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韓国は、中国との関係改善だけを目的に、安保政策でいわゆる「三不」を約束してしまった。今になってこれが、大きな足かせになってきたのだ。文政権の軽率な振る舞いが、とんだ事態を招きそうだ。

 

「三不政策」について説明しておこう。2017年10月、韓国は中国に対して「三不」なる合意文書を提出した。

1.米国のミサイル防衛(MD)体制に加わらない。

2.韓米日安保協力が三カ国軍事同盟に発展することはない。

3.THAAD(サード)の追加配備は検討しない。

 

これら「三不政策」は、韓国が中国の安全保障を脅かすような政策を取らないという異例の文書だ。民主主義国が独裁国に対して「念書」を書かされたのだ。韓国の土下座外交として、大変な話題を呼んだ。だが、最近の北朝鮮による新型ミサイル発射は、韓国だけでは対応不可能という意見が増えている。そこで、米韓の統合ミサイル戦略が必要というのだ。だが、前記の「三不」で、「1.米国のミサイル防衛(MD)体制に加わらない」と念書を書いている。さて、どうするかだ。

 

『朝鮮日報』(10月12日付)は、「相次ぐ北のミサイル発射、米国で『韓米MD統合』の声高まる」と題する記事を掲載した。

 

(1)「今月2日に北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星3型」を発射した後、米国では「韓国とミサイル防衛システム(MD)を統合すべき」という声が強まっている。北朝鮮が今年存在を明らかにしたイスカンデル級短距離弾道ミサイル、2種類の新型放射砲(多連装ロケット)とSLBMなどを混ぜて撃った場合、現在の二元化された韓国軍と在韓米軍のミサイル防衛能力では完ぺきに防ぐことは難しいからだ」

 

米韓が、別々のミサイル防衛システム(MD)で北朝鮮に対抗するのは無理という認識が出てきた。米韓が一体にならなければ防げないという認識だ。

 

(2)「韓米連合司令部で参謀を務めた経験があるデビッド・マックスウェル氏(民主主義防衛財団上席研究員)は11日、ラジオ放送「ボイス・オブ・アメリカ」(VOA)の取材に対し「北朝鮮が同一の標的に向けて複数のミサイルや放射砲などを一斉に発射したら、韓国型ミサイル防衛(KAMD)を突破することもあり得る」として、「韓国軍が配備しているパトリオットPAC3は迎撃範囲が狭く、在韓米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD1部隊では防衛に到底足りない」と語った」

 

(3)「ランド研究所のブルース・ベネット上席研究員はMDが統合されていないと、米軍は北朝鮮のミサイルが発射されるのを見て韓国軍に電話し、『50秒後にミサイルが落ちてくる』というような形で伝えなければならず、迎撃の時間が不足するだろう」と語った。米国の立場からすると、北朝鮮によるミサイル発射の全過程を追跡してこそ迎撃に成功し得る、というわけだ。

 

北朝鮮という共通の敵に対して、米韓が別々のMDで対応するのは非効率であることは確かだ。そうなると、米韓MDが、同一指揮下で応戦する方がベストの選択になろう。米韓軍の指揮権は現在、米軍が持っていることを考えれば、同一指揮下で対応すべきであろう。

 

(4)「韓国政府は、2017年に中国と「1031 THAAD合意」を結び、米国のMDに参加しないのはもちろん、北朝鮮のミサイルを迎撃するためのTHAADの追加配備もしないと約束した。THAAD配備に激昂した中国をなだめることに必死で、ますます強まる北朝鮮のミサイルの脅威には無防備にさらされることになった、という指摘がある」

 

文政権の軽率な行為が、韓国の安全保障面で支障を来たす恐れが出てきた。だが、中国への義理立ての前に、北朝鮮の振る舞いこそ問題にすべきである。「三不」にこだわっていれば、重大問題が引き起こされることを中国へ通告して破棄すべきである。文政権は、韓国の国益にとって良いことを一つも行わない政府である。