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韓国社会は、集団で意思表示することを好む民族である。文政権賛成派と反対派が、互いに譲らず集会を開いて気勢を上げているのだ。現在は、チョ・グク法務部長官を巡って、長官擁護・検察改革派と法務部長官辞任要求派の二派に分かれて街頭活動を盛んに行っている。

 

法務部長官の家族に関するスキャンダルで、法務部長官が検察改革を行うという構図は、日本では想像もできない「非道徳的な話」である。本来ならば、捜査の公正を期す観点から法務部長官は、その椅子を離れるのが常識だ。それが逆であり、地位に恋恋として離れようとしない。信じがたい行為である。

 

文政権支持メディアの『ハンギョレ新聞』が、この騒ぎをどう見ているのか。「身贔屓」でチョ・グク法務部長官は席に止まり、検察改革を行えという意見なのか興味深いので取り上げて見た。結論は、そうでなく文政権に厳しい注文をつけている。

 

『ハンギョレ新聞』(10月9日付)は、「革新の誇りをよみがえらせる道」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のクァク・ジョンス論説委員である。

 

(1)「先日5日午後。ソウルの瑞草(ソチョ)駅交差点に向かった。1週間前より多い膨大な数のろうそくが一つになって検察改革を叫んだ。しかし、雰囲気は3年前のろうそく革命の時とは全く違っていた。2016年の「光化門(クァンファムン)のろうそく」は国民全体がひとつになった「広場民主主義」の祝祭だった。革新だけでなく、中道や合理的な保守までもが共にろうそくを手にし、「国らしい国」を作るために力を合わせた。一方、(現在の)「瑞草洞のろうそく」は感動と楽しさがだいぶ小さくなってしまった」

 

検察改革派は、チョ・グク法務部長官擁護派である。3年前の朴槿惠弾劾の時に見せた雰囲気とは違って、やや冷めた雰囲気があると指摘している。

 

(3)「「チョ・グク論争」は革新の隠された「恥部」を露わにした。表向きは「社会正義」を叫んでいても、裏では既得権・特恵・慣行に安住してきた生き方が衝撃を与えた。これを自省の契機にすべきだということに反対する革新はいないだろう。チョ・グク法務部長官も国民の否定的な世論について、「期待とは裏腹に私と家族の問題が(国民の)尺度に満たず、失望させてしまったため」と語った」

 

進歩派は、必ずしも改革派でない。そういう現実を余すところなく示したのが、今回のチュ・グク騒ぎである。進歩派の看板を掲げて、裏では卑怯な利益追求を行っていたとは驚きである。進歩派も欲深い人間の「業」を背負って生きていることを証明した。

 

(3)「にもかかわらず、「瑞草洞のろうそく」が「チョ・グク守護」に固執しているのには理由がある。行き過ぎた検察捜査に対する反発と、すでに権力機構化している検察に対する不信があまりにも大きい。検察改革が雲散霧消することへの懸念や、ここで押し返されれば、ともするとろうそく政府も危険になりうるという懸念も大きい。「瑞草洞のろうそく」に合流しない革新も、これを知らないわけではないだろう。しかし、「チョ・グク守護」が革新の「二重性」批判に力を与え、ややもすると革新の道徳性にまで大きな傷がつくことを懸念する

 

革新派を標榜するには、人一倍身辺を身ぎれいにする努力が求められる。それが、どうだろう。選りに選って、「疑惑満載の人物」がチョ・グク氏であった。革新派の人物選択眼の狂いを証明した。 

 

(4)「軍部独裁終息以降の30年間、革新も否応なく社会の既得権構造に足を浸すことになった。その間に選出された6人の大統領のうち半分である、金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)・文在寅(ムン・ジェイン)が革新陣営だ。もはや革新も自らを変革しなければ、守旧勢力に転落する危険性を内包することになった。これこそ韓国放送通信大学のキム・ギウォン教授が生前に「もはや革新派すなわち改革派ではない」と強調した理由だ」

 

「もはや革新派、すなわち改革派ではない」という現実は、文政権と与党の面々が証明している。大きな幻想であったのだ。このダメージは、次期総選挙で議席減となって現れであろう。

 

(5)「保守寄りの経済界の関係者は、「革新が来年の総選挙まで『チョ・グク守護』に固執したとすれば、おそらく自由韓国党がもっとも喜ぶだろう」とし、「朴槿恵(パク・クネ)前大統領もウ・ビョンウ民情首席とチェ・スンシル氏を最初に切っていれば、弾劾は成立していなかっただろう」と語った革新がより厳しい物差しを自らに当てるのは宿命だ。革新の誇りをよみがえらせ、分裂を防ぐ出発点は、検察改革と「チョ・グク守護」の分離である」

 

下線の部分は、意味深長である。文政権もチョ・グク氏の首を切っておけば良かったという事態の到来を危惧しているのだ。その点で、文大統領は人を見る目がなさそうだ。「盲目の愛」で突っ走っている。老練な政治家というイメージとほど遠い。