a0960_008532_m
   

きょう18日は、7~9月期のGDP発表の日である。大方の予想では前年比6.1%増というものだ。李首相は、「6%を維持するのは大変」と漏らしていたが、さて、どこまで「ゲタ」を履かせ、メンツを保つのか。これほど、GDP統計で信頼を失っている国も珍しい。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月17日付)は、「中国悩ますスタグフレーション、金融政策も限界に」と題する記事を掲載した。

 

中国における乱脈融資はかつて、多くの新規住宅や工場の建設、そして成長をもたらしてきた。それが今では、ほぼ住宅・食料価格の上昇と債務拡大を招くだけになってしまった。

 

(1)「中国は18日、7-9月期(第3四半期)の国内総生産(GDP)統計を発表する。成長率は4-6月期の6.2%から減速すると広く予想されている。だが、価格変動を加味した名目成長率はおおむね横ばいとなる公算が大きく、加速する可能性さえある。これが重大な問題となって立ちはだかろうとしており、金融政策の大きな足かせともなっている。つまり、中国当局が2018年から開始した直近の景気刺激策は、12年や15年に実施した浮揚策と比べて極めて控えめであるものの、そのわずかな刺激でさえ、住宅・食料価格の大幅上昇を招くには十分だということだ

 

金融緩和政策を行なっても、設備投資などの前向き投資に資金が回らず、投機資金として流れ込んでいる。「流動性のワナ」にはまり込んでいるのだ。

 

(2)「15日発表の統計によると、9月の社会融資総量残高は10.8%増と、伸びは8月に比べて横ばい、6月の11%増からはやや縮小した。一方で、消費者物価指数(CPI)は約6年ぶりの高い伸びとなっているほか、住宅価格は前年比で10%近く値上がり、食料価格の上昇率も11%に達している。工業や雇用は、なお底入れの兆しが見えない。不運なことに、与信拡大は実体経済への支援効果はあまりないまま物価を押し上げるだけでなく、間違ったところで物価を高騰させている。名目成長率は、おそらく食料や不動産の影響で、農業やサービス部門で加速したものの、製造業部門では減速した。住宅・食料価格の急騰は社会の安定や実質個人消費の双方にとって問題だ。だが工業製品の価格下落は、同セクターに集中する中国の巨額債務圧縮をさらに困難にする

 

もともと、中国人は投機が三度の飯よりも好きな民族である。あらゆるものを投機対象に仕立てる能力は「世界一」である。目先の値上がり益を追い求めるだけなのだ。現在は住宅と、アフリカ豚コレラで生産量が落ちている豚肉への投機である。不健全だが、どうにもならない「性」である。一方、生産者物価は下落しているので、企業の売上が落ちて債務返済が一段と困難になっている。要するに、金融を緩和しても投機を煽るのみ。生産者物価のテコ入れには寄与せず、企業債務を増やすだけの最悪局面に落込んでいる。

 

(3)「中国当局が今回、与信拡大の手段としてインフラ債の発行に大きく依存しているのは、現在置かれたこの難しい状況によるところが大きい。理論上では、インフラ投資の拡大は、住宅価格を押し上げることなく工業製品の価格を支える。だが問題となるのは、中国は所得水準に照らし合わせると、すでに非常に良好なインフラを整備しているという点だ。インフラ債の大量発行は、すでにぜい弱な民間部門の借り入れを締め出す恐れがある。これはすべて、中国の成長モデルに深刻な課題を突きつけており、貿易摩擦の一時停戦でさえ、現在の中国にとっては非常に歓迎すべき理由の1つにもなっている。中国の金融政策担当者が打てる手段は底をつきつつある」

 

中国政府は、目先のGDP押し上げを狙ってインフラ投資に全力を上げている。大量のインフラ債の発行で資金を賄っているもの。だが、このインフラ債の大量発行は、民間資金借り入れを締め出すクラウドアウトという弊害を生み出す。中国経済は、にっちもさっちも行かない状況に追い込まれてきた。これぞまさに、過剰債務の崩壊が示す乱脈経済の実態である。