勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    2021年09月

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    文政権のダブルスタンダードぶりは、目を覆うほどである。福島原発処理水の無害であることを知りながら、国民に向かっては日本の危険行為という印象を与えるべく、度重なる抗議をしてきた。それだけでなく、中国へ反対運動の連携を申入れる一方、南米まで日本批判の運動を重ねてきた。

     

    内実は、無害であることを知っていたために、政府の研究予算は朴政権時の18%にまで削減していたのだ。この落差には驚くほかない。ここまで二枚舌を使って、反日を煽り政治利用しているのである。

     

    『朝鮮日報』(9月7日付)は、「日本の汚染水放出に『強い遺憾』なのに、研究予算は前政権の5分の1」と題する記事を掲載した。

     

    現政権は数年間にわたり、日本による「福島原発汚染水」の海洋放出に深刻な憂慮を表明し、強力に対応する方針を示してきたが、海洋水の放射能汚染に関する研究予算は前政権の18%水準と大幅に削減していたことが確認された。

     


    (1)「9月7日、野党「国民の力」のソ・イルジュン議員室が韓国海洋水産部(省に相当)傘下の韓国海洋科学技術院から入手した資料によると、現政権になってからの5年間(2018~22年)で、「海洋放射能汚染研究」の予算は約3億8000万ウォン(約3600万円)だった。これは朴槿恵(パク・クンヘ)政権(2013~17年)時代の20億8000万ウォン(約1億9700万円)の18%水準だ」

     

    日本外務省は、福島原発処理水について外交団に100回もの説明会を開いてきた。韓国側は、これに納得していたから、文政権も「海洋放射能汚染研究」予算を前政権に比べて18%にまで減少させていた。無害を知っていたから、研究予算を削減したもの。

     


    (2)「このような研究予算の削減は、韓国政府の強い態度とは相反するものだ。韓国政府は19年から福島原発の汚染水処理問題に関して日本政府に憂慮を表明し、強力な対応を叫んできた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領も今年4月、日本政府が福島原発の汚染水放出を決めたことに関連し、相星孝一駐韓日本大使を呼び出して憂慮を伝えるとともに、国際海洋法裁判所に放出差し止めを求める暫定措置(仮処分)を要請する案を検討するよう(事務方に)指示していた」

     

    文政権は、悪質である。福島原発処理水が無害であることを知りながら、ソウルの日本大使を呼び出して抗議するという「演技」をしてきたのだ。とんだ役者であり「食わせ者」である。これでは、日韓関係の信頼感など生まれるはずがない。

     


    (3)「ソ議員室によるとまた、韓国政府は日本が汚染水放出を決めた今年4月以降になってようやく、原発汚染水放出の韓国領海への影響を予測するシミュレーション構築予算を1億3000万ウォン(約1230万円)増額したことも分かった。18年から昨年までの3年間で、この予算は年4000万ウォン(378万円)ほどだったが、今年からその3倍以上の1億3000万ウォンに跳ね上がったのだ」

     

    日本は、2年後の秋から福島原発処理水の放出を始めると発表した。韓国も、これに合せて海洋水の調査始める予算を付けた。それでも、約1230万円に過ぎない。

     

    (4)「一部では、日本政府が原発汚染水の放出の可能性に言及し始めたのが18年10月ごろだったことを考えると、現政権が原発汚染水放出のシミュレーション研究にも消極的だったのではないかとの批判が上がっている。ソ・イルジュン議員は、「文大統領は、世界最高水準の大韓民国の原発については過度に恐怖をあおって国内政治に利用しながら、国民の安全のための海洋放射能汚染研究についてはないがしろにした」として「今からでも政府は、国民の不安を払拭(ふっしょく)するために、海の放射能汚染に関する充実した研究が行われるよう努力すべきだ」と指摘した」

     

    文政権は、国内原発は危険と煽るために福島原発を悪者扱いしてきた。福島を利用したに過ぎないのだ。科学的な良心の一欠片もない「悪魔的行為」と言える。

     


    『中央日報』(8月26日付)は、「日本の汚染水放出計画の発表に…韓国政府『深刻な懸念を表明』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国政府が東京電力の福島原発汚染水の放出計画案に対して「深刻な懸念を表明する」と明らかにした。25日、東京電力は汚染水を原発から1キロメートル離れた海の中に放流するなどの内容を盛り込んだ実施計画を発表した。

    (5)「政府はこの日午後、緊急会議を招集して東京電力の発表に対する政府次元の対応策を議論した。ク・ユンチョル国務調整室長は「最隣接国であるわが国の政府といかなる事前協議と了承もなく一方的に推進されていることに対して、もう一度深い遺憾を表わす」と明らかにした。この日、日本のメディアによると、東京電力は福島原発から約1キロメートル離れた海の中までパイして設置して放射性物質が含まれた汚染水を排出するという方針を決めた。計画通りであれば、2年後である2023年から放流を始めるものとみられる」

    下線部分は、白々しいことを言っていることが分かる。事前に無害であることを熟知知りながら、日本の責任を追及する。ウソで固めた韓国政府である。

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    自民党総裁候補者は政策論争を前面に出し、党員がそれを選択して投票する。「派閥単位でなく」党員の自主選択という、ごく決まり切った提案が出された。この背景に、今回の総選挙は、パンデミック下という異常な事態の中で行われる危機感が存在する。場合によっては、自民党が政権を失いかねないという切迫感があるからだ。

     

    日本は、1996年に衆院で小選挙区制が導入された。2009年の総選挙では、民主党が政権を握ったもののこの時だけで、自民党が政権を維持している。だが、2009年は08年のリーマンショックという未曾有の経済危機の勃発があった。今回はパンデミック下であり、同様の政治状況にあるのだ。

     

    それだけに、過去3回の安倍政権下で当選してきた自民党若手議員には、09年総選挙の悪夢が蘇るに違いない。従来型の派閥選挙では、国民の期待に添えないと見ているのであろう。そこで、「脱派閥」総裁選挙という思い切った提案がでてきたと見られる。

     


    『日本経済新聞』(9月7日付)は、「総裁選 派閥一任に反対  自民若手が提言案 自主投票求める」と題する記事を掲載した。

     

    自民党総裁選を巡る党内の動きが活発になってきた。当選回数が少ない若手議員のグループが近く、投票先を派閥単位で決めないよう求める提言案をまとめる。支援候補の絞り込みが難航する派閥もあり、若手に自主投票の動きが広がれば総裁選の勝敗に影響を与える。

     

    (1)「提言案をまとめる議員グループは、最大派閥である細田派に所属する福田達夫衆院議員が主導する。30~50歳代のメンバーを中心に構成し、当選3回以下の衆院議員が大半を占める。党内の全7派閥と無派閥から参加する。総裁選は間近に控える衆院選に向けた「選挙の顔」を選ぶ場となる。選挙地盤が固まっていない若手議員には、派閥に縛られずに地元や世論で人気の高い候補を支援したい思惑もある」

     

    これまで、自民党の古い慣習を守る党運営に反発して脱党するケースが、新党立上げに繋がった。こういう潜在的な不満は、自民党内部で自主的に解決すべきこと。今回の自民党若手による改革案は至極、真っ当な話である。

     


    すでに小選挙区制による「党運営選挙」である。資金は、党が支出する以上、議員の個性を発揮させるべきである。それには、派閥は不要のはずだ。今回の総裁選では、安保と経済政策を具体的に掲げて、党員の判断に委ねる形に改めるべきであろう。そうなれば、派閥の必要性は消えて行く。無派閥が理想型であるのだ。

     

    (2)「総裁選について、「派閥一任とせず、議員の意思を尊重すべき」だと提言案に明記する。「議員一人ひとりが自由な意思で選出するのが重要だ」と強調する。提言案と別に作成するグループの趣意書には国会議員と党員・党友が「自由な判断により次のリーダーを選ぶことが重要だ」と書き込む。自民党の総裁選は派閥ごとに投票する場合が多い。2020年の前回総裁選は7派閥のうち5派閥が菅義偉首相を支持して流れが決まった。趣意書は「党の意思決定過程の透明性に対する不信感が指摘される」と訴える」

     

    このパラグラフは、正論である。「派閥一任とせず、議員の意思を尊重すべき」は、当然すぎる主張である。小選挙区制の下では、派閥は解消される運命であった。これまでは、政策集団の同志と言い訳されてきたが、旧態依然とした「出世の踏み台」に過ぎなかった。

     


    この党員「自由投票制」になると俄然、脚光を浴びるのが河野太郎大臣であろう。世論調査で、支持率一位に上げられているからだ。同二位の
    石破茂元幹事長が、河野支持に回るとなれば、河野氏の優位がさらに固まると、見られている。河野氏には、小泉進次郎議員が応援しているとも伝えられる。この三人が手を組めば、衆院選は勝てるという判断であろう。

     

    (3)「提言案は、世代交代を促す党改革も提起する。「政府や党の要職における在任期間の長期化は権力の過度な集中や新陳代謝が損なわれるデメリットもある」と主張する。当選回数を重視した派閥均衡の人事は「組織を硬直化させる」と指摘し「若手の登用が重要だ」と求める。在職期間が5年を超える二階俊博幹事長らを念頭に置く。総裁選へ出馬する岸田文雄氏は総裁を除く党役員の任期を連続最長3年とする案を打ち出した。自民党の衆院議員の半数近くは当選3回以下で、各陣営は若手からの支持の取り付けを狙う」

     

    党運営の新陳代謝も求められている。党役員は、一期1年で連続最長3年までというのも、派閥化を防ぐ妙案であろう。

     

    (4)「検討すべき改革項目として、「派閥のあり方の再定義」も挙げる。各派に安全保障や経済政策に関する立ち位置や、政策の優先順位の明示を要求する。党内の主導権争いのための集まりではなく、政策集団という位置づけへ変革を促す。官邸主導の政策決定にも見直しを呼びかける。「政府が新たな政策を実行する場合は必ず事前に与党と相談し調整を図るべきだ」と盛り込む」

     

    もはや、派閥から資金提供があるわけでない。それでも派閥に属するのは、党役員や大臣就任で派閥の推薦を期待する結果である。党役員も最長3年になれば、「子分」をつくる時間も与えられまい。自民党は、果敢に改革しなければならない。

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    韓国メディアは、経済知識のある記者と社会部専門の事件記者では、日本に対する評価は全く異なる。事件記者の筆による日本評価は、韓国進歩派と同様に悪口雑言の集大成になる。だが、言われっぱなしも釈然としないので、「合理的説明」をしておきたい。

     

    『中央日報』(9月2日付)は、「日本の『止まってしまった30年』が教えてくれること」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の金玄基(キム・ヒョンギ)巡回特派員である

     

    (1)「18年前、東京特派員として赴任時は日本の原則主義が長所にしか見えなかった。だが歳月が流れて再び日本を見るとそれは違うようだ。「できないものをやってみよう」という意志、変化を先導してみようとする活力は見当たらない。6G、AI時代にまだファックスなしでは行政事務を進めることができず、クレジットカード1枚発行してもらうにも基本的に1~2カ月はかかる。「KIM」という英文三文判を作り印鑑登録しなければならない世界唯一の国。頭が凝り固まってしまっているので新しい発想が生まれるわけがない」

     


    菅政権の置き土産に「デジタル庁」が、9月に発足した。印鑑問題は、行政改革で消えている。クレジットカード発行は1~2カ月も掛かるはずがない。インターネットで手続きが済むようになっている。最近の日本事情に疎い内容だ。30年前の情報で日本を批判している形だ。読者が韓国人であるから、こういう記事は喜ばれるだろうが、記者として恥ずかしくないだろうか。

     

    (2)「あらゆる奇抜な新商品があふれて一度見物しに行くと2~3時間があっと言う間に過ぎてしまった東京の「東急ハンズ」は、オールドファッション展示場になっていた。テレビをつけても10、20年になる面白くも情報もない番組ばかり。フォーマットを少し変えた「昭和の名曲100選」を繰り返し放送して「あのときは良かった」と叫ぶ。変わっていない。「止まってしまった30年」だ」

     

    「東急ハンズ」は、もはや主流でない。「百均」という日本発祥の「小間物屋」が世界中で発展している。「ユニクロ」も日本企業である。お忘れであろうか。日本の年配者は、たまには「昭和の名曲100選」を聞いて見たいが、滅多に見る機会はない。NHKの歌番組でも、「演歌」は消えてしまった。「昭和の名曲100選」は、ユーチューブであろう。TVとユーチューブを間違えては困る。

     

    何が、日本の「止まってしまった30年」であるか。韓国の反日は、何と76年も続いている。日韓併合のままで、「止まってしまった76年」であるのだ。

     


    (3)「金持ちは滅びても3代は続くと言う。だから確かな基礎科学と誠実で親切な国民性で耐えてもいる。しかし溶け流れていくアイスクリームを見ているようだ。80年代でさえ日本は水痘・日本脳炎ワクチン技術を米国に供与した最高のワクチン強国だった。そのためコロナが出てきた時、日本がワクチンを真っ先に出すと思っていた。ところがどうしたことか。蓋を開けてみれば92年はしかワクチン、96年血友病エイズ訴訟で国と製薬会社が敗れた後、民間は投資を減らし、政府は支援をやめて手を引いていた」

     

    日本の感染症研究が、ワクチン開発で躓いたのは製薬企業が敗訴した結果だ。だが、今回のパンデミックを契機に、来年度予算で全国各地に複数のワクチン研究センターをつくる計画である。懸念には及ばない。再び、世界のワクチン研究の先頭に立てるはずだ。

     


    (4)「その結果が、韓日逆転。コロナ対応システムも同じだ。密接接触者を探すことはもう諦めた。行政能力がついていけないからだ。だから一日2万人(人口2.5倍を考慮しても韓国の4~5倍)以上の感染者が出てきても国全体がそんなものだと自暴自棄になっている。危機対応能力? 「1(日本)対390(韓国)」で終わったアフガン避難作戦で如実に現れた。総体的な国力衰退だ」

     

    下線部は、酷い内容である。なにが、日韓逆転か。日本製コロナワクチンは、目下、3社の手で行われている。早ければは、年内に接種にこぎつけられる。韓国で国産ワクチンは、まだ最終治験に入ったところで、製品化のめどは立っていない。証拠もないことを記事にしてはいけないのだ。記者失格である。

     

    アフガンで、自衛隊がアフガン人を救助できなかったのは、自衛隊法の限界とされている。自衛隊は法的に言えば、軍隊でない。警察の範疇にある。この曖昧さが、いざというときに自衛隊の力量発揮を止めている。

     


    コロナ新規感染者は現在(9月7日20時15分)、全国で1万0605人である。2万人でない。極めて粗雑な記事である。何が、国力衰退であるか。国力衰退とは、出生率で見れば、韓国は世界一の衰退国である。昨年の合計特殊出生率は、世界最低の「0.84」である。日本は「1.34」である。韓国が、先に地球から「消える」のだ。

     

    (5)「韓日の言論に造詣の深いあるベテランはこのように指摘する。「韓国の記者はほとんどがジャーナリストになった一方、日本の記者は全員メッセンジャー(情報伝達者)になった」。痛恨の一言だ。報道と主張の境界線を混同し、時には限度を越えてしまう韓国の記者が自省しなければならない言葉でもある。だが、それでも記者が単なるメッセンジャーとして残ることは果たして正しいことなのだろうか。そしてそれを政府が強制しようとすることは果たして妥当なことなのだろうか。日本の「止まってしまった30年」は、その答えをはっきりと示している」

    韓国の報道姿勢は、あることないことを無差別に報道している。現在、大統領予備選をめぐる候補者間の人身攻撃は、とても正視できないほど酷いものだ。あの報道が、「ジャーナリズム」とは、とても恥ずかしくて呼べない代物だ。政権支持メディアの「身びいき」記事は、噴飯ものである。韓国は、民主主義をはき違えている。多数の横暴が、議会でまかり通っているのだ。言論弾圧法を提案する国が、正気とは思えない。韓国が、国連で笑い物になっている国であることを忘れてはいけない。

     

     

     

    テイカカズラ
       

    中国は、大豆やトウモロコシで自給ができず輸入に依存している。大豆は、食用油の原料に。トウモロコシは、養豚のエサである。いずれも中華料理に不可欠な食材である。この二大食材を主として「敵国」米国に依存するというのは、構造的な脆弱性と言うほかない。

     

    米国の統計によれば、8月における中国でトウモロコシ輸入急拡大が始まっている。昨年は、異常気象による長江一帯の洪水でトウモロコシ在庫が水浸しになったのでないかと推測された。今後もさらに高まるであろう異常気象の頻発に対して、中国は思わざるところで弱点を曝け出している。

     


    『日本経済新聞』(9月7日付)は、「中国食糧安保、市場揺らす トウモロコシなど輸入急拡大 海運・肥料価格も上昇」と題する記事を掲載した。

     

    国際商品市場では今年に入り、非鉄金属や原油とともに穀物相場の上昇が目立つ。最大の要因は中国が海外市場を取り込む食糧安全保障に傾斜し、トウモロコシなどの買い付けを急拡大させたことにある。中国の政策強化は、農産物の安定生産に欠かせない化学肥料の原料や海上輸送にも波及する。

     

    米農務省が突然、中国による米国産トウモロコシの買い付けを発表したのは10年以上も前のこと。大豆に続きトウモロコシにも触手を伸ばすのか。シカゴ市場はざわついた。養豚などの飼料や工業用コーンスターチなど中国でトウモロコシの消費量は急拡大していた。


    それでも当時はまだ懐疑的な見方も多かった。大豆の輸入依存を高めても中国政府はコメや小麦、トウモロコシは自給を堅持するとみられていた。大豆の用途は食用油が中心で、菜種など他の農産物で代替できる。貴重な農地は食用のコメ、小麦や畜産飼料に欠かせないトウモロコシを優先する。穀物市場の関係者はそう考えていた。

     

    (1)「ところが、中国のトウモロコシ輸入は年を追うごとに拡大し、昨年は激増した。米農務省が8月12日に公表した最新リポートで、20~21穀物年度(トウモロコシや大豆は20年9月~21年8月)の輸入量は2600万トンと前年度の3.4倍に膨らんだ。日本やメキシコを抜き、世界最大の買い手となった」

     

    中国は最近、食糧安保の観点から米国からの穀物輸入をできるだけ増やさない方針を立ててきた。だが、「背に腹はかえられぬ」とばかりに米国からの輸入を急増させている。メンツを潰しても緊急事態の発生でやむを得ないのだろう。

     


    (2)「原油や金属資源と異なり、食糧は自国での消費が中心になる。輸出力のある国は限られる。資源・食糧問題研究所の柴田明夫代表は「薄いマーケット」と表現する。米農務省の統計で前穀物年度に世界で生産された11億1541万トンのトウモロコシのうち、輸入量は1億8421万トンと17%弱にすぎない。食用油や飼料用途が多い大豆は生産量の45%を輸出に回せるものの、今や世界貿易量の6割を中国が買う

     

    大豆の場合、世界貿易量の6割を中国が輸入するほど、中国の輸入依存度が高まっている。このことは、中国は1年以上、戦争する能力のないことを証明しているようなものだ。食糧自給率を高めて初めて、開戦できる状況になるはずだ。中国には、こうした総合的な戦略が欠けている。中国にとって、米国はとても敵わない相手であることが分かる。ならば、なぜ軍拡を懸命に行うのか。不思議な中国である。

     


    (3)「中国の大豆輸入量は、約1億トンと継続的にトウモロコシの輸入を始めた10年当時の2倍強に増えた。トウモロコシでもさらに輸入量を増やせば、薄い市場へのインパクトは計り知れない。シカゴ先物相場では夏前に一時、トウモロコシが7年10カ月ぶりに小麦を抜いた。異例の価格逆転に市場の動揺が見える」

     

    世界的に穀物市場は限られている。その中で、中国が突出した輸入国になっている。

     

    (4)「住友商事グローバルリサーチの本間隆行チーフエコノミストは、前穀物年度に中国の買い付けが急増した要因として、長江流域の深刻な洪水被害を挙げる。「相場低迷期に積み上がっていた在庫の多くが使えなくなった。異常気象で穀物輸出を止める生産国も出て、食糧安全保障の危機感が高まった」という。資源・食糧問題研究所の柴田代表は構造的な変化を指摘する。日本と同様に中国でも農業の担い手は高齢になり、都市化が進む。水不足も深刻で「農地の維持が危うくなっている」と話す。建国から堅持してきた自給方針を変え、「食糧の安全保障において供給源が国内か海外かは重要でないと考えるようになった」とする」

     

    中国の食糧事情は複雑である。異常気象、農業の担い手の高齢化、都市化、恒常的な水不足など、農業を取り巻く状況は年々、厳しくなっている。特に問題は、異常気象によって中国華北平原(中国中枢部)が、いずれ夏場に人間も住めなくなる炎熱状況に追込まれるという学術予測が出ていることだ。過去の自然破壊が、大きな報いといなって襲ってくる危険性が指摘されている。

     


    (5)「中国の輸入増加は国際相場を押し上げ、各国の食料高につながる。中国は米中摩擦の中で距離の遠い南米からの買い付けを増やし、海上運賃が高騰しやすい土壌もつくった。ばら積み船の市況を示すバルチック海運指数の上昇が8月に急加速したのは、中国などが感染力の強いインド型(デルタ型)の拡大で入港ルールを厳しくしたためだ。すでに中国企業は海外の農地や食品・流通企業の買収に動いた。農産物の生産を高める化学肥料の原料確保にも躍起だ。肥料原料は窒素、リン、カリウムが三大要素で、リンとカリウムは埋蔵や生産が偏在する」

     

    中国の穀物輸入増加は、各国の食料品価格を押し上げている。それだけでない。海上運賃が高騰していることだ。これは、中国の輸出コストを引き上げる形ではね返っている。さらに、世界的な肥料原料の値上りを招くなど、「中国のマイナス・ファクター」が大きく膨らんできた。

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    人口279万人の小国リトアニアが、14億人を数える中国に対し、台湾問題をめぐり一歩も譲らず対抗している。リトアニアが、台湾との外交関係を結ぶことに対し、中国が「一つの中国論」を盾にして反対しているもの。

     

    リトアニアは、ソ連に半世紀近くにわたって併合された後、1990年に独立したばかりだ。このため、北大西洋条約機構(NATO)やEUの加盟国の中でも、特に強く民主主義を支持するお国柄である。

     

    リトアニアは、旧ソ連の横暴が現在の中国の言動と二重映しになっているのであろう。それだけに、台湾への同情心が働き中国の反対を押し切っても、「台湾復交」を実現する強い姿勢を見せている。

     

    『大紀元』(9月6日付)は、「リトアニアの『台湾代表処』開設に中国が反発、連鎖反応危惧か」と題する記事を掲載した。

     

    (1)「東欧リトアニアは8月、台湾との間に出先機関の開設を決定した後、中国との関係が悪化した。リトアニアと中国は9月3日、双方の大使を呼び戻した。中国が反発する背景には、台湾問題が連鎖反応を引き起こし、さらに多くの東欧国家が中国との「17+1」協力枠組みから離脱することを懸念しているとみられる。リトアニアは5月、同枠組みから脱退した」

     

    中国のリーダーシップで、東欧諸国17ヶ国と中国との定期会合として、「17+1」という協力枠組がつくられた。現実の成果はゼロであることから、空中分解の危機を迎えている。中国経済の衰退で、資金を出せる余裕を失った結果である。

     


    (2)「リトアニアが首都ビリニュスに開設する台湾の出先機関の名称を「台湾代表処」に決定したことも、中国政府の不興を買った。他の欧州諸国では「台北」の名を冠した名称が使用されている。EU諸国の中国大使数十人が9月3日、中国を発つ前のリトアニア大使ダイアナ・ミクビシアン氏を見送り、その際に撮影した全員の記念写真を公開した。リトアニアへの連帯を示すためだとAP通信が報じた」

     

    中国は、是が非でも「台湾」という名称を使わせたくないのだ。五輪でも、「中国台北」を名乗らされている。東京五輪では、開会式でNHKアナウンサーが、「台湾です」と呼んで話題になったほど。

     

    (3)「リトアニアのランズベルギス外相は同日、EU(欧州連合)とNATO(北大西洋条約機構)に対し、一致団結して中国に対処し、各国の対中政策を見直すよう提案したと明らかにした。EUの立法機関である欧州議会は1日、「EUと台湾の政治関係と協力」というテーマの初の報告書を可決した。台湾はEUにとって、インド太平洋地域での重要なパートナーと民主的盟友であることを確認し、「一つの中国」という原則のもとで台湾とより緊密で強いパートナーシップを確立することを明示した。欧州議会外務委員会も同日、改正案を可決し、台湾にあるEUの外交事務を担う「欧州経済貿易事務所」の名称を「駐台湾EU事務所」に変更することを提案した

     

    下線のように、欧州議会外務委員会も「台北」から「台湾」へと名称変更するように提案している。中国としては、絶対に避けたいところだが、中国経済の衰えによって「阻止力」も低下している。中国経済が、日の昇るような時期には絶対に起こり得ない話だろう。

     


    (4)「リトアニアは最近、中国に対して強硬な姿勢を見せている。今年初め、中国の習近平国家主席が「17+1」枠組みメンバー国のサミットを主催した際、リトアニアのナウセーダ大統領は欠席し、5月には「17+1」からの離脱を発表した。中国が「17+1」を利用してヨーロッパを分裂させるのを防ぐために、リトアニアは、EU加盟国27カ国が「27+1」枠組みで一致団結して中国に対処すべきだと提案した」

     

    「金の切れ目は縁の切れ目」である。もともと、東欧と中国は歴史的なつながりがあった訳でない。旧ソ連時代に無理矢理、共産圏へ組入れられた「被害国」である。共産主義への忌避が強いのだ。リトアニアの問題は、起るべくして起ったと言える。

     

    (5)「中国政府は、他のヨーロッパ諸国がリトアニアに追随し、台湾との関係を発展させるのを懸念している。とくに投資の約束を度々破る中国政府に不満を持つラトビア、エストニア、チェコ、スロバキアなどの国が「17+1」枠組みから離脱することを、中国側は回避したいと仏メディア、ラジオ・フランス・アンテルナショナルが報じた」

     

    中東欧諸国が、中国に対する関心を薄れさせている兆候は、今年2月の「17+1」のオンライン首脳会議にも現れた。リトアニアをはじめ、エストニア、ラトビア、ブルガリア、ルーマニア、スロベニアが、首脳ではなく下位レベルの当局者を出席させていた。これは、リトアニアに続いて、「17+1」からいつでも脱退する前兆である。

     

    一時、「17+1」は中国がEUを分裂させる目的で、東欧諸国に接近してきたものとして、EU全体が警戒心を強めるほどだった。だが、中国経済の力が衰えると共に、過大な援助計画は全て「空約束」になって不信感を強める結果になった。これら諸国は、すでに中国を侮り始めている。中国は落ち目なのだ。

     

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