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中国は、5~10年先を展望した場合、先進国から対外直接投資を締め出されているマイナスが大きくはね返ってくるはずだ。対外直接投資のメリットは、投資収益のほかに投資先の経営ノウハウや技術情報など有形無形のプラスがある。中国は、知的財産窃取という疑いを掛けられており、門前払いを食っている。

 

中国の対外直接投資が減少している裏に、経常収支黒字の激減がある。昨年の黒字は、490億9200万ドル。対GDP比で0.4%まで減少した。これでは当然、対外直接投資を減らさざるを得ない局面だ。この重大事実を見落としていると、いつまでも「中国経済礼賛論」から抜け出せまい。

 

『日本経済新聞 電子版』(10月11日付)は、「中国対外投資、先進国向け急減 」と題する記事を掲載した。

 

(1)「中国の先進国向けの直接投資が急減している。2018年は欧州諸国やオーストラリア向けが大幅に減り、全体でも前年比10%減の1430億ドル(約15兆円)と2年連続で前年水準を下回った。中国への技術流出の警戒が高まり、各国が投資を制限したからだ。「一帯一路」沿線国向けの投資も減っており、米中貿易戦争を避けて中国主導の広域経済圏をつくる構想は進んでいない」


中国は、先進国から技術窃取を警戒されているほか、肝心の対外投資する「ドル資金」がなくなっている。

 

(2)「商務省や国家外貨管理局がまとめた「対外直接投資統計」でわかった。金融機関に対する投資も含む。投資分野別では金融が前年比16%増の217億ドルに増えたが、金融以外は同13%減の1213億ドルに減った。投資額は14年以来の低さ。民間企業による野放図な投資で16年は1961億ドルと過去最高だったが、当局が不動産や娯楽産業への投資を制限して17年から減少に転じた。中国企業によるM&A(合併・買収)は同38%減の742億ドル(対外直接投資に含まれない部分を含む)に落ちこんだ」

 

手元の経常収支黒字という「資金だまり」が、底を突いてきた。これでは、投資したくてもできない状況に落込んでいる。

 

(3)「地域別では欧州向けの投資が前年比64%減の65億ドルに急減した。17年のスイス企業への大型M&Aの反動減だけが理由ではない。ドイツ、英国はいずれも半減し、フランスは投資回収が新規投資を上回った。豪州も同53%減の19億ドルに急減した。日本や米国をふくむ主要7カ国(G7)向けの投資額は、16年の計261億ドルから2年連続で減り、18年は計122億ドルまで落ちこんだ」

 

中国が、札びらを切れる環境でなくなった。「手元不如意」では、どうにもならないのだ。IMFの推計では、中国は2022年に経常赤字に転落する。世界覇権論など、夢のまた夢である。

 

(4)「背景に投資制限がある。トランプ米政権は17年から中国企業による米企業買収への審査を強め、中国による対米投資は17年に前年比62%も減った。18年はこの流れが欧州に波及した。ドイツは18年夏に中国系企業によるドイツの精密機械メーカーの買収を事実上阻止し、フランスも182月に中国系企業が筆頭株主の空港を巡って政府保有株の追加売却を見送った」

 

中国の経常収支黒字が、昔日の面影がなく零落してきたのは、国際競争力の減退である。人件費上昇が、貿易黒字を減らしている。サービス収支は、国民の海外旅行の爆買いで大赤字。所得収支も、対内投資の活発化で利息・配当の支払いが超過して大赤字。ともかく、至る所で綻びが大きくなっている。

 

(5)「先進国による中国締めだしに、中国は独自経済圏「一帯一路」向け投資で対抗するはずが、思惑通りに進んでいない。一帯一路の沿線64カ国向け投資は18年に前年比11%減の178億ドルと2年ぶりに減り、対外投資全体に占める比率もやや落ちた。金融分野の投資が大幅に減っている。「相手国を借金漬けにし、その代償に港湾などのインフラ施設を取りあげる」という「債務のワナ」への批判を意識し、中国が過剰投資にブレーキをかけた可能性がある。習近平(シー・ジンピン)国家主席も194月の一帯一路首脳会議で「(相手国の)財政の持続可能性を確保する」と演説していた」

 

一帯一路は、中国経済に何らの利益も生まなかった。資金の持出し超過に終わっている。中国のあくどい商法が世界中に知れ渡り、相手国が逃げ出す事態に陥った。過去の投資資金は、ことごとく焦付き債権になる危険性を帯びている。「債務のワナ」には、中国自身が落込んでいる。皮肉なものだ。