日本人は、借金に慎重である。資産運用では、銀行預金を第一とする国民だ。韓国人は、全く異なっている。「宵越しの金を持たぬ」とばかりに派手な生活を好む。これが、家計(個人)の借入金を増やしてきた。
韓国の政策金利は、昨年5月から年利0.5%と過去最低水準に引下げられてきた。これによって、家計債務の激増を生み不動産市場へ莫大な資金を呼込んで価格暴騰を招いた。韓国銀行(中央銀行)は、もはやこれを放置できず、26日の0.25%ポイントの利上げを決断した。
バブル心理に、いったん火がついた状況である。一回の利上げで、バブルマインドが正常化するかどうか疑問視されている。バブルの動きを見ながら、年内に第二弾、第三弾の利上げも予想されている。一方で、パンデミック下で大きな打撃を受けた自営業者は、借入金で生き延びている。それだけに、利上げが負担増を招くのは確実だ。韓国経済は、厳しい局面に差し掛かっている。
『中央日報』(8月27日付)は、「終わる超低金利時代、始まった利子の心配」と題する記事を掲載した。
安く容易に資金を借りて不動産や株式に投資してきた「イージーマネー」の時代が終わりつつある。強まる金融当局の貸出規制に続いて、韓国銀行(韓銀)が26日に政策金利を引き上げ、新型コロナ事態克服のために金利を低めて金融を緩和した流動性時代も幕を下ろすことになった。
(1)「新型コロナ第4波の中でも韓銀が利上げカードを取り出したのは、家計の負債急増や不動産など資産価格の急騰による金融不均衡のためだ。今年4-6月期末基準で家計の負債(家計信用)は1805兆9000億ウォン(約170兆円)となった。1年前に比べ168兆6000億ウォン(10.3%)も増えた。このように増えた負債は不動産・株式市場、暗号通貨など資産価格を引き上げている。金融通貨委はこの日の利上げの背景について「家計貸出の増加傾向が強まり、住宅価格は首都圏・地方ともに高騰が続いた」と明らかにした」
出生率の急減している韓国で、不動産バブルの動きが広がったのは、文政権による政策失敗が原因である。ソウル市の不動産価格は、文政権発足以来すでに8割の高騰という異常状態である。家計が、今後の利上げによって直撃される。
(2)「物価の上昇も尋常でない。韓銀はこの日、今年の消費者物価上昇率予測値を1.8%から2.1%に上方修正した。韓銀の物価安定目標値(2%)を超える水準だ。国内の景気回復に対する自信もある。新型コロナ第4波の中でも韓銀は今年の経済成長率予測値を従来の4%に維持した。ワクチン接種の進行と輸出好調などで経済回復の流れが続くという見方からだ。さらにテーパリング(資産購入縮小)時点を考慮する米連邦準備制度理事会(FRB)など主要国よりも先に金利を引き上げておき、通貨政策の余地を確保するための布石でもある」
消費者物価上昇率は、2%に達するという。家計は当面、この物価値上りと金利引上げ分が負担増となる。特に若い人や自営業の人たちの財布に重い負担としてのし掛る。
(3)「問題は一度の利上げで金融不均衡を解決できないというところにある。漢陽大経済学部のハ・ジュンギョン教授は、「2%台の物価上昇率と4%の成長率を考慮すると、政策金利(0.75%)は緩和的な通貨政策の継続」とし「現在の金融不均衡は政策金利を一度引き上げるだけで解消される状況でないため、今後1、2回は利上げの可能性がある」と話した。李総裁が、「金融不均衡は今回の措置(政策金利引き上げ)一つで解消されるのではない」とし「金融不均衡の累積を緩和するための一歩を踏み出した」と強調した理由だ」
今後、1~2回の利上げとなれば、年利1%を超える。利下げ前の1.5%から見れば低位と言え、パンデミック下で痛めつけられた韓国経済に負担である。安易に見てはいけないだろう。これが、出生率のさらなる低下に現れるはずだ。
(4)「超低金利状況で家計の負債が増えたうえ、利上げに敏感な変動金利貸出の比率が70%を超えている。政策金利引き上げ分(0.25%)分が、そのまま貸出金利引き上げとなる場合、4-6月期の貸出残額基準で利子負担は3兆988億ウォン(約3750億円)ほど増える」。
0.25%によって、約3750億円の負担増になれば、あと2回の利上げを仮定すれば、総額1兆1250億円の負担増になる。決して少なくない金額である。
(5)「特に新型コロナによる社会的距離などで危機を迎えている自営業者は利上げの直撃弾を受けるしかない。今年1-3月期末の自営業者貸出規模は831兆8000億ウォン(約80兆7000億円)と、前年同期比18.8%増加した。高金利貸出の比率が増えるなど貸出の質も悪化したというのが韓銀の分析だ。小商工人連合会は26日、「新型コロナで直撃弾を受けた自営業者の利子負担が増えるしかなく心配だ」という立場を明らかにした」
前記の利上げ負担増は、苦しい自営業の懐を直撃する。0.25%の利上げ分が、そのまま支払い金利となれば約2000億円の負担増となる。
(6)「イージーマネー時代が終わり「貸し渋り」が発生するという懸念も強まっている。金利が上がり貸出総量までが縮小しながらだ。NH農協銀行は、新規住宅担保貸出と伝貰(チョンセ、家賃の代わりに入居時に高額を預ける賃貸方式)貸出を全面中断した。銀行と貯蓄銀行、保険およびカード・キャピタル会社の信用貸出限度も縮小されるなど「貸出の崖」は広がっている。ソウル大のアン・ドンヒョン経済学部教授は「安い金利で簡単に資金を借りて資産に投資するイージーマネー時代が終わりつつある」とし「追加引き上げがない場合、投資心理にむしろ火をつけることもあるため、持続的な利上げ信号が続くだろう」と述べた」
利上げ発表で即、新規貸出中止が始まっている。金融機関が、返済面で不安を感じている結果だ。それほど、信用力の低い層まで融資してきた実態を炙り出している。となると、底辺の人々には「金融閉塞」という思わざる事態が勃発しそうである。韓国経済の兵站線が、完全に「延びきっている」印象である。安易に考えては危険だ。