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世界の「G2」を気取って、米国と互角の交渉をするとしてきた中国が急遽、米国の要求を飲まざるを得ない事情が分ってきた。これ以上、米国の関税引上に耐えられないという限界にぶつかっていたのだ。

 

この7月、中国最高指導部と党長老との非公式懇談会である「北戴河会議」では、習氏による強気の米国対抗策が承認されたと伝えられていた。その後の動きを見ると、確かに強気を装っていたが、時間の経過とともに綻びが鮮明になってきた。製造業の利益悪化である。国有企業に一大利権を持つ「紅二代」(太子党)は、悲鳴を上げたのであろう。習指導部に、米国との妥結を急がせたのだ。そう見なければ、ここ3ヶ月の態度急変は理解できない。

 

『大紀元』(10月11日付)は、「中国18月工業利益が完全失速、上海は前年比約2割減」と題する記事を掲載した。

 

中国浙江省統計局がこのほど発表した統計では、中国の18月の全国工業部門企業利益は前年同期比1.7%減で、そのうち、上海、北京、山東省は2桁のマイナス成長となった。特に、中国最大の経済都市である上海の工業利益が2割近く鈍化したことは大きく注目された。

 

この統計は本来、極秘にされておくべきものが手違いで掲載され、すでに削除されている。一部の中国人ネットユーザーはツイッター上で、「(浙江省統計局は)本当に正直だった。こんなにも悪い数字もそのままを公表した」などと称賛したという。中国経済の事態は、ここまで「腐食」しているのだ。

 

(1)「中国浙江省統計局のウェブサイト、「浙江統計信息網」が930日、「18月の浙江工業部門企業利益の伸び率は全国平均を上回った」と題する記事を掲載した。これによると、同期浙江省の工業利益は2.8%増で、「全国平均の1.7%減を上回った」というもの。さらに、同記事は中国東部の7省・市の工業利益がマイナス成長になったと明らかにした。「北京は14.4%減、天津5.8%減、河北省11.2%減、上海19.6%減、江蘇省3.5%減、山東省13%減と広東省は0.4%減だ」という」

 

1~8月の工業利益を整理すると、次のようになる。

北京  14.4%減

天津   5.8%減

河北省 11.2%減

上海  19.6%減

江蘇省  3.5%減

山東省 13.0%減

広東省  0.4%減

浙江省  2.8%増

 

これら主要地方の工業利益が大きく落込んでいるのは当然、雇用減になっているはずだ。利益が減れば、債務返済は不可能になる。新規の資金調達もできる訳がなく、設備投資に影響する。つまり、中国製造業は座して死を待つという最悪事態に直面している。この事態を招いたのは、習近平氏とこれを取り巻く民族主義者グループである。米国の実力を軽視するこれら「一団」が辿り着く先は、軍拡とそれに伴う財政圧迫による衰退である。習氏が、中国のトップに留まる限り、中国の経済や社会は行き詰まるであろう。

 

日米欧や中国など20カ国・地域(G20)は17日から2日間の日程で財務相・中央銀行総裁会議を開く。IMF(国際通貨基金)は、同会議を前に政策課題をまとめた報告書を公表し、米中の関税合戦によるマクロ経済への影響を次のように試算した。

 

(2)「IMFは11日、米中の貿易戦争が悪化すれば、2020年時点で中国のGDPを2.%下押しすると試算した。米GDPも0.%失われ、世界経済全体でも0.%下振れするとした。世界的な貿易縮小だけでなく、企業投資の減退や金融市場の混乱を引き起こすと警鐘を鳴らした」(『日本経済新聞 電子版』10月12日付)

 

トランプ米政権は19年12月に、制裁関税の対象を中国からの輸入品ほぼすべてに広げると主張してきた。ただ、今回の米中通商協議の「第1段合意」により、10月15日からの追加関税2500億ドル分を見送る。この分はIMF試算に入っていないはずだ。

 

18年7月以降の関税引き上げの影響を合算すると、中国のGDPは20年時点で2.%下押しされ、23年時点でも0.7%%分の下振れ圧力が残るとした。IMFは20年の中国の実質成長率を6.%と見込んでいたが、関税合戦が止まらなければ大幅な下方修正は避けられなかった。中国が、米国と対抗して体力を疲弊していた事情がよく分るであろう。