領が注力してきたインフラ投資計画に上院議員が合意し、KOSPI上昇に火をつけた。AP通信などによると、今回合意した金額は9530億ドルにのぼる。各国の景気が回復の動きを見せるなか資金が供給されるということでリスク資産選好心理が回復した。KTB投資証券のパク・ソクヒョン投資戦略チーム長は「前日、米連邦準備制度理事会(FRB)が先制的な利上げはないとして緩和的基調を維持することを再確認し、経済の不確実性が消えた影響も大きい」と分析した」

     

    下線部分は、明るい材料である。米国が、本腰を入れてインフラ投資によって経済成長の底上げを図ることは好材料である。一方では、インフレ問題が取沙汰されている。「利上げ待ったなし」の見通しが強まれば、相場は調整局面に入る。韓国株もその影響を免れない。

     

    (3)「投資心理の回復で各国の株価も一斉に値上がりした。米ナスダック指数とスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)指数は前日比0.5%以上値上がりして過去最高値を更新した。アジアの日経平均(0.66%)、台湾加権指数(0.41%)も値上がりした。KOSPI上昇は下半期まで続くのか。楽観的な見方が多い。上昇の材料に挙がっているのは企業のアーニングサプライズだ。金融情報会社エフエヌガイドがKOSPI上場176社を対象に出した今年の年間営業利益(連結基準)推定値は199兆ウォンと、昨年末の推定値(173兆ウォン)に比べ14%以上増加した」

     

    韓国は、特有の金融脆弱性を忘れてはいけない。韓国銀行は、初めて金融脆弱性指数(FVI)を開発。現在が、2008年のリーマンショック以来の最悪状態にあると発表した。韓銀によると、今年13月の韓国の金融脆弱性指数(FVI)は58.9で、08年の世界的な金融危機当時(73.6)以降の13年間で最高である。4~6月期は、08年にかなり近いと予測している。株価は、海外事情だけ見て有頂天になっていると、足元を掬われるに違いない。

     

    a0960_008570_m
       

    中国の習近平氏は、7月1日の中国共産党創立100年を前にして、自らの権力に楯突く者は、全て排除する気の狂った振る舞いをしている。香港の日刊紙『デイリー・アップル』を廃刊に追い込んだのがそれである。香港当局が、国家安全法(国安法)に従い、裁判や裁判所命令さえもなしに、『デイリー・アップル』の資産を凍結して新聞発行を不能にさせたのである。法的には、考えられない逸脱した行為である。

     

    世界の人々は、中国共産党から冷血動物そのものの行動を見せつけられて、「共産主義とはこういうものか」という実際的な恐怖を叩き込まれた。この点では、生きた教材になったであろう。

     

    習近平といえば、日本では太平洋戦争時の首相であった東条英機を連想する。東条の場合、天皇が最終的な監督者の役割であったので、習近平のように好き勝手に振る舞えなかったことは確かだ。それでも、報道機関への締め付けを行なっていた。

     


    私が勤務した週刊東洋経済は、太平洋戦争において反戦主張を繰返したので、東条から最も睨まれていた。当時は、紙の配給制であった。東条は、これに目を付け東洋経済への紙の配給を止めるように内務省警保局長に圧力を掛けた。当時の警保局長が町村金吾氏であり、東洋経済の愛読者であったことから、何とか紙の配給を認めてくれたという事情がある。習近平であれば、『デイリー・アップル』のように廃刊させたに違いない。

     

    終戦の8月、東洋経済は秋田県横田へ疎開して、毎週、たったの2ページの記事を発行し続けて戦争の危機を乗り切った。戦後、米軍は日本進駐によって、リベラルな東洋経済が秋田に移っていることを知り、米軍トラックで印刷機材などを東京へ輸送してくれたというエピソードが残っている。

     


    『中央日報』(6月25日付)は、「中国の素顔を見せた香港のリンゴ日報の廃刊」と題する社説を掲載した。

     

    香港の言論の自由が24日、弔鐘を鳴らせた。香港の代表的反中メディア「リンゴ日報」が廃刊に追い込まれた。2002年から中国政府を批判して雨傘革命(2014年香港反政府デモ)、送還法反対に先頭に立ってきたリンゴ日報は首脳部の逮捕と資産凍結など当局の全方向の圧力に耐えられず、24日明け方最終号の印刷を最後に廃刊した。

     

    香港当局は6月17日、警察500人を投入してリンゴ日報編集局を家宅捜索し、創業者・主筆・編集局長を相次ぎ逮捕した。資産1800万香港ドル(約2億5700万円)も凍結して追い込まれたリンゴ日報が自ら廃刊せざるをえなくなった。自由民主主義の世界では想像もできない暴挙だ。



    (1)「創刊して26年が経ったリンゴ日報は一貫した声で北京政府の実情を批判して香港の民主化を支持してきた。北京の立場では目障りな存在だっただろう。そのため、リンゴ日報を事実上強制廃刊させて「苦言を呈するメディアはこのようになる」という冷酷な実例を作ったわけだ。今後香港の新聞・放送が自己検閲を通じて当局に「顔色を伺う」報道だけを流すことは火を見るより明らかだ」

     

    中国本土のメディアが、すでに完全な沈黙を強いられている。自由な言論は消えた。胡錦濤時代が懐かしくもあるが、中国の置かれている状況が一段と危機を深めているという裏返しであろう。これを消すために、「世界覇権論」を言い出したという側面も考えられる。習氏は、トコトン瀬戸際政策によって中国国内を封じ込める戦略も働いているに違いない。

     

    (2)「中国政府は、民主主義の根幹を揺るがす時代遅れの言論弾圧を中止してほしい。リンゴ日報が最終号を印刷した日、香港市民は3時間前から並んで待った末に2~10部ずつ購入した。この「無言のデモ」のおかげでリンゴ日報は普段の約10倍にあたる100万部を刷ったという。中国当局はリンゴ日報をなくすからといって自由を熱望する市民の夢までなくすことはできないという事実を直視しなければならない」

     

    習氏が、『アップル・デイリー』を廃刊に追込んで勝利感に酔っていれば、大間違いであろう。西側諸国は、習氏の本性を見抜いたということで一段の締め付けが始まるであろう。習氏は、勝利を得たのでなく敗北の原因をつくったのだ。

     

    (3)「中国の言論弾圧はわれわれにも「対岸の火事」ではない。共に民主党のメディア革新特別委が17日発表した言論改革策によると、言論の自由を口止めする可能性が多い毒素条項があふれ出る。「ポータルニュースの編集権排除」という名分の下で、人工知能(AI)によるニュース推薦を防ぎ、政府寄りの委員会が記事の配列基準の是正を要求することができるようにしたのが代表的だ。政権に批判的なニュースの拡散を防ごうとする狙いが明確だ」

     

    韓国でも、文政権の手で言論弾圧の準備が始まっている。「親中朝」という文政権の政治路線は、自由主義社会でやってならぬことに平然と着手しようとしている。危険この上ない動きである。進歩派政権は、一期で終わらせねばならない。

    このページのトップヘ