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香港のデモ騒動が、警官隊の実弾発射によって新たな危機段階に入った。中国人民解放軍も、介入を臭わせる警告をしており、いつでも実力行使に出てくる環境整備は終わったようだ。問題は、この軍事行動で何も解決しないことである。中国自身が新たな苦悩を背負い込む危険性の方がはるかに大きい。中国は、真の危機を招くだろう。

 

『大紀元』(10月7日付)は、「香港こそ中国共産党の最大の悩み」と題するコラムを掲載した。筆者は、ジェームズ・ゴーリー(James Gorrie)氏。カリフォルニアに拠点を置く作家兼講演者で、「The China Crisis」の著者でもある。

(1)「中国共産党を痛めつけているのは貿易戦だけではない。香港こそ中国共産党の最大の心配の種だ。これにはいくつか理由がある。もし、香港が中国軍によって「軍事的に征服」されたなら、貿易戦によって製造業が中国から離れるのと同じように、外国の金融ビジネスも他のもっと安全な場所へと移るだろう。これに対し、米国と他の欧米諸国は香港の特別経済地区としての資格を剥奪するだろう。つまり、中国がとても頼りにしている、香港のアジアの金融ハブとしての利点は全て失われる」

 

中国人民解放軍が介入すれば、「香港・天安門事件」になる。先進国は、中国との経済関係を一時的に閉鎖するだろう。中国にとっては、「経済的な死」に相当する衝撃を受けるはずだ。

 

(2)「そうすることによって中国共産党は、ロンドンをも超える証券取引所(注:香港証券取引所)を持つ、中国と世界をつなぐ金融ゲートウェイを破壊してしまう。また、不動産の価格が暴落し、金融サービスや他の利益の高いビジネスが香港を放棄することで、とてつもない富が消えることになる。中国は1989年の天安門事件の後も生き残ることができたが、それは欧米諸国の経済が中国によって空洞化される前のことだったということを中国共産党は認識すべきだ。今日の香港でもし大虐殺が起きたら、中国と欧米諸国との貿易関係は現在よりはるかに悪化するだろう」

 

香港は、中国のショーウインドーである。中国は、香港という存在でどれだけ経済的な利益を得ているか分らない。それにも関わらず、香港の自由を奪ってさらなる利益を得ようと画策している。それは、中国の死を意味することを弁えていないのだ。鄧小平が、「一国二制度」にした理由は、遅れた中国の社会制度を立て直す時間的ゆとりを得るためであった。それを忘れて、性急な香港の「中国化」は自殺行為である。同時に、香港移譲を取り決めた英国と中国との条約違反である。

 

(3)「アメリカのグローバル・リーダーシップよりも、中国の経済発展モデルの方が良いと世界を納得させることが、中国の大きな計画だった。中国の経済発展モデルが21世紀の青写真となるはずだった。欧米型の共和民主制は国家主導の経済と一党独裁に取り替えられる。これは、中国が過去20年間に渡り世界に発信してきたメッセージだ。実際、この中国の経済発展モデルのグローバル化を通して、中国は一帯一路と中国製造2025計画を進める予定だった。一帯一路は発展途上国から天然資源を盗み、中国製造2025は先進国から技術を盗むためのものだ。中国共産党は中国を世界の次の、そして唯一の覇権国にしようとしている」

 

中国は、自らの経済システムが欧米型の経済システムよりも優秀であると喧伝してきた。それは、GDP成長率がこれまで高かったことを根拠にしてきた。だが、香港で躓けばすべては終わる。香港という「ショーウインドー」が粉々になれば、中国は輝きを一瞬のうちに失うからだ。

 

(4)「しかし、中国の逃亡犯条例に対する香港の抗議デモにより、中国の経済発展モデルの神話は打ち砕かれた。欧米の資本主義を取り入れている香港の人々は、中国の経済発展モデルではなく、香港こそがこれからの中国の富にとって大事であることに気づいている。もし中国共産党がデモ隊を攻撃するなら、中国の経済発展モデルの幻想は今よりさらに早く消えるだろう。香港金融の崩壊によって影響を受けるのは、中国共産党の計画や、香港と外国の人々だけではない。中国共産党の党員たちが普通の人ではなく、億万長者だということを忘れてはならない」

 

下線を引いた部分は重要である。香港は、中国の「金の卵」である。中国が経済発展できたのは、香港という「窓口」(ショーウインドー)があったからこそ可能であったのだ。中国共産党が香港デモ隊へ発砲することは、自らの運命を閉じるに等しい行為である。香港金融システムの崩壊は、中国共産党・上層党員にとって資産運用の場を失うことでもある。

 

(5)「共産党の億万長者たちはアジアの他の国、オーストラリア、ヨーロッパ、アメリカ、そしてカナダに不動産や家族がいる。香港や欧米諸国の金融機関に何百万ドルもの党員たちの財産があることは確かだ。共産党に忠誠を示すために、彼らはどれだけの資産を失う覚悟があるだろうか。中国共産党という船と一緒に沈んでもいいという党員はどれだけいるだろうか。自分の財産が共産党での地位のおかげであり、また共産党が欧米諸国から金融支援を受けてきたおかげであることを、全ての党員は知っている。そして彼らは中国の富の大部分が幻であることも知っている。そうでなければ、何兆ドルものお金が年々中国から離れるのではなく、中国に残るはずだ」

 

香港という「金の卵」が潰れれば、中国共産党員の忠誠心も失われるだろう。党員利益は、経済的特権の享受である。香港の繁栄は、これと深く結びついている。

 

(6)「人民解放軍が今まで行動を起こさなかったのは、財産を失うことと、それによってもたらされる全てのことを恐れているからだ。香港で何をするか、または何をしないかという決断が、中国共産党の将来を左右することに気づいているのは習近平氏だけではないはずだ。さらに、抗議デモが長引くにつれて、中国の経済発展モデルの幻が消えていくことになる」

 

中国共産党は冷静になって考えれば、香港での武力行使が天に唾をするようなことである。だが、香港でのデモが続けば中国共産党の内外における権威は地に墜ちるばかりだ。中国が、欧米の政治経済システムよりもすぐれていると宣伝してきた過去は、現在の香港デモで大きく揺さぶられている。香港デモを弾圧すれば、取り返しのつかない返り血を浴びる。進退に窮したと言うべきだろう。