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下記の目次でけさ、発行しました。よろしくお願い申し上げます。

 

北のSLBMで事態急変

GSOMIAへ足慣らし
日韓対立で損をする韓国

 

北朝鮮が10月2日、新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射したことを受けて、韓国のGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)破棄問題がクローズアップされている。SLBMは、発射地点や発射の兆候が分かりにくく迎撃が難しい厄介なミサイルだ。こうなると、軍事情報把握はより広角が求められる。韓国は皮肉にも、GSOMIAの役割が一層、大きくなってきた。

 

GSOMIAは、2016年11月23日から発効した。韓国側では当初、北朝鮮に対する情報源の拡大という意味で期待をかけていた。具体的には、今回の発射実験で成功した北のSLBMへの対抗措置であったのである。

 

「GSOMIAは、北朝鮮が開発している潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)への対応にも効果的だ。北朝鮮が慶尚北道星州(ソンジュ)に配備される高高度ミサイル防衛(THAAD)体系の迎撃範囲を避けてSLBMを発射するには、独島(ドクト、日本名・竹島)近隣まで潜水艦を送る必要がある。その場合、日本の海上哨戒機(P-3C)77機と潜水艦に探知される可能性が高い」(『中央日報』2016年11月23日付)としていた。

 

北朝鮮のSLBMが試射に成功したので、韓国はGSOMIAが本格的にその役割を果たすはずだった。その矢先に、韓国がGSOMIA廃棄では、感情論の誹(そし)りを免れない。米国が、この決定に強く反発しているのは当然である。

 

米国は、GSOMIAを軸にして日米韓三ヶ国の軍事情報インフラを強化して、東アジアの安保体制強化を狙ってきた。その足下で、韓国がGSOMIAを廃棄することは想像外の事態であろう。

 

北のSLBMで事態急変

韓国と米国が、安全保障上の主要懸案を調整する協議体として9月26、27両日、統合国防対話(KIDD)第16回会合がソウルで開催された。米国は、韓国が日本とのGSOMIA終了を決めたことで、改めて懸念を表明した。韓国国防部によると、米国側はGSOMIA終了が日米韓の安保協力に影響を及ぼすとの懸念を示した。韓国側は、これまでの立場を再度伝達したという。日本政府が対韓輸出規制強化を撤回すれば、GSOMIA終了決定を再検討するとの立場を強調したものだ。

 

韓国国防部関係者は、「米側の懸念は(GSOMIA終了により)、日米韓の安保協力が弛緩するのではないかというところにある」とし、「今回の会議の焦点は、日米韓安保協力を持続して推進していくという米韓の立場は強固だというところにある」と伝えたという。だが、「GSOMIAを廃棄しても日米韓三ヶ国の安保協力を持続する」。米国が、こういう韓国の建前論に納得するはずがない。韓国に対して、GSOMIA復帰を迫った。これが、9月下旬までの韓国の対応であった。

 

ところが、10月に入って事態は急変する。北朝鮮によるSLBM発射が、暗い影を落とし始めたのである。米国の要求する韓国のGSOMIA復帰論に、緊急性を帯びてきた。その背景として、次の報道(『日本経済新聞』10月6日付)に注目していただきたい。

 

「SLBMは、海中の潜水艦から発射できるミサイルということだ。移動する潜水艦が撃てば発射地点が察知しにくく、兆候もつかみにくい。日本は米国の早期警戒衛星でミサイル発射の情報を得ている。兆候をつかめば陸海空のレーダーで探知・追尾し、イージス艦の海上配備型迎撃ミサイル「SM3」と地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)で迎撃する」

 

しかし、潜水艦から撃てば、発射の兆候や場所の探知は遅れ、対応が後手になる。102日の北朝鮮のSLBM発射は潜水艦からではなかったとの見方が多い。それでも海中からの発射技術は確立したとみられている。液体燃料を注入するミサイルは準備に時間がかかり、衛星などで発射の兆候をつかみやすい。今回のような固体燃料の場合は、陸上でも移動式発射台を使って様々な場所からすぐに発射できる」

 

ここに報じられたような事態になると、日本ですら北朝鮮の軍事動向に一層の神経を払わざるを得ない。韓国にとっては現実問題として、GSOMIAで日本の軍事情報提供の必要性がさらに高まったのである。

 

現に、韓国国防部は北朝鮮のSLBM発射情報について、日本側に提供を申し入れてきた。11月23日まで、GSOMIAは効力を持つので、韓国が、日本に情報提供を求める権利はある。(つづく)