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韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、就任後1年余もサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長に会うことがなかった。それが、昨年7月以降すでに3回も工場訪問するまでに変っている。韓国経済の不振が明らかになると共に、景気下支えを期待してサムスンの積極投資に敬意を表すためだ。つい最近は、「サムスンに感謝したい」とまで発言するほど、低姿勢になっている。

 

一国大統領が、一企業にここまで辞を低くしているには理由がありそうだ。前大統領の朴槿惠裁判で、サムスン電子の李副会長が贈賄罪に問われていることと無関係ではない。李副会長は最高裁判決で「執行猶予」が高裁へ差し戻された結果、刑務所へ収監される恐れもでてきた。そこで、文大統領が高裁へ「執行猶予」を取り消さぬようにというシグナルを送ったとも読めるのだ。

 

文氏は、昨年8月に徴用工裁判の判決前に「賠償金を払うべき」との演説を行っている。本来なら、大統領なる者が発言を控えるべきであるが、それを破っての「意思表示」であった。案の定、最高裁は文大統領の意向に合せた判決になった。今回もこの伝で行けば、李副会長に「執行猶予」をつけた判決にして、ビジネス活動を続けさせる意思と読めるのだ。

 

『中央日報』(10月11日付)は、「文大統領、『材料・部品・装備』の中小企業と共生、サムスンが韓国経済を率いて感謝」と題する記事を掲載した。

 

(1)「文在寅(ムン・ジェイン)大統領が10日午前、忠南(チュンナム)のサムスンディスプレイ牙山(アサン)工場を訪れ、職員らと対話して次のように語った。「サムスンが半導体・携帯電話・ディスプレイ、このような分野で常に世界をリードしており、それで大韓民国経済をいつも率いて下さりいつも感謝している」。文大統領が経済に関連した活動を本格化している。今月4日には大韓商工会議所のパク・ヨンマン会長など経済4団体長と午餐会を行い、8日閣僚会議の時は「企業に対する全方位での支援」を強調したことに続き、この日は産業現場の最前線に立っている企業を訪れた」

 

最近の韓国は、チョ・グク氏の法務部長官就任をめぐって、国論を二分する「街頭デモ」が行われている。文大統領はこの混乱を避けて、日常業務を行っているという証に、経済人との会合を増やしている面を否定できない。サムスン工場訪問もその一貫。リップサービスに努めている。

 

(2)「文大統領がサムスン工場を訪れたのは昨年7月インド訪問の時にサムスン電子のノイダ新工場の竣工式と今年4月サムスン電子華城(ファソン)事業場に続いて3回目だ。この日の行事は、サムスンディスプレイが次世代ディスプレイ分野に2025年までに13兆1000億ウォン(約1兆1800億円)を投資するという内容の「ディスプレイ新規投資および共生協力協約式」であった。

 

文氏は、昨年7月サムスンのインド工場訪問時に初めて李副会長と面会した。国内での面会を避けていた結果だ。その後、今年4月と今回の訪問を含めて3回になる。約1兆1800億円の投資をする華城工場へ「激励」という意味の訪問になった。

 

(3)「文大統領は、協約式で「今日、サムスンディスプレイと材料・部品・装備分野の中小企業間に共生協力MOU(了解覚書)が締結される。特定国への依存度が高いディスプレイの核心素材・部品・装備の自立化に向けた重要なきっかけになるだろう」と明らかにした。また「国民に良い便りを伝えて下さった李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン副会長、サムスンディスプレイのイ・ドンフン代表理事など関係者に感謝申し上げる」とし、「世界市場の流れを適時に読んで変化を先導してきた韓国企業に尊敬と感謝のお言葉を申し上げたい」として感謝の気持ちを数回伝えた。

文大統領は、「国民に良い便りを伝えて下さった李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン副会長、サムスンディスプレイのイ・ドンフン代表理事など関係者に感謝申し上げる」と、賛辞を贈っている。これには、深い意味がありそうである。李副会長への「執行猶予」取り消す判決になると、韓国経済に大きなマイナスが及ぶからだ。文氏は、この最悪判決を避けたい。今回の訪問での発言で、それを裁判所に知らせたのでないか。私には、そう読めるのだ。